戯れ言たれる侏儒
Profile

ブログ内検索

カレンダー

<< 2010/09 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

新着コメント

新着トラックバック

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

動脈硬化性疾患予防ガイドライン
2年後めどに公表される改訂の方向性探る

日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」発刊から3年が経過した。
その間,LDLコレステロール(LDL-C)値の測定法,トリグリセライド(TG)やnon HDL-C値の位置付け,2次予防での治療目標値など,いくつかの重要な検討課題が掲げられ,議論されてきた。
エビデンスも整いつつある。
このため同学会は,2012年ごろをめどに,改訂版を出したいとしている。
岐阜市で開かれた第42回日本動脈硬化学会(会長=名古屋市立大学大学院生物化学分野・横山信治教授)の特別企画セッション「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」(座長=帝京大学内科学・寺本民生教授,札幌医科大学・島本和明学長)では,改訂版のたたき台となる研究成果の報告や提案が行われた。

LDL-C値はFriedewald式で
2007年版では,脂質異常の診断基準において,動脈硬化性疾患リスクの高い集団のスクリーニング基準としてLDL-C値140mg/dLを採用。
それまでLDL-C値と併記していた総コレステロール(TC)値を外した。

LDL-Cを中心とした診療が求められるようになったわけだが,その測定法に関して近年,新たな問題が浮上した。
2007年版では,Friedewald式(TC−HDL-C−TG/5)による算出を推奨しているが,この方法は空腹時測定が前提で,食後の測定値を用いることはできない。
また,TG値が異常高値(400mg/dL以上)を呈する場合も使用できない。
このため,2008年4月から始まった特定健診では,それまで2次的な測定法とされていた直接測定法が採用され,同法が広く普及した。2つの測定法が存在し,診療現場で混乱を来している。

同学会は今年4月,測定法に関する声明を発表したが,今回あらためて,学会としての公式見解が,副理事長で座長の寺本教授より示された。
同教授は,直接測定法には,
(1)LDL-C値が脂質異常症レベルにある場合の信頼性が乏しい(2)市販キット7種間の標準化が十分行われていない
(3)どのキットを使用して得た測定値かが依頼医に知らされていない
(4)各キットでどういう状況下において外れ値が出るかが明らかにされていない
―といった問題点があると指摘し,改善を要請していくと述べた。
また,一般診療の場ではFriedewald式算出値を基本とし,食後に来院した患者には空腹時の再診を求めること,TC異常高値の場合は,TC値からHDL-C値を引いて得られるnon HDL-C値をリスク管理指標の参考にすることなどを提言した。

non HDL-Cを2次目標値に
Non HDL-C値について,2007年版では「メタボリックシンドロームなど高TG血症が前面に出てくる脂質異常の管理には,LDL-C値でなくnon HDL-C値が用いやすいとの議論も存在する。NCEP(National Cholesterol Education Program)では,non HDL-C値の基準をLDL-C値より30mg/dL高値に設定している。non HDL-C値を使用して治療を行う場合には,この基準が参考になる」と記されている。
次の改訂では,さらに詳細な記載が加えられる見込みだ。

国際医療福祉大学大学院創薬育薬医療分野の佐々木淳教授は,non HDL-CにはLDL-C,レムナントを含むすべての動脈硬化惹起性リポ蛋白コレステロールが含まれるとしたうえで,高TG血症ではLDL-Cと同等以上の冠動脈予測値が示されていることを報告。
LDL-C値が目標に達しているもののTG高値である症例では,non HDL-C値を2次目標値とすることを提案した。

具体的には,
(1)TG値150~199 mg/dLの場合はLDL-C値を生活習慣の改善により是正する
(2)TG値500mg/dL以上の場合はTG値をターゲットとし,フィブラートによる治療を行う
(3)TG値200(この下限値は今後検討)~499mg/dLでは,まずLDL-C値をターゲットにした治療を行うが,それでもTG値が改善しない症例では,non HDL-C値を2次目標値とし,この値が目標値を超えた場合には薬物療法〔スタチン,エイコサペンタエン酸(EPA),エゼチミブ,フィブラートなど〕の強化を考慮する。non HDL-C値の管理目標値は,LDL-C目標値+30mg/dL以下とした(表1)。


FH indexによるFH診断基準を提案
遺伝性の脂質異常症,特に家族性高コレステロール血症(FH)は,心血管イベントのリスクが非常に高く,より強力な管理が必要とされる。その診断基準について,2007年版では,1986,87年度の厚労省特定疾患原発性高脂血症調査研究班による基準が載せられているが,より定量的な基準を望む声もある。

こうしたなか,国立循環器病研究センター分子薬理学の斯波真理子室長は,FH indexを用いた新たな診断基準を提案した。
同研究班平成19年度報告によると,
(1)LDL-C値のレベル
(2)家族歴
(3)黄色腫・アキレス腱肥厚の有無
(4)若年性角膜輪・冠動脈疾患の有無
(5)LDL受容体または関連遺伝子の変異の有無
−に応じて,それぞれ一定の点数を付与し,これら5項目の合計点(FH index)が6点以上であればFHの疑いが濃く,8点以上なら確定診断とする(表2)。

 


同室長はさらに,治療についても言及。
「成人FHに対しては,基本治療として食事療法と運動療法を行い,同時にスタチン投与を開始する。それで目標値まで低下しない場合はエゼチミブを併用,それでも十分な改善が得られなければ,他の脂質異常症治療薬を追加する。また,動脈硬化性疾患のスクリーニングとして,冠動脈疾患の検査,頸動脈エコー,心エコー,腹部エコーを1~2年に1回行う必要がある」と述べた。


二次予防より積極的な治療を
一方,動脈硬化性疾患の二次予防の治療に関して,2007年版では「生活習慣の改善とともに,LDL-C値100mg/dL未満を目標に薬物療法を考慮する」と記載された。
しかし,欧米では最近,より積極的な治療が提唱されている。
わが国でも,100mg/dL未満で十分なのか,あるいはより低い目標値を設定すべきとすればどのようなグループかといった点を検討していく必要がある。
さらに,高TG血症や低HDL-C血症に対する治療の進め方も課題となる。

順天堂大学循環器内科学の代田浩之教授は,より積極的なLDL-C低下療法の効果を検討した最近の研究データを紹介。
欧米では,有効性を示す種々の報告があること,より積極的なLDL-C低下療法が高リスク群で受け入れられていることを示した。わが国では,ストロングスタチンの効果を急性冠症候群(ACS)約300例で検討した試験(JAPAN-ACS)で,LDL-C値低下とプラーク体積減少との間に有意な相関が見られなかったが,サブ解析では糖尿病合併例において相関が認められている。
また,同教授らが行った試験(Extended ESTABLISH)では,高リスク群であるACS症例において,LDL-C値100mg/dL未満を目標とする治療の有効性が認められたとした。

同教授は「イベント抑制効果という点でまだエビデンスは不足しているが,より積極的な治療を必要とするグループはおそらく存在する。今後,治療目標値をどこに置くかを含めて,積極的に議論していく必要がある」と述べた。


包括的な観点からの策定を
同学会は現在,動脈硬化性疾患のリスクを包括的に管理できる専門医制度の検討を進めている。
この点を踏まえ,座長の島本学長は「ガイドラインは包括的な観点から作成することが求められ,次の改訂もその考え方で一致している」と述べるとともに,総合的なアルゴリズムを他学会との協力体制のもとで策定していく必要性を強調した。

海外のガイドラインのトレンドについて報告した,千葉大学大学院細胞治療内科学の横手幸太郎教授も「動脈硬化性疾患を予防するには,関連学会が連携し,脂質だけでなく,あらゆる因子を並列でケアしていく姿勢を重視する考え方が欧州,さらに米国でも浸透しつつある。
本学会も,生活習慣病を包括的に管理する統合的ガイドラインの作成を目指す時期に来ている」と訴えた。

出典 Medical Tribune 2010.9.2
版権 メディカルトリビューン社


<番外編>
先天性心疾患の原因発見 カルシウム調節の異常で
胎児の時に、細胞中のカルシウム濃度を調節する機構に異常があると、心室の壁ができないなど、先天性の心疾患につながることを、慶応大と理化学研究所のチームがマウスを使った実験で突き止め、1日付の米科学誌プロスワンに発表した。

日本では出生児の約1%、年間1万人以上が、心臓に何らかの病気を持っている。
同大小児科の山岸敬幸(やまぎし・ひろゆき)専任講師は「こうした病気の予防法開発に向け、手掛かりの一つになる」と話している。

チームは、体の細胞の中でカルシウム濃度の調節にかかわる「イノシトール三リン酸受容体」と呼ばれるタンパク質のうち、1型、2型という種類をつくることができないマウスの胎児を遺伝子操作で作製。
するとこのマウスは、心臓の厚い壁をつくる細胞ができなくなった。

心臓の壁や弁の細胞をつくるには、カルシウムイオンによってカルシニューリンという酵素が活性化される必要がある。
マウスが活性化したカルシニューリンをつくることができるよう、さらに遺伝子操作を加えると、細胞の数が増加したという。

出典 共同通信社 2010.9.2
版権 共同通信社

 


<きょうの一曲>
Andy Williams & Antonio Carlos Jobim - Girl From Ipanema
http://www.youtube.com/watch?v=lKfl15c-Kh0&feature=related

 

 



高梨 芳実  「卓上の向日葵」 12号 2010年 http://www.nagoyagallery.co.jp/exhibition/top.html

 


その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります。        

 

固定リンク