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第74回日本循環器学会総会(2010京都)・学術集会ファイアサイドセミナー「動脈硬化予防のエビデンス」(座長:島田和幸氏=自治医科大学病院病院長・循環器内科教授)での講演の記事で勉強しました。
演者は久留米大学糖尿病性血管合併症病態・治療学 山岸 昌一教授です。
内容から、スポンサーの製薬メーカー名はすぐにわかってしまいます。
AGEを標的とした血管保護療法
―アカルボースの有用性―
糖尿病患者は年々増加し,日米英など主要国では現在成人の6~8%を占め,境界型糖尿病も8~12%存在すると推定されている。糖尿病は腎症や網膜症といった細小血管合併症を来し,透析導入や中途失明を招くなど生活の質(QOL)を著しく損なう。
一方で糖尿病は動脈硬化を進展させ,心筋梗塞や脳卒中といった大血管合併症を来し,生命をも脅かす。現に糖尿病患者の平均余命は男女とも約15年短く,全患者の40~75%が心血管イベントで亡くなっている。
このように山岸氏は糖尿病の疫学を概説し,糖尿病患者のQOLと生命予後を改善する見地から血管機能を保護する重要性を強調した。
そして糖尿病性血管合併症の機序をかんがみ,アカルボースの臨床的有用性を示す知見を示した。
糖尿病血管合併症は食後高血糖による酸化ストレスを介して発現
従来の臨床研究で心血管イベント発生リスクは,食後高血糖の持続によって高まると指摘されている。
DIS研究では,2型糖尿病患者の空腹時血糖値が良好であっても朝食後1時間血糖値が180mg/dLを上回る場合,心筋梗塞の発症率は同値が正常な場合より3倍高いことが示されている(Diabetologia 1996; 39: 1577)。
食後高血糖は酸化ストレスの産生を亢進させ,糖尿病血管合併症を発症・進展させると考えられている。
Monnierらによると,2型糖尿病患者の食後血糖の変動幅は酸化ストレスマーカーである尿中8–Iso-PGF2αの排泄量と正相関する(JAMA 2006; 295: 1681)。
またCerielloらは,2型糖尿病患者に超速効型インスリンを使用することにより,食後過血糖とともに酸化ストレスマーカーであるニトロチロシンの低下を認めることを報告している(Diabetes Care 2002; 25: 1439)。
酸化ストレスの亢進は,血管内皮機能を維持・調節する一酸化窒素(NO)の産生低下やパーオキシナイトライトの形成,内皮型NO合成酵素阻害物質ADMAの産生増加を引き起こす。
さらに酸化ストレスの亢進は,LDLの酸化やNF-κBの活性化を介し,動脈硬化関連因子の増加を促す。加えて血小板凝集能の亢進,線溶活性の低下を招いて血栓形成傾向を助長する。
食後高血糖を鋭敏に反映するグリセルアルデヒド由来AGEs
では,食後高血糖はどのような機序で酸化ストレスを惹起するのか。
山岸氏は,食後高血糖のみならず中性脂肪の増加など,食事に伴って生じる一連の代謝異常に起因すると解釈。
食後代謝異常が終末糖化産物(AGEs)の生成,ポリオール経路の亢進,プロテインキナーゼCの活性化を促し,酸化ストレスを亢進させるのではないかと考えている。
同氏は特にAGEsの関与に注目している。AGEsとは,蛋白や脂質,核酸が非酵素的に糖化・修飾されて生じる分子の総称である。
各AGEは血管細胞や血小板,マクロファージに存在するAGEs受容体(RAGE)を介して認識されるが,蛋白などを修飾する糖の種類別に構造や細胞毒性が若干異なる。
ほとんどのAGEsはグルコースに由来し,長い年月をかけて不可逆的に生成・蓄積される。
従来この種のAGEsは長期にわたる血糖コントロールの不良が生体内に刻む「高血糖の記憶(metabolic memory)」の本体と目されてきた。
しかし最近の研究により,量は少ないものの,グリセルアルデヒドに由来するAGEsは血糖変動に対して鋭敏に反応し,食後の血糖上昇に伴って著増することも明らかになってきた。
しかもグリセルアルデヒド由来AGEsは,RAGEへの結合力がグルコース由来AGEsより10倍以上高く,毒性も非常に強い。
同氏らの動物実験では,グルコース由来AGEsの前駆物質であるHbA1Cより,グリセルアルデヒド由来AGEsのほうが食後高血糖を反映する指標として優れることも示唆されてきている。
アカルボース早期投与で心血管イベント発生抑制を図るべき
そこで山岸氏らは,経口糖尿病薬の使用経験がない2型糖尿病患者13例に対し,アカルボースの投与(50mg×3回/日×12週)を試みた。
すると投与前と比べてHbA1C値はほとんど低下しなかったが,グリセルアルデヒド由来AGEsの血中濃度は有意に低下した(図1)。

このことから,同氏は「アカルボースは食後高血糖に伴う毒性の強いAGEsの生成を抑え,血管保護的に働く可能性がある」と考察。糖尿病血管合併症に対するアカルボースの臨床的有用性は,次のような知見からもうかがえると説明した。
(1)耐糖能障害例を対象とする大規模臨床研究STOP-NIDDMのサブ解析でアカルボースは,動脈硬化の代替マーカーである頸動脈内膜中膜複合体肥厚の進展を有意に抑制した(P=0.021 vs プラセボ;Mann-Whitney U検定/Stroke 2004; 35: 1073)。
(2)STOP-NIDDMでは,アカルボースの投与により心血管イベント発生リスクが49%,高血圧症の新規発症リスクが34%,それぞれ有意に抑制された(P=0.03,P=0.0059 vs プラセボ;Cox比例ハザードモデル/JAMA 2003; 290; 486)。
(3)7つの臨床試験成績をメタ解析したMeRIA7研究では,2型糖尿病患者にアカルボースを投与すると心筋梗塞発症リスクが64%,心血管イベント発生リスクが35%,それぞれ有意に低下し(図2),血糖値・中性脂肪値・BMI・収縮期血圧も有意に低下した(P<0.001,<0.001,=0.043,=0.024 vs プラセボ;ANCOVA法)。

以上より同氏は,アカルボースによる早期介入で,食後高血糖に伴うAGEsの生成亢進が抑えられ,酸化ストレスが抑えられることで,心血管イベントが減少した可能性を指摘。
アカルボースがメタボリックシンドロームのリスク因子を低減させるのも,その抗AGEs化・抗酸化作用によるものかもしれない、とした。
出典 Medical Tribune 2010.6.10
版権 メディカルトリビューン社
<きょうの一曲>
Julia Fischer - Vivaldi - Four Seasons - Summer
http://www.youtube.com/watch?v=qZddgZ22jow&feature=related

宮島明 第73会旺玄展(2007) サーカス
http://www.g-kawanishi.com/exhibition/宮島明個展-2.html