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第15回日本冠動脈外科学会で「虚血性心筋症に対する左室形成術を再検証する-STICH trialをうけて」というタイトルのシンポジウムが行われました。
虚血性心筋症(ICM)そして虚血性拡張型心筋症(IDCM)を復習し直す機会として、このシンポジウムの記事で勉強しました。
##虚血性心筋症に対する左室形成術
##適切な症例選択と手技で効果
虚血性心筋症(ICM)に対する左室形成術(SVR)の効果を検討したSTICH(Surgical Treatment of Ischemic Heart Failure)trialは昨年,有効性を否定する結論を出し,世界中で議論を巻き起こした。
試験方法や手技を中心にさまざまな問題点が指摘され,取り下げを求める心臓外科医も少なくない。
第15回日本冠動脈外科学会のシンポジウム「虚血性心筋症に対する左室形成術を再検証する-STICH trialをうけて」(座長=国立循環器病研究センター・北村惣一郎名誉総長,東京大学大学院重症心不全治療開発講座・許俊鋭特任教授)では,わが国の心臓外科医が,適切な症例選択と手技により効果が得られることを主張した。
心筋症に対する移植以外の外科治療で最有力候補とされるSVR。初めての前向き臨床研究として行われたSTICH trialで,CABGにSVRを追加しても,CABG単独群を上回る予後は得られないことが示された(5年生存率72%)。
これに対して,
○左室瘤症例も含まれている
○左室容積の測定が一部の症例にしか行われていない
○術前LVESVIが83mL/m2と小さい
○SVRによる容積減少率は19%で,有効性を示唆している報告に比べて明らかに低い
○執刀医の経験が十分であったか疑わしい
など,さまざまな問題点が指摘されている。
シンポジストらは,ICMに対するSVRは,あまり大きくなっていない心臓に対しては高い効果が得られないが,コンセプトをよく理解した外科医が適切な適応選択,手技のもとで行えば,予後改善効果が十分に期待できるという点で一致した。
出典 Medical Tribune 2010.9.16
版権 メディカルトリビューン社
<関連サイト>
##適応はLVESVI 90mL/m2超えた時期/術前LVESVIに応じた縮小目標で
慶應義塾大学心臓血管外科の古梶清和専任講師らは,ICMに対するSVRの適応は左室収縮末期容積係数(LVESVI)が90mL/m2を超えた時期が適当との考えを示した。
また,心事故回避には,術前LVESVIに基づいて算出した術後左室拡張末期容積係数(LVEDVI)を目標に縮小することが望まれるとした。
#縮小目標設定後に心事故減少
古梶専任講師らは,1996~2010年5月にICM 33例(平均年齢61歳)にSVRを行った。
術前のLVESVIは平均116mL/m2,LVEDVIは158mL/m2,左室駆出率(LVEF)は27%。術後容積減少率は49%と高い。
5年非イベント(死亡または心事故)率は80%,非心事故率55%と,STICH trialに比べて予後は良好だった。
予後因子について多変量解析すると,術前LVESVIだけが有意な因子で,大きいほど生存率が低下することがわかった。
予後改善が見られなかったSTICH trialでは約80mL/m2だったことから,同専任講師は,SVRを行うのは90mL/m2を超えた時点が適当だろうとした。
さらに,心事故の影響因子について多変量解析すると,術前LVESVIと術後の心室性期外収縮残存が有意な因子だった。
心事故を起こした群と起こさなかった群で左室容積の推移を比較すると,心事故群では術後減少した容積が再び増加する傾向が認められ,これがおもな死因である心不全や不整脈につながっていると考えられた。
術後の容積増加は,左室が適切な大きさとなるようなSVRを行えば回避できる可能性がある。
そこで,その大きさを心事故との関連から検討したところ,術後LVEDVIの目標を,術前LVESVIに0.438を乗じ,56を加えた値とすることが妥当であるとの結果を得た。
この考え方に沿ったSVRを開始した2001年以降,心事故が明らかに減少する成績(図)が得られたという。

出典 Medical Tribune 2010.9.16
版権 メディカルトリビューン社
##心機能とMR改善,長期予後良好 ただしリモデリング進行所見が
国立循環器病研究センター心臓血管外科の戸田宏一医長らは,SVRにより重症ICMの心機能や僧帽弁閉鎖不全症(MR)の改善が認められ,長期予後も良好だったことを明らかにした。
ただし,長期経過においてリモデリング進行と推測されるデータが認められたことから,薬物療法の必要性も示唆した。
#LVESVIが112mL/m2から40%減
戸田医長らは,過去10年間にSVRを行ったLVEF 35%未満のICM 34例(平均年齢63歳)で,術後の心機能,左心形態や長期予後を検討した。
34例のニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類は平均2.9度,Ⅲ~Ⅳ度が71%。LVEF 25%,LVESVI 112mL/m2,左室拡張末期径(LVDd)63mm,左室収縮末期径(LVDs)52mmで,中等度以上のMRは62%認められた。
On-pump 冠動脈バイパス術(CABG)後にSVRと乳頭筋接合術,MRには強制的僧帽弁輪形成術を行った。
入院死亡は2例(6%)で,いずれも低心拍出量症候群が原因だった。
術後,LVEFは33%へ有意に改善。LVESVIも66mL/m2まで低下し,約40%の容積減少が得られた(図)。
NYHA心機能分類,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)も有意に改善した。

ただし,5年後まで経過観察すると,MR gradeの有意な改善は持続して認められたが,LVDdの減少は3年以降有意ではなくなり,1か月後よりも増加していた。
同医長は「リモデリングとしてよいかは議論があるだろうが,LVESVIの減少効果が報告されているβ遮断薬,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬などの薬物療法が,SVR後の長期予後改善に必要ではないか」と述べた。
遠隔期非イベント(死亡または心事故)率は4年後で約70%(心臓死は1例)と良好だった。
SVR後の死亡または心事故の影響因子について多変量解析を行うと,術前LVDd 65mm以上(ハザード比7.41)が有意な因子であることがわかった。
実際,LVDd 65mm以上群の遠隔期予後は65mm未満群に比べて有意に不良だったという。
出典 Medical Tribune 2010.9.16
版権 メディカルトリビューン社
##広範akinesis呈するIDCMは術後左室大きいと遠隔期予後不良
北海道大学病院循環器外科の若狭哲氏らは,広範なakinesis(左室壁無収縮)を呈する虚血性拡張型心筋症(IDCM)に対するSVRの予後因子について検討。
術前左室が小さいと術後の入院死亡リスクが高く,術後左室が大きいと遠隔期死亡リスクが高いことを報告した。
#術後左室大きいと術前も大
若狭氏らは2003年以降,IDCM 74例にSVRを実施してきた。
このうち広範なakinesisを呈した46例(平均年齢62.5歳)が今回の対象。左室瘤症例,心エコーなどの臨床所見が不十分な症例,術前LVEFが40%を超える症例は含まれていない。
術前NYHA心機能分類は平均3.2度。BNPは1,468pg/dL。MR gradeは2.8。LVDd 67.9 mm,左室内径短縮率(LVFS)14%,LVEF 27.9%,LVESVI 117.4 mL/m2。
術式はオーバーラッピング手術が約6割。CABGは9割近くで同時施行された。
術後,MR gradeは平均0.4まで有意に改善。
LVDd 60.3mm,LVFS 17.5%,LVEF 33.9%,LVESVI 71.0mL/m2と,心エコーパラメータも有意な改善が認められた。LVESVIの減少率は38.7%だった。
予後(平均27.1か月)を調べたところ,死亡は11例(23.9%),心臓死は5例(10.9%)。
5年生存率は全体で64.8%,非心臓死77.7%と患者背景を考えると良好だった。予後因子を検討すると,術前LVDdが小さい(64.5mm以下)と術後の入院死亡リスクが高く,術後LVDdが大きい(63.2mm以上)と遠隔期死亡リスクが高いことがわかった(図)。
術後左室が大きい症例は術前も大きく,左室収縮も不良であり,また同時施行したCABGの効果が十分得られなかった。
遠隔期死亡リスクは大動脈弁置換術を要した症例でも高かったという。

出典 Medical Tribune 2010.9.16
版権 メディカルトリビューン社
<STICH trial 関連サイト>
STICH trial
http://blogs.yahoo.co.jp/hirofu222/40086148.html
心室再建術の効果は根拠がない
http://www.doljapan.com/special/acc/2009/html/06.html
The STICH Trial
What Does It Tell Us and Where Do We Go From Here?
http://stroke.ahajournals.org/cgi/content/full/36/7/1619
Clinical Trials
Surgical Treatment for Ischemic Heart Failure (STICH) Trial
http://www.cts.usc.edu/clinicaltrials-stichtrial.html
Physician biases plague STICH trial progress, but enrollment on the rise, investigators say
http://www.theheart.org/article/116229.do
Physician biases plague STICH trial progress, but enrollment on the rise, investigators say
http://www.theheart.org/article/116229.do

篠田雅典 『磐梯高原の朝』 日本画
http://www.seikougarou.co.jp/sell/shinodamasanori/1058.html
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/ があります。