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わが国では,現在6種類のAT1受容体拮抗薬(ARB)が使用可能です。
ARBには共通のクラスエフェクトがあるが,各ARBに特有の臓器保護作用も知られています。
きょう勉強した座談会では,ARBのなかでもオルメサルタン メドキソミル(オルメテック®)〔以下,オルメサルタン〕のマルチファンクショナルな作用に焦点をあて,オルメサルタンが選択される根拠をめぐって,心血管保護作用の面から討論した内容となっています。
心血管保護作用からみたARB
堀内 正嗣 氏(司会)愛媛大学大学院医学系研究科 分子心血管生物・薬理学 教授
三浦 伸一郎 氏 福岡大学病院 循環器内科 診療教授
高井 真司 氏 大阪医科大学 薬理学 准教授
JSH2009において多くの積極的適応をもつARB
堀内
わが国の「高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)」では,厳格な降圧の重要性が強調されるとともに5種類の主要降圧薬の積極的適応が示されています。
なかでもレニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬であるARBとACE阻害薬は,多くの病態に対して推奨されています。
しかし,ACE阻害薬のエビデンスの多くはわが国の承認用量より高用量で検討されたものであることや,わが国における投与量での降圧効果は比較的弱く,空咳などの副作用が日本人では多いことなどから,日本ではARBをおもに使う傾向にあると思われます。現在6種類のARBが使用可能ですが,最近では各ARB間に種々の違いがあることも明らかになってきました。
また,ARBオルメサルタンについては最近興味深い報告が相次いでいることから,これを中心にさまざまな角度からARBの降圧効果や臓器保護作用について討論したいと思います。
オルメサルタンの降圧・抗炎症作用
三浦 (オルメサルタンの降圧・抗炎症作用について)
まず,本態性高血圧患者における各種ARBの降圧効果を検討した海外のデータです
(図1)。
最も低い血圧下降度を基準にし,その値を超えた降圧効果がその薬剤のもつ固有の効果といえるのではないかと思います。
そこで,オルメサルタンの降圧効果を検証するため,本態性高血圧患者30例に対し,他のARBを12週間投与した後,それに対応する量のオルメサルタン(18±1mg/日)に切り替えたところ,オルメサルタン投与4週後から収縮期血圧,拡張期血圧がともに有意に低下しました(図2)。

三浦 (ARBが有する降圧以外の作用について)
ARBは,血管の炎症抑制作用を有することがわかっています。
オルメサルタンの炎症に与える影響について検討したEUTOPIA試験では,微小炎症を併せもつ本態性高血圧患者を対象にオルメサルタン群(20mg/日)とプラセボ群に無作為に割り付けて6週間観察しました。
その結果,オルメサルタン群において6週の時点でhsCRP,hsTNF-α,IL-6,MCP-1などの炎症マーカーが投与前に比して有意に低下したことが明らかになっています(各p<0.05,p<0.05,p<0.05,p<0.01)。
一方で,近年の検討から各種炎症マーカーのなかでもhsCRP高値が予後不良と強く関連していることが明らかになっていることから,オルメサルタンがhsCRPの低下作用を有していることは非常に興味深く思います。
オルメサルタンの血管保護作用
高井 (オルメサルタンの特徴について)
オルメサルタンはARBのなかでもヒトAT1受容体に対する親和性が高いことが知られています。ウサギを用いた検討では,in vitroにて摘出血管にアンジオテンシンⅡ(AngⅡ)を投与すると血管の収縮反応が示されましたが,AngⅡとオルメサルタンを同時に投与すると強力に収縮反応が抑制されました。
このin vitroにおける結果の差には,薬剤のAT1受容体への親和性の違いが影響していると思われます。
次に,われわれはin vivoで検討を行いました。検討には12週齢の脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHR-SP)を用い,オルメサルタン(1mg/kg/日),バルサルタン(3mg/kg/日),プラセボを投与しました。2週間投与した時点の降圧程度は同等でした。
そこで,AngⅡに対する影響をみるために血管組織AngⅡ免疫染色を行ったところ,AngⅡ陽性面積/全面積比はバルサルタン群,オルメサルタン群ともにプラセボ群より低値を示し,またオルメサルタン群でより有意に減少していました(p<0.01)。
血管組織AngⅡ免疫染色ではAT1受容体に結合しているAngⅡが染色されることから,オルメサルタンはin vivoでもAT1受容体へのAngⅡの結合を強力にブロックしていることが示唆されました。
また,酸化ストレスマーカーの1つである4-HNEについても,オルメサルタン群で4-HNE陽性面積/中膜面積比がプラセボ群より有意に低く(p<0.01),オルメサルタンの強力な抗酸化作用も示唆されました。さらに血管内皮機能についても,オルメサルタン群でアセチルコリン誘導性血管弛緩反応がプラセボ群より有意に改善していました(図3)。
オルメサルタンがAT1受容体を強力にブロックして酸化ストレスを減少させた結果,血管内皮機能改善作用が得られたものと考えられます。

高井
ACE活性の亢進はAngⅡの産生を誘導するため,ACE活性も重要な治療ターゲットではないかと考え,これに対するオルメサルタンの作用を検討しました。
SHR-SPは,正常ラットと比較して有意に血管組織ACE活性が亢進します(p<0.01)が,これに食塩を負荷することでさらに血管組織ACE活性が亢進し,収縮期血圧は250mmHgを超えるため,何らかの処置を行わないと4週後に8割以上が脳卒中で死亡するモデルとなります。
このモデルラットに非降圧量のオルメサルタン,バルサルタン,プラセボを投与して検討したところ,血管組織ACE活性はプラセボ群に比べてオルメサルタン群で有意に低下していました(p<0.01)。
生存率も検討したところ,バルサルタン群の生存率が60%に低下した時点でのオルメサルタン群の生存率は95%でした(図4)。

三浦
この結果は,オルメサルタンがラットの脳血管に対して保護作用を発揮して,脳卒中による死亡を減少させたと解釈できます。
投与量は非降圧量ですから,オルメサルタンには降圧に依存しない血管保護作用があると思われます。
高井
なお,われわれは高コレステロール食を摂取させたサル動脈硬化モデルでも,非降圧量のオルメサルタン(3mg/kg/日)が血管組織ACE活性の亢進を有意に抑制し(p<0.05),さらには血管内膜の過形成を有意に退縮させたことを報告しています(p<0.05)。したがって,オルメサルタンは血管組織ACE活性を抑制してAngⅡの産生を食い止めることで酸化ストレス産生を抑制し,動脈硬化の進行を逆行させるという,特徴的な血管保護作用を有していると考えられます。
堀内
オルメサルタンには血管壁のAngⅡ濃度を減少させる作用があり,その要因として血管組織ACE活性の抑制作用が考えられます。
オルメサルタンが有するダブルチェーンドメインの意義とACE2/Ang-(1-7)/Mas受容体軸
三浦 (オルメサルタンがAT1受容体に対する強い親和性を有する理由)
ほとんどのARBは,化学構造としてビフェニル基,テトラゾール基,イミダゾール基を基本骨格としてもっていますが,オルメサルタンはさらにカルボキシル基とヒドロキシル基という2つの側鎖,すなわちダブルチェーンドメインを有しています。
また,AT1受容体とAngⅡとの結合部分はリガンドポケットと呼ばれるのですが,オルメサルタンは2つの側鎖でこのリガンドポケットと強力に結合してAngⅡを遮断し(図5),同時にAT1受容体の強力な不活性化(インバースアゴニスト作用)を引き起こすと考えられます。
このように,他のARBにはないダブルチェーンドメインの存在が,オルメサルタンの特徴的な作用に関連していると推測されます。

堀内
近年,RA系において,臓器障害をもたらすACE/AngⅡ/AT1受容体軸(Devil)と,臓器保護に働くACE2/Ang-(1-7)/Mas受容体軸(Angel)の詳細が明らかになってきました。
三浦先生からご紹介があったように,ACE/AngⅡ/AT1受容体軸のブロックにはダブルチェーンドメインをもつオルメサルタンのAT1受容体への強力な結合が関与していると思われます。
また,通常ARBはAT1受容体のAngⅡ結合をブロックするため血中のAngⅡ濃度を上昇させてしまうのに対し,オルメサルタンは逆にこれを減少させることが知られています。
その理由としては,オルメサルタンがACE2を活性化することでAngⅡがACE2/Ang-(1-7)/Mas受容体軸のほうに流れるためと考えられますし(図6),高井先生の実験からもオルメサルタンには血管組織ACE活性抑制作用が認められていますので,オルメサルタンはマルチファンクショナルな作用を有するARBといえます。

ARBのなかでオルメサルタンを選択する理由
高井 (降圧治療におけるオルメサルタンの位置づけ)
動物実験では,同程度の降圧度でも投与するARBによって心血管保護作用に差がみられました。
オルメサルタンが強い降圧効果を有するという三浦先生のデータも併せて考えると,実際の患者さんに対しても高い心血管保護作用が期待できるオルメサルタンは,よい選択肢の1つであると思われます。
三浦
オルメサルタンは他のARBよりも降圧効果が良好であり,降圧に依存した心血管保護作用も強いのではないかと思います。
また,オルメサルタンでは高井先生からご紹介があった血管組織ACE活性の抑制,あるいは堀内先生からご紹介があったACE2活性化作用を介した降圧非依存性の心血管保護作用も期待できます。ですから,降圧治療にオルメサルタンを選択することは理にかなっていると思います。
堀内
私も,高井先生や三浦先生から解説がありました通り,オルメサルタンは降圧効果が強いと実感しています。
さらに,ダブルチェーンドメインでRA系を強力に抑制して臓器保護をもたらすことも,オルメサルタンを選択する理由の1つになると思います。
出典 Medical Tribune 2010.9.16
版権 メディカルトリビューン社
<番外編>
高血圧性CKDへの強化血圧管理、進行リスク低下せず
文献:Appel LJ et al. Intensive Blood-Pressure Control in Hypertensive Chronic Kidney Disease. NEJM. 2010;363:918-929
黒人の高血圧性慢性腎臓病(CKD)患者1094名を対象に、強化血圧管理によるCKD進行抑制効果を無作為化試験で検討。
全体では強化管理群と標準管理群で進行リスクに有意差はなかったが、蛋白/クレアチニン比0.22超の患者では有効性が示され、ベースライン時蛋白尿の有無により強化管理の効果が異なる可能性が示された。
出典 m3.com 医療ニュース 2010.9.6
原文
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0910975
<自遊時間>
正にヤクザ国家
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福王寺一彦 『月光』 日本画
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その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
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(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
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