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##「心不全における心拍数の意義を初めて明確に示した」
#兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤幸人部長がSHIFT試験を解説
スウェーデン・ストックホルムで開催中の第32回欧州心臓病学会(ESC Congress 2010)で大きな注目を集めたSHIFT試験は,新規薬剤である心拍数低下薬ivabradineの上乗せで中等度から重度の心不全患者の予後を改善する可能性を示した〔1次評価項目の「心血管死+心不全による入院」が有意(P<0.0001)に低下。その効果はおもに入院回避によるもの〕。
一方で,9割程度に投与されていたβ遮断薬は推奨量への到達度が低く,心拍数もベースラインの平均値が80拍/分と多くなっていた。
実地の心不全治療の厳しさと可能性を示した試験だ。
#まずはβ遮断薬の処方徹底を
#(1)実地の心不全診療において心拍数管理はどの程度,重視されてきたのか。
目標値についてコンセンサスは得られていたのか
心不全患者の心拍数が多いと予後が悪いと考えられてはいたが,多数例でのデータベースがなく,目標値も不明であった。この点で,今回のSHIFT試験の意義の1つとして,心不全における心拍数の意義を初めて明確に示した点が挙げられる。
心拍数管理の現状としては,β遮断薬で十分にできない場合,ジゴキシンを少量用いている。
#(2)サブ解析では,心拍数77拍/分以上でivabradineの有意な予後改善効果が認められていた。
SHIFT試験の研究者らは,70拍/分以上の場合には積極的に介入し,60拍/分以下にコントロールすべきとしているが,妥当であるか
Ivabradineの有効性は,今後,心不全の他の母集団でも再現性を持って証明されなければならないだろう。
心不全治療のゴールドスタンダードと位置付けられるACE阻害薬やβ遮断薬では,心不全の重症度や性別,年齢,虚血の有無など,種々の母集団で検証されたうえで,すべての集団での効果が確認されている。
また,頻脈になっているのは代償機序の場合もあるので,一律に心拍数を下げてよいかどうか,現時点では不明で,慎重に考えるべきだろう。
特に,非代償期である急性心不全については注意が必要だ。
また,ivabradineの効果が,徐脈作用だけによるのかどうかも不明で,詳細な検討結果を待ちたい。
#(3)SHIFT試験でのβ遮断薬の投与率は9割にのぼったが,推奨量の到達度は低く,あらためて同薬による管理の難しさが浮き彫りにされた
β遮断薬の投与率,推奨量への到達について,日本では専門施設で80%程度となっている。
投与量はカルベジロールを例に取ると平均7mg/日くらいである。実臨床では,非専門医が診療に当たることも多く,β遮断薬をtitration(増量)していくことは,処方率を上げること以上に困難であるのが実情だ。
今後も,日本の実臨床,特に非循環器専門医において推奨量への到達がクリアできるとは考えにくい。
処方率も非専門医では低いので,推奨量への到達よりもむしろ低用量でもよしとして,まずは一般施設での処方率を上げることが日本では優先課題と思われる。
#望まれるのはさまざまな患者群での効果の再現性
(4)心不全を対象にした試験では,死亡と心不全による入院が1次評価項目に設定されることが多い。
ハードエンドポイントである死亡とさまざまな要因が関係すると思われる入院が同列に扱われることは妥当か
心不全入院というエンドポイントは,死亡というエンドポイントよりはバイアスがかかるが,「心不全が悪化して入院する」というイベントを作為的に操作できるものではなく,「心不全による入院」も臨床的には信頼できるエンドポイントと考えている。
#(5)SHIFT試験では,心不全による死亡リスクも有意(P=0.014)に低下していたが,どのように評価できるか
今回の結果については,総死亡についてリスク低下の傾向(P=0.092)が認められたのが,最も評価できる点だ。
また,心血管疾患死についてもリスク低下の傾向(P=0.128)が認められており,次に評価できる点だ。
ただし,仮に死亡リスクに全く差がなく,心不全による入院というエンドポイントのみでリスク低下が認められたとしても,入退院を回避してQOLを上げ,医療費を抑制する観点からは十分意義のある結果と捉えることができるだろう。
(6)心拍数を低下する作用を持ちながら心筋収縮に対しては影響しないivabradineは,心不全の管理においてどのような意味を持つか
前述のように,今回のような結果がさまざまな背景の心不全患者に再現性を持って確認されるならば,画期的な追加治療薬となるだろう。
出典 NM online 2010.8.31
版権 日経BP社
<番外編>
#静脈・動脈を同時に作成 心筋梗塞治療に道 東京都臨床医研、マウス実験で
マウスの皮膚の下に人工的に動脈と静脈を同時に作ることに、東京都臨床医学総合研究所などの研究チームが世界で初めて成功し、米医学誌サーキュレーションに発表した。心筋梗塞などの治療法開発が期待される。
研究チームは乳がん発症を抑える機能を持った遺伝子が、皮膚の下に正常な血管を作るのを妨げる「ストッパー」という役割も果たしていることを発見した。
そこで、ストッパー機能を消す分子を新たに作り出し、マウスにこの分子を体内で作らせる物質を注射。
5日目には、注射をしていないマウスに比べ、約10倍の長さの動脈と静脈が作られることを確認した。
人工的に血管を作る方法はこれまでもあったが、作られたのは動脈か静脈の片方のみだったほか、血管はもろく実用的ではなかった。
同研究所の芝崎太プロジェクトリーダーは「今後、サルやブタなどの大型動物で心筋梗塞が治るかを確認しなければならないが、早ければ5年程度で実用化できるのではないか」と話す。
出典 毎日新聞 2010.9.2
版権 毎日新聞社
<きょうの一曲> Beethoven, 7th Symphony, 2nd Movement
Beethoven, 7th Symphony, 2nd Movement (David Zinman, Tonhalle-Orchestra, Zurich)
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
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井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
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