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第32回欧州心臓病学会(ESC Congress 2010)でのivabradineに関する記事で勉強しました。
心不全における心拍管理の意義が明らかに
欧州に導入されて間もない心拍数低下薬ivabradine(日本未発売)は,心不全治療において,β遮断薬などの標準治療に上乗せされることで心不全患者の予後を改善することが第32回欧州心臓病学会(ESC Congress 2010)で明らかにされた。
このSHIFT試験※の結果は,仏パリ第6大学循環器科のMichel Komajda教授が報告した。
※Systolic Heart Failure Treatment with the If inhibitor Ivabradine Trial
また,会期中にはSaarlandes大学(独ハンブルク)のMichael Böhm教授が同試験のサブ解析を発表し,プラセボ群においてベースライン心拍数が1拍/分上昇するごとにイベント発生リスクが3%ずつ増大するなど,心不全における心拍数管理の重要性を示した。
結果は,Lancet8月29日オンライン版に掲載された。
β遮断薬への上乗せで1次評価項目の有意な改善
SHIFT試験には,37か国677施設が参加し,二重盲検ランダム化比較試験として実施された。
対象は,ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類Ⅱ~Ⅳ度で左室駆出率(LVEF)が35%以下,心拍数が70拍/分以上で過去1年間に入院歴のある心不全患者。ガイドラインが推奨するレニンアンジオテンシン系阻害薬,β遮断薬,アルドステロン拮抗薬や利尿薬による標準治療が行われたうえで,6,558例がivabradine 5mg×2/日を上乗せする実薬群とプラセボ群に割り付けられた。実薬群では同薬の2.5mg,7.5mgも使用され,安静時心拍数50~60拍/分を目指した管理が行われた。
試験開始時の平均心拍数は80拍/分であったが,1か月後にはプラセボ群の75拍/分に対して実薬群は64拍/分と低い値で推移し,試験終了時までこの傾向が続いた。
平均23か月の追跡により,1次評価項目の心血管疾患死亡と心不全による入院の発生リスクは,プラセボ群の29%に比べて実薬群は24%と,実薬群で18%有意に低下した(P<0.0001)。
2次評価項目では,心不全による死亡と入院が実薬群でそれぞれ26%有意に低下した。
ただし,総死亡や心血管死亡では有意差がなかった。今回の試験において1例の1次評価項目の発生を防ぐのに必要な例数(NNT)は26だった。
なお,プラセボ群における1次評価項目の発生リスクは年率18%と高率だった。
Komajda教授は,β遮断薬が全体の9割に投与されていたものの,推奨量に到達した患者は4分の1程度で,50%以上に達した患者も56%と低率であった点や,β遮断薬が投与されても心拍数70拍/分以上の患者が多く存在した点を指摘したうえで「ivabradineは忍容性が高く,現行でベストとされる治療への上乗せで予後の改善が認められたのは患者,医師双方にとって福音である」とまとめた。
心拍数1拍/分上昇するごとに3%のリスク増大
サブ解析では,ベースライン心拍数や,同薬の治療による心拍数低下度から5群に分けられ,それぞれ予後との関係が検討された。
まず,β遮断薬服用やLVEFなど心拍数に影響を与える因子を調整したうえで,プラセボ群が心拍数別に5群に分けられ,1次評価項目のイベント発生リスクが算出された。
その結果,最大値(87拍/分以上)群のハザードリスクは最低値(70拍/分以上72拍/分未満)群の2倍超で(表),このイベント発生リスクは1拍/分上昇するごとに3%,5拍/分上昇するごとに16%増大していた。

次に,試験開始28日の時点で,実薬群を5拍/分刻みで60拍/分未満から75拍/分以上の5群に分けて1次評価項目の発生率が示された。
その結果,60拍/分未満に到達した群のイベント発生リスクは17.4%で5群のうち最低であったのに対し,75拍/分以上群は32.4%で最大となっていた。
以上の結果を受け,Böhm教授は「心拍数は明らかに心不全の予後規定因子だ」と述べた。
Ivabradineは洞房結節において選択的にIf電流を阻害する新規作用を有する心拍数低下薬で,他チャネルには影響しないため,心筋収縮や心臓内伝導に影響しない。
欧州では近年,安定狭心症患者に導入されたが,米国やアジアではまだ発売されていない。
出典 Medical Tribune 2010.9.9
版権 メディカルトリビューン社
<関連記事>
心拍数低下薬ivabradineの上乗せで慢性心不全の予後が改善
ESC2010で発表のSHIFT試験
現行の標準治療が行われている慢性心不全患者へ心拍数低下薬ivabradineを上乗せすることで,心血管疾患死亡と心不全による入院リスクが低下することが大規模な二重盲検ランダム化比較試験(RCT)で示された。
このSHIFT試験の結果は,スェーデン・ストックホルムで開催中の第32回欧州心臓病学会(ESC Congress 2010)において,フランス・パリ第6大学循環器科教授のMichel Komajda氏が発表し,同時にLancet 8月29日オンライン版に掲載された。
慢性心不全の管理については,ガイドラインでレニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬やβ遮断薬などによる薬物治療が推奨されているが,現行の標準治療への同薬の上乗せ効果が認められたことから,同氏は「心拍数をターゲットにした治療によって,心不全の予後改善に展望が開けた」と期待を述べた。
安静時心拍数50~60拍/分を目標に投与量を調整
SHIFT試験には,37か国で677施設が参加して行われた。対象は,ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能クラス分類Ⅱ~Ⅳで左室駆出率(LVEF)35%以下,さらに心拍数70拍/分以上で過去1年間に入院を経験している心不全患者。6,558例が標準治療にivabradine 5mg×2/日を上乗せするivabradine群とプラセボ群に割り付けられた。
全例に対してガイドラインが推奨するRA系阻害薬,β遮断薬,アルドステロン拮抗薬や利尿薬による標準治療が実施され,安静時心拍数が50~60拍/分で管理されるよう投与量が調整された。
その結果,試験開始時に80拍/分であった心拍数は,1か月後にはプラセボ群75拍/分に対してivabradine群では64拍/分と低く,試験終了時までこの傾向が続いた。平均23か月の追跡により,1次評価項目の心血管疾患死亡と心不全による入院のリスクは,プラセボ群に比べてivabradine群で18%有意に低下した(P<0.0001)。
2次評価項目では,心不全による死亡と入院がivabradine群でそれぞれ26%有意に低下するなどの効果が認められた。
1例の1次評価項目の発生を防ぐのに必要な例数(Number Needed to treat;NNT)は26だった。
なお,プラセボ群における1次評価項目の発生リスクは年率18%と高率だった。
洞調律のみで作用,心筋収縮作用には影響せず
Ivabradineは洞房結節において選択的にIf電流を阻害するが,他チャネルには影響せず,収縮不全の場合においても心筋収縮や心臓内伝導に影響しない。
洞調律でのみ作用するため,心房細動を合併する心不全患者には適応にならない。
同薬については,2年前に1万人超の安定した症候性冠動脈疾患を対象としたBEAUTIFUL試験が報告され,死亡や心不全による入院,心筋梗塞,心不全の発症・悪化による複合1次評価項目で有意な効果が示されなかったことが記憶に新しい。
このBEAUTIFUL試験のサブ解析では,心拍数70拍/分以上の場合にivabradine群の優位性が認められていたが,今回も,患者背景別の解析では,ivabradine群による1次評価項目抑制効果が有意だったのは,試験開始時の心拍数が77拍/分以上の患者であった。Komajda氏は「心拍数70拍/分以上の心不全患者にはivabradineの有用性が高い」としている。
「古典的だが実用的なこのマーカーを見直すべきときではないか」
なお,SHIFT試験においては,β遮断薬が全体の9割に投与されていたが,ガイドラインの推奨量に到達した患者は4分の1にとどまり,目標の半数量以上に達した患者も56%であった。
β遮断薬を推奨量まで増量することの難しさがあらためて示され,β遮断薬が投与されても多くの患者が心拍数70拍/分以上であったことから,Komajda氏は「心不全治療において,心拍数低下が予後改善の独立した因子であることが示された。
古典的であるが実用的なこのマーカーを見直すべきときではないか」と強調した。
出典 MT pro 2010.8.30
版権 メディカルトリビューン社
<記事追加> 2010.11.14
#脂肪の多い魚類の摂取 心不全予防には最適量の見極めを
ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(ボストン)のEmily Levitan博士らは,ニシン,サバ,サケ,ホワイトフィッシュ(コクチマス)など,脂肪の多い魚類を週に1回食べる男性は,心不全発症リスクが低いとEuropean Heart Journal(2009; 30: 1495-1500)に発表した。
これは魚類を豊富に食べる海洋地域に住む人にとっては朗報だが,同博士らは摂取量が多すぎると有害となる可能性についても示唆している。
#中等度摂取が最もリスク低い
Levitan博士らは,カロリンスカ研究所(スウェーデン・ストックホルム)のAlcija Wolk博士らと共同で,45〜79歳のスウェーデン人男性3万9,367例の食習慣と健康アウトカムを1998〜2004年に追跡調査した。
今回の試験期間中,心疾患や糖尿病既往歴のない597例が心不全を発症し,34例が死亡した。脂肪の多い魚類の摂取量により対象者を5群に分けて分析したところ,週1回摂取群では非摂取群に比べて心不全発症リスクが12%低かった。
また,週に2回以上摂取群と,非摂取群でリスクは同等だった。
さらに,ω3脂肪酸の摂取量についても検討したところ,同様の傾向が認められた。
ω3脂肪酸の摂取量が0.36g/日の中間群では,ほとんどまたは全く摂取しない群と比べて心不全発症リスクが33%低く,統計学的に有意であった。
一方,ω3脂肪酸の摂取量が0.46〜0.70g/日の高摂取群では,非摂取群とほぼ同等であった。
同博士は,脂肪の多い魚類を多量に摂取した男性に比べて,摂取量が中等度の男性で心不全リスクが低下していたことについて,「偶然である可能性も否定できない」としている。
また,「既に健康状態の悪い人が,健康の改善を目的に脂肪の多い魚類の摂取量を増やしていたかもしれない」と示唆している。
同博士は,過去の研究で脂肪の多い魚類やω3脂肪酸の摂取は高血圧,高トリグリセライド,心拍上昇など,心臓関連疾患の抑制に有効であることが示されていると指摘し,「これらを総合すると,われわれの研究で心不全リスク低減との間に関連が認められたことも説明が付く」と述べている。
なお,心不全は65歳以上の患者における入院の原因の第1位であるという。
最後に,同博士らは「今回の研究結果は,脂肪の多い魚類の中等度消費を推奨する現在のガイドラインを補強するものである。米国心臓協会(AHA)の現行ガイドラインでは,脂肪の多い魚類を週に2回食べることを推奨している。今回の試験は男性だけを対象としたことから,今後は女性も含めた集団でも今回の知見が再現されるか否か検討する必要がある」と述べている。
出典 MT pro 2009.8.27
版権 メディカルトリビューン社
<関連サイト>
心拍数低下薬ivabradine、心血管死亡を減少、SHIFT試験
http://www.m3.com/news/THESIS/2010/09/02/10684/?portalId=news
Ivabradine and outcomes in chronic heart failure (SHIFT): a randomised placebo-controlled study
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(10)61198-1/abstract
Procoralan(ivabradine)*で心臓発作減少 欧州心臓学会で新臨床研究発表
http://japan.asiaprnews.com/2009-08-31/200351.html
Ivabradine pill may prevent heart failure for thousands
http://www.bbc.co.uk/news/health-11127782
BEAUTIFUL試験
http://blog.m3.com/reed/20091230/BEAUTIFUL_
<きょうの一曲>
Autumn leaves
http://www.youtube.com/watch?v=TzH4zt9Ei8g&feature=related

蓼科山山頂(2530m)より穂高・槍ヶ岳を遠望する
2010.9.19 14:56撮影
(登頂が遅かったため、下山時には暗くなっていました)
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/ があります。