戯れ言たれる侏儒
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日本冠動脈外科学会では血行再建術が必要な冠動脈疾患患者に対して,PCIかCABGの選択をどうすべきかの指針となりうるガイドラインが作成中です。

第15回日本冠動脈外科学会(会長=近畿大学心臓血管外科学・佐賀俊彦教授・大阪で開催)の日本冠疾患学会合同シンポジウム「冠血行再建のより良いガイドラインに向けて」(座長=日本医科大学心臓血管外科・落雅美教授,近畿大学循環器内科・宮崎俊一教授)では,ランダム化比較試験(RCT)で比較された欧米のSYNTAX試験と日本で唯一の比較調査であるCREDO-Kyotoレジストリーを中心に検討ポイントが説明されました。

きょうは、その記事で勉強しました。
冠動脈血行再建術のガイドライン作成に向けポイントを整理
薬物治療との比較で心筋梗塞予防・生命予後改善示したCABG

最初に登壇した三井記念病院(東京都)心臓血管外科の大野貴之医長は,エビデンスレベルAまたはBの臨床試験を,
(1)狭心症状の改善
(2)将来の心筋梗塞発症予防
(3)生命予後の改善
-の観点で検証した。

まず,PCIが安定慢性冠動脈疾患に上記の効果があるかどうかを検討した複数のメタアナリシスでは,心筋梗塞予防と生命予後改善という点で効果が認められなかった。
積極的薬物治療とPCIを比較したCOURAGE試験でも同様の結果だった。
これらは,ベアメタルステント(BMS)が使用された時代の試験結果に基づくものであるが,近年普及した薬物溶出性ステント(DES)においても,再狭窄率の低下は確認されているが,生命予後の改善効果は認められていない。

一方CABGは,1994年に報告されたメタアナリシス(Lancet 1994; 344: 563)で,左冠動脈主幹部(LMT)病変を含む慢性冠動脈疾患に対して薬物治療よりも死亡率を改善することや,心筋梗塞の予防効果が示された。
SYNTAX試験では,LMTや3枝病変に対してDESよりも心筋梗塞予防効果を有することが示された。

同医長は,外科医の立場でCABGが効果的な患者群の同定を試みた。
CREDO-Kyotoレジストリーでは,糖尿病・低心機能,高齢者,近位左前下行枝病変でCABGの優位性が認められた。
しかし,DES登場後に行われたニューヨーク州のレジストリー(NEJM 2008; 358: 331)では,糖尿病患者のくくりでは有意な効果が認められなかった。
同医長は,自らの検討をもとに,糖尿病でも網膜症を発症した,動脈硬化が進行した患者群でCABGの優位性が認められるのではないかと指摘した。

解剖学的・患者背景リスクを考慮した治療選択を
SYNTAX試験の結果から,昨年,米国心臓協会(AHA)/米国心臓病学会(ACC)ガイドラインは, LMT病変へのPCI適応がクラスⅢからⅡbに変更された。
帝京大学循環器内科の上妻謙准教授は,SYNTAX試験では,解剖学的リスクを見るSYNTAXスコアを活用した患者評価の意義も明らかになったと報告した。

CABGに比べてPCIの再血行再建が高率である点は明らかであるが,死亡・脳卒中・心筋梗塞の回避率は同等とする報告もある。SYNTAX試験でも2年死亡率はPCI群の6.2%に対して,CABG群では4.9%とほぼ同等である。
一方,同試験におけるCABG群の1年以内の脳血管障害発症率は2.2%で,PCIの0.6%よりも有意に高かった。
この差は長期的には埋まっていくものの,「手術で脳梗塞を発症するという点は内科医として気になる」と指摘した。しかし,心筋梗塞の発症率はPCI群のほうが高く,特に1年以降も超遅発性ステント血栓症からの発症リスクが持続する点について,同准教授は「DESの最大の限界点」とした。

SYNTAX試験は,このように両治療の限界点を明らかにしたが,それだけでなく患者個々に選択肢を考えるうえで解剖学的リスクを判別できるSYNTAXスコアの意義が明らかになった点も大きい。
同准教授は,患者背景と解剖学的リスクを組み合わせて事前評価することで,患者個々の治療選択が行いやすくなったとしている。
解剖学的に低リスクな場合のPCI選択と解剖学的に高リスクで患者背景が低リスクの場合のCABG選択はコンセンサスが得られやすい()。

 

 

同准教授は,特にLMTで左回旋枝入口部に狭窄がある病変は「PCIのアキレス腱」と指摘。
この側枝に留置されて良好な成績をもたらしたステントはいまだないとした。
一方で,このような病変を除けば,一概にLMTだからCABGを選択すべきとは言えないとして,さまざまな背景因子をもとに,最適な治療選択を考えていくべきとまとめた。

 


高い日本のoff-pump CABG実施率
日本にRCTがないためSYNTAX試験が参考にされるが,この結果をそのまま日本の状況に当てはめることはできない面もある。
福島県立医科大学心臓血管外科の横山斉教授は,日本のCABGの状況について概説した。

日本冠動脈外科学会は,回答率70%以上を有する経年的なアンケートを実施しており,このなかで1998年には1割にも届かなかったoff-pump CABGの割合がそれ以降急上昇し,2004年以降は6割以上を維持していることが示されている。
治療成績も高水準で,初回の待機的CABGの術後30日死亡率は,2008年の段階で0.6%だった。
また,動脈グラフトによる再血行再建率が高いのも日本の特徴で,すべてのグラフトで動脈が使用されている割合が約4割と高率だった。
日米の比較では,日本のoff-pump CABGの割合の高さと死亡率の低さが際立っているが,1施設当たりのCABG実施件数は,日本の平均が米国専門施設の10分の1であり,国際標準とは言えない状況も指摘されている。

Off-pump CABGについては,RCTのROOBY試験で,on-pumpに対する有意な結果は認められなかったが,高リスク患者が含まれていなかったことや,経験の浅い術者が多く含まれていた点で,同試験の結果については疑問が呈されている。
ただし,同教授は,off-pump CABG施行中に緊急的にon-pumpに移行する症例は死亡リスクが高まるため,注意が必要とした。

SYNTAX試験のCABGでは完全血行再建率が64%と低く,同教授の施設成績に比べて脳卒中や心筋梗塞,再血行再建が高率だった。同教授は「ガイドライン作成においては治療水準の変化や日本の状況が考慮されることが望ましい」と述べた。


 

外科・内科とも患者・社会に説明責任を
CREDO-Kyotoレジストリーは,2000〜02年の患者を対象に実施された。
off-pump CABGが43%,全例にBMSが使用されていた点で,両治療とも現在とは異なる状況で行われ,全体の3年生存率はPCI群89.6%,CABG群91.7%だった。
天理よろづ相談所病院(奈良県)循環器内科の中川義久部長は,薬物治療が進化した時代においての血行再建術という大局的な視点からの見解を述べた。

同部長によると,DESの登場によってPCIの再血行再建率は低率になったが,生命予後の改善は一部のレジストリー調査で示されたのみで,同部長自身「悪化させていない」という認識でいるという。
また,比較試験における両者の差は縮まってきているが,この背景には抗血小板薬やスタチンなど薬物治療の進化が大きく関与していると考えられる。

さらに,LMT分岐部で2本のステントを必要とする病変では,DESを使用してもなお,3年間で3割程度の血行再建率と1割程度の死亡率であることを示し,このような病変においては「CABGが施行できるにもかかわらずPCIを選択することは許されない」と同部長は強調した。

一方,一概に「LMT病変」や「多枝病変」のくくりでPCIを選択肢から外すことも妥当でない,と同部長は主張。
それを見極める鍵は「冠動脈病変の進行度」で,LMT病変であっても限局した入口部病変はDESで良好な成績が得られているほか,冠動脈のすべての動脈で動脈硬化が進行した3枝病変と進行していない病変枝が存在する2枝病変の違いは大きく,2枝病変ではPCIもCABGとそん色のない成績が得られている。
また,DESの遅発性ステント再血行再建(late catch-up)の問題についても,オンラベルでDESが留置された症例では,留置1年後以降もBMSと同等の成績と説明した。

このようにDESの有用性は高いが限界も存在し,薬物治療が進化する時代において,PCIの限界を超える治療を選択する場合には,その選択根拠と成績報告を患者のみならず社会に提示していく必要があり,また,CABGも薬物治療,PCIという選択肢があるなかで,侵襲度の高いCABGを選択させる根拠と説明を尽くしていく必要があるだろうと締めくくった。


 

来年公表予定で検討進む
わが国には「冠動脈疾患におけるインターベンション治療の適応ガイドライン(CABGの適応を含む)-待機的インターベンション」があるが,これは1998〜99年の合同研究班報告に基づくものだ。
日本循環器学会の委員会により作成中の新たなガイドラインが待たれているが,ガイドライン案は年内にまとまる予定で,公表は来年になる見込みだ。

出典 MT pro 2010.9.16
版権 メディカルトリビューン社


<関連サイト>
SYNTAX試験 :重度冠動脈疾患の標準治療
http://blog.m3.com/reed/20090526/SYNTAX___
■術後1年時点の重大な心臓・脳血管イベントの複合エンドポイント発生が、PCIよりもCABGのほうが低く、3枝病変あるいは左冠動脈主幹部病変の標準治療は依然としてCABGであると結論できる

3枝病変にはバイパス術?
http://blog.m3.com/reed/20091025/3_1
■Stent or Surgery Trial(SoS試験)では,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)群に比べて冠動脈バイパス術(CABG)群で術後6年生存率が有意に高く(死亡率:10.9%対6.6%),再介入を余儀なくされた症例も明らかに少なかった。
■欧米のガイドラインでは,左主幹部狭窄が認められる患者に対するPCIの適用は,CABGが絶対禁忌の場合に限ることを明記している。

 

 

<きょうの一曲>
You don't know what love is - Sonny Rollins
http://www.youtube.com/watch?v=tLFlJIqiMLc&feature=related

 


<きょうの一曲>
フジコ・ヘミング J.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲集 BWV846-BWV847
http://www.youtube.com/watch?v=ehkc1jb32Xc


平均律クラヴィーア曲集
http://ja.wikipedia.org/wiki/平均律クラヴィーア曲集


篠田雅典 『富士春色』 日本画
http://www.seikougarou.co.jp/sell/shinodamasanori/1079.html

 

 

 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります。        

 

 

 

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