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##CABG全国調査において死亡率がわずかながら上昇
##Off-pumpからOn-pumpへの移行例での問題点が浮き彫りに
わが国の冠動脈バイパス術(CABG)では,人工心肺を使用しない低侵襲の心拍動下バイパス手術(Off-pump CABG)が普及しており,日本冠動脈外科学会の全国調査の結果でも2004年以降はCABG全体の60%超を占めてきた。
より難易度の高い手術においてその威力を発揮すると言われるOff-pump CABGであるが,欧米で行われたOn-pump CABGとのランダム化比較試験(ROOBY試験;N Engl J Med2009; 361: 1827-1837)では,その有用性が認められず論議を呼んでいた。
On-pump versus off-pump coronary-artery bypass surgery.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19890125
低リスク例が対象の同試験で結論を導くには問題があると日本の専門家も指摘しているが,今回発表されたCABGの全国調査では,Off-pumpからOn-pumpへ移行した症例における死亡率が高くなっており,これが単独CABGおよびCABG単独初回待機手術の死亡率にわずかながら上昇をもたらす結果となっていた。
わが国の高水準のCABG成績を維持するためにも,より適切な手術法の選択が必要であることが示された。
調査結果は同学会理事長の瀬在幸安氏(前日本大学総長)が第15回同学会(7月29~30日,大阪市)で発表した。
#Off-pump CABGの割合は横ばい
日本冠動脈外科学会ではわが国の冠動脈手術の現状を明らかにする目的で,研究会当時の1970年から全国調査を定期的に実施,学会に昇格した1996年以降は毎年行っている。
アンケート調査委員会を設置し,その結果は同学会公式サイトでも公開している。
同学会公式サイト
http://www.jacas.org/enquete/
2009年の調査では,全国419施設にアンケートを行い,70.2%から回答を得た。
分析対象となったCABGは1万4,262例(単独手術1万659例,合併手術3,603例)。
CABG単独手術のうち,初回待機手術は8,974例で,Off-pump CABGが5,939例,On-pump CABGは3,035例。
Off-pump CABGの割合は66%で,2007年以降ほぼ横ばいで推移している。
一方,初回待機手術以外での単独手術のうちOff-pump CABGは50%で,昨年より4ポイント低下した。
#CABG単独初回待機手術の死亡率がわずかに上昇,1%台に
今回の結果で特筆されるのは,これまで年々低下してきていた死亡率が上昇に転じた点だ。
単独CABG全体の死亡率は2.12%と前年の1.46%から0.66ポイント上昇,CABG単独初回待機手術における死亡率も0.81%から0.39ポイント上昇し,1.20%となった(図1)。
瀬在氏は,全国調査結果としては依然高水準にあることを確認しながらも,CABG単独初回待機手術の死亡率が再び1%台になったことに対して懸念を示した。

##Off-pumpからOn-pump移行で死亡率上昇,脳血管障害の発生も増大
この背景としては,Off-pump CABGからOn-pump CABGに移行した場合の死亡率が6.42%と,前年の1.34%を大きく上回っていることが挙げられる。
CABG単独初回待機手術におけるOff-pump CABG完遂率は98.2%と前年よりも高くなっていることから,高リスク例に対して行われたOff-pump CABGにおいてOn-pumpに移行せざるをえないような症例で死亡率が高くなり,これが全体の成績に大きく影響したことが推測される。
また,初回待機手術以外でもOff-pump CABGにおける死亡率が4.98%と前年の2.55%を大きく上回っていた。
ただし,初回待機手術以外の成績については心拍動下のOn-pump CABGの死亡率が11.78%と高く,On-pump CABGへの移行例の死亡率が高いと一概に結論付けることはできない。
なお,左冠動脈主幹部および三枝病変を対象に行われた内科的インターベンションとCABGのランダム比較試験(SYNTAX試験;N Engl J Med2009; 360: 961-972)では,1年後の総死亡率や心筋梗塞発症率はCABGで少なかったものの,脳血管障害が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)群の0.6%に対してCABG群では2.2%と高くなっていた。
SYNTAX試験;N Engl J Med2009; 360: 961-972
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19228612
同試験のOff-pump CABG実施率が15%程度と日本の実態とは懸け離れていることから,日本において脳血管障害が実際にどの程度のリスクであるのか,内科サイドからの関心も高まっていた。
このような背景を受け,今回の調査では,単独CABGの脳卒中発生率が示された。
この結果,全体の脳卒中発生率は1.004%と低く,さらにOff-pump CABG完遂例については0.67%でOn-pump CABG症例よりも低率だった。
一方,Off-pumpからOn-pumpへ移行した場合は2.94%と高くなっており,脳血管障害についてもOff-pump CABGで完遂できなかった症例が問題となることが明らかになった(図2)。

なお,単独CABGにおけるグラフト選択については,内胸動脈が約半分(左内胸動脈が35.2%,右内胸動脈が13.2%)を占めていた。
日本のCABGは,医師の高い技術的水準のもと,低侵襲のOff-pumpや,長期開存が望める動脈グラフトの選択といった試みを積極的に推進してきている。
一部のハイボリューム施設に限定しない全国調査において高水準の結果を残してきている希有な状況であるだけに,適切な手術法の選択によって再びCABGの成績において死亡率が減少に転じることを期待したい。
出典 MT pro 2010.8.3
版権 メディカルトリビューン社
<きょうの一曲>
フジコ・ヘミング J.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲集 BWV846-BWV847
http://www.youtube.com/watch?v=ehkc1jb32Xc
平均律クラヴィーア曲集
http://ja.wikipedia.org/wiki/平均律クラヴィーア曲集

山本彪一 『バラ』 油彩
http://www.seikougarou.co.jp/sell/yamamotohyouichi/751.html
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
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井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/ があります。