戯れ言たれる侏儒
Profile

ブログ内検索

カレンダー

<< 2010/10 >>
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

新着コメント

新着トラックバック

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

< 前のページ

左室緻密化障害

戯れ言たれる侏儒 / 2010.10.31 00:58 / 推薦数 : 2

半年前に感冒症状から数日後に重度呼吸困難に陥った症例(50歳 男性)を経験しました。
再来院時はパルスオキメーターで計測不能な状態で近くの大学病院に搬送しました。

その時は急性ウイルス性心筋炎という暫定診断を私なりにしていました。

昨日やっと経過報告書が届き「左室緻密化障害」という診断名が「慢性心不全の急性増悪」とともに併記されていました。

経過から何となく違和感のある診断名です。
一度当方でも心エコーをしてみたいのですが、叶いません。

投薬内容はアルダクトンA、ルプラック、ザイロリック、リバロ、アーチスト、アカルディ、ラニラピッド、ワーファリンです。

血圧が低いのかACE-IやARBは投与されていません。

<関連サイト>
左室緻密化障害 LV noncompaction!
http://teefan.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/lv-noncompactio.html
(TEE Fan 心エコー特にTEE に関するマニアックなサイトです)
■名称は, honeycombed myocardium, spongy myocardium, persisting myocardial sinusoids, LV noncompaction, isolated LV abnormal trabeculation, LV hypertrabeculation などと呼ばれており,論議があるところらしい.
■剖検例では、1932年に報告,生体でも1969年に報告されているが、最近画像診断法の向上とechographerに次第に知られるようになり、報告例が増加している.
■左室心尖部に最も多い.
■形態的には,心筋のスポンジ様変化、粗い肉柱と深い陥凹,菲薄化した心筋などの特徴がある.
■病理組織は、正常か,心内膜下のfibrosis/fibroelastosis等の非特異的所見.
■診断基準は、「多数の、過剰に突出した肉柱と深い肉柱間の陥凹」 (Jenni R),「乳頭筋付着部より心尖部よりの,一断面中の3個を超える肉柱の存在」(Stöllberger C) 等があるが,確定していない.
■Noncompaction は,肥大型心筋症,心内膜線維弾性症,拡張型心筋症,拘束型心筋症,心内膜心筋線維症などと誤診されてきた.
■男女比は,2:1で男性に多く,年齢分布は,報告により出産前から、壮年・老年までさまざま.
■他の心疾患の合併がある:冠動脈異常,心筋虚血,心不全,心電図異常,左室収縮障害,不整脈など.
■神経筋疾患の合併が多い(29%. しかし神経専門医が調査すると81-100%!):代謝性ミオパチーが最多.
■塞栓症とも関係する.
■家族性発症があり,遺伝子の異常も指摘されている.
■病理学的概念はいくつか提唱されているが,まだ確証はない.
a. 心筋の緻密化の停止による胎生期の類洞の遺残
b. 障害された心筋が成長あるいは,先天的な異常を克服しようとする過程で生じる
c. 特異的な血行動態への適応として起きる
など
■予後は、初期の報告では不良とされたが、良好とする報告も多い.
■特異的な治療法はなく、対象治療.

<左室緻密化障害 論文>
Left Ventricular Hypertrabeculatioin/Noncompaction Stöllberger C, Finsterer J J Am Soc Echocardiogr 2004; 17: 91-100
http://www.onlinejase.com/article/S0894-7317(03)00514-5/abstract

A Case of Left Ventricular Noncompaction
Weitzel et al. Anesth Analg.2009; 108: 1105-1106

Noncompaction Cardiomyopathy: Case Report and Echocardiographic Findings
Gregory W. et al.
Journal of Cardiothoracic and Vascular Anesthesia
April 2009 (Vol. 23, Issue 2, Pages 200-202)

The Diagnosis of Left Ventricular Hypertrabeculation/Noncompaction by Intraoperative Transesophageal Echocardiography
Kent H. et al.
Journal of Cardiothoracic and Vascular Anesthesia
December 2008 (Vol. 22, Issue 6, Pages 858-860)

Isolated noncompaction of the myocardium: Multiplane transesophageal echocardiography diagnosis in an adult
A. Maltagliati et al.
J Am Soc Echocardiogr 2000;13:1047-9.
http://www.onlinejase.com/article/S0894-7317(00)23074-5/abstract


<左室緻密化障害 関連サイト>
左室緻密化障害
http://www.masashikomeda.com/web/2009/03/8-0717.html

孤立性左室心筋緻密化障害と考えられた無症状の1症例
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjmu/34/6/34_587/_article/-char/ja

高齢で発見された孤立性左室心筋緻密化障害の1 例
http://www.jcc.gr.jp/blue/jc-pdf/441-3(H).pdf
■左室心筋緻密化障害は,胎生期に粗な心内膜心筋が緻密な心筋構造になっていく過程が中断され,心内膜で覆われた肉柱が遺残したものであり,顔貌異常や他の合併心奇形がないものは,孤立性左室心筋緻密化障害(isolated left ventricular noncompaction)と称されている。
■孤立性左室心筋緻密化障害は世界保健機関の心筋症分類でunclassified型とされているが,最近,疾患としての独立性が主張されつつある。
■本症の形態的特徴は左室側壁から後壁および心尖部にかけて認められる著明な肉柱と深い陥凹であり,左室壁は高い肉柱と薄い緻密筋層との二層構造となっている.
本症の診断は,これらの異常な肉柱の検出と評価によってなされる.
■心エコー図法による診断指針3)として,収縮期における肉柱の高さ(N)と緻密筋層(C)とのN/C 比>- 2 であること,およびカラードップラーで肉柱間への血流が認められることが挙げられる。
■ほかにも診断の補助として,造影コンピューター断層撮影検査や磁気共鳴画像検査でこれらの深い肉柱の描出が可能である。
鑑別診断上,健常者や拡張型心筋症例でも肉柱が目立つ場合があるが,その場合,数は3 本以内であり,前壁中隔にも及ぶ。
心尖部肥大型心筋症では左室内腔と交通する深い陥凹が認められない。
■孤立性左室心筋緻密化障害は拡張型心筋症様のび漫性壁運動障害と左室拡大を呈して進行性の心不全に陥るため,予後不良とされている。
■肉柱部分における心内膜下の線維化が特徴であり,虚血性変化とされている。
■緻密化障害のみでび漫性壁運動低下は説明しにくいとされる。
壁運動異常部位における冠動脈血流予備能の低下も示されており,冠微小循環障害と左室収縮障害との関連が考えられている。


<番外編>
#増加する弁膜症手術,年間約1万7,000件に
#日本胸部外科学会が公表,2008年胸部外科手術全国調査
日本胸部外科学会は,胸部外科手術(心臓外科,呼吸器外科,食道外科)に関する最新の全国調査結果を同学会の公式サイトに公表した。心臓外科領域で弁膜症手術が毎年増加し,年間約1万7,000件に達したことなどが注目される。

#虚血性心疾患手術も6年ぶりに増加
日本胸部外科学会は,1986年から学会員の施設を対象に,心臓外科(胸部大動脈手術を含む),呼吸器外科,食道外科の年間手術件数を調査している。
最近では3領域とも94〜98%の回収率で,わが国の胸部外科手術をほぼ網羅しているという。
今回まとめられたのは2008年の調査結果で,今年(2010)年7月,学会誌に英文論文として掲載済みだが(Gen Thorac Cardiovasc Surg2010; 58: 356-383),社会に向けて情報公開を進めるため,要旨を日本語で公表した。

まず心臓外科については,2008年における手術件数は約5万9,000例。
このうち,年々増加の傾向にある弁膜症手術は約1万7,000件に達した。
高齢者の大動脈弁狭窄症や僧帽弁変性疾患の増加,術後のQOLを考慮して早期に手術が行われるようになったことなどが増加の要因だと同学会では分析している。

弁膜症手術の在院死亡率は全体では3.3%だが,再手術例の在院死亡率は7.1%と高い。
人工弁感染性心内膜炎などによる状態の悪い患者に対する再手術例が,成績を不良にしている可能性があるという。

冠動脈バイパス術(CABG)など虚血性心疾患手術は2003年以降,減少傾向にあったが,2008年は前年比2.8%増の1万9,237例。
今後の推移が注目される。

単独CABGにおける手術後30日以内の死亡率を見ると,初回・待機手術では0.7%で,わが国の手術水準の高さを示している(欧米では3~4%)。
ただし,初回手術でも緊急手術の場合は5.7%と高い。早期の手術介入が成績向上の鍵となる。

出典 MT pro 2010.10.29
版権 メディカルトリビューン社

http://winds-unsodo.shop-pro.jp/?pid=3914884


http://www.google.co.jp/

その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります。
    


固定リンク

##心臓周囲の脂肪環境と心房細動のリスク
左房肥大といった既知のリスク因子とは独立して、心外膜脂肪量が、発作性・持続性心房細動のリスク因子であり、心房細動の発症と強く関連していることが、米国Loyola大学メディカルセンターのM. Obadah Al Chekakie氏らによって明らかにされた。
心外膜脂肪は炎症性の性質を有する内臓脂肪組織である。
炎症と肥満が心房細動に関連することは明らかになっているが、心外膜脂肪と心房細動との関連については明らかになっていなかった。
#心外膜脂肪量10mL増加で、発作性心房細動リスクは1.11倍、持続性心房細動リスクは1.18倍
Chekakie氏らは、患者273例について、CTを用いて心外膜脂肪量の測定を行った。
被験者の内訳は、心房細動患者197例(発作性126例、持続性71例)と、洞調律76例(対照群)だった。

おもな結果は以下のとおり。
 
●心外膜脂肪量は、心房細動群101.6±44.1mLで、対照群の76.1±36.3mLに比べ、有意に多かった(p<0.001)。
 
●発作性心房細動群の心外膜脂肪量は93.9±39.1mLで、対照群の76.1±36.3mLに比べ、有意に多かった(p=0.02)。
 
●持続性心房細動群の心外膜脂肪量は115.4±49.3mLで、発作性心房細動群の93.9±39.1mLに比べ、有意に多かった(p=0.001)。
 
●心外膜脂肪量が10mL増加することによる、発作性心房細動発症に関するオッズ比は1.11(95%信頼区間:1.01~1.23、p=0.04)、持続性心房細動発症に関するオッズ比は1.18(同:1.05~1.33、p=0.004)だった。
 
●心外膜脂肪量は、心房細動発症について、年齢、高血圧、性別、左房肥大、心臓弁膜症、左室駆出分画、糖尿病、BMIとは独立したリスク因子だった。
#[監修者のコメント]
本研究は、心臓周囲の脂肪量が、これまで明らかにされていたリスクや左房負荷とは独立して心房細動のリスクとなることを示した興味深い論文である。

異所性脂肪が周辺臓器の局所環境を変え、心血管リスクを増強する可能性を示唆している。

これまでに、心臓周囲、特に冠動脈周囲の脂肪が、肥満とは独立して冠動脈疾患のリスクになることが知られている。 
心臓周囲の脂肪は内分泌・炎症機能を有し、直接的に心筋や冠動脈に影響を与える可能性が指摘されている。

これまでの疫学研究では、心房細動の新規リスクとして、内臓型肥満や炎症反応が報告されていたが、本研究では局所脂肪量を定量測定し、心房細動のリスクとの関連を明らかにした点に新規性がある。
しかし、どのような局所機序により心臓周囲の脂肪が心房細動のリスクとなるかは不明である。 

左房負荷の指標である左房系と独立して心房細動心臓周囲の脂肪量は左房径の拡大と正相関を示していることから、脂肪細胞のから直接的炎症性サイトカインの分泌が左房リモデリングを進行させている可能性があるが、今後、自律神経を含めた機序の検討が待たれる。

([監修] 自治医科大学 循環器科 教授 苅尾七臣)
http://www.carenet.com/news/cardiology/newsnow/det.php?nws_c=16640

原文
Pericardial fat is independently associated with human atrial fibrillation.
J Am Coll Cardiol. 2010 Aug 31;56(10):784-8.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20797492


<一部内容を追加しました>
アスピリンの新しい作用
http://blog.m3.com/reed/20100906


 

他にもブログがあります。

「葦の髄」循環器メモ帖http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版です)
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2) http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

 


固定リンク

J-ACCESS Ⅱ

戯れ言たれる侏儒 / 2010.10.29 00:18 / 推薦数 : 0

##無症候性2型糖尿病のSPECT異常は心血管疾患高リスク
糖尿病が心筋梗塞既往と同程度に強い心血管イベント発生の規定因子であることを確認したJ-ACCESS Ⅰに続き,日本人の無症候性糖尿病患者の心血管イベントリスクがJ-ACCESS Ⅱで明らかにされた。
負荷心筋血流核医学検査(SPECT,以下負荷SPECT)で中等度以上の血流異常が認められる2型糖尿病患者では,死亡および心血管イベントの発生リスクが2倍近く高いというもので,大阪大学先端科学イノベーションセンターの山崎義光教授らがDiabetes Care(2010; オンライン版)に報告した。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2010/M43430831/
#高コストだが糖尿病患者で利便性高いSPECT
2001年にスタートしたJ-ACCESS Ⅰでは,負荷SPECTによるリスク層別化の有用性が検討された。
負荷SPECTを施行した虚血性心疾患患者約5,000例の3年間の追跡結果では,負荷SPECT合計スコア(SSS)※が上昇するほど心血管イベント発生率が高くなることが確認された。
加えて,糖尿病と心筋梗塞の既往が共にハードイベントリスクを著しく上昇させ,その程度は糖尿病で5.7%/3年と,心筋梗塞の既往と同等であることも明らかになった(Eur J Nucl Med Mol Imaging 2008; 35: 319-328)。
日本人でも欧米人同様に,糖尿病が心血管イベントの重要な危険因子であることを確認した知見だった。

同試験で負荷SPECTによる評価が行われた背景としては,糖尿病患者では腎障害の合併が多いため,心筋虚血の有無を見るのに一般に行われる冠動脈造影(CAG)や冠動脈CTは使いにくい点が挙げられる。また,糖尿病治療の第一選択薬となりつつあるビグアナイド系薬(メトホルミン)使用患者では,乳酸アシドーシスの懸念から造影剤を用いた検査が行いにくいことも,糖尿病患者に負荷SPECTを用いる理由になる。
一方で,コストの高い負荷SPECTを,1,000万人近いとされる糖尿病患者のどの層に用いるかについては検討が必要であり,新たにJ-ACCESS Ⅱが計画された。


#SSS9以上,eGFR低値,喫煙がリスクの予測因子に
J-ACCESS Ⅱでは,糖尿病専門医のいる50施設から,50歳以上で無症候性の2型糖尿病患者513例を登録した。
対象は,頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)が1.1mm以上または尿中微量アルブミンが30mg/g/Cr以上,または腹部肥満,低HDLコレステロール,脂質異常,高血圧の四つのうち二つ以上ある患者とし,重症糖尿病(HbA1c 10%以上)や腎症(クレアチニン1.5mg/dL以上),ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類Ⅲ度以上の心不全のある患者などは除外した。全例で負荷SPECTを行い,3年間追跡した。

3年間追跡できた485例のうち,中等度心不全や末梢血管障害,一過性脳虚血発作も含む心血管イベントおよび死亡は62例(13%)だった。
これは,同様に日本人の無症候性2型糖尿病患者を対象にしたJPAD試験のコントロール群のイベント発生率(非心臓死および心不全を除く)の2.3倍に当たり,J-ACCESS Ⅱの対象患者層自体が心血管イベント高リスク集団であることが示唆された。

単変量解析では,高齢,現在の喫煙,抗血小板薬チクロピジンまたはインスリン製剤の使用,総コレステロール高値,推算糸球体濾過量(eGFR)低値,左室駆出率(LVEF)低下,SSS9以上の心筋虚血異常が心血管イベントの有意な因子となった。
特に,SSS9以上の群の3年間のイベント発生率は23%と,SSS9未満群の12%に比べ有意に高くなっていた(図1,2)。

さらに,治療薬以外の因子について多変量Cox回帰分析を行うと,SSS9以上(ハザード比3.385),eGFR低値(同0.982),現在の喫煙(同2.083)が,それぞれ独立した心血管イベントの予測因子となっており,負荷SPECTを適応する要素になると考えられた。

※負荷SPECT合計スコア(SSS):20カ所の部位を0(正常)~4点(集積なし)で評価して合計スコアを算出する


#大阪大学先端科学イノベーションセンター 山崎義光 教授のComment
J-ACCESS Ⅰ(研究代表:京都府立医科大学・西村恒彦教授)で示された日本人糖尿病患者の心血管イベント発生率は,国際共同試験であるADVANCE試験や,米国・カナダでのACCORD試験のイベント発生率に並ぶ数字だった。
日本人での心血管疾患リスクは欧米人より低いとされてきたが,現時点では欧米並みになってきていることが分かった。
これは,糖尿病診療に当たる医師の意識に影響を与える大きなサインと言えるだろう。
今回の検討で,無症候性糖尿病患者のeGFRが有意な因子だったことも,腎機能状態把握の重要性を伝えるメッセージだ。
日常診療ですべての糖尿病患者に負荷SPECTを行うのは実際的ではないが,メタボリックシンドロームや腎症の所見があれば,高リスクとして負荷SPECTを勧めていくことも考えられるだろう。
喫煙リスクを再認識すべき点もあらためて浮き彫りにされた。

出典 Medical Tribune 2010.10.28
版権 メディカルトリビューン社


2010.10.20撮影
(先週飲みに行ったお店のトイレの光景です。粗○○を見られているようでした。)

 

他にもブログがあります。

「葦の髄」循環器メモ帖http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版です)
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2) http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)

 


固定リンク

ワイヤレス12誘導心電計

戯れ言たれる侏儒 / 2010.10.28 00:17 / 推薦数 : 0

今週1週間、「ワイヤレス12誘導パソコン心電計」を業者(グッドケア)の好意により貸し出しをしてもらっています。

以前から興味を持っていたのですが、たまたま業者が用事で来院したついでにデモをしてもらった次第です。

ハンガリー製ということでちょっとひっかかるところもあるのですが、マスター負荷試験の際に負荷最中のST変化が観察出来るのが何よりの魅力です。

エルゴメーターやトレッドミル負荷試験やさらには心臓リハビリへの発展性もあります。

製品名は「ラブテック心電計 Dura」と言います。

国内では初めてワイヤレス(Bluetooth)方式を採用した「次世代」心電計ということです。

 

<関連サイト>
ワイヤレス12誘導パソコン心電計 Duna (ハンガリー国ラブテック社)
http://www.goodcare.jp/products.html

株式会社グッドケア
http://homepage2.nifty.com/medicalteknika/goodcare/
(12誘導ストレス対応心電計の実施場面の動画を見ることができます)

ワイヤレス 12誘導 負荷心電計
http://www.youtube.com/watch?v=e81kz9IO7Ec

12誘導 ワイヤレス 負荷 メタボリック指標付き 心電計
http://www.youtube.com/watch?v=aWqGULKJkCs&feature=fvw

ブルーツース無線式ストレスシステムへようこそ
http://homepage2.nifty.com/medicalteknika/duna/

ブルーツースで、100mまでワイヤレス12誘導負荷心電計をご提案します
http://homepage2.nifty.com/medicalteknika/walking/

世界初 携帯電話式12誘導心電計の出展
株式会社 グッドケア
http://www.din.or.jp/~meditekn/medi_hp/
http://square.umin.ac.jp/jacscopy/links/iphoneecg/

<番外編>
欧州医薬品庁,フィブラート系薬を新規患者の第一選択薬から除外
10月の医薬品評価委員会で結論
欧州医薬品庁(EMA)は10月18~21日に開かれた医薬品評価委員会(CHMP)脂質異常症と新規に診断された患者に対し,フィブラート系薬を第一選択薬にすべきでない との勧告を発表した。

European Medicines Agency recommends use of fibrates
as second-line treatment
http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Press_release/2010/10/WC500098368.pdf


2005年にも同様の勧告が発せられているが,英国などの要請により再度検討が行われた。
同委員会はフィブラート系薬のベネフィットはリスクを依然上回っているものの,新規患者への第一選択は重度の高トリグリセライド(TG)血症もしくはスタチンの服用ができない場合に限るとしている。

フェノフィブラートは一定の条件でスタチンとの併用可能
EMAによると,今回勧告の対象となったのは現在欧州で承認販売されている4種のフィブラート系薬(ベザフィブラート,ciprofibrate,フェノフィブラート,gemfibrozil)。

フィブラート系薬はTGやコレステロールを低下させる薬剤として長年用いられていたが,2005年のCHMPのファーマコビジランス分科会が同薬の長期的な心血管疾患リスクに関するエビデンスが限定的として再評価を実施。
脂質異常症治療薬としての使用は継続されるものの,第一選択薬とすべきでないとの結論を発表していた。

この結論に対し,これらの薬剤を販売する企業が疑義を申し立てたことから,英国が同委員会に,欧州全域での販売承認を含む勧告の発出を検討することなどを求めていた。

委員会は,今回,フィブラート系薬が重度の高TG血症あるいはスタチンの投与が不可能な患者を除いて第一選択薬としないとの2005年ファーマコビジランス分科会の結論が確認されたと発表。

なお,フェノフィブラートについては,新たなデータが提示されており,スタチン単独で血清脂質のコントロールが十分でない状況などにおいて併用を考慮してもよいとされたようだ
                                                   (坂口 恵)
出典 MT pro 2010.10.25
版権 メディカルトリビューン社


<私的コメント>
若い先生方はご存知ないかも知れませんが、フィブラート系薬剤でクロフィブラートという薬剤がありました。
商品名をアモトリールといいました。
今はアストラゼネカというメーカー名となっていますが、当時はICIファーマが扱っていました。
このメーカーは英国ということもあって、クロフィブラート関連の論文のほとんどがLancet誌に発表されました。
学会でこのクロフィブラートについて発表したことがあったのですが、Lancet誌の論文が読みにくかったことを未だに覚えています。
今回、英国からクレームがあったのもそんな歴史的事情があってのことかと思った次第です。

余談になりますが、薬剤開発についてはカルシウム拮抗剤はドイツ、β遮断剤は英国というイメージがあります。
しかし、スタチンは日本とは胸を張っていえないのは何故でしょうか。
カルシウム拮抗剤の降圧剤への応用はたしか日本でしたよね。


その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります。
    
 

 

固定リンク

冠動脈疾患の遺伝子検査

戯れ言たれる侏儒 / 2010.10.27 00:06 / 推薦数 : 0

冠動脈疾患に末梢血の遺伝子検査
米CardioDx社が開発した「Corus CAD」が有用性示す
米CardioDx社は、末梢血を標本として23遺伝子の発現を分析し、胸痛がある非糖尿病患者における閉塞性冠疾患(CAD)の存在を予測する検査を昨年から提供している。
この検査の精度を確認した研究の詳細が、同社のSteven Rosenberg氏らによってAnn Intern Med誌2010年10月5日号に報告された。
その能力は診察に基づく閉塞性CAD予測法と同等かそれ以上であることが明らかになった。

胸痛などの症状があってCADが疑われる患者に適用できる簡便な血液検査はこれまでなかった。
そうした患者の診断には、非侵襲的なイメージングや侵襲的な冠動脈造影が用いられている。

新たに登場した検査、「Corus CAD」が予測するのは、閉塞性CAD(アテローム性動脈硬化によって、冠動脈のうち内腔径が1.5mm以上の血管が少なくとも1本以上、50%以上狭窄している。
内腔狭窄率は定量的血管造影法により判定)の存在だ。同社は、冠動脈のアテロームプラークに存在する泡沫細胞が化学信号を発信し、血液細胞の遺伝子発現パターンを変化させるとの考えに基づいて、関与する遺伝子の探索を進め、最終的に23遺伝子の発現パターンを調べる血液検査「Corus」を開発、昨年から米国の一部で提供を開始した。
既に一部保険会社がこの検査に対する保険償還を実施している。

この検査の適応は、胸痛がある21〜99歳の患者のうち、以下の条件を持たない人々だ:心筋梗塞歴、冠動脈狭窄に対する介入歴、糖尿病、炎症または感染症、ステロイド/免疫抑制薬/化学療法薬の投与。末梢血を採取し、同社のラボに送付すると、数日のうちに判定が得られる。分析結果は0〜40のスコアで示されるが、その数値に基づいて判定された閉塞性CADである可能性が%で提示される。
患者と主治医は、これを診察結果と組み合わせて介入法を決定することになる。

対象が非糖尿病患者に限定されているのは、糖尿病患者では発現を評価すべき遺伝子のセットが異なるためだという。

今回の論文は、アルゴリズム構築コホートを用いて作製した遺伝子発現プロファイルに基づく閉塞性CAD診断アルゴリズムの精度を、確認コホートを用いて評価した結果を報告している。

米国内39施設で多施設前向き研究PREDICTを実施。07年7月から09年4月まで、
(1)胸痛がある、
(2)狭心症が疑われる症状がある、
または
(3)CADリスクが高い、という理由から冠動脈造影が必要と判断された患者のうち、心筋梗塞や血行再建術、閉塞性CADの既往がない人々
を登録した。
条件を満たした1343人を、アルゴリズム構築コホート(694人)と確認コホート(649人)に分けた。
全体の57%が男性、37%が閉塞性CAD(それぞれ230人と192人)で、26%にはCADは見付からなかった。

すべての患者から、臨床データ(社会統計学的特徴、投薬歴、医療歴、心筋灌流イメージングの結果)を標準化された方法で収集、定量的冠動脈血管造影を実施し、狭窄率を計算した。

23遺伝子の発現レベルと年齢、性別に基づくアルゴリズムと診断精度を比較したのは、Diamond-Forresterスコア、拡大臨床モデル、心筋灌流イメージングに基づく診断法だ。

臨床リスクスコアであるDiamond-Forresterスコアは、年齢、性別、胸痛のタイプ(典型的な狭心症、不定型狭心症、非狭心症性胸痛)によりCADかどうかを予測するもの。

より詳しい拡大臨床モデルは、単変量解析でそれぞれ閉塞性CADとの関係が示されている11の臨床要因(年齢、性別、胸痛のタイプ、人種、スタチンの使用、アスピリンの使用、抗血小板薬の使用、ACE阻害薬の使用、収縮期血圧、高血圧、脂質異常症)を基にリスクを判定するものだ。

確認コホートのうちデータがそろっていた526人を分析対象とした。閉塞性CADは192人で、このアルゴリズムの識別能力を示すROC曲線下面積(AUC)は0.70±0.02(P<0.001)となった。

確認コホートにDiamond-Forrester法のみを適用した場合のAUCは0.66だったが、これに発現アルゴリズムを併用すると、AUCは0.72に上昇(P=0.003)した。
同様に、拡大臨床モデルに発現アルゴリズムを加えるとAUCは0.732から0.745に上昇(P=0.089)、心筋灌流イメージングに加えると0.54から0.70に上昇(P<0.001)した。

発現アルゴリズムの閾値を閉塞性CADの可能性が20%(スコアは14.75)とすると、閉塞性CAD検出の感度と特異度はそれぞれ85%と43%(陰性予測値は83%、陽性予測値は46%)となった。スコアがこの閾値より低い患者は全体の33%だった。

狭窄が最も深刻な部位の内腔狭窄率とアルゴリズムのスコアの間には直線的な関係が見られた(R=0.34、P<0.001)。

予測能力の評価において臨床的な意義が高い、リスクグループ(低リスク、中リスク、高リスク)再分類の精度を調べた。Diamond-Forrester法による分類後に発現アルゴリズムを用いて再分類を行うと、分類精度は20%向上(P<0.001)した。
拡大臨床モデルによる分類後に発現アルゴリズムを用いて再分類した場合には16%向上(P<0.001)、心筋灌流イメージングによる分類後の再分類では21%向上した(P<0.001)。

得られた結果は、末梢血を標本として遺伝子発現を調べる非侵襲的で簡便な検査が、非糖尿病患者の閉塞性CADの診断に有用である可能性を示した。 (大西 淳子=医学ジャーナリスト)

原文
Multicenter Validation of the Diagnostic Accuracy of a Blood-Based Gene Expression Test for Assessing Obstructive Coronary Artery Disease in Nondiabetic Patients
http://www.annals.org/content/153/7/425.abstract
(Ann Intern Med 2010.10.5)
出典 NM online 2010.10.25
版権 日経BP社

<自遊時間>
日曜日は、マッタリした空気が流れます。
そういった空気の中でのんびりテレビを観ながら平日出来なかったやっつけ仕事をするのが好きです。
大袈裟にいえば至福のひとときです。
やっつけ仕事の多くは、新聞や雑誌の整理です。

さて、24日もそんなことをやりなげら何気にTVのチャンネルをひねって(今はリモコンですが)いました。

目にとまった放送が

デジタル教育3
楽しむ最先端科学「宇宙から超極微小ナノの世界へ~ナノカーボンの科学~」
名古屋大学大学院教授…篠原久典 ~東京大学 小柴ホールで録画~

でした。
午前10時から午後1時18分までの放送でした。

見られた方も多いかもしれません。


篠原久典 教授 プロフィール
http://nano.chem.nagoya-u.ac.jp/japanese/
[PDF] 篠原 久典 「新世代カーボンナノチューブの創製、評価と応用」
http://www.jst.go.jp/kisoken/crest/report/heisei16/pdf/pdf08/08_4/003.pdf
以下、一部を紹介。

■科学の大発見には
①「天才タイプ」
②「セレンディピティー・タイプ」
の二つがある。

①の例として、理論物理学
②の例として、実験系科学

■篠原久典教授は高校時代に湯川秀樹先生の書かれた「旅人」(角川文庫)に魅かれて科学者の道に入った。

■アーサー・C・クラークの紹介

アーサー・C・クラーク
http://ja.wikipedia.org/wiki/アーサー・C・クラーク

■静止衛星
http://ja.wikipedia.org/wiki/静止衛星

■軌道エレベータをカーボンナノチューブで作る話。
軌道エレベータ
http://ja.wikipedia.org/wiki/軌道エレベータ

初めての方へ──宇宙エレベーター早わかり
http://jsea.jp/How-to-know-SE

■オイラーの多面体定理
http://www.kumamotokokufu-h.ed.jp/kokufu/math/tamentai.html

■セレンディピティ
http://ja.wikipedia.org/wiki/セレンディピティ
(セレンディピティが見出せる代表例が紹介されています)

Serendipity: the natural ability to make interesting or valuable discoveries by accident
– Longman Dictionary of contemporary English

■ハロルド・クロトー
ハロルド・クロトー - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ハロルド・クロトー

■フラーレン・ナノチューブ
http://staff.aist.go.jp/k.harigaya/doc/nanotube/

■驚異の新素材カーボンナノチューブ(2)
http://www.org-chem.org/yuuki/nanotube/nanotube2.html

■ピーポッド
新規ナノ炭素ハイブリッドマテリアル:ピーポッド
http://www.nanonet.go.jp/japanese/event/ws/japannano2003/poster/D/D02okazaki.pdf

 

 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります。
    

 

 

 

固定リンク

兵庫県立尼崎病院循環器内科の佐藤幸人先生が書かれた心肺蘇生に関する記事で勉強しました。

 

バイスタンダーによる心肺蘇生は「胸骨圧迫のみ」の時代へ/日本の2研究を含むメタ解析から
研究の背景:「胸骨圧迫のみ」でも予後良好とする研究が国内外で発表
従来,心肺蘇生は「胸骨圧迫+人工呼吸」がよいとされてきたが,バイスタンダーにとっては煩雑であり,mouse to mouseの人工呼吸は一般には受け入れられがたい感があった。

<私的コメント>
mouth to mouthの間違い。

一方,数年前から「胸骨圧迫+人工呼吸」vs.「胸骨圧迫のみ」をテーマとする研究が国内外で相次いで行われ,「胸骨圧迫のみ」でも予後が良好であることが報告されてきた。
今回,オーストリアと米国の研究者がこれら前向きおよび後ろ向き試験計10報についてのメタ解析を行い,その結果がLancet 10月15日オンライン版に発表した。

Chest-compression-only versus standard cardiopulmonary resuscitation: a meta-analysis
(The Lancet, Early Online Publication, 15 October 2010doi:10.1016/S0140-6736(10)61454-7)
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2810%2961454-7/fulltext

研究のポイント:RCTの解析では「胸骨圧迫のみ」が良好,観察研究の解析でも差ない
院外心肺停止の成人例を対象に,バイスタンダーによる「胸骨圧迫+人工呼吸」と「胸骨圧迫のみ」の退院時における生存率を比較した。

3報のランダム化比較試験(RCT)のメタ解析では,「胸骨圧迫のみ」が「胸骨圧迫+人工呼吸」と比較して生存率が有意に良好だった(「胸骨圧迫のみ」14% vs. 「胸骨圧迫+人工呼吸」12%,P=0.040,図1


7報の観察研究(うち2報は日本の研究)では,「胸骨圧迫のみ」と「胸骨圧迫+人工呼吸」で生存率に差は認められなかった(「胸骨圧迫のみ」8% vs. 「胸骨圧迫+人工呼吸」8%,P=0.54,図2)。


佐藤先生の考察:既に世界は「胸骨圧迫のみ」で市民啓発の方向に
従来,心肺蘇生は「胸骨圧迫+人工呼吸」がよいとされてきた。しかし実臨床においては,「胸骨圧迫のみ」が数十分にわたり行われた症例でも完全に蘇生して社会復帰する例も経験し,常に疑問に思っていた。
また,一般市民を対象に蘇生の講習を行う場合,シンプルな方法が当然普及しやすいわけで,この点からも「胸骨圧迫+人工呼吸」では煩雑であった。
今回,メタ解析として「胸骨圧迫のみ」でも充分という結論が出たことは心強い。

現在既に世界的に蘇生は「胸骨圧迫のみ」でも可能という方向で市民への啓発が始まっている。
注意点として,小児領域で検討されたように,心臓由来の心肺停止では「胸骨圧迫のみ」でよいが,非心臓由来の心肺停止では「胸骨圧迫+人工呼吸」が優れるという点である。

わが国ではこの領域で,本論文中にも引用されているように,多くの先駆的研究がなされている。

私自身,今回のメタ解析で取り上げられた論文の一つ(Lancet 2007; 369: 920-926)をまとめた,SOS-KANTO研究グループの長尾建先生(駿河台日本大学病院循環器内科学教授)の兵庫医科大学でのご講演を半月前に聴講する機会があり,そのバイタリティに大変感銘を受けた。
具体的には
(1)試行錯誤,
(2)データ解析,
(3)解析結果により,システム改良という過程を常に継続されている点,市民を巻き込んで社会的啓発を行われた点
など,スケールの大きさに圧倒された。

また,同先生のご施設からは上記論文を含め海外の一流ジャーナルに数多くの報告を行っているが,海外から著名な医師の見学が多いこと,医学的研究に端を発しながら,社会的貢献度が高く行政からも感謝されていることなどが印象的であった。
現在も,ショックや,低体温療法などについて多施設研究を行われているとのことであった。

出典 MT pro 2010.10.19
版権 メディカルトリビューン社

 

<関連サイト>
心肺蘇生国際ガイドライン2010発表,改訂のキーワードは「ABCからCAB」
国際連絡蘇生協議会(ILCOR)は2010年10月18日,「心肺蘇生法と緊急心血管治療のための国際ガイドライン(CoSTR)2010」を公表した。
改訂は2005年以来。
新ガイドライン発表に合わせ,同協議会に加盟する米国,欧州でもそれぞれ自国の実態を反映したものを米国心臓協会(AHA),欧州蘇生協議会(ERC)が各ガイドラインとして同時発表している。
また,今回改訂においては日本もILCORに参加しており,日本の実情を反映した新しい日本語版ガイドラインが日本蘇生協議会(JRC)公式サイトなどで発表される予定だ。
国際的なエビデンスの共有と評価が結集された同ガイドライン,最も大きな改訂のキーワードは「ABC(airway, breathing, compressions)からCAB(compressions, airway, breathing)」だという。

「気道確保」,「最初の人工呼吸」が省略,まず「胸骨圧迫を」
新ガイドラインのexecutive summaryで示された「一般的な心停止アルゴリズム」では,新生児を除くすべての心停止患者で反応がない,呼吸がない,あるいは呼吸困難(occasional gasps)があれば救助を呼び,心肺蘇生(CPR)を開始することが勧告されている。
前回2005年のガイドラインでは救助要請後に「気道を確保し」,「規則正しい呼吸がなければ2~5回の最初の人工呼吸を行う」プロセスが含まれていた。
新ガイドラインではこの点が成人一次救命処置(BLS)における勧告で最も大きな変更と位置付けられており,「胸骨圧迫と蘇生の遅れを最小限にするためのABC(airway, breathing, compressions)からCAB(compressions, airway, breathing)」として,救助者が気道を開大させ人工呼吸を行うより,まず胸骨圧迫による蘇生を始めるべきとの見解が示されている。

出典 MT pro 2010.10.18
版権 メディカルトリビューン社

 

バイスタンダーCPRは胸骨圧迫のみでも有効
出典 MT pro 2008.2.28
版権 メディカルトリビューン社
■一般市民による成人院外心停止患者に対する心肺蘇生(バイスタンダーCPR)は,虚脱から15分以内の心停止の場合,胸骨圧迫のみのCPRでも従来法(胸骨圧迫に加えて口対口人工呼吸を施行)のCPRと同等の結果が得られることが,大阪府民を対象とした前向きコホート研究で確認され,Circulation(2007; 116: 2900-2907)に報告された。
■バイスタンダーCPRとは,救急システムの構成員以外の一般市民によって,心停止患者の救命手当が試みられることであり,今回の知見は,救急の専門的技能を有する救急隊員や医師などが行うCPRとは区別して考える必要がある。
今回の研究では,1998年から5年間に大阪府内で発生した心原性成人院外心停止患者を対象に,胸骨圧迫のみが施行された場合と従来法のCPRが施行された場合,それぞれの予後との関連が前向きに検討された。
多変量ロジスティック回帰分析の結果,15分超の心停止を除いて,神経学的後遺症のない1年生存は,CPRなし群に比べて,胸骨圧迫のみのCPR群は1.72倍に,従来のCPR群は1.57倍にそれぞれ上昇した。
バイスタンダーCPRは胸骨圧迫のみでも従来法と同等の効果があることが示された。
■米国および日本版救急蘇生ガイドラインでは従来法のCPRが行えない場合や人工呼吸の実施に抵抗がある場合,ちゅうちょせず胸骨圧迫のみのCPRを試みることを推奨しているが,このことは国内の講習会などではあまり伝えられていなかった。
調査を実施した京都大学保健管理センターの石見拓氏は「従来のCPRは手技が複雑なため訓練を受けても適切な処置ができる人はそう多くなかった。特に日本人は人工呼吸への抵抗感が強いとされる」と指摘している。
今回のコホート研究でもCPRを試みた一般市民のうち,胸骨圧迫のみを試みた人が40%を占めていた。
さらに,同氏は「胸骨圧迫のみのCPRは従来法より簡便で習得しやすいうえに,心理的負担も少ない。一般市民へ浸透すれば,救命処置への参加を促すとともに,胸骨圧迫の質が向上し,院外心停止患者の転帰改善につながるだろう」と述べ,胸骨圧迫のみのCPRの普及によるバイスタンダーCPR実施率の向上と心停止例の転帰改善に期待を示した。

 


胸骨圧迫のみのバイスタンダーCPRの有効性
出典 MT pro 2008.2.28
版権 メディカルトリビューン社
■京都大学保健管理センター(予防医療学)の石見拓氏らは,一般市民による成人院外心停止患者に対する心肺蘇生(バイスタンダーCPR)は,虚脱から心停止後15分までは胸骨圧迫のみで,従来法(胸骨圧迫に加えて口対口の人工呼吸を施行)のCPRと同等の効果が得られることを確認した。
■最近,関東地区で院外心停止患者の30日後の転帰を前向きに調査したSOS-KANTOで,VFや 4分以内にCPRが開始された心停止では,胸骨圧迫のみのバイスタンダーCPRが従来のCPRよりも効果的であることが示された(Lancet 2007; 369: 920-926)。
■救急隊員や病院の医療スタッフが行うCPRの質を評価した研究では,胸骨圧迫にかける時間が不足し,十分な深さまで胸を押していないケースが多いことが判明しており,救急の専門家にとっても胸骨圧迫の質の確保は重要な課題だという。
■バイスタンダーCPRは院外心停止患者の25%前後に提供されているにすぎない。

 

児玉幸雄 『パルテノン遠望』 水彩・パステル
http://www.seikougarou.co.jp/sell/kodamayukio/496.html

 

 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります。
    

 

 

固定リンク

わが国において高齢者高血圧に対する至適降圧目標値を確立すべくValsartan in Elderly Isolated Systolic Hypertension(VALISH)Studyが実施されました。
この試験の結果、日本人後期高齢者においてもAT1受容体拮抗薬(ARB)バルサルタンによって有害事象を増やすことなく厳格な降圧が達成されることが示されました。
(Ogihara T, et al. Hypertension 2010; 56: 196-202)

きょうは、この試験に関する座談会の記事で勉強しました。

 

司会
猿田 享男 氏 慶應義塾大学 名誉教授
出席(発言順)
荻原 俊男 氏 大阪大学 名誉教授/大阪府立急性期・総合医療センター 院長
今井 潤 氏 東北大学大学院薬学研究科医薬開発構想寄附講座 教授
楽木 宏実 氏 大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学 教授
島本 和明 氏 札幌医科大学 学長
木村 玄次郎 氏 名古屋市立大学大学院医学研究科心臓・腎高血圧内科学 教授


VALISHの結果と高齢者高血圧の治療方針
後期高齢者もARBで厳格な降圧が可能に
VALISH概要
目的
日本人高齢者収縮期高血圧患者における降圧目標値の検討
対象
70歳以上85歳未満の収縮期高血圧患者(SBP>160mmHgかつDBP<90mmHg)
試験デザイン
前向き・無作為化・オープンラベル・エンドポイント盲検試験(PROBE法)
・国内461施設から3,260例を登録
・同意撤回/未追跡例を除外した解析適格例は3,079例(平均年齢76.1歳)
 厳格降圧群1,545例(平均ベースライン血圧169.5/81.7mmHg)
 緩徐降圧群1,534例(平均ベースライン血圧169.6/81.2mmHg)
・追跡期間:平均2.85年,中央値3.07年
評価項目
一次エンドポイント(複合エンドポイント)
突然死,致死性・非致死性脳卒中,致死性・非致死性心筋梗塞,心不全および他の心疾患による死亡・入院,腎機能障害(Cr値倍化,Cr値>2.0mg/dLまたは透析導入のいずれか)
結果
バルサルタン単剤治療率:厳格降圧群56.1%,緩徐降圧群57.6%
3年後の血圧:
厳格降圧群136.6/74.8mmHg,緩徐降圧群142.0/76.5mmHg(両群の血圧差:5.4/1.7mmHg,P<0.001)
一次エンドポイント:
1,000患者・年当たり厳格降圧群10.6件,緩徐降圧群12.0件(ハザード比0.89,95%信頼区間0.60〜1.31,P=0.383)
重篤な有害事象:
厳格降圧群5.6%,緩徐降圧群5.2%(P=0.61)
治療スケジュール


 

ガイドラインに沿い,まず収縮期血圧(SBP)<150mmHgを目指すべき
猿田
 
日本高血圧学会による高血圧治療ガイドライン(JSH)2009では, 75歳以上の後期高齢者であっても,SBP 160mmHg以上の場合,中間目標150/90mmHgとしながら最終的には140/90mmHg未満を目指すことが推奨されています。
果たして,後期高齢者におけるSBPの降圧目標値は,140mmHg未満とすべきか,150mmHg未満であるべきなのか—。
高齢者高血圧に対する至適目標値を明らかにすることを主目的に行われたVALISHでしたが,ふたを開けてみると厳格降圧群と緩徐降圧群で心血管イベントのリスクに有意差は認められませんでした図1)。
先生方はこの点をどう解釈されますでしょうか。

 


荻原 
一次エンドポイントのリスクは,intention-to-treat(ITT)解析で有意差がつかなかっただけでなく,per protocol解析でも有意差は出ませんでした。
つまり,実際に厳格降圧群でSBP<140mmHgを達成した患者と,緩徐降圧群でSBPが140~149mmHgにコントロールされた患者を比較しても,イベントリスクに有意差はありませんでした。
しかし,到達血圧がSBP<150mmHgに比べSBP≧150mmHgの場合,いずれの群においても明らかにイベントリスクの上昇が認められました。
ですから,後期高齢者でも,まず中間目標としてSBP<150mmHgを目指すというJSH2009の方針は妥当なのではないかと思います。

今井 
到達血圧がSBP≧150mmHgだった群には,降圧療法が不十分だった症例のほかに,治療抵抗性のハイリスク例が残った可能性もあります。
そもそも本試験ではSBP≧150 mmHgという降圧目標の設定があったわけではないので,今回の成績はあくまで降圧目標SBP<140mmHgの群と140≦SBP<150mmHgの群でイベントリスクに差がなかったことが最も大切と思います。

荻原 
降圧「しない」・「できない」にかかわらず,結果としてSBP≧150mmHgがハイリスクであることは間違いないでしょう。
今回の結果から,まずSBP<150mmHgを目指すべきということが直接言えるわけではありませんが,少なくともJSH2009の方針に合致する結果だったということは言えると思います。


厳格降圧群も緩徐降圧群もイベント発症数が少ない
猿田
 
問題はSBP<150mmHgに到達した後,どこまでSBPを低下させるべきかということになりますね。

楽木 
残念ながらCa拮抗薬を基礎薬として高齢者高血圧の至適目標値を検討したJATOS※に続き,今回のVALISHでもその点については明確な答は得られませんでした。
厳格降圧群と緩徐降圧群でイベントリスクに有意差が認められなかった背景には,予想よりもはるかにイベント発症数が少なかった事実があります。
本試験では当初予定されていた追跡期間を延長し,平均3.07年追跡して統計学的有意差の検出を期待しました。
しかし,それでもイベント発症数が少なかったために,有意差を検出する統計学的パワーそのものが足りないという結果に終わりました。

猿田 
イベントリスクに差がなかったのでSBPの降圧目標は140~150mmHgで良いかというと,そうとも言えないということですね。

島本 
サブグループ解析の結果を見ると,BMI高値(≧25kg/m2)例や脂質異常症例でのイベントリスクは,厳格降圧群のほうが低い傾向がうかがえます。
しかしその一方で,糖尿病例や慢性腎臓病例では特にこうした傾向は認められませんでした。
ハイリスク例は厳格に降圧したほうが良いというのが一般論ですが,今回はそれ以前にイベント数が少なかったということですね。

楽木 
全体でのイベント数が少なかったわけですから,サブグループ解析の結果に有意差が見られないのも当然と言えるでしょう。


緩徐降圧群でも140mmHg近くまでSBPが低下
猿田
 
では,なぜ両群ともに心血管イベントの発症が少なかったのでしょうか。
血圧の推移を見ると,両群とも投与開始から3カ月でSBPはよく低下しており,その後も良好な血圧コントロールを維持しました(図2)。
このことが大きく貢献したのではないかと思いますが,いかがでしょうか。

 


楽木 
厳格降圧群の3年後のSBPは136.6±13.3mmHgであり,ベースラインの値から33mmHgも低下しています。
一方,緩徐降圧群の3年後のSBPは142.0±12.5mmHgでした。厳格降圧群との5.4mmHgの差は有意とはいえ,140mmHg近くまで低下していることに注目すべきだと思います。

猿田 
つまり,緩徐降圧群の降圧目標は140~150mmHgといっても,実態は140mmHgに近かったということですね。

荻原 
結局,今回の試験結果からは,後期高齢者の降圧目標としてSBP<140mmHgが良いと直接的には言えないとしても,SBP<150mmHgを中間目標として,さらに140mmHgを目指すべきであることは示唆されるのではないかと解釈しています。

楽木 
また,SBP<150mmHgで良いという考え方で降圧すると,結果として150mmHg前後にとどまってしまう可能性があります。
従って,あくまでも降圧目標はSBP<140mmHgとし,今回,ハイリスクであると示されたSBP≧150mmHgに到達させない治療が重要であると考えます。


ARBを第一次薬とする意義
木村
 (回の試験で心血管イベントが少なかった理由)
第一次薬が降圧を超えた臓器保護作用を有するARBであったことも影響している可能性はないでしょうか。
ほかの降圧薬であったなら,もしかしたら降圧レベルによって心血管イベントリスクが異なった可能性があります。

荻原 
バルサルタンの最終的な投与量の平均値は,厳格降圧群が91.2mg/日,緩徐降圧群が88.1mg/日でした。
その差は有意(P<0.001)ではありましたが,現実的に見ればわずかな用量差にすぎません。
バルサルタンの臓器保護作用という点からとらえれば,確かに両群に大きな差はなかったのかもしれません。

今井 
最近の試験の特徴とも言えますが,高血圧以外のリスク因子も含めて,いわゆるグローバルリスクが適切に管理されているということもあると思います。

荻原 
対象には心血管疾患既往例や心血管イベントリスク保有例が含まれますが,おっしゃる通り,脂質異常症治療薬,糖尿病治療薬,抗血小板薬,抗不整脈薬などは適宜処方されており,その点でも両群間に有意差はありませんでした。


SBP<140mmHg降圧の安全性について
猿田
 
今回の試験では,両群とも半数以上の症例がバルサルタン単剤で血圧をコントロールできている点も注目されます(図3)。
バルサルタンが高齢者高血圧にも高い降圧効果を有することが確認されました。

 


島本 
高齢者高血圧というと,実臨床ではCa拮抗薬や利尿薬を優先されている先生もまだ多いと思います。
しかし,JSH2009にある通り,ARBも高齢者高血圧に対する第一次薬としてふさわしいことが実証されたと思います。

猿田 
しかも,バルサルタンを第一次薬として厳格にSBP<140mmHgまで降圧しても安全性に問題はありませんでした(図4)。

 


木村 
高齢者にARBを投与するとき,最も気を付けたいのは高カリウム血症ですが,その点もクリアされたということであれば,非常に使いやすいと思います。

荻原 
副作用報告を見る限りでは,特に問題とはなっていません。

猿田 
今までのお話をまとめますと,VALISHの結果として言えることは,高齢者高血圧に対しても,ARBのバルサルタンを用いて有害事象を増やすことなく十分に降圧が可能だということです。
一方,降圧目標については結論が出ませんでした。
しかし,少なくともバルサルタンを第一次薬とした高齢者高血圧の治療においては,SBPは150mmHg未満を中間目標とし,さらに140mmHgを目指す中で,たとえ140mmHg未満となっても,特に安全上問題はないことが確認されたと思います。

※JATOS Study Group. Hypertens Res 2008; 31(12): 2115-2127.

出典 Medical Tribune 2010.10.14
版権 メディカルトリビューン社

 

 

 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
ふくろう医者の診察室 
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  

があります。      

 

 

 

 

固定リンク

兵庫県立尼崎病院循環器内科の佐藤幸人先生の書かれた経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)に関する記事で勉強しました。
このPTSMAは2004年の保険適応となっています。
この手技は、外科手術に比較して低侵襲性であるものの、人為的に心筋壊死を作成する手技のために合併症として完全房室ブロック(CAVB),心室中隔穿孔、左前下行枝へのエタノール注入による広範囲心筋梗塞、死亡例も報告されています。
このPTSMAは「心筋焼灼」という言葉から「電気的」焼灼がイメージされますが中隔心筋へ高濃度エタノールを注入するalcohl ablationです。

 

経皮的中隔心筋焼灼術は遠隔期に突然死の危険性高い
オランダからの注意喚起報告
研究の背景:症状の改善は得られるが長期成績は不明
閉塞性肥大型心筋症(HOCM)は労作時の胸痛や呼吸困難,時として失神を生じる。
薬物治療としてはβ遮断薬やCa拮抗薬が用いられる。薬剤抵抗性のHOCMでは,心筋中隔切除術やDDDペーシングとともに,冠動脈に高濃度エタノールを注入して左室流出路狭窄の原因となる肥厚した中隔心筋を壊死させる経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)がある。

わが国の「肥大型心筋症の診療に関するガイドライン2007年改訂版」では,PTSMAは症状の改善は得られるが長期成績は不明とのことで,
(1)ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類Ⅲ度以上の症状を有し,薬剤抵抗性で,安静時ないし薬剤負荷時に30mmHg以上の左室内圧較差を認めるHOCM,
(2)左室内圧較差を原因とする意識消失発作を有し,安静時ないし薬物負荷時に30mmHg以上の圧較差を認めるHOCM,
(3)左室内圧較差(30mmHg以上)が関与する薬物治療抵抗性の発作性心房細動
―について,ClassⅡ※1またはClassⅡa※2の適応があると記載されている。

今回オランダから,薬剤抵抗性のHOCMに対するPTSMD※3には,長期間観察を行うと突然死の危険性があるというショッキングな内容の注意勧告が発表された(Circ Heart Fail 2010; 3: 362-369)。


Long-term outcome of alcohol septal ablation in patients with obstructive hypertrophic cardiomyopathy: a word of caution.
(Circ Heart Fail 2010; 3: 362-369)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20332420

 

研究のポイント:3人に1人に有害事象,心筋中隔切除術の5倍の発生頻度
91例のHOCM(平均年齢54歳)に経カテーテル的に冠動脈中隔枝へPTSMAを行った。
ランダム化比較試験(RCT)は行いにくいので,その結果をpropensity scoreを用いて,心筋中隔切除術を行った40例と対比した。
一次エンドポイントは心臓死+致死性不整脈を含む突然死からの生還,二次エンドポイントは非心臓死+他の非致死性合併症である。

平均5.4年の経過後,PTSMA群では38%が一次または二次エンドポイントに到達し,21%が一次エンドポイントに到達した。
平均6.6年後における一次エンドポイント回避率はPTSMA群で有意に低く(P=0.01),1,5,8年後ではPTSMA群96%,86%,67%,心筋中隔切除術群100%,96%,96%であった()。

 


一次エンドポイントの年発生率はPTSMA群4.4%に対し,心筋中隔切除術群0.9%であった。propensity scoreを用いた解析では,PTSMAが一次エンドポイントの有意な予測因子となった。

佐藤先生の考察:ICDの植え込みも同時に検討する必要がある
PTSMAを受けた患者では,長期観察を続けると3人に1人に有害事象が生じ,その発生頻度は心筋中隔切除術の5倍であるという大変ショッキングな内容である。
この論文の著者らは,有害事象は術直後ではなく,遠隔期に認められたことを強調している。
術直後は合併症がないように見えても,5~10年経過してみないとわからないということである。

さらに,突然死した症例ではほとんどの症例が突然死の危険因子(失神の既往,突然死の家族歴など)がない症例であり,全例植え込み型除細動器(ICD)が植え込まれておらず,ICDが植え込まれた患者では突然死が見られなかった。
心筋焼灼後の心筋梗塞による瘢痕形成が致死性不整脈の原因と考えられている。
心筋焼灼という手技自体が一次エンドポイントの危険因子であり,注入エタノールの量は危険因子ではなかった。
結論として論文著者らは,薬剤抵抗性HOCM患者の第一選択治療は心筋中隔切除術であると述べている。

わが国では冠動脈疾患同様,HOCMでも外科手術よりもカテーテル治療のほうが選択される傾向にあるかもしれない。
その場合,今後はICDの植え込みも同時に検討する必要があると思われる。
突然死の危険因子がない患者でも,PTSMA後に突然死が生じているからである。


※1 手技,治療が有効,有用であるというエビデンスがあるか,あるいは見解が広く一致していない
※2 エビデンス,見解から有用,有効である可能性が高い
※3 原著論文ではalcohol septal ablation(ASA)としているが,日本のガイドラインの表記に従い,経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)とした

出典 MT pro 2010.6.28
版権 メディカルトリビューン社


<経皮的中隔心筋焼灼術 関連サイト>
経皮的中隔心筋焼灼術:PTSMA
http://www.nms.ac.jp/nms/naika1/shinryo/PTSMA/index.html

経皮的中隔心筋焼灼術
http://www.mimuro-hp.sango.nara.jp/sinryo_jyunkan06.htm
■PTSMA : Percutaneous transluminal septal myocardial ablation
■ 1995年英国のSigwart博士らが始めた経皮的中隔心筋焼灼術は,左室内で流出路を圧排する異常な肥大心筋に灌流する冠動脈左前下行枝の側枝である中隔枝にエタノールを極少量注入して,異常肥大心筋をピンポイントに焼灼し,肥大心筋を痩せさせる(薄くする)ことによって左室内圧較差を消滅させる治療法です。
(私的コメント;左室内圧と大動脈圧の術後の改善を示した図は説得力があります)

経皮的中隔心筋焼灼術の適応について
http://www.jhf.or.jp/q&adb/6/5403.html
■この治療のためには、
第一に、治療が必要かつ奏効するような心筋肥大であることが前提になります。
第二に、症状があり、薬剤抵抗性であること。
第三に、圧較差が50ミリ以上あることが必要です。
しかも、そうした条件を満たしていたとしても、心筋壊死治療後の瘢痕による不整脈や突然死の危険があり得るとする考えもあります。
実施にはかなりの慎重さを要すします。
(私的コメント;左室流出路圧較差30mmHg以上を有する症例の予後は不良という報告があります。Maronら)

[PDF] 経皮的中隔心筋焼灼術とペース メーカー療法の併用により左室内 圧較差の消失に成功した閉塞性肥大型心筋症の1例
http://www.jcc.gr.jp/blue/jc-pdf/365-6(L).pdf

 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
ふくろう医者の診察室 
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  

があります。    

 

 

 

 

 

 

 

固定リンク

Alpha Omega試験

戯れ言たれる侏儒 / 2010.10.23 00:27 / 推薦数 : 0

兵庫県立尼崎病院循環器内科の佐藤幸人先生がAlpha Omega試験について解説した記事で勉強しました。
Alpha Omega試験は、心筋梗塞後の患者を対象に,低用量EPA+DHAとALAの心血管イベントへの抑制効果を検討した試験です。

##低用量EPA,DHA,ALAでは心筋梗塞後の心血管イベント抑制効果示せず
##Alpha Omega試験から
#研究の背景:JELIS試験などでn-3系不飽和脂肪酸には心血管イベント予防効果
欧米では,食生活と心血管病の関連についての研究は古くから行われており,地中海式ダイエットが心血管イベントを予防するとされている。
しかし,どの成分がイベント抑制に貢献しているのかは不明であり,全粒穀物,魚,オリーブ油,野菜,果物などの食事バランス全体で抗炎症作用,抗酸化ストレス作用などを介してその効果を発揮していると考えられている。

n-3系不飽和脂肪酸である魚油にその作用を求めた試験として,日本では精製エイコサペンタエン酸(EPA)製剤を用いて心血管イベント予防効果を確認したJELIS試験がある(Lancet 2007; 369: 1090-1098)。
その効果は,心血管イベント抑制効果のあるスタチンにさらに上乗せして認められ,また本来魚をよく食べている日本人において効果が見られたことにより,高く評価されている。

Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis.
(Lancet. 2007 Mar 31;369(9567):1090-8.) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/17398308
一方で,n-6系不飽和脂肪酸である,ひまわり油,コーン油などのリノール酸には心血管イベント抑制効果を明らかに示した報告はなく,消費者がこれらの油を体によいとコマーシャルにより刷り込まれている状況は,医学的には奇異である(オリーブ油は成分としてリノール酸はほとんどなく,オレイン酸が中心)。

さて,植物性プランクトンは,リノール酸やαリノレン酸〔Alpha-linolenic acid(ALA)〕を合成し,ALAは動物性プランクトンまたは小魚の体内でEPA,またはドコサヘキサエン酸(DHA)などの魚油になる。

一方,植物油中にALAを多く含むものに,紫蘇油(えごま油)(注:紫蘇科でゴマ科,ゴマ油ではない)があるが,量産されない。
大豆油,菜種油は少量含んでいるが,量産できるのでリノレン酸の供給源となっている。 ALAもEPA,DHAのように心血管イベント抑制効果が期待されているが,大規模な検討は行われていない。

今回結果が発表されたAlpha Omega試験では,心筋梗塞後の患者を対象に,低用量EPA+DHAとALAの心血管イベントへの抑制効果が検討された(N Eng J Med 8月29日オンライン版)。

n–3 Fatty Acids and Cardiovascular Events after Myocardial Infarction http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1003603#t=articleBackground


#研究のポイント:EPA+DHAを追加しても,ALAを追加しても1次評価項目は抑制されず
ガイドライン推奨の降圧,抗血小板,抗脂質治療を既に受けている心筋梗塞後の4,837例を,
(1)EPA・DHA入りマーガリン(EPA+DHA群;1日摂取目標400mg),
(2)ALA入りマーガリン(ALA群;同2g),
(3)ALA入りマーガリン+EPA・DHA入りマーガリン〔ALA+(EPA+DHA)群〕,
(4)プラセボマーガリン(プラセボ群)
―の4群に割り付け,それぞれのマーガリンを40か月摂取させた。

1日マーガリン平均摂取量は18.8gで,介入群においては1日当たりEPA 226mg,DHA 150mg,ALA 1.9gが摂取できた。

1次評価項目は致死性,非致死性心血管イベント+心血管インターベンションで,671例(13.9%)に発生したが,「プラセボ群およびALA群」と「EPA+DHA群およびALA+(EPA+DHA)群」群の間に有意差は認めなかった(図1)。


また,「プラセボ群およびEPA+DHA群」と「ALA群およびALA+(EPA+DHA)群」で比較しても有意差は認められなかった(図2)。


サブグループ解析では,女性において「ALA群およびALA+(EPA+DHA)群」が「プラセボ群およびEPA+DHA群」と比較して心血管イベントを抑制していた。
また,糖尿病患者において「EPA+DHA群およびALA+(EPA+DHA)群」は「プラセボ群およびALA群」と比較して,冠動脈病変による死亡,心室性不整脈によるイベントの抑制が認められた。
副作用の頻度は群間に差が認められなかった。


#佐藤先生の考察:結果が有意にならなかった第一の理由は低用量すぎたためか 2つの図に示されるように,EPA+DHAを追加しても,ALAを追加しても1次評価項目は有意に抑制されないという結果になってしまった。
サブグループ解析も,女性ではALA追加により27%の1次評価項目抑制傾向があり(P=0.07),糖尿病患者ではEPA+DHA追加により冠動脈病変による死亡が抑制される(P=0.04)という程度にとどまり,釈然としない結果である。
論文の著者らは,患者背景についてコメントしているが,私としては結果が有意にならなかった第一の理由としてEPA,DHA,ALAが低用量すぎたのではないかと思うのであるが,どうだろうか。
例えば,前述のJELIS試験ではEPAは1.8g/日であるし,心不全患者においてn-3系不飽和脂肪酸の心血管イベントが抑制効果を検討したGISSI-HF試験でも投与量は1g/日であった(Lancet 2008; 372: 1223-1230)。
また,症例数もJELIS試験では約1万8,000例,1群約9,300例,GISSI-HF試験では約7,000例,一群3,500例であったが,今回のAlpha Omega試験は1群約1,200例であった。

Effect of n-3 polyunsaturated fatty acids in patients with chronic heart failure (the GISSI-HF trial): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial.
(Lancet 2008; 372: 1223-1230) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18757090


なお,マーガリン中にはトランス脂肪酸という血管病変を悪化させる可能性のある人工の脂肪酸が含まれているが,Alpha Omega試験のマーガリンにおけるトランス脂肪酸含有量は0.5~1%程度とかなり低く問題にはならないかもしれない。
しかし,マーガリン中の他の成分などがEPA,DHA,ALAの効果を相殺してしまい,結果に影響した可能性も考えられる。
従来の魚油の投与法はカプセルである。 従って,本試験結果から,EPA,DHA,ALAは心筋梗塞後患者に有用でないという結論にはならず,試験デザインを変えた再検討が望まれる。

出典 MT pro 2010.9.3
版権 メディカルトリビューン社  


その他 「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/ ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き)  井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~ http://wellfrog4.exblog.jp/  井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15 http://wellfrog3.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~ http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/  (内科医向き) 「井蛙」内科メモ帖  http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/   があります。     があります。   


固定リンク

兵庫県立尼崎病院循環器内科の佐藤 幸人先生が書かれたECLIPSE試験に関する記事で勉強しました。
ECLIPSE試験は、バゾプレッシンV2受容体拮抗薬tolvaptanの血行動態への影響を見たものです。

バゾプレッシンV2受容体拮抗薬tolvaptanの血行動態への効果
悪影響を与えることなく低ナトリウム状態などを改善
背景:低ナトリウム血症などに有効とされるtolvaptan
バゾプレッシンV2受容体拮抗薬tolvaptanは尿量を増加し,心不全や肝不全の浮腫,また両疾患に合併するような循環血液量増加に伴う低ナトリウム血症,抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)に伴う低ナトリウム血症などに有効と考えられている。
TolvaptanはSALT試験※1では低ナトリウム血症患者において,低ナトリウム状態を改善し,EVEREST試験※2では長期予後改善までは認められなかったものの,重症心不全患者において投与1日目から有意な体重減少と呼吸困難の改善が認められた。

ECLIPSE(EffeCt of toLvaptan on hemodynamIc Parameters in Subjects with hEart failure)試験では,tolvaptanの血行動態への影響が検討された(J Am Coll Cardiol 2008;52:1540-1545)。
Acute hemodynamic effects of tolvaptan, a vasopressin V2 receptor blocker, in patients with symptomatic heart failure and systolic dysfunction: an international, multicenter, randomized, placebo-controlled trial.
(J Am Coll Cardiol 2008;52:1540-1545)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19007589

方法:収縮期機能不全の心不全患者にtolvaptanを投与して8時間観察
ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類III,IV度の駆出率(EF)40%未満の心不全患者にSwan-Ganzカテーテルを留置し,肺動脈楔入圧(PCWP)が18mmHgを超える患者を対象とした。薬剤投与はプラセボ,tolvaptan15mg,30mg,60mg経口単回投与のいずれかに割り付けた。
観察は8時間行い,その間,他の薬剤は変動させなかった。
#結果:尿量は増加し,尿浸透圧,血漿浸透圧が改善するも,降圧効果は限定的
Tolvaptan投与の結果,尿量は増加,PCWP,右房圧(RAP)は減少し,尿浸透圧は低下,血漿浸透圧は増加した(図1,2,3)。


その他,心拍出量,血中カリウム,クレアチニン,尿素窒素(BUN)に変化は認めず,血中ナトリウムはわずかに増加した。ただし,尿量はtolvaptanの投与量に相関して増加したが,PCWP,RAPの低下は必ずしも投与量に比例しなかった。


考察:使用法については進行中の臨床試験の結果に注目
現在わが国においてtolvaptanは第III相の治験中であり,近い将来に臨床現場で使用可能と思われる。
実際には,フロセミドなどで治療抵抗性の浮腫や,循環血液量増加に伴う低ナトリウム血症に対して使用されるものと思われる。

本試験でtolvaptan単回投与の血行動態への影響が明らかとなったが,尿量の増加の割にはPCWP,RAPの低下作用は顕著でなく,せいぜい数mmHgの低下であった。
この現象がEVEREST試験の時にも観察されたように,tolvaptanが強い利尿作用を持つ割には過度の降圧を生じにくい原因と思われる。

EVEREST試験ではtolvaptanの心不全入院患者における総死亡,心不全による入院などの改善を示すことはできなかった。
しかし急性期治療薬として腎機能の悪化や血行動態への悪影響を生じることなく,体重減少,呼吸困難などの改善を得ることが可能であった。

また,SALT試験同様,低ナトリウム血症患者には低ナトリウム血症改善効果が示された。
今後,現在進行中の他の臨床試験によってtolvaptanの最良の投与対象とともに,投与法が明らかになるものと期待される。

※1
SALT(Study of Ascending Levels of Tolvaptan in Hyponatremia)試験
(N Engl J Med 2006;355:2099-2112)
方法:
心不全,肝不全,SIADHが原因であり,循環血液量が正常あるいは増加した低ナトリウム血症患者において,tolvaptanの外来投与の有効性を検討した。
患者数はSALT-1(tolvaptan102例,プラセボ103例),SALT-2(tolvaptan123例,プラセボ120例)。
結果:
tolvaptanはプラセボに比べて4日後および30日後の血清ナトリウム濃度を上昇させるのに有効であったが,投与を中止すると約1週間で再び低ナトリウム血症が生じた。
ポイント:
低ナトリウム血症は心不全,肝不全患者において独立した予後規定因子であり,tolvaptanで補正することにより長期予後改善が期待できる可能性があるが,この点は今後の検討課題である。

※2
EVEREST(Efficacy of Vasopressin Antagonism in Heart Failure Outcome Study with Tolvaptan)試験
(JAMA 2007;297:1319-1331, 1332-1343)
方法:
心不全悪化によって入院した患者において,標準治療にtolvaptanを追加した場合の有効性および安全性を検討した。
(1)短期有効性試験では7日後(早期退院の場合は退院時)の臨床症状の変化を,
(2)長期予後試験では全死亡,心血管死+心不全による入院を検討した。
患者数はtrial A(tolvaptan1018例,プラセボ1030例),trial B(tolvaptan1054例,プラセボ1031例)。
結果:
短期有効性試験では,tolvaptan群では1日目から有意な体重減少を認め,1日目の呼吸困難も有意に改善した。
また,腎機能,心拍数,血圧に有意な影響は認めず,低ナトリウム血症の患者ではナトリウムの改善が見られた。
しかし,長期予後ではtolvaptanとプラセボの間に有意差を認めなかった。
ポイント:
EVEREST試験の対象患者は慢性心不全が急性増悪した患者であり,どちらかというと慢性心不全というよりは急性心不全に近い母集団であった。
急性心不全患者においては,点滴強心薬はもちろんのこと,点滴血管拡張薬であるB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)製剤nesiritideでも長期予後改善効果は認められていない。
また,重症患者が対象の場合,予後改善効果は認められにくい。実際,EVEREST試験では平均9.9か月のフォロー期間で,約40%の患者が入院し,約25%の患者が死亡しているといった超重症患者群であった。
 
EVEREST試験では,重症心不全患者に対してtolvaptanは重篤な低血圧,腎機能悪化を生じることなく,体重減少,呼吸困難改善を目的として追加使用可能であるということが確認された。
長期予後改善効果については有効な患者群の抽出が望まれる。

出典 MT pro 2008.12.5
版権 メディカルトリビューン社

 

<トルバプタン 関連サイト>
新規心不全治療薬トルバプタン
http://blog.m3.com/reed/20101021

ESCAPE試験サブ解析
http://blog.m3.com/reed/20081126/ESCAPE_

心不全(世界の権威に聞く)
http://blog.m3.com/reed/20080410

 

<番外編>
ムコ多糖症とともに〜早期発見で救える命がある(循環器科編)〜
http://mt.m3.com/genzyme/muco2010_10/movie/muko_03/index.html


清水 規 『金剛輪寺盛秋』 日本画
http://www.seikougarou.co.jp/sell/shimizunori/1855.html

 

 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります。    
があります。 

 

 

 

 

 

 

 

 

固定リンク