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経カテーテル的大動脈弁留置術が大動脈弁狭窄症の生命予後を改善
PARTNER試験から
研究の背景:根本的治療は外科手術だが,高齢者では適応に困ることも
大動脈弁狭窄症は軽症の場合は経過観察可能な疾患である。
しかし加齢とともに進行し,労作時の胸痛や心不全などの症状が発症し始めると急激に病状が悪化してゆき,放置すれば致命的経過をたどる。
現在まで根本的治療は外科手術しかなく,合併症の多い高齢者では手術適応に困ることもしばしばある。
カテーテルを用いて生体弁を大動脈弁の病変部に留置する経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)は2002年に初めて報告されたが,著しい速さで手技の改良が行われ,良好な長期予後も見込めるようになってきた。
N Engl J Med9月22日オンライン版に掲載されたPARTNER試験は,欧米の21施設で外科手術の適応でないと判断された重症の大動脈弁狭窄症患者を対象に,TAVI群と経皮的大動脈弁バルーン形成術を含む従来治療群(非TAVI群)を比較した最初の多施設試験である。
研究のポイント:総死亡率,心血管死亡率が著明に減少
外科手術が適応でないと判断された大動脈弁狭窄症患者358例を対象として,TAVI群179例と非TAVI群179例に割り付けられた。
デバイスはウシ生体弁を使用したEdwards SAPIEN heart valve systemを用いた。
手技は全身麻酔下に経食道エコーガイド下で行われ,大動脈弁バルーン形成術によって大動脈弁を拡大した直後に続いて行われた。
大動脈弁輪が著明に拡大しているためにTAVIを断念した症例は2例であった。
TAVIの手技に直接起因する24時間以内の死亡は1.1%,脳卒中は1.7%であったが,緊急手術は認められなかった。
1次評価項目の1年後の総死亡率はTAVI群で有意な改善が認められた(TAVI群30.7% vs. 非TAVI群50.7%,ハザード比0.55,95%CI 0.40~0.74,P<0.001;図1)。
心血管死亡率もTAVI群で有意に改善した(TAVI群20.5% vs. 非TAVI群44.6%,ハザード比0.39,95%CI 0.27~0.56,P<0.001;図2)。


1年後生存した患者において,TAVI群ではニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類III+IV度の患者の割合が非TAVI群よりも有意に低率であった(TAVI群25.2% vs.非TAVI群58.0%, P
一方,30日後の脳卒中(TAVI群 5.0% vs.非TAVI群1.1%, P=0.06),血管合併症(TAVI群16.2% vs.非TAVI群1.1%, P<0.001)については,TAVI群で多く認められた。TAVI群の生体弁としての機能(大動脈弁弁口面積,大動脈弁圧較差)は1年後も保たれた。1年後,中等度以上の大動脈弁閉鎖不全はTAVI群で4.2%,非TAVI群で15.2%であった。
佐藤先生の考察:重症合併症の多い患者で非常に良好な成績だが,脳卒中の増加が問題
TAVIによる大動脈弁狭窄症治療が,従来治療と比較して,生存率を著明に改善させることを報告した最初の試験である。
従来,合併症のために手術適応がないと判断された高齢者では内科治療を行うのみであったが,当然予後は悪い。本治療は,そのような合併症のある患者において,有効な治療手段の1つであることが判明した。
なお,従来治療群には経皮的大動脈弁バルーン形成術も含まれたが(過去の既往も含めると83.8%),従来治療群の1年後死亡率は50%であるので,TAVIを続いて行わない限り,バルーン形成術単独治療に予後改善効果は期待できないと思われる。
今回の試験で驚嘆すべきは,患者群は平均年齢83歳であり,背景因子として冠動脈疾患合併(70%)や冠動脈バイパス術(CABG)などの冠動脈治療後(40%),脳血管疾患合併(27%),末梢血管合併(30%),慢性閉塞性肺疾患(COPD;50%),腎不全合併(5~9%)の割合が著明に高い,非常に重症の合併症の多い患者群が対象であったことである。
しかも,術前のNYHA心機能分類は90%以上の患者がNYHA ⅢまたはⅣ度であり,患者の20%は過去にバルーンによる大動脈弁形成術を受けていた。
さらに,術前の大動脈弁弁口面積は0.6cm2と,デバイスを通過させるのにも困難が予想されるほど小さかった。
また,非TAVI群では1年後,結果として大動脈弁置換術を行った患者が9.5%,バルーン形成術を行った患者が37%であったが,TAVI群ではそれぞれ1.1%,0.6%であった。
感染性心内膜炎の合併もTAVI群と非TAVI群で差が認められていない。
では,この治療法は外科手術全般に置き換わるのだろうか。
今回,問題となった点は脳卒中がTAVI群で多く認められた点である。
デバイスが小型になり,脳血管の保護デバイスが改良されるなどによって,この点がクリアできれば第一選択としての治療法になる可能性もある。
しかし,当面はこの合併症が見られるために,「合併症のために外科手術の適応がなく,従来の内科治療では予後改善の期待できない患者」が対象になると思われる。
出典 MT pro 2010.9.28
版権 メディカルトリビューン社
<関連サイト>
経カテーテルでの弁置換術
http://blog.m3.com/reed/20100726/1
<きょうの一曲>
モーツァルト/ピアノ・ソナタ第9番 全楽章/演奏:仲田 みずほ
http://www.youtube.com/watch?v=VLBWndHMdpw
モーツァルト : ピアノ・ソナタ 第8(9)番 ニ長調 / Sonate für Klavier Nr.8 D-Dur K.311
http://www.piano.or.jp/enc/dictionary/composer/mozart_a/001282.html
モーツァルト:ピアノソナタ第9番 ニ長調 K 311
http://www.yung.jp/yungdb/op.php?id=911
モーツァルト ピアノ・ソナタ第9番ニ長調K.311
http://www7a.biglobe.ne.jp/~hainn-hitorigoto/m-090mozart.html

楢原健三 『富士山景』 リトグラフ
http://www.komorebi.co.jp/item_photo/h0317_02.jpg
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
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(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
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