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きょうは慢性腎臓病(CKD),「CKDにおける脂質低下療法の意義」についての座談会で勉強しました。
CKDという概念は、今となっては些か食傷気味な話題ではあります。
しかし、「脂質低下療法」という新しい切り口での座談会なので新しい知識が得られると思いました。
慢性腎臓病(CKD)は腎臓の構造的・機能的異常が慢性的に持続する状態で,日本では成人の約8人に1人が罹患している。
CKDは末期腎不全のリスクとなるほか,脳・心血管疾患の発症率も上昇させることから,新たな国民病として社会的にも注目されている。
一方,CKDの発症には脂質異常症,高血圧,糖尿病,肥満,メタボリックシンドロームなどが関与するため,生活習慣病指導や,薬物療法を含む早期からの集学的治療によってリスクを回避・低減し,予後を改善できる可能性がある。
CKDへの新たな治療アプローチを考える
木村 健二郎 氏(司会) 聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 教授
阿部 高明 氏 東北大学大学院医工学研究科 分子病態医工学分野 医学系研究科 病態液性制御学分野 教授
安田 宜成 氏 名古屋大学CKD地域連携システム寄附講座 腎臓内科 准教授
中村 司 氏 新松戸中央総合病院 腎臓内科 部長
CKDにおける脂質低下療法の現状と管理目標
木村
Steno-2 Studyでは,糖尿病患者を対象に通常治療群と,血清脂質や血圧などを厳格に管理する積極的治療群に分け,7~8年追跡し,積極的治療群において心血管疾患だけでなく,腎症や神経障害も減少することが示されました。
すなわち,集学的治療にはさまざまな介入効果があると考えられます。
安田(CKDにおける脂質管理はどのように考えればよいか)
現在,CKD患者さんの脂質管理については日本腎臓学会の「CKD診療ガイド2009」で言及され,LDL-コレステロール(LDL-C)を120mg/dL未満,可能であれば100mg/dL未満に管理することが示されています。
一方で,動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版では,腎機能低下や尿蛋白はリスクとして含まれておらず,具体的な目標値はありません。
この点は現在,動脈硬化性疾患予防ガイドラインが改訂準備中とのことですから,日本腎臓学会からも働きかける必要があると考えています。
中村
血清脂質を下げるとCKDが改善されるというデータはあるのでしょうか。
(私的コメント;鋭い質問です)
安田
今のところは冠動脈疾患をエンドポイントとしておいた臨床試験で,腎機能のデータが得られた一部の症例を用いたサブ解析の結果が多いのが現状です。
(私的コメント;トーンダウン)
木村
CKDにおける脂質管理のエビデンスの確立には,腎機能に着目した前向き試験が必要ですね。
中村先生は,日常診療において,CKDの患者さんの血清脂質をどのように管理されていますか。
中村(日常診療におけるCKDのの血清脂質管理)
当院のCKD患者さんは約1,500例で,そのうち約半数が脂質異常症と糖尿病を合併しており,栄養管理とともにスタチンを投与し,しっかりと脂質を管理しています。
ただし一般的に,腎機能低下の患者さんではスタチンが慎重投与になっていますので,ステージ3,4などの腎機能が低下している患者さんには通常,低用量から投与することにしています。
安田
たしかに腎機能が低下した患者さんでは副作用が多い傾向があるようですので,注意喚起が必要と思われます。
ただ,あまり注意喚起されすぎると,患者さんによっては過度に心配するあまり,服薬コンプライアンスが低下する場合があります。
こうしたことから,医師は患者さんに安全性の情報とともに薬の効果や投与の目的をもっと明確に説明し,また薬剤師と情報を共有する必要がありますね。
臨床的にスタチンが及ぼす腎機能への影響
木村
近年スタチンの腎機能への影響が注目を浴びつつあります。
今回,日本人約2万例のピタバスタチン(リバロ)の安全性・有効性を検証する大規模プロスペクティブ調査「LIVES Study」から,腎機能の指標としてeGFRに注目したサブ解析結果が報告されました。
LIVES Studyの症例のうちeGFRが60mL/min/1.73m2未満の方の血清脂質とeGFRに対するピタバスタチンの長期効果を検討しました。
その結果,104週でLDL-Cが31.3%低下し,eGFRが5.4mL/min/1.73m2有意に上昇しました(図1)。
またeGFRの推移は安定した上昇を示していました。

阿部
通常,腎機能は経年的に低下していくものですので,2年間にわたりeGFRが上昇したということは非常に意義深いと思います。
木村
大規模プロスペクティブ調査LIVES studyのサブ解析の結果が示されましたが,安田先生は,ピタバスタチンの腎臓への影響を前向きに検討されているそうですね。
安田
はい。CKDを合併した高コレステロール血症患者さんの腎機能に対するピタバスタチンの影響を評価しています(図2)。
ステージ3の安定したCKDで脂質低下療法が必要な患者さんを対象としています。
一次エンドポイントは投与6か月後のイヌリンクリアランスを用いた糸球体濾過量の変化量,二次エンドポイントはeGFRの変化量・変化率などです。まだ16例の解析に過ぎませんが,イヌリンクリアランスの上昇傾向が認められています。

中村(CKDにおけるスタチンの蛋白尿に及ぼす影響)
小規模ですが,私たちは非糖尿病性のCKDで高コレステロール血症を合併した患者さん10例でピタバスタチン2mg/日が及ぼす影響を評価しました。
投与前のLDL-Cは162.6mg/dLでしたが,6か月後には97.9mg/dLまで低下し,尿蛋白,尿細管障害マーカーのL-FABP,酸化ストレスマーカーの8-OHdGも有意に低下しました(図3)。

安田
単にLDL-Cを下げることが心血管イベント予防に重要なのではなく,スタチン治療自体にベネフィットがあるという印象を受けますね。
中村
ピタバスタチンは尿蛋白に対する好影響も期待でき,CKDを合併した高コレステロール血症の患者さんの治療に期待の持てる薬剤だと思います。
スタチンの腎保護作用のメカニズム
木村
eGFR低下と尿蛋白はCKDのリスク因子ですから,それらの改善はCKDの診療においてきわめて重要なデータだと思います。
スタチンによる腎保護の機序については内皮機能改善,炎症抑制,酸化ストレス抑制などが考えられますが,ほかにどのような機序が想定されるのでしょうか。
阿部
一つの機序として,スタチンが尿毒症毒素の排泄を促進する可能性を考えられます。
腎機能が悪化しますと,尿毒症毒素が蓄積してさらに腎障害が誘発され,侵襲が起きるという悪循環が形成されます。
われわれが発見したSLCO4C1は,ヒト腎臓近位尿細管に特異的に発現して尿毒症毒素のインドキシル硫酸を血中から排泄させる有機アニオントランスポーターです。腎不全では,SLCO4C1の発現が低下し,尿毒症毒素の蓄積の原因となります。
そこで,SLCO4C1の転写活性に対するスタチンの作用を検討したところ,評価したすべてのスタチンがSLCO4C1の転写を促進し,ピタバスタチンも良好な作用を示しました(図4)。
臨床ではそれぞれ投与量も違いますし,この結果ですべてを説明できませんが,スタチンによってSLCO4C1遺伝子の発現が調節されることが示されました。

出典 Medical Tribune 2010.8.26(一部改変)
版権 メディカルトリビューン社
<関連サイト>
CKDとスタチン
http://blog.m3.com/reed/20090220/CKD_
CKDの脂質管理とスタチン
http://blog.m3.com/reed/20100614/CKD_
<追記>
CKDにおける脂質管理については
コレステロールの吸収と合成のバランスを見据えたLDL-C低下療法
http://blog.m3.com/reed/20100515/_LDL-C_
で質問をいただいています。
その他