戯れ言たれる侏儒
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< 血圧変動も高血圧の危険因子に | メイン | 心保護を考慮した降圧療法 >

タイトルからは、単なる配合剤に関する内容と思っていましたが、勉強してみると結構「深い」内容の記事でした。
アムロジピン・アトルバスタチン配合剤の可能性を探る
司会
順天堂大学 循環器内科 代田 浩之教授
出席者(発言順)
東北大学大学院 循環器病態学 下川 宏明教授
金沢大学 医薬保健研究域医学系 臓器機能制御学・循環器内科 山岸 正和 教授
プレゼンター
R. Preston Mason President, Elucida Research Senior Faculty and Research Scientist Brigham & Women's Hospital, Harvard Medical School
 
高血圧と高コレステロール血症を単一の錠剤により治療できる世界初の合剤,アムロジピン・アトルバスタチン配合剤(カデュエット®配合錠)が本邦においても2009年12月より発売された。両疾患は併発すると,脳・心血管イベントの発症リスクが相加的に増大することが知られているが,現状として十分なコントロールはされておらず,ガイドラインの示す管理目標に達している症例は多いとは言えない。

Presentation
アムロジピンとアトルバスタチン併用投与の基礎研究と薬理学的背景
                      R. Preston Mason
血管内皮機能障害によりNO放出能が低下
心血管リスクファクターである高血圧,脂質代謝異常,糖尿病などは血管内皮機能障害,炎症,酸化ストレスを介して心血管疾患(CVD)を発症させる。
われわれは,特に早期の動脈硬化における内皮機能障害に焦点を当て,その詳細なメカニズムについて検討してきた。

内皮機能障害は一酸化窒素(NO)の合成を低下させ,これにより血管収縮,血栓形成,スーパーオキシドの産生が亢進する。
正常な内皮細胞にカルシウム(Ca),アセチルコリン,ブラジキニンなどによる刺激を加えると,NO合成は著明に亢進する。
しかし,機能障害のある内皮細胞に同様の刺激を加えても,NO合成はそれほど亢進しない。
われわれはこのことを,共同研究者であるMalinski氏らの考案したNO直接測定法(Nature 1992; 358: 676-678)により確認している。
なお,機能障害のある内皮細胞であっても,NADPHオキシダーゼ阻害薬などで前処置しておくと,Caなどの刺激によるNO合成は著明に亢進する。
すなわち,内皮機能障害によるNO合成の低下には酸化ストレスが関与しており,それは決して不可逆的な過程ではないことが認められる。

スタチンは細胞膜におけるcaveolin-1の放出を抑制
内皮細胞膜を含む構造を詳細に観察するためには,最近のナノテクノロジーにより開発されたX線回折によるイメージング法が有用である。
この方法により内皮細胞を観察すると,動脈硬化の進展とともに細胞は膜内にコレステロールを取り込み,ミクロドメインを形成する。
そして,
その部分の細胞膜は血管内腔に陥入して小窩(caveolae)となっていることが認められる。
この小窩ではNO合成を阻害する作用を持つcaveolin-1の放出が高まっており,そのためNOのbioavailabilityは低下する。

スタチンは血中コレステロールそのものを低下させることで,この動脈硬化の進展過程を抑制する。
加えて,
脂溶性スタチンは細胞膜との親和性が高く,容易に膜内に入り込み,そこでのcaveolin-1の放出を抑制する。
これがスタチンの脂質低下作用を超えた抗動脈硬化作用,いわゆるpleiotropicな作用の1つの機序であると考えられる。

実際にアトルバスタチンを投与して,内皮細胞におけるcaveolin-1濃度を検討した成績では,高濃度のLDLコレステロール(LDL-C)存在下であっても,アトルバスタチンは用量依存的にcaveolin-1濃度を低下させる。
そして,caveolin-1濃度の低下は,内皮型NO合成酵素(eNOS)濃度の上昇と関連することが示されている(Feron O, et al. Circulation 2001; 103: 113-118)。

一方,ACE阻害薬やARBなどのレニン・アンジオテンシン系(RAS)抑制薬やある種のCa拮抗薬には,内皮機能の改善作用が認められる。
ACE 阻害薬はブラジキニンの不活性化抑制,ARBはアンジオテンシン受容体の抑制を介し,NO放出を高める。
しかし,アムロジピンのようなCa拮抗薬はブラジキニンの代謝には影響せず,ブラジキニンに対する感受性を高めることでNO放出を高めると考えられる。

相互に吸収,結合しやすいアトルバスタチンとアムロジピン
アトルバスタチンは脂溶性で,生体内においては負に荷電している。
一方,アムロジピンも脂溶性であるが,生体内では正に荷電している。
すなわち,両剤はともに細胞膜のリン脂質二重層に取り込まれやすく,また互いに結合しやすい性質を有している図1)。
また,そのことが内皮機能への相乗作用に関係していると考えられる。

 

なお,ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)を用いた実験では,アトルバスタチンとアムロジピンを同時に投与すると,LDL-Cにより惹起される内皮細胞のeNOS放出の低下の抑制作用,NO合成の低下の改善作用が,それぞれを単剤投与したときに比べて大きいことが示されている。
さらに,両剤はApoEノックアウトマウスにおける動脈硬化の進展抑制においても相乗効果が確認されている(Jukema JW, et al. Expert Opin Pharmacother 2004; 5: 459-468)。

アムロジピンとアトルバスタチンを同時投与した際の臨床的有用性については,ASCOT(Anglo-Scandinavian Cardiac Outcomes Trial)-LLA(Lipid Lowering Arm) 2×2解析(Sever P, et al. Eur Heart J 2006; 27: 2982-2988)の結果などから明らかである。
この効果的なアプローチにより,できるだけ早期に動脈硬化に介入することで,将来的なCVDの発症抑制につながるものと考えている。


Discussion
高血圧と高脂血症の管理状況と同時治療の有用性について考える
心血管リスク患者の高血圧,高脂血症の管理は不十分
~高血圧治療にはCa拮抗薬が有用~
下川
(わが国における高血圧と高脂血症患者の現況)
宮城県では43施設が参加して,30年前から急性心筋梗塞(AMI)の登録研究を行っています。
それによると,AMIの発症頻度はこの30年間でほぼ5倍に急増しており,そのおもな要因は人口の高齢化によるものです。
また,AMI患者の心血管リスクファクターに関しては,高血圧,高脂血症,糖尿病のいずれも近年,増加傾向を示しています。
心不全患者について調査した結果でも,2000年代前半に比べ後半には,各リスクファクターを有する患者が急増しています。

代田 
高脂血症や糖尿病は増加傾向にありますが,一般に高血圧に関しては管理状況の改善に伴い,減少傾向に転じているとも言われていますが,その点はいかがでしょうか。


下川 
確かに一般人口においてはそのように言えますが,AMIや心不全のような患者についての高血圧の急増傾向はおさまっていないのが現状だと思います。
つまりは,心血管リスクの高い患者においては依然として,高血圧の管理状況が改善していないと言えるでしょう。


山岸(脳卒中などのリスクファクターとしての高血圧) 
わが国の脳卒中による死亡率は,「国民衛生の動向」(厚生統計協会)からもわかるように,この20年で激減しています。
これは高血圧治療の進歩によるものです。
しかしながら,日本では依然として,食塩摂取量が多いことは問題です。
私たちの行った研究結果では,高食塩食により高血圧を惹起したラットでは,心筋線維化が進行しやすいことが示されました。
食塩摂取量の多い高血圧患者は,CVDのハイリスク群であることに変わりありません。


代田 
わが国62地区で構成するHeart Care Network(HCN)が協力し,一般診療における患者の生活習慣病管理状況と治療実態を3年間フォローアップした調査結果があります。
対象は,854施設における通院患者で,
(1)心筋梗塞の既往歴を持つ,
もしくは
(2)高血圧,高脂血症,糖尿病のうち2つ以上合併する,
14,064例です。

それによると,高血圧合併例は対象患者の88%,高脂血症合併例は83%,糖尿病合併例は51%です。
また,高血圧と高脂血症両者の合併例は44%となっています。フォローアップ期間中にリスクの管理状況は徐々によくなってきていますが,それでもガイドラインに記載された目標値に達している患者は,収縮期血圧で34%,拡張期血圧で69%。平均総コレステロール(TC)で51%,トリグリセライド(TG)で63%と,決して満足のいく状況ではないことが示されています。


下川 
わが国のAMIや狭心症患者のなかには,冠攣縮が関与したケースが少なくありませんが,同時に動脈硬化性冠動脈病変を認める場合が多く見受けられます。
このような症例では血圧とLDL-Cのコントロールはきわめて重要で,Ca拮抗薬とスタチンの併用は理にかなっていると思います。


山岸 
高食塩食により心筋線維化が進行した症例には,RAS抑制薬の投与を考えますが,確実な降圧効果を期待するときには,Ca拮抗薬を選択する場合もあります。
血圧が目標値まで下がらないという患者には,RAS抑制薬など他の降圧薬を併用します。


Mason 
わが国においても,アフリカ系米国人は食塩摂取量が多い傾向にあります。
それらの症例については,β遮断薬やRAS抑制薬と比べてもCa拮抗薬が有用です。
日本人の症例においてもそれが当てはまるかは定かではありませんが,少なくともCa拮抗薬の有用性は否定できないと思います。

また,高脂血症合併高血圧患者の治療にCa拮抗薬とスタチンの併用を基本にするにしても,降圧効果が不十分なケースには,患者の病態も踏まえ,RAS抑制薬などを併用するという考え方でよいと思います。


アムロジピン・アトルバスタチン配合剤への期待
代田 
高血圧と高脂血症を合併すると,それぞれ単独で発症するケースに比べ,CVD発症のリスクは相加的に増大することが知られています(図2)。

 

 

この点を考えると当然,両疾患は同時に管理することが重要です。海外の研究では,高血圧と高脂血症を同時に治療することでCVDが劇的に減少することが示されました(図3)。

 

 

下川(アムロジピン・アトルバスタチン配合剤について) 
先ほどからお話がありますが,日本は食生活や生活習慣の急速な欧米化に伴い,高血圧および高脂血症患者は年々増加しています。
本配合錠が広く処方され,それら患者の治療とアドヒアランスの向上につながるよう期待したいと思います。


山岸 
CVDを抑制するうえで,血圧,脂質を厳格に管理することは重要な課題であり,その意味で本配合錠は非常に有用なものと考えています。
本配合錠が一助となり,複合的なリスクファクターにより多数の薬剤を服用されている方々の治療の向上につながることを願ってやみません。


Mason 
アムロジピンとアトルバスタチンの組み合わせは,それぞれの降圧効果,LDL-C低下効果に加え,抗酸化作用に関して相乗作用が期待できます。
また,服薬する薬剤の種類,回数が多くなるほど,アドヒアランスが悪くなるので,多くの薬剤を投与されているCVDのハイリスク患者にとって,降圧薬と脂質改善薬の服薬が1日1回1錠ですむというメリットは想像以上に大きいと思います。

出典 Medical Tribune 2010.6.17
版権 メディカルトリビューン社

 

<カベオリン 関連サイト>
カベオリンと脂質
http://lifesciencedb.jp/dbsearch/Literature/get_pne_cgpdf.php?year=2001&number=4607&file=0KsjB7WaoqPFr8YKBJLPLUSUw==
(カベオリンと脂質との関連について詳述されています)

高脂血症が関与する突然死  
オメガ3(EPA)が血管の異常攣縮を防ぐ
http://www.botanical.jp/library/news/131/index.shtml
■カベオリン‐1は細胞膜ラフトに局在するタンパク質です。
カベオラ(caveolae)という細胞膜構造物を構成する主要なタンパク質です。
■血管内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)*の調節に関与しています。
すなわち、刺激されていない内皮細胞では、eNOSは、カベオリン-1と結合する事によって、その活性が抑制されており、また、カベオラに局在しています。
■内皮細胞が刺激を受けると、細胞質のカルシウム濃度が増加し、カルシウムによってeNOSとカベオリン-1との結合が阻害されるため、eNOSはカベオラから解離し細胞質へ移動すると共に、活性化され一酸化窒素(NO)を生成します。
■NOは、ガスであるため、内皮細胞に隣接している平滑筋細胞の内部へ容易に移動し、平滑筋を弛緩させるサイクリックGMPを生成する酵素(Gキナーゼ)を活性化する事によって、血管を弛緩させます。
*一酸化窒素を合成する酵素(nitric oxide synthase)(NOS)は体内の作動場所によりnNOS(neuronalNOS)(神経型NO合成酵素)、eNOS(endothelial NOS)(血管内皮型NO合成酵素)、iNOS(cytokine inducible NOS)(誘導型NO合成酵素)の3つのタイプに分けています。
このタイプ別名称は nNOSをNOS1のように、1-3の番号を付けて呼ぶこともあります。

 

 

<きょうの一曲>
Charles Aznavour "La Boehme"
http://www.youtube.com/watch?v=qMIZ6X0YJwU&feature=related

ラ・ボエーム/La Bohème 奥田晶子/Akiko Okuda
http://www.youtube.com/watch?v=5sCKJWSJIMM&feature=related

金子由香利 - ラ・ボエーム
http://www.youtube.com/watch?v=4l2xQRZRuz8&feature=related
ラ・ボエーム/ちあきなおみ
http://www.youtube.com/watch?v=YweAsjL-MPo&feature=related

布施明  ラ・ボエーム
http://www.youtube.com/watch?v=BU4eFfP2Gf0&feature=related

原大輔 ラ・ボエーム.wmv
http://www.youtube.com/watch?v=K1Y1YOupfYQ&feature=related

 

 


西山真一 『みかん畠と海』 油彩
http://www.seikougarou.co.jp/sell/nishiyamashinichi/356.html

 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります。
    
   

 

 

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