戯れ言たれる侏儒
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PARTNER試験

戯れ言たれる侏儒 / 2010.09.30 00:44 / 推薦数 : 0

経カテーテル的大動脈弁留置術が大動脈弁狭窄症の生命予後を改善
PARTNER試験から

研究の背景:根本的治療は外科手術だが,高齢者では適応に困ることも
大動脈弁狭窄症は軽症の場合は経過観察可能な疾患である。
しかし加齢とともに進行し,労作時の胸痛や心不全などの症状が発症し始めると急激に病状が悪化してゆき,放置すれば致命的経過をたどる。
現在まで根本的治療は外科手術しかなく,合併症の多い高齢者では手術適応に困ることもしばしばある。

カテーテルを用いて生体弁を大動脈弁の病変部に留置する経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)は2002年に初めて報告されたが,著しい速さで手技の改良が行われ,良好な長期予後も見込めるようになってきた。
N Engl J Med9月22日オンライン版に掲載されたPARTNER試験は,欧米の21施設で外科手術の適応でないと判断された重症の大動脈弁狭窄症患者を対象に,TAVI群と経皮的大動脈弁バルーン形成術を含む従来治療群(非TAVI群)を比較した最初の多施設試験である。


研究のポイント:総死亡率,心血管死亡率が著明に減少
外科手術が適応でないと判断された大動脈弁狭窄症患者358例を対象として,TAVI群179例と非TAVI群179例に割り付けられた。
デバイスはウシ生体弁を使用したEdwards SAPIEN heart valve systemを用いた。
手技は全身麻酔下に経食道エコーガイド下で行われ,大動脈弁バルーン形成術によって大動脈弁を拡大した直後に続いて行われた。
大動脈弁輪が著明に拡大しているためにTAVIを断念した症例は2例であった。

TAVIの手技に直接起因する24時間以内の死亡は1.1%,脳卒中は1.7%であったが,緊急手術は認められなかった。

1次評価項目の1年後の総死亡率はTAVI群で有意な改善が認められた(TAVI群30.7% vs. 非TAVI群50.7%,ハザード比0.55,95%CI 0.40~0.74,P<0.001;図1)。
心血管死亡率もTAVI群で有意に改善した(TAVI群20.5% vs. 非TAVI群44.6%,ハザード比0.39,95%CI 0.27~0.56,P<0.001;図2)。

 



 

1年後生存した患者において,TAVI群ではニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類III+IV度の患者の割合が非TAVI群よりも有意に低率であった(TAVI群25.2% vs.非TAVI群58.0%, P

 一方,30日後の脳卒中(TAVI群 5.0% vs.非TAVI群1.1%, P=0.06),血管合併症(TAVI群16.2% vs.非TAVI群1.1%, P<0.001)については,TAVI群で多く認められた。TAVI群の生体弁としての機能(大動脈弁弁口面積,大動脈弁圧較差)は1年後も保たれた。1年後,中等度以上の大動脈弁閉鎖不全はTAVI群で4.2%,非TAVI群で15.2%であった。
佐藤先生の考察:重症合併症の多い患者で非常に良好な成績だが,脳卒中の増加が問題
TAVIによる大動脈弁狭窄症治療が,従来治療と比較して,生存率を著明に改善させることを報告した最初の試験である。
従来,合併症のために手術適応がないと判断された高齢者では内科治療を行うのみであったが,当然予後は悪い。本治療は,そのような合併症のある患者において,有効な治療手段の1つであることが判明した。
なお,従来治療群には経皮的大動脈弁バルーン形成術も含まれたが(過去の既往も含めると83.8%),従来治療群の1年後死亡率は50%であるので,TAVIを続いて行わない限り,バルーン形成術単独治療に予後改善効果は期待できないと思われる。

今回の試験で驚嘆すべきは,患者群は平均年齢83歳であり,背景因子として冠動脈疾患合併(70%)や冠動脈バイパス術(CABG)などの冠動脈治療後(40%),脳血管疾患合併(27%),末梢血管合併(30%),慢性閉塞性肺疾患(COPD;50%),腎不全合併(5~9%)の割合が著明に高い,非常に重症の合併症の多い患者群が対象であったことである。
しかも,術前のNYHA心機能分類は90%以上の患者がNYHA ⅢまたはⅣ度であり,患者の20%は過去にバルーンによる大動脈弁形成術を受けていた。

さらに,術前の大動脈弁弁口面積は0.6cm2と,デバイスを通過させるのにも困難が予想されるほど小さかった。
また,非TAVI群では1年後,結果として大動脈弁置換術を行った患者が9.5%,バルーン形成術を行った患者が37%であったが,TAVI群ではそれぞれ1.1%,0.6%であった。
感染性心内膜炎の合併もTAVI群と非TAVI群で差が認められていない。 

では,この治療法は外科手術全般に置き換わるのだろうか。
今回,問題となった点は脳卒中がTAVI群で多く認められた点である。
デバイスが小型になり,脳血管の保護デバイスが改良されるなどによって,この点がクリアできれば第一選択としての治療法になる可能性もある。
しかし,当面はこの合併症が見られるために,「合併症のために外科手術の適応がなく,従来の内科治療では予後改善の期待できない患者」が対象になると思われる。

出典 MT pro 2010.9.28
版権 メディカルトリビューン社

 

<関連サイト>
経カテーテルでの弁置換術
http://blog.m3.com/reed/20100726/1

 

<きょうの一曲>
モーツァルト/ピアノ・ソナタ第9番 全楽章/演奏:仲田 みずほ
http://www.youtube.com/watch?v=VLBWndHMdpw


モーツァルト : ピアノ・ソナタ 第8(9)番 ニ長調 / Sonate für Klavier Nr.8 D-Dur K.311
http://www.piano.or.jp/enc/dictionary/composer/mozart_a/001282.html
モーツァルト:ピアノソナタ第9番 ニ長調 K 311
http://www.yung.jp/yungdb/op.php?id=911
モーツァルト ピアノ・ソナタ第9番ニ長調K.311
http://www7a.biglobe.ne.jp/~hainn-hitorigoto/m-090mozart.html

 

楢原健三 『富士山景』 リトグラフ
http://www.komorebi.co.jp/item_photo/h0317_02.jpg

 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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(内科医向き)
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国内でのCABGの死亡率

戯れ言たれる侏儒 / 2010.09.29 00:21 / 推薦数 : 0

##CABG全国調査において死亡率がわずかながら上昇
##Off-pumpからOn-pumpへの移行例での問題点が浮き彫りに
わが国の冠動脈バイパス術(CABG)では,人工心肺を使用しない低侵襲の心拍動下バイパス手術(Off-pump CABG)が普及しており,日本冠動脈外科学会の全国調査の結果でも2004年以降はCABG全体の60%超を占めてきた。
より難易度の高い手術においてその威力を発揮すると言われるOff-pump CABGであるが,欧米で行われたOn-pump CABGとのランダム化比較試験(ROOBY試験;N Engl J Med2009; 361: 1827-1837)では,その有用性が認められず論議を呼んでいた。

On-pump versus off-pump coronary-artery bypass surgery.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19890125

低リスク例が対象の同試験で結論を導くには問題があると日本の専門家も指摘しているが,今回発表されたCABGの全国調査では,Off-pumpからOn-pumpへ移行した症例における死亡率が高くなっており,これが単独CABGおよびCABG単独初回待機手術の死亡率にわずかながら上昇をもたらす結果となっていた。
わが国の高水準のCABG成績を維持するためにも,より適切な手術法の選択が必要であることが示された。
調査結果は同学会理事長の瀬在幸安氏(前日本大学総長)が第15回同学会(7月29~30日,大阪市)で発表した。

#Off-pump CABGの割合は横ばい
日本冠動脈外科学会ではわが国の冠動脈手術の現状を明らかにする目的で,研究会当時の1970年から全国調査を定期的に実施,学会に昇格した1996年以降は毎年行っている。
アンケート調査委員会を設置し,その結果は同学会公式サイトでも公開している。

同学会公式サイト
http://www.jacas.org/enquete/

2009年の調査では,全国419施設にアンケートを行い,70.2%から回答を得た。
分析対象となったCABGは1万4,262例(単独手術1万659例,合併手術3,603例)。
CABG単独手術のうち,初回待機手術は8,974例で,Off-pump CABGが5,939例,On-pump CABGは3,035例。
Off-pump CABGの割合は66%で,2007年以降ほぼ横ばいで推移している。
一方,初回待機手術以外での単独手術のうちOff-pump CABGは50%で,昨年より4ポイント低下した。

#CABG単独初回待機手術の死亡率がわずかに上昇,1%台に
今回の結果で特筆されるのは,これまで年々低下してきていた死亡率が上昇に転じた点だ。
単独CABG全体の死亡率は2.12%と前年の1.46%から0.66ポイント上昇,CABG単独初回待機手術における死亡率も0.81%から0.39ポイント上昇し,1.20%となった(図1)。
瀬在氏は,全国調査結果としては依然高水準にあることを確認しながらも,CABG単独初回待機手術の死亡率が再び1%台になったことに対して懸念を示した。

##Off-pumpからOn-pump移行で死亡率上昇,脳血管障害の発生も増大
この背景としては,Off-pump CABGからOn-pump CABGに移行した場合の死亡率が6.42%と,前年の1.34%を大きく上回っていることが挙げられる。
CABG単独初回待機手術におけるOff-pump CABG完遂率は98.2%と前年よりも高くなっていることから,高リスク例に対して行われたOff-pump CABGにおいてOn-pumpに移行せざるをえないような症例で死亡率が高くなり,これが全体の成績に大きく影響したことが推測される。

また,初回待機手術以外でもOff-pump CABGにおける死亡率が4.98%と前年の2.55%を大きく上回っていた。
ただし,初回待機手術以外の成績については心拍動下のOn-pump CABGの死亡率が11.78%と高く,On-pump CABGへの移行例の死亡率が高いと一概に結論付けることはできない。

なお,左冠動脈主幹部および三枝病変を対象に行われた内科的インターベンションとCABGのランダム比較試験(SYNTAX試験;N Engl J Med2009; 360: 961-972)では,1年後の総死亡率や心筋梗塞発症率はCABGで少なかったものの,脳血管障害が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)群の0.6%に対してCABG群では2.2%と高くなっていた。

SYNTAX試験;N Engl J Med2009; 360: 961-972
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19228612
同試験のOff-pump CABG実施率が15%程度と日本の実態とは懸け離れていることから,日本において脳血管障害が実際にどの程度のリスクであるのか,内科サイドからの関心も高まっていた。
このような背景を受け,今回の調査では,単独CABGの脳卒中発生率が示された。

この結果,全体の脳卒中発生率は1.004%と低く,さらにOff-pump CABG完遂例については0.67%でOn-pump CABG症例よりも低率だった。
一方,Off-pumpからOn-pumpへ移行した場合は2.94%と高くなっており,脳血管障害についてもOff-pump CABGで完遂できなかった症例が問題となることが明らかになった(図2)。

なお,単独CABGにおけるグラフト選択については,内胸動脈が約半分(左内胸動脈が35.2%,右内胸動脈が13.2%)を占めていた。
日本のCABGは,医師の高い技術的水準のもと,低侵襲のOff-pumpや,長期開存が望める動脈グラフトの選択といった試みを積極的に推進してきている。
一部のハイボリューム施設に限定しない全国調査において高水準の結果を残してきている希有な状況であるだけに,適切な手術法の選択によって再びCABGの成績において死亡率が減少に転じることを期待したい。

出典 MT pro 2010.8.3
版権 メディカルトリビューン社

<きょうの一曲>
フジコ・ヘミング J.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲集 BWV846-BWV847
http://www.youtube.com/watch?v=ehkc1jb32Xc
平均律クラヴィーア曲集
http://ja.wikipedia.org/wiki/平均律クラヴィーア曲集


山本彪一 『バラ』 油彩
http://www.seikougarou.co.jp/sell/yamamotohyouichi/751.html


 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
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井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
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2010年9月20日から24日まで開催されている(いた)第46回欧州糖尿病学会(EASD2010、スウェーデン・ストックホルム)で、1型糖尿病において、血清AGEs(終末糖化産物)が血管イベントの発生や総死亡率の独立したリスク因子である可能性が示されました。
1993年から2006年までの、平均約12年の追跡研究で明らかになったということで、オランダのマーストリヒト大学メディカル・センターのJ.W.M. Nin氏が報告しました。
血清AGEsは心血管疾患や総死亡率の独立したリスク因子である可能性
糖と蛋白質が反応して生成される物質である終末糖化産物(AGEs;advanced glycation endproducts)は、活性酸素を産生することにより糖尿病の合併症を引き起こす可能性があるとされている。
演者らは、AGEsが、病態生理学的に高血糖と血管合併症の進行を結び付ける要素であるかを明らかにするために、1型糖尿病の患者を対象に、血症AGEsと心血管疾患(CVD)および総死亡率との関係を調べた。

対象は、CVDの経験がない1型の糖尿病腎症の患者169人と、1型の糖尿病で正常アルブミン尿の患者170人(うち男性205人、平均年齢41±10歳)で、前向きに観察した。

AGEsのスコアは、Nε-(カルボキシメチル)リジン(CEL)、Nε-(カルボキシエチル)リジン(CML)、ペントシジンのそれぞれのzスコアの平均値とした。
追跡期間中央値は12.3年であった。AGEsと心血管疾患およびAGEsと総死亡率の関係はコックス回帰分析した。

追跡期間中、82人(24.2%)が死亡し、85人(25.1%)にCVDが発生した。また、3人は追跡できなくなった。
心血管疾患は12.3年の観察期間中26人/1000人/年。総死亡は12.6年の観察期間中21人/1000人/年だった。

CVDを発症した患者と発症しなかった患者では、年齢、糖尿病の罹病年数、腎障害の有無、HbA1c、コレステロール、平均血圧などに有意差はなかった。
そこでデータについて、年齢やHbA1c、平均血圧、喫煙習慣、総コレステロール、腎機能など、従来から指摘されているCVDリスク因子について補正を行った。
その結果、心血管疾患の罹患率および死亡率と総死亡率は、従来から言われているCVDリスク因子とは無関係に、AGEsのベースラインレベルが高いほど増加した。
AGEsスコアが1 SD増えるごとに、それぞれハザード比(HR)は1.30(95%信頼区間1.02〜1.65)、1.29(95%信頼区間1.01〜1.65)だった。

ハザード比は、推定糸球体濾過率(eGFR)、軽度の炎症、動脈壁の硬化で調整しても、それぞれ1.16(95%信頼区間0.89〜1.51)、1.19(95%信頼区間0.90〜1.57)だった。
AGEsが高い患者では、AGEsの値はベースラインのeGFRと逆相関しておりeGFRが低く腎機能が悪い人ほど、AGEsは高かった(標準化回帰係数=-0.29、95%信頼区間:-0.38〜-0.20)。

このことから、J.W.M. Nin氏は、「血清AGEs値が高いことは、年齢やHbA1c、平均血圧、喫煙習慣、総コレステロール、腎機能などとは独立したCVDのリスク因子である可能性がある。また、腎機能や血管内皮の障害、炎症、血圧とも完全に独立したリスク因子と考えられる」などと考察した。

出典 NM online 2010.9.22
版権 日経BP社


<AGEs 関連サイト>
AGEs
http://hobab.fc2web.com/sub4-AGEs.htm

生体内糖化反応(グリケーション)とAGEs
http://ebn.arkray.co.jp/disciplines/glycation/ages-01/

AGEs(糖化最終産物)に関するニュース(Amrit不老不死研究所)
http://amrit-lab.com/amrit-age.html

糖化
http://www.yonei-labo.com/aboutus/saccharification.html

生体内での蛋白糖化反応の意義
http://www.higo.ne.jp/anal-bio-sci13/NewFiles/takeuchi.html

[PDF] Microsoft PowerPoint - kumamoto6
http://jstshingi.jp/abst/p/08/03/kumamoto6.pdf

[PDF] 生活習慣病におけるTAGE(toxic AGEs)病因説*
http://www.hokuriku-u.ac.jp/library/pdf/kiyo28/yaku3.pdf

 

<私的コメント>
1型糖尿病において、血清AGEsが心血管疾患(CVD)および総死亡率の独立したリスク因子である、という報告です。
そこで誰もが考える疑問があります。
それは2型糖尿病ではどうだろうか、非糖尿病ではどうなのか、ということです。

<番外編>
EASD2010での「2型糖尿病とLDLコレステロール値の関連」についての発表からです。
##2型糖尿病と血清脂質:LDLコレステロール値は冠動脈疾患の予測因子として最善ではない
臨床で汎用されているにもかかわらず,冠動脈疾患(CHD)のリスク因子として,LDLコレステロール(LDL-C)が最適であるかどうかは明らかでない。

Eliasson氏らは,スウェーデンのNDR(National Diabetes Register)データベースを用いた観察研究の結果から,2型糖尿病患者のCHDリスクを予測する上で,LDL-C値よりも非HDLコレステロール(HDL-C)/ HDL-C比がより有用な指標となりうることが示唆されたと報告した。

#2型糖尿病患者における各種血清脂質測定の意義を検討
スウェーデンのNDRは,糖尿病ケアの質の確保などを目的に1996年に開始された。毎年,全国の病院と一次医療機関から収集した外来患者の診療情報がデータベース化される。
この研究では,NDRのデータベースから,30~75歳の2型糖尿病患者2万3,001例(平均年齢62±9歳)のデータを解析対象とし,各種血清脂質レベルとCHDリスクとの関連が検討された。
ベースライン時(2003年)における心血管病の既往は15.5%,脂質低下薬服用は43.1%,血清脂質の平均値はLDL-Cが2.9mmol/L(112.1mg/dL),非HDL-Cが3.7mmol/L(143.1mg/dL),非HDL-C/HDL-C比が3.0などであった(表)。


#非HDL-C/HDL-C比上昇に伴いCHDリスクがほぼ直線的に増加
平均4.8年の観察期間中に,1,709例の致死的および非致死的CHDの発症が確認された。
Cox比例ハザードモデルによる回帰分析の結果では,臨床的背景や治療に関する因子で調整した各種脂質測定値は致死的および非致死的CHDリスクとそれぞれ有意に関連しており,そのリスクはベースライン時の値が1SD増すごとに,非HDL-C/HDL-C比では最も高い1.21倍,非HDL-Cで1.18倍,トリグリセライド(TG)/HDL-C比で1.15倍,LDL-Cで1.14倍に増加した(すべてP<0.001)。

また,脂質測定レベルとその後5年間のCHD発生率との関係を3次スプライン曲線でみると(図),LDL-Cは,高値では致死的および非致死的CHDが急増した一方,どの範囲でも致死的CHDの増加は少なかった。
非HDL-Cは,上昇に伴い致死的および非致死的CHDが少しずつ増加したが,致死的CHDの増加は少なかった。
これに対し,非HDL-C/HDL-C比は,上昇に伴い致死的および非致死的CHDがほぼ直線的に増加することが示された。

以上から,Eliasson氏は「非HDL-C/HDL-C比および非HDL-Cは,ともにLDL-Cよりも強くCHDリスクに関連していた。
脂質測定値が最低レベルであることによるCHDリスクの減少は,LDL-Cに比べて,非HDL-C/HDL-C比では大きく,同様に非HDL-Cでも若干大きかった。
これにより,2型糖尿病における非HDL-C/HDL-C比および非HDL-Cの,CHDリスクとの“the lower the better”の関係が示された」と述べた。

#順天堂大学大学院 河盛 隆造 教授(監修者)のコメント
糖尿病患者に認められる脂質異常の特徴は,低HDL-C血症,高TG血症であるが,一方で,高HDL-Cを示す患者も存在する。
HDL-C値が患者間でかなり異なっても,一律に高LDL-C血症がCHDのリスクとなるのかに関しては,今まで明らかでなかった。

今回の観察研究では,予測通り,LDL-Cの増加がCHDの発症ときれいに相関することが示されると同時に,非HDL-C/HDL-C比が,最もCHDリスクと相関することが示されている。
今後,非HDL-C/HDL-C比を用いた糖尿病患者における脂質異常コントロールのガイドラインに関しても,検討されるべきかもしれない。

http://www.medical-tribune.jp/cgi-local/easd2010.cgi/html/09_1235.html
版権 メディカル・トリビューン社


山中宣明 『韻』 岩彩
http://www.seikougarou.co.jp/sell/yamanakanobuaki/291.html

 

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高HDL-C値と低LDL値

戯れ言たれる侏儒 / 2010.09.27 00:00 / 推薦数 : 0

HDL-C値では予測できない
低LDL-C値達成患者の心血管リスク
一般人口ではHDLコレステロール(HDL-C)値が高いほど心血管イベントリスクは下がるが,Brigham and Women's病院(ボストン)心血管疾患予防センターのPaul M. Ridker教授らの研究によると,高用量スタチン療法でLDLコレステロール(LDL-C)値を大幅に低下させると,HDL-C値を上げても心血管リスクは変わらないという。
この結果はJUPITER試験に基づくもので,Lancet(2010; 376: 333-339)に発表された。

ロスバスタチンで試験
JUPITER試験では,LDL-C値が正常域の患者に強力なスタチン系薬ロスバスタチンを1日20mg投与し,西洋人にはまれなレベルまでLDL-C値を低下させた。中央値1.9年(最大5年)の追跡期間後,プラセボ群と比べてロスバスタチン群では心筋梗塞リスクが54%,脳卒中リスクが48%,血行再建施行率が46%,静脈血栓塞栓症リスクが43%,全死亡率が20%低かった。
Ridker教授らは今回の研究で,高用量スタチン療法開始後の残存心血管リスクが,ベースラインまたは治療期間中のHDL-C値と関連しているか否かについて分析した。
その結果,プラセボ群では,HDL-C値は依然,心血管リスクの予測因子で,HDL-C値が最高四分位の者では,心血管イベントのリスクが最低四分位の者の2分の1だった。
反対にロスバスタチン群では,HDL-C値と残存心血管リスクの間に有意な相関は認められなかった。

臨床試験での検討が必要
Ridker教授らは「HDL-C値は,心血管リスクの最初の評価指標として有用ではあるが,強力なスタチン療法を受けて非常に低い値のLDL-C値を達成した患者では,残存心血管リスクの予測因子とはならない」と結論付けている。
しかし,同教授らは「スタチン療法によりLDL-C値を低下させた後にHDL-C値を上昇させることにより,心臓アウトカムに改善が得られるか否かを確認することはきわめて重要な課題で,これは強力かつ有効なHDL-C上昇薬のランダム化比較試験によってのみ確認できる」と指摘している。
このような試験では,HDL-C値を大幅に上昇させることで,心血管系に対してスタチン療法の有益性を高めることができるか否かを検討することになるとしている。
ロンドン大学ハッター心血管研究所のDerek Hausenloy博士らは,同誌の付随論評(2010; 376: 305-306)で「強力なHDL-C上昇薬の登場により,LDL-C値が非常に低値の患者で“善玉コレステロール”値の上昇が心血管リスクを低下させるか否かについて,臨床試験で検討する必要がある」と述べている。

出典 Medical Tribune 2010.9.123
版権 メディカルトリビューン社

<私的コメント>
最近、
「体内で善玉コレステロール(HDL)の量が調整されるメカニズムの一端を、京都大、神戸市立医療センターなどのチームが解明した」
という見出しの新聞記事がありました。
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2010/09/27

<番外編 その1>
冠動脈形成の仕組み解明…京産大など、再生医療に期待
心臓の筋肉細胞に血液を供給する冠動脈が、受精卵で正常に形成される仕組みを、京都産業大の石井泰雄助教などが動物実験で突き止め、米科学誌に発表した。
心疾患患者の冠動脈を再生させる医療につながると期待される。

ニワトリの受精卵は、産み落とされてから2日目に、筋肉や血管などに成長する「中胚葉」の一部から心臓に向かって突起が伸びて特定の部分にくっつき、心臓表面を包み込む膜を作ってから冠動脈ができることがわかっているが、正確な場所に形成される仕組みは謎だった。

石井助教らは、心臓と突起の断片をシャーレの中で培養して、詳しく分析。心臓の一部から「BMP2」という骨形成たんぱく質が分泌され、突起を決まった場所へ導いていることがわかった。

石井助教は「人間も同様の仕組みがあると考えられる。iPS細胞(新型万能細胞)などから突起の細胞を作り、BMP2で正しい位置に血管を再生させる治療につながる」と話す。

出典 読売新聞 2010.9.26
版権 読売新聞社

 

<番外編 その2>
Excelステントの3年成績: CREATE試験
CREATE試験の3年追跡より、生体吸収性ポリマーを使用したシロリムス溶出ステントが実臨床で持続した安全性と有効性を示したことが、中国、Shenyang Northern HospitalのYaling Han氏によりTCT 2010 Poster Abstractセッションで発表された。
CREATE試験は、実臨床における生体吸収性ポリマーベースのシロリムス溶出ステント(Excelステント)を評価する市販後レジストリーであり、4ヶ国の59施設からExcelステントで治療を受けた2,077人が登録された。
クロピドグレルは6ヶ月、アスピリンは長期にわたる処方が推奨された。
MACEの発症率は、1年で2.7%、3年で4.5%、ARCの定義によるステント血栓症の発症率は1年で0.83%、3年で1.53%が記録された。
6ヶ月を超えるクロピドグレルによる治療は、6ヶ月から3年のMACE(5.2% vs 4.6%: p=0.629)とステント血栓症(1.5% vs 0.6%: p=0.052)のリスクを低下させなかった。

https://www.tcross.co.jp/details.php?category=tct100922&no=857&id= =


<きょうの一曲> Misty
Julie London-Misty
http://www.youtube.com/watch?v=oPnh2sa4Fek&feature=related

Ella Martin Grey - Misty (Erroll Garner)
http://www.youtube.com/watch?v=vSBC3Ucw51w&feature=PlayList&p=2167AFE0CFE182A0&index=0

MISTY ERROLL GARNER
http://www.youtube.com/watch?v=nAaZzQWk8V4

Johnny Mathis Misty
http://www.youtube.com/watch?v=Cd3pDM2f6Y8&feature=fvw


エロール・ガーナー/ミスティ
http://dellton.com/culture/jazz_piano_2/post_126.html

Misty(歌詞)
http://www014.upp.so-net.ne.jp/komati-nikki/misty.html
http://homepage3.nifty.com/piazza/sv/lyrics.html#a_jl_misty

 


熊谷守一 『バラ』 版画
http://www.seikougarou.co.jp/sell/kumagaimorikazu/1008.html

 

  その他 「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/ ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き)  井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~ http://wellfrog4.exblog.jp/  井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15 http://wellfrog3.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~ http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/  (内科医向き) 「井蛙」内科メモ帖  http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/   があります。        

 

 

 

 

 

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高齢者高血圧における至適な降圧目標値を明らかにするため,日本人を対象に実施されていたValsartan in Elderly Isolated Systolic Hypertension(VALISH)Studyの結果がこのほど発表されました(Ogihara T, et al. Hypertension 2010; 56: 196-202)。
同研究では,AT1受容体拮抗薬(ARB)バルサルタンを第一次薬として厳格に降圧療法を行っても有害事象が増加しないことが明らかになりました。
この試験の結果,今後の高齢者高血圧治療における方向性が示されました。

きょうは、このVALISHで勉強しました、


##VALISHの結果と高齢者高血圧の治療方針
##ARBを用いた厳格降圧療法の可能性が示される

司会
猿田 享男 氏 慶應義塾大学 名誉教授
出席(発言順)
荻原 俊男 氏 大阪大学 名誉教授/大阪府立急性期・総合医療センター 院長
島田 和幸 氏 自治医科大学附属病院 病院長/自治医科大学内科学講座循環器内科学部門 教授
松岡 博昭 氏 獨協医科大学 名誉教授/宇都宮中央病院 病院長
菊池 健次郎 氏 旭川医科大学 名誉教授/北海道循環器病院 常務理事
瀧下 修一 氏 琉球大学 名誉教授/沖縄リハビリテーション福祉学院 学院長
伊藤 貞嘉 氏 東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座 腎・高血圧・内分泌学分野 教授


#VALISH概要

#目的
日本人高齢者収縮期高血圧患者における降圧目標値の検討
#対象
70歳以上85歳未満の収縮期高血圧患者(SBP>160mmHgかつDBP<90mmHg)
#試験デザイン
前向き・無作為化・オープンラベル・エンドポイント盲検試験(PROBE法)
・国内461施設から3,260例を登録
・同意撤回/未追跡例を除外した解析適格例は3,079例(平均年齢76.1歳)
 厳格降圧群1,545例(平均ベースライン血169.5/81.7mmHg)
 緩徐降圧群1,534例(平均ベースライン血169.6/81.2mmHg)
・追跡期間:平均2.85年,中央値3.07年
#評価項目
一次エンドポイント(複合エンドポイント)
突然死,致死性・非致死性脳卒中,致死性・非致死性心筋梗塞,心不全および他の心疾患による死亡・入院,腎機能障害(Cr値倍化,Cr値>2.0mg/dLまたは透析導入のいずれか)
#結果
バルサルタン単剤治療率:厳格降圧群56.1%,緩徐降圧群57.6%
3年後の血圧:
厳格降圧群136.6/74.8mmHg,緩徐降圧群142.0/76.5mmHg(両群の血圧差:5.4/1.7mmHg,P<0.001)
一次エンドポイント:
1,000患者・年当たり厳格降圧群10.6件,緩徐降圧群12.0件(ハザード比0.89,95%信頼区間0.60〜1.31,P=0.383)
重篤な有害事象:
厳格降圧群5.6%,緩徐降圧群5.2%(P=0.61)

#バルサルタンを第一次薬として厳格な降圧を達成
猿田 
日本高血圧学会は,2000年に初めて発行した「高血圧治療ガイドライン(JSH)2000年版」より,高齢者高血圧における降圧目標値を設定しています。
しかしながら,JSH2000および改訂版のJSH2004を作成した当時は,至適な降圧目標値を示すエビデンスが不足していました。VALISHは,こうした背景のもとで実施されました。


荻原 (VALISHに結果)
VALISHでは,高齢者収縮期高血圧患者に対してARBであるバルサルタンを第一次薬とし,収縮期血圧(SBP)<140mmHgの厳格降圧群と140~149mmHgの緩徐降圧群における心血管イベントの発生頻度が比較されました。

試験開始3年後の血圧は,厳格降圧群136.6/74.8mmHg,緩徐降圧群142.0/76.5mmHgで,両群の血圧差は5.4/1.7mmHgでした(図1)。厳格降圧群のSBPは,試験開始から平均で33mmHg低下しました。

試験終了時にバルサルタン単独でコントロールされていた患者の割合は,厳格降圧群56.1%,緩徐降圧群57.6%でした(図2)。
試験開始3年後のバルサルタン平均投与量は,厳格降圧群91.2mg/日,緩徐降圧群88.1mg/日であり,厳格降圧群が有意に高値ではあるものの(P<0.001),その差は大きくありませんでした。

一次エンドポイントである複合心血管イベントの発生率は,Intension-to-treat(ITT)解析で厳格降圧群10.6/1,000患者・年,緩徐降圧群12.0/1,000患者・年で,両群間には有意差が認められず,per protocol解析でも両群間に有意差はありませんでした。
また,二次エンドポイントについても有意差は認められませんでした(図3)。
サブグループ解析では,性,年齢,BMI,ベースライン時の降圧療法,糖尿病,脂質異常症,CKDについて解析しましたが,いずれも有意差は認められませんでした。
ただし,両群の到達血圧別に検討したところ,SBP≧150mmHgの場合に心血管イベントリスクの著明な上昇が認められました。

以上の結果から,VALISHでは高齢者高血圧における至適な降圧目標値を見出すには至りませんでしたが,バルサルタンを第一次薬として厳格な降圧療法を行っても有害事象は増加しない点と,高齢者に対するバルサルタンの優れた降圧効果が示されたことの臨床的意義は大きいと考えます。
また,JSH2009で75歳以上かつSBP≧160mmHgの症例における降圧中間目標値に設定されたSBP<150mmHgに対しても一定のエビデンスが得られたと言えます。


#高齢者高血圧におけるVALISHの位置付け
島田 (高齢者高血圧を対象としたほかの臨床試験の中でVALISHはどのように位置付けられるのか)
SBP≧160mmHgの高齢者高血圧については,プラセボ対照試験で降圧治療の有用性が確認されています。
HYVET※1では,80歳以上の超高齢者に対する降圧治療の有用性も報告されています。
また,降圧薬の選択によって降圧治療の有用性に大きな差はないことも示されています。

※1 Beckett NS, et al. N Engl J Med 2008; 358(18): 1887-1898.

VALISHは,JATOS※2に続き至適な降圧目標値について検討した重要な研究ですが,結果はいずれも厳格降圧群と緩徐降圧群との間に心血管イベント発症リスクの差は認められませんでした。
しかしながら,VALISHで示されたSBP≧150mmHgで心血管イベント発症リスクが上昇するというデータは,CASE-J※3のサブ解析の結果とも合致しており,今後の治療方針に影響を与えることになると思います。

※2 JATOS Study Group. Hypertens Res 2008; 31(12): 2115-2127.
※3 Ogihara T, et al. Hypertens Res 2008; 31(8): 1595-1601.


松岡 
海外では,高齢者高血圧を対象に,降圧目標値を設定した前向き研究はありません。
この意味において,わが国で行われたVALISHは,JATOSとともに非常に意義深い研究であったと言えます。

#日本人の高齢者高血圧は比較的低リスク
猿田 
次に,厳格降圧群と緩徐降圧群の心血管イベント発症数が少なく,統計学的に有意差が認められなかった点はどのように捉えていますか。


菊池 
イベント発症が予測(日本のJMIC-B※4:冠動脈疾患合併高血圧とフラミンガム・ハート研究※5から)の約半数であり,これが両降圧群間の差異検出パワーの低下につながりました。
今回の対象が予測より低リスクであったことによると考えられます。

※4 Yui Y, et al. Hypertens Res 2004; 27: 181-191.
※5 Kannel WB. Am Heart J 1999; 138(3 part 2): 205-210.


瀧下 
JATOSと比べても,全死亡率および脳卒中の発症率が低く,明らかに低リスクであったものと思います。


荻原 
われわれは当初,VALISHの対象を高リスクだと想定していましたので,日本では欧米に比べて健康な高齢者が多いこと,医療者側がきめ細かい治療を行っていることなどの大きな違いがあると実感しました。
しかしながら,VALISHの結果は日本における実臨床を反映した結果だと考えますので,こうした成績を発信する意義は大きいと考えています。


伊藤 
VALISHでは心血管病の既往例や糖尿病の合併例が少なく,日本の高齢者のなかでも比較的健康な症例が対象であったと言えます。
こうした症例の治療に当たり,今回のVALISHの結果はよい参考になると思います。

#高齢者でも示されたバルサルタンの降圧効果
菊池 (バルサルタンの降圧効果について)
試験終了時にバルサルタン単独治療が半数以上を占めていますが,これは通常とは異なる食塩感受性でない軽症の高齢患者が多かったためと推察されます。
最終2受診時の降圧目標の達成率は厳格降圧で約3分の2,緩徐降圧で2分の1以下(140mmHg未満例が少なくない)でしたが,試験1年後,2年後の持続的達成率がイベント評価上,より重要ですので,サブ解析に期待したいですね。


瀧下 
厳格降圧群でもバルサルタン単独治療が多かったのは事実ですが,その多くが目標血圧に達していたとするデータは示されていません。
今後はバルサルタン単独治療を行った群で,血圧の分布を明確にすることも重要だと思います。


荻原 
厳密にはおっしゃる通りですが,厳格降圧群におけるSBPは平均33mmHg低下していますので,バルサルタン単独でも強力な降圧が得られていると考えています。


松岡 
厳格降圧群と緩徐降圧群で併用療法を受けた患者の割合があまり変わらないのですが,これはどのような理由が考えられますか。


荻原 
今後の解析を待っておりますが,Ca拮抗薬の投与量に差があると考えられます。

#JSH2009を補強するVALISHの結果
荻原 (VALISHの結果が今後のガイドラインに及ぼす影響)
降圧目標値に関しては,現時点でガイドラインを変更する必要はなく,むしろ補強された結果が得られたのではないかと思います。


島田 
高齢者高血圧については,今まではSBP≧160mmHgが研究のターゲットになっていました。
ところが,150mmHgを境にイベントリスクが上昇することがわかってくると,今後は140~160mmHgも検証すべき対象になる可能性が出てくると思います。


菊池 (薬剤選択について)
HYVETでは,利尿薬,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,β遮断薬,Ca拮抗薬の順に投与され,VALISHではARB,Ca拮抗薬,少量の利尿薬の順に投与されています。
VALISHではHYVETに比べ,重篤な有害事象が少なかったことから,ARBで治療を開始し,降圧が不十分であればCa拮抗薬を併用するという日本のガイドラインに沿った治療は安全性が高いことを示唆していると思います。


猿田 
VALISHでは,高齢者高血圧において厳格な降圧を達成し,かつ有害事象も少なかったことから,ARBバルサルタンを第一次薬に用いた降圧治療の有用性が確認できました。
降圧目標値について明確な結論は出ませんでしたが,少なくともJSH2009におけるSBP<150mmHgという中間目標値の意義が示されたことにより,今後の治療に役立つエビデンスが得られたと思います。


出典 MT pro 2010.9.23
版権 メディカルトリビューン社

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#心血管疾患リスク判定は内臓脂肪CT測定が最良
内臓脂肪蓄積が心血管疾患リスクである点は論を待たないが,正確な内臓脂肪量の測定は困難で,ウエスト周囲径(以下,腹囲)を代用せざるをえないのが現状だ。
日本ではCT測定による内臓脂肪面積と危険因子の関係が検討され,腹囲のカットオフ値が設定されたが,大規模な疫学研究は行われていなかった。
今回,6,000例規模のCT測定に基づく解析が行われ,内臓脂肪面積が心血管疾患のリスクファクター重複を予測する最良な指標であることが示された。
国立国際医療研究センター国際保健医療研究部の松下由実室長らの検討で,Diabetes Care(2010; 33: 2117-2119)に掲載された。
#国際的に不統一な腹囲測定法
メタボリックシンドロームの診断基準では,内臓脂肪蓄積の簡易指標として腹囲が用いられている。
しかし,腹囲は測定方法によって誤差が出やすい問題があり,また,その測定部位は国際的にも統一されていない。
腹囲について,松下室長らはHitachi Health Studyの前に行った研究で,世界で使用されている代表的な腹囲の4部位
(1)最も細い部位
(2)肋骨弓下線と前腸骨稜上線の中点
(3)臍位
(4)前腸骨稜上線
で測定し,血圧・脂質・血糖値のリスクの重複を予測する最適な部位を検討し,Obesityオンライン版に発表した。

この結果,最大値〔(4)〕と最小値〔(1)〕の差の平均は男性では3.9cmだったが,女性では12.6cmに及んだ。
しかし,リスク重複を予測する能力に測定部位による差は認められなかった。
日本のメタボリックシンドロームの診断基準では,基本的に(3)の臍位での測定を推奨しており,内臓脂肪面積100cm2に相当する腹囲が男性85cm,女性90cmとして,この値以上の場合を内臓脂肪型肥満と設定している。
メタボリックシンドロームを国際的に比較検討していくためにも,測定部位の国際的な統一が望まれる。


#リスク重複は内臓脂肪面積で最大
Hitachi Health Studyは,厚生労働省研究班として2008年に松下室長と茨城県日立市の日立製作所日立健康管理センタ放射線診断科の中川徹主任医長らが開始した共同研究である。
今回の解析対象は,2007~08年に同センタで人間ドックを受けた同社の社員とその配偶者のうち,
(1)26~75歳
(2)CT施行者
(3)生活様式と健康に関する質問票に回答
(4)重篤な既往歴(がん,脳血管疾患,心筋梗塞)なし
−を満たす受診者6,292例(うち男性5,606例)。職域コホートとして,今後74歳までの追跡が可能である理想的なスタディと言える。

CTで測定した内臓脂肪面積と皮下脂肪面積,腹囲,BMIの4つの体格指標について,中性脂肪高値,HDLコレステロール低値,血圧高値,高血糖のリスクが重複するオッズ比(OR)を算出した。
算出に当たっては,受診者を各体格指標の5分位に分け,対象背景を調整した。

その結果,リスクが2つ以上重複するORは,皮下脂肪面積,腹囲,BMIと比較して,内臓脂肪面積で最大となった(図)。
各体格指標の最小値群のORを1とした場合の最大値群のORは,内臓脂肪面積で男女とも9を超え,他の指標の1.5~2倍となったほか,最小値群から最大値群への移行に伴いリスクの重複に対するORが顕著に上昇することが示された。
一方,腹囲は径増大に伴うOR上昇が見られるものの,上昇曲線は緩徐で,最大値群でも皮下脂肪面積やBMIとの差はほとんど認められなかった。
さらに,腹囲のみでは内臓脂肪蓄積型であるのか皮下脂肪蓄積型かの判定が困難であることも,あらためて示された(図)。

同試験は,20~30年間に及ぶ長期追跡が予定されている。経年的な内臓脂肪面積の変化と,心血管疾患リスクの関係も検証される予定だ。


#国立国際医療研究センター 国際保健医療研究部 松下 由実室長のコメント
今回の解析から,CTで測定した内臓脂肪面積は,心血管疾患のリスクファクター重複を予測する指標として優れていることがあらためて実証された。
日本は,健康診断と保健指導の制度が整備された世界的にもまれな国であり,メタボリックシンドローム診断における腹囲の基準設定が与える影響は大きい。
このため,本試験の今後の一連の解析においても,医学的な視点に加えて医療経済的な視点なども考慮しなければならない。

現在,内臓脂肪蓄積の簡易指標として用いられている腹囲が,心血管疾患のリスクを正確に反映しきれていないことは本研究でも明らかになった。
今後,心血管疾患のリスクをより反映できる指標を模索していきたいと考えている。

出典 Medical Tribune 2010.9.23
版権 メディカルトリビューン社

<番外編 その1>
#ZES vs SES vs PES: ZEST試験2年追跡
ZEST試験の2年追跡より、Endeavorゾタロリムス溶出ステント(ZES)とCypherシロリムス溶出ステント(SES)のMACEの発症率は同等であり、Taxusパクリタクセル溶出ステント(PES)よりも低いことが、韓国、Asan Medical CenterのSeung-Jung Park氏によりTCT 2010 Twilightセッションで発表された。

ZEST試験では、韓国の19施設より実臨床においてPCIを受ける2,645人を登録し、ZES、SES、又はPESでの治療群に1:1:1に無作為に割り付けた。

2年追跡が96.5%で完了し、主要評価項目の心臓死/MI/虚血由来のTVRはZES群で11.3%、SES群で9.9%、SES群で15.2%であり、ZES群とSES群は同等(p=0.43)、PES群ではZES群(p=0.014)、SES群(p=0.001)と比較し有意に高かった。虚血由来のTVRはZES群6.0%で、SES群で3.1%、PES群で8.6%であり、SES群ではZES群(p=0.014)、PES群(p<0.001)と比較し有意に低く、ZES群ではPES群よりも有意に低かった(p=0.03)。死亡、MI、ステント血栓症の発症率は3群で類似していた。

https://www.tcross.co.jp/details.php?category=tct100922&no=856&id=


<番外編 その2>
#糖尿病患者におけるEES vs SES: ESSENCE-DIABETES試験
ESSENCE-DIABETES試験より、糖尿病患者においてXience Vステント(EES)による治療はCypherステント(SES)と比較して、8ヶ月のセグメント内late lossを有意に抑制したことが、韓国、Asan Medical CenterのYoung-Hak Kim氏によりTCT 2010 Twilightセッションで発表された。

ESSENCE-DIABETES試験では、韓国の15施設よりデノボ冠動脈病変を有する糖尿病患者300人を登録し、EES、又はSESでの治療群に無作為に割り付けた。
本試験では約80%の患者でIVUSが使用された。

主要評価項目である8ヶ月のセグメント内late lossはEES群で0.23mm、SES群で0.37mmであり、EES群で有意に低いことが示された(p=0.020)。
ステント内late loss(0.11mm vs 0.20mm)、12ヶ月の臨床追跡での死亡(1.3% vs 3.3%)、MI(0 vs 1.3%)、ステント血栓症(0.7% vs 0.7%)、虚血由来のTVR(0.7% vs 4.0%)、虚血由来のTLR(0.7% vs 2.6%)はいずれもEES群で低い傾向が見られたが、統計学的な有意差は示されなかった。

https://www.tcross.co.jp/details.php?category=tct100922&no=855&id=

 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
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(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
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わが国では,現在6種類のAT1受容体拮抗薬(ARB)が使用可能です。
ARBには共通のクラスエフェクトがあるが,各ARBに特有の臓器保護作用も知られています。
きょう勉強した座談会では,ARBのなかでもオルメサルタン メドキソミル(オルメテック®)〔以下,オルメサルタン〕のマルチファンクショナルな作用に焦点をあて,オルメサルタンが選択される根拠をめぐって,心血管保護作用の面から討論した内容となっています。
心血管保護作用からみたARB
堀内 正嗣 氏(司会)愛媛大学大学院医学系研究科 分子心血管生物・薬理学 教授
三浦 伸一郎 氏 福岡大学病院 循環器内科 診療教授
高井 真司 氏 大阪医科大学 薬理学 准教授


JSH2009において多くの積極的適応をもつARB
堀内 
わが国の「高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)」では,厳格な降圧の重要性が強調されるとともに5種類の主要降圧薬の積極的適応が示されています。
なかでもレニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬であるARBとACE阻害薬は,多くの病態に対して推奨されています。
しかし,ACE阻害薬のエビデンスの多くはわが国の承認用量より高用量で検討されたものであることや,わが国における投与量での降圧効果は比較的弱く,空咳などの副作用が日本人では多いことなどから,日本ではARBをおもに使う傾向にあると思われます。現在6種類のARBが使用可能ですが,最近では各ARB間に種々の違いがあることも明らかになってきました。
また,ARBオルメサルタンについては最近興味深い報告が相次いでいることから,これを中心にさまざまな角度からARBの降圧効果や臓器保護作用について討論したいと思います。


オルメサルタンの降圧・抗炎症作用
三浦 (オルメサルタンの降圧・抗炎症作用について)
まず,本態性高血圧患者における各種ARBの降圧効果を検討した海外のデータです
図1)。
最も低い血圧下降度を基準にし,その値を超えた降圧効果がその薬剤のもつ固有の効果といえるのではないかと思います。
そこで,オルメサルタンの降圧効果を検証するため,本態性高血圧患者30例に対し,他のARBを12週間投与した後,それに対応する量のオルメサルタン(18±1mg/日)に切り替えたところ,オルメサルタン投与4週後から収縮期血圧,拡張期血圧がともに有意に低下しました(図2)。

 

 

三浦 (ARBが有する降圧以外の作用について)
ARBは,血管の炎症抑制作用を有することがわかっています。
オルメサルタンの炎症に与える影響について検討したEUTOPIA試験では,微小炎症を併せもつ本態性高血圧患者を対象にオルメサルタン群(20mg/日)とプラセボ群に無作為に割り付けて6週間観察しました。
その結果,オルメサルタン群において6週の時点でhsCRP,hsTNF-α,IL-6,MCP-1などの炎症マーカーが投与前に比して有意に低下したことが明らかになっています(各p<0.05,p<0.05,p<0.05,p<0.01)。
一方で,近年の検討から各種炎症マーカーのなかでもhsCRP高値が予後不良と強く関連していることが明らかになっていることから,オルメサルタンがhsCRPの低下作用を有していることは非常に興味深く思います。


オルメサルタンの血管保護作用
高井 (オルメサルタンの特徴について)
オルメサルタンはARBのなかでもヒトAT1受容体に対する親和性が高いことが知られています。ウサギを用いた検討では,in vitroにて摘出血管にアンジオテンシンⅡ(AngⅡ)を投与すると血管の収縮反応が示されましたが,AngⅡとオルメサルタンを同時に投与すると強力に収縮反応が抑制されました。
このin vitroにおける結果の差には,薬剤のAT1受容体への親和性の違いが影響していると思われます。

次に,われわれはin vivoで検討を行いました。検討には12週齢の脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHR-SP)を用い,オルメサルタン(1mg/kg/日),バルサルタン(3mg/kg/日),プラセボを投与しました。2週間投与した時点の降圧程度は同等でした。
そこで,AngⅡに対する影響をみるために血管組織AngⅡ免疫染色を行ったところ,AngⅡ陽性面積/全面積比はバルサルタン群,オルメサルタン群ともにプラセボ群より低値を示し,またオルメサルタン群でより有意に減少していました(p<0.01)。
血管組織AngⅡ免疫染色ではAT1受容体に結合しているAngⅡが染色されることから,オルメサルタンはin vivoでもAT1受容体へのAngⅡの結合を強力にブロックしていることが示唆されました。
また,酸化ストレスマーカーの1つである4-HNEについても,オルメサルタン群で4-HNE陽性面積/中膜面積比がプラセボ群より有意に低く(p<0.01),オルメサルタンの強力な抗酸化作用も示唆されました。さらに血管内皮機能についても,オルメサルタン群でアセチルコリン誘導性血管弛緩反応がプラセボ群より有意に改善していました(図3)。
オルメサルタンがAT1受容体を強力にブロックして酸化ストレスを減少させた結果,血管内皮機能改善作用が得られたものと考えられます。

 

 

高井 
ACE活性の亢進はAngⅡの産生を誘導するため,ACE活性も重要な治療ターゲットではないかと考え,これに対するオルメサルタンの作用を検討しました。
SHR-SPは,正常ラットと比較して有意に血管組織ACE活性が亢進します(p<0.01)が,これに食塩を負荷することでさらに血管組織ACE活性が亢進し,収縮期血圧は250mmHgを超えるため,何らかの処置を行わないと4週後に8割以上が脳卒中で死亡するモデルとなります。
このモデルラットに非降圧量のオルメサルタン,バルサルタン,プラセボを投与して検討したところ,血管組織ACE活性はプラセボ群に比べてオルメサルタン群で有意に低下していました(p<0.01)。
生存率も検討したところ,バルサルタン群の生存率が60%に低下した時点でのオルメサルタン群の生存率は95%でした(図4)。

 

 

三浦 
この結果は,オルメサルタンがラットの脳血管に対して保護作用を発揮して,脳卒中による死亡を減少させたと解釈できます。
投与量は非降圧量ですから,オルメサルタンには降圧に依存しない血管保護作用があると思われます。

高井 
なお,われわれは高コレステロール食を摂取させたサル動脈硬化モデルでも,非降圧量のオルメサルタン(3mg/kg/日)が血管組織ACE活性の亢進を有意に抑制し(p<0.05),さらには血管内膜の過形成を有意に退縮させたことを報告しています(p<0.05)。したがって,オルメサルタンは血管組織ACE活性を抑制してAngⅡの産生を食い止めることで酸化ストレス産生を抑制し,動脈硬化の進行を逆行させるという,特徴的な血管保護作用を有していると考えられます。

堀内 
オルメサルタンには血管壁のAngⅡ濃度を減少させる作用があり,その要因として血管組織ACE活性の抑制作用が考えられます。


オルメサルタンが有するダブルチェーンドメインの意義とACE2/Ang-(1-7)/Mas受容体軸
三浦
 (オルメサルタンがAT1受容体に対する強い親和性を有する理由)
ほとんどのARBは,化学構造としてビフェニル基,テトラゾール基,イミダゾール基を基本骨格としてもっていますが,オルメサルタンはさらにカルボキシル基とヒドロキシル基という2つの側鎖,すなわちダブルチェーンドメインを有しています。
また,AT1受容体とAngⅡとの結合部分はリガンドポケットと呼ばれるのですが,オルメサルタンは2つの側鎖でこのリガンドポケットと強力に結合してAngⅡを遮断し(図5),同時にAT1受容体の強力な不活性化(インバースアゴニスト作用)を引き起こすと考えられます。
このように,他のARBにはないダブルチェーンドメインの存在が,オルメサルタンの特徴的な作用に関連していると推測されます。

 

 

堀内 
近年,RA系において,臓器障害をもたらすACE/AngⅡ/AT1受容体軸(Devil)と,臓器保護に働くACE2/Ang-(1-7)/Mas受容体軸(Angel)の詳細が明らかになってきました。
三浦先生からご紹介があったように,ACE/AngⅡ/AT1受容体軸のブロックにはダブルチェーンドメインをもつオルメサルタンのAT1受容体への強力な結合が関与していると思われます。
また,通常ARBはAT1受容体のAngⅡ結合をブロックするため血中のAngⅡ濃度を上昇させてしまうのに対し,オルメサルタンは逆にこれを減少させることが知られています。
その理由としては,オルメサルタンがACE2を活性化することでAngⅡがACE2/Ang-(1-7)/Mas受容体軸のほうに流れるためと考えられますし(図6),高井先生の実験からもオルメサルタンには血管組織ACE活性抑制作用が認められていますので,オルメサルタンはマルチファンクショナルな作用を有するARBといえます。

 


ARBのなかでオルメサルタンを選択する理由
高井 (降圧治療におけるオルメサルタンの位置づけ)
動物実験では,同程度の降圧度でも投与するARBによって心血管保護作用に差がみられました。
オルメサルタンが強い降圧効果を有するという三浦先生のデータも併せて考えると,実際の患者さんに対しても高い心血管保護作用が期待できるオルメサルタンは,よい選択肢の1つであると思われます。

三浦 
オルメサルタンは他のARBよりも降圧効果が良好であり,降圧に依存した心血管保護作用も強いのではないかと思います。
また,オルメサルタンでは高井先生からご紹介があった血管組織ACE活性の抑制,あるいは堀内先生からご紹介があったACE2活性化作用を介した降圧非依存性の心血管保護作用も期待できます。ですから,降圧治療にオルメサルタンを選択することは理にかなっていると思います。

堀内 
私も,高井先生や三浦先生から解説がありました通り,オルメサルタンは降圧効果が強いと実感しています。
さらに,ダブルチェーンドメインでRA系を強力に抑制して臓器保護をもたらすことも,オルメサルタンを選択する理由の1つになると思います。

出典 Medical Tribune 2010.9.16
版権 メディカルトリビューン社

 

<番外編>
高血圧性CKDへの強化血圧管理、進行リスク低下せず
文献:Appel LJ et al. Intensive Blood-Pressure Control in Hypertensive Chronic Kidney Disease. NEJM. 2010;363:918-929

黒人の高血圧性慢性腎臓病(CKD)患者1094名を対象に、強化血圧管理によるCKD進行抑制効果を無作為化試験で検討。
全体では強化管理群と標準管理群で進行リスクに有意差はなかったが、蛋白/クレアチニン比0.22超の患者では有効性が示され、ベースライン時蛋白尿の有無により強化管理の効果が異なる可能性が示された。
出典 m3.com 医療ニュース 2010.9.6

原文
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0910975

 


<自遊時間>
正にヤクザ国家
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(私的コメント;この「フリートーク掲示板」がリアルタイムに熱く燃えています。No.0007は月間賛成率ランキング1位です。)

福王寺一彦 『月光』 日本画
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##痛風治療薬が狭心症治療薬に
##アロプリノールで運動時間が延長
ダンディー大学(ダンディー)のAllan D. Struthers教授らは,長く痛風治療薬として用いられてきたアロプリノールが慢性安定狭心症患者の運動時間を延長するとの研究結果をLancet(2010; 375: 2161-2167)に発表した。

#ST低下までの時間が延長
狭心症は,冠動脈の閉塞や攣縮などにより心筋虚血が生じ,重度の胸痛が現れる疾患で,その主因の冠動脈疾患はアテローム動脈硬化を原因として生じる。
慢性の安定狭心症は,QOLを大きく損ない,患者の3人に1人では週1回以上の頻度で狭心症発作が発現する。
英国では,成人男性の4~5%が慢性安定狭心症患者である。

これまでの実験的エビデンスから,アロプリノールはキサンチンオキシダーゼを阻害し,心臓の拍動で消費されるエネルギーを低下させることが示唆されている。
もしヒトでも同じ現象が起これば,虚血による血流不足状態にある心臓の組織が多くの酸素とエネルギーを受け取ることになり,狭心症患者の虚血に対する新たな治療法として使用することができる。

Struthers教授らは今回の研究で,アロプリノールの高用量投与が慢性安定狭心症患者の運動時間を延長できるか否かについて検討した。

英国の1病院と2診療所において冠動脈疾患と診断され,運動負荷試験で確認された慢性安定狭心症(2か月以上経過)の患者65例(18~85歳)を対象に,クロスオーバー法によるランダム化プラセボ対照二重盲検試験を行った。
患者は,6週間にわたりアロプリノール600mg/日またはプラセボの投与を受けた後に両薬を切り替えて服用した。

1次エンドポイントは,ST低下が発生するまでの時間とし,2次エンドポイントは運動持続時間と胸痛発現までの時間とした。

第Ⅰ期では31例がアロプリノール,34例がプラセボの投与を受け,それぞれ28例と32例を解析対象とした。
クロスオーバー後の第Ⅱ期では,第Ⅰ期の解析対象である60例全例を解析した。

その結果,ST低下までの時間(中央値)は,試験開始前は232秒であったが,プラセボ投与時の249秒に比べてアロプリノール投与時では298秒に延長した。
アロプリノールとプラセボの絶対差(推定値)は43秒であった。運動持続時間(中央値)は試験開始前では301秒であったが,アロプリノール投与時には393秒,プラセボ投与時には307秒となり,薬剤間で58秒の絶対差が見られた。
また,胸痛発現までの時間も試験開始前の234秒からアロプリノール投与時は304秒,プラセボ投与時は272秒に延長し,絶対差は38秒であった。副作用の報告はなかった。
#途上国での応用に期待
Struthers教授らは「アロプリノールは,ranolazineやivabradineなどの狭心症治療薬に比べ安価で,安全面では痛風治療薬として長期間(40年間以上)にわたり良好なデータが得られている。従来の狭心症治療薬(硝酸薬,β遮断薬)に比べ,アロプリノールの忍容性は高い。これは同薬が血圧や心拍数に対する抑制作用を持たず,硝酸薬やβ遮断薬で多発する頭痛や疲労などの副作用発現が少ないことによる」と述べている。

また,「アロプリノールの高用量投与は,標準的な運動負荷試験においてST低下までの時間,運動持続時間と胸痛発現までの時間を有意に延長し,内因性キサンチンオキシダーゼ活性が運動誘発性心筋虚血になんらかの形で関与していることが示唆された。アロプリノールは安価で忍容性が高く,長期間の安全性が確認されており,抗虚血薬として有用と考えられる」と結論付けている。さらに「狭心症の管理にアロプリノールを正しく組み入れるには,今後さらに研究を行う必要があるが,発展途上国では現在,冠動脈疾患が急速に増えつつあり,高価な医薬品や侵襲的治療(血管形成術やバイパス術)を受けにくいこのような地域では特に有用な治療薬となるのではないか」と付け加えている。

ゴールデン・ジュビリー国立病院(クライドバンク)重度心不全治療部門(グラスゴー)および西部診療所のHenry J. Dargie博士と同院のRenjith Antony博士は,同誌の付随論評(2010; 375: 2126-2127)で「アロプリノールによる抗虚血作用を確認するにはさらに研究を行い,その機序を解明する必要がある。しかし,同薬が狭心症治療の新しい薬剤となるのは確かである。冠動脈疾患の予防が依然として重要な要素ではあるが,虚血から心筋を保護することは,複数の機序がかかわる病態に対する理論的で現実的なアプローチと言える」と述べている。

出典 MT pro 2010.9.9
版権 メディカルトリビューン社


<番外編>
#急性冠症候群へのクロピドグレル・アスピリン、用量間で有意差なし
文献:The CURRENT–OASIS 7 Investigators. Dose Comparisons of Clopidogrel and Aspirin in Acute Coronary Syndromes. NEJM. 2010; 363:930-942

急性冠症候群患者25086名を対象に、クロピドグレルの2倍用量・標準用量およびアスピリン高用量・低用量の効果を無作為化2×2要因試験で比較。クロピドグレルおよびアスピリンともに、各用量間で主要評価項目とした30日後の心血管死・心筋梗塞・脳卒中の発生率に有意差は見られなかった。

http://www.m3.com/news/THESIS/2010/09/06/10690/
出典 m3.com 医療ニュース 2010.9.6


原文
文献:The CURRENT–OASIS 7 Investigators. Dose Comparisons of Clopidogrel and Aspirin in Acute Coronary Syndromes.
NEJM. 2010; 363:930-942
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0909475


CURRENT-OASIS7試験
http://blog.m3.com/reed/20100914/CURRENT-OASIS7_

山本彪一 『薔薇』 油彩
http://www.seikougarou.co.jp/sell/yamamotohyouichi/280.html

 

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■心房細動で救急外来受診例の半数は治療を加えなくても自然停止!
(止まる例は1日以内に止まる)
Dell'Orfano, Am J Cardiol 1999,788

■様子を見てよいPAFとは!
○発生後まだ半日以内
○飲酒、大食が誘因
○しかも症状が比較的軽微

■目の前の心房細動はどのタイプか?
Paroxysmal(usually≦48h)
Persistent(>7 days or requires CV)
Long-standing Persistent(>1 year)
Permanent(accepted)

■AF>48hの除細動に伴う脳塞栓の発生頻度  4.5 ~7.1% 

■48時間以上持続した心房細動が止まることは、恐ろしいこと
脳梗塞のrisk: 5~7%
安易に止めるな!
止めるなら2日以内に(risk: 0.8%)

■除細動時の抗凝固療法
○心房細動の持続が48時間未満→ヘパリン開始→除細動
○心房細動の持続が48時間以上→経食道心エコーで心房内血栓(+)→ワルファリン3週間以上使用して除細動
○心房細動の持続が48時間以上→経食道心エコーで心房内血栓(ー)→ヘパリンを開始してして除細動

■J-RHYTHM
死亡、脳梗塞、動脈塞栓、大出血、心不全入院、認容限度の回避率
○持続性AFの場合 レート治療群 > リズム治療群
○発作性AFの場合 レート治療群 < リズム治療群
つまり、心房細動の薬物治療指針としては
○持続性はレートコントロール
○発作性はリズムコントロール

■レートコントロールの具体的方法
○心機能良好の場合→β受容体遮断薬、Caチャンネル遮断薬→+ジゴシン
○心機能不良の場合→ジゴシン→+少量β受容体遮断薬

■器質的心疾患のない孤立性心房細動(発生後7日以内)はリズムコントロールを図る
・孤立性持続性心房細動は別扱い
・肥大心、不全心、虚血心も別扱い

■孤立性発作性心房細動のリズムコントロール薬
サンリズム、シベノール、プロノン、リスモダン、タンボコール

■AFの停止薬をどう投与するか?
「この薬を毎日内服して1週間後にまたいらっしゃい」
→これはダメ
数日後にAFが洞調律化したときに、脳梗塞!

■静注不整脈薬による急性AFの停止
サンリズム  1 mg/kg/ 10分
シベノール 1.4mg/ kg/2-5分
リスモダン 1-2mg/ kg/ 5分
タンボコール 1-2 mg/ kg/10分

<番外編>
#ワルファリンのINR管理、dabigatranの有効性・安全性に影響、RE-LY試験
文献:Wallentin L et al. Efficacy and safety of dabigatran compared with warfarin at different levels of international normalised ratio control for stroke prevention in atrial fibrillation: an analysis of the RE-LY trial.
Lancet. Early Online Publication, 29 August 2010
951施設の心房細動患者を対象としたRE-LY試験の解析を行い、dabigatranの有効性・安全性とワルファリンの施設別INR管理レベルとの関連を検討。脳卒中・頭蓋内出血の予防効果はINR管理と関連しなかったが、血管事象・非出血事象・死亡はINR管理不良の施設においてdabigatran群で減少を認めた。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(10)61194-4/abstract

小田切 訓 『教会のある運河』 油彩 4F
http://www.seikougarou.co.jp/sell/odagirisatoshi/2075.html  


 

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http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
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井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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第32回欧州心臓病学会(ESC Congress 2010)でのivabradineに関する記事で勉強しました。

 

心不全における心拍管理の意義が明らかに
欧州に導入されて間もない心拍数低下薬ivabradine(日本未発売)は,心不全治療において,β遮断薬などの標準治療に上乗せされることで心不全患者の予後を改善することが第32回欧州心臓病学会(ESC Congress 2010)で明らかにされた。
このSHIFT試験※の結果は,仏パリ第6大学循環器科のMichel Komajda教授が報告した。

※Systolic Heart Failure Treatment with the If inhibitor Ivabradine Trial

また,会期中にはSaarlandes大学(独ハンブルク)のMichael Böhm教授が同試験のサブ解析を発表し,プラセボ群においてベースライン心拍数が1拍/分上昇するごとにイベント発生リスクが3%ずつ増大するなど,心不全における心拍数管理の重要性を示した。
結果は,Lancet8月29日オンライン版に掲載された。

β遮断薬への上乗せで1次評価項目の有意な改善
SHIFT試験には,37か国677施設が参加し,二重盲検ランダム化比較試験として実施された。
対象は,ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類Ⅱ~Ⅳ度で左室駆出率(LVEF)が35%以下,心拍数が70拍/分以上で過去1年間に入院歴のある心不全患者。ガイドラインが推奨するレニンアンジオテンシン系阻害薬,β遮断薬,アルドステロン拮抗薬や利尿薬による標準治療が行われたうえで,6,558例がivabradine 5mg×2/日を上乗せする実薬群とプラセボ群に割り付けられた。実薬群では同薬の2.5mg,7.5mgも使用され,安静時心拍数50~60拍/分を目指した管理が行われた。

試験開始時の平均心拍数は80拍/分であったが,1か月後にはプラセボ群の75拍/分に対して実薬群は64拍/分と低い値で推移し,試験終了時までこの傾向が続いた。
平均23か月の追跡により,1次評価項目の心血管疾患死亡と心不全による入院の発生リスクは,プラセボ群の29%に比べて実薬群は24%と,実薬群で18%有意に低下した(P<0.0001)。

2次評価項目では,心不全による死亡と入院が実薬群でそれぞれ26%有意に低下した。
ただし,総死亡や心血管死亡では有意差がなかった。今回の試験において1例の1次評価項目の発生を防ぐのに必要な例数(NNT)は26だった。
なお,プラセボ群における1次評価項目の発生リスクは年率18%と高率だった。

Komajda教授は,β遮断薬が全体の9割に投与されていたものの,推奨量に到達した患者は4分の1程度で,50%以上に達した患者も56%と低率であった点や,β遮断薬が投与されても心拍数70拍/分以上の患者が多く存在した点を指摘したうえで「ivabradineは忍容性が高く,現行でベストとされる治療への上乗せで予後の改善が認められたのは患者,医師双方にとって福音である」とまとめた。

心拍数1拍/分上昇するごとに3%のリスク増大
サブ解析では,ベースライン心拍数や,同薬の治療による心拍数低下度から5群に分けられ,それぞれ予後との関係が検討された。

まず,β遮断薬服用やLVEFなど心拍数に影響を与える因子を調整したうえで,プラセボ群が心拍数別に5群に分けられ,1次評価項目のイベント発生リスクが算出された。
その結果,最大値(87拍/分以上)群のハザードリスクは最低値(70拍/分以上72拍/分未満)群の2倍超で(表),このイベント発生リスクは1拍/分上昇するごとに3%,5拍/分上昇するごとに16%増大していた。

 


次に,試験開始28日の時点で,実薬群を5拍/分刻みで60拍/分未満から75拍/分以上の5群に分けて1次評価項目の発生率が示された。
その結果,60拍/分未満に到達した群のイベント発生リスクは17.4%で5群のうち最低であったのに対し,75拍/分以上群は32.4%で最大となっていた。

以上の結果を受け,Böhm教授は「心拍数は明らかに心不全の予後規定因子だ」と述べた。

Ivabradineは洞房結節において選択的にIf電流を阻害する新規作用を有する心拍数低下薬で,他チャネルには影響しないため,心筋収縮や心臓内伝導に影響しない。
欧州では近年,安定狭心症患者に導入されたが,米国やアジアではまだ発売されていない。

出典 Medical Tribune 2010.9.9
版権 メディカルトリビューン社

<関連記事>
心拍数低下薬ivabradineの上乗せで慢性心不全の予後が改善
ESC2010で発表のSHIFT試験
現行の標準治療が行われている慢性心不全患者へ心拍数低下薬ivabradineを上乗せすることで,心血管疾患死亡と心不全による入院リスクが低下することが大規模な二重盲検ランダム化比較試験(RCT)で示された。
このSHIFT試験の結果は,スェーデン・ストックホルムで開催中の第32回欧州心臓病学会(ESC Congress 2010)において,フランス・パリ第6大学循環器科教授のMichel Komajda氏が発表し,同時にLancet 8月29日オンライン版に掲載された。
慢性心不全の管理については,ガイドラインでレニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬やβ遮断薬などによる薬物治療が推奨されているが,現行の標準治療への同薬の上乗せ効果が認められたことから,同氏は「心拍数をターゲットにした治療によって,心不全の予後改善に展望が開けた」と期待を述べた。


安静時心拍数50~60拍/分を目標に投与量を調整
SHIFT試験には,37か国で677施設が参加して行われた。対象は,ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能クラス分類Ⅱ~Ⅳで左室駆出率(LVEF)35%以下,さらに心拍数70拍/分以上で過去1年間に入院を経験している心不全患者。6,558例が標準治療にivabradine 5mg×2/日を上乗せするivabradine群とプラセボ群に割り付けられた。
全例に対してガイドラインが推奨するRA系阻害薬,β遮断薬,アルドステロン拮抗薬や利尿薬による標準治療が実施され,安静時心拍数が50~60拍/分で管理されるよう投与量が調整された。

その結果,試験開始時に80拍/分であった心拍数は,1か月後にはプラセボ群75拍/分に対してivabradine群では64拍/分と低く,試験終了時までこの傾向が続いた。平均23か月の追跡により,1次評価項目の心血管疾患死亡と心不全による入院のリスクは,プラセボ群に比べてivabradine群で18%有意に低下した(P<0.0001)。
2次評価項目では,心不全による死亡と入院がivabradine群でそれぞれ26%有意に低下するなどの効果が認められた。

1例の1次評価項目の発生を防ぐのに必要な例数(Number Needed to treat;NNT)は26だった。
なお,プラセボ群における1次評価項目の発生リスクは年率18%と高率だった。


洞調律のみで作用,心筋収縮作用には影響せず
Ivabradineは洞房結節において選択的にIf電流を阻害するが,他チャネルには影響せず,収縮不全の場合においても心筋収縮や心臓内伝導に影響しない。
洞調律でのみ作用するため,心房細動を合併する心不全患者には適応にならない。

同薬については,2年前に1万人超の安定した症候性冠動脈疾患を対象としたBEAUTIFUL試験が報告され,死亡や心不全による入院,心筋梗塞,心不全の発症・悪化による複合1次評価項目で有意な効果が示されなかったことが記憶に新しい。
このBEAUTIFUL試験のサブ解析では,心拍数70拍/分以上の場合にivabradine群の優位性が認められていたが,今回も,患者背景別の解析では,ivabradine群による1次評価項目抑制効果が有意だったのは,試験開始時の心拍数が77拍/分以上の患者であった。Komajda氏は「心拍数70拍/分以上の心不全患者にはivabradineの有用性が高い」としている。


「古典的だが実用的なこのマーカーを見直すべきときではないか」
なお,SHIFT試験においては,β遮断薬が全体の9割に投与されていたが,ガイドラインの推奨量に到達した患者は4分の1にとどまり,目標の半数量以上に達した患者も56%であった。
β遮断薬を推奨量まで増量することの難しさがあらためて示され,β遮断薬が投与されても多くの患者が心拍数70拍/分以上であったことから,Komajda氏は「心不全治療において,心拍数低下が予後改善の独立した因子であることが示された。
古典的であるが実用的なこのマーカーを見直すべきときではないか」と強調した。

出典 MT pro 2010.8.30
版権 メディカルトリビューン社

<記事追加> 2010.11.14
#脂肪の多い魚類の摂取 心不全予防には最適量の見極めを
ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(ボストン)のEmily Levitan博士らは,ニシン,サバ,サケ,ホワイトフィッシュ(コクチマス)など,脂肪の多い魚類を週に1回食べる男性は,心不全発症リスクが低いとEuropean Heart Journal(2009; 30: 1495-1500)に発表した。
これは魚類を豊富に食べる海洋地域に住む人にとっては朗報だが,同博士らは摂取量が多すぎると有害となる可能性についても示唆している。

#中等度摂取が最もリスク低い
Levitan博士らは,カロリンスカ研究所(スウェーデン・ストックホルム)のAlcija Wolk博士らと共同で,45〜79歳のスウェーデン人男性3万9,367例の食習慣と健康アウトカムを1998〜2004年に追跡調査した。
 
今回の試験期間中,心疾患や糖尿病既往歴のない597例が心不全を発症し,34例が死亡した。脂肪の多い魚類の摂取量により対象者を5群に分けて分析したところ,週1回摂取群では非摂取群に比べて心不全発症リスクが12%低かった。
また,週に2回以上摂取群と,非摂取群でリスクは同等だった。
 
さらに,ω3脂肪酸の摂取量についても検討したところ,同様の傾向が認められた。
ω3脂肪酸の摂取量が0.36g/日の中間群では,ほとんどまたは全く摂取しない群と比べて心不全発症リスクが33%低く,統計学的に有意であった。
一方,ω3脂肪酸の摂取量が0.46〜0.70g/日の高摂取群では,非摂取群とほぼ同等であった。
 
同博士は,脂肪の多い魚類を多量に摂取した男性に比べて,摂取量が中等度の男性で心不全リスクが低下していたことについて,「偶然である可能性も否定できない」としている。
また,「既に健康状態の悪い人が,健康の改善を目的に脂肪の多い魚類の摂取量を増やしていたかもしれない」と示唆している。
 
同博士は,過去の研究で脂肪の多い魚類やω3脂肪酸の摂取は高血圧,高トリグリセライド,心拍上昇など,心臓関連疾患の抑制に有効であることが示されていると指摘し,「これらを総合すると,われわれの研究で心不全リスク低減との間に関連が認められたことも説明が付く」と述べている。
なお,心不全は65歳以上の患者における入院の原因の第1位であるという。
 
最後に,同博士らは「今回の研究結果は,脂肪の多い魚類の中等度消費を推奨する現在のガイドラインを補強するものである。米国心臓協会(AHA)の現行ガイドラインでは,脂肪の多い魚類を週に2回食べることを推奨している。今回の試験は男性だけを対象としたことから,今後は女性も含めた集団でも今回の知見が再現されるか否か検討する必要がある」と述べている。

出典 MT pro 2009.8.27
版権 メディカルトリビューン社


 

 

<関連サイト>
心拍数低下薬ivabradine、心血管死亡を減少、SHIFT試験
http://www.m3.com/news/THESIS/2010/09/02/10684/?portalId=news

Ivabradine and outcomes in chronic heart failure (SHIFT): a randomised placebo-controlled study
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(10)61198-1/abstract

Procoralan(ivabradine)*で心臓発作減少  欧州心臓学会で新臨床研究発表
http://japan.asiaprnews.com/2009-08-31/200351.html

Ivabradine pill may prevent heart failure for thousands
http://www.bbc.co.uk/news/health-11127782

BEAUTIFUL試験
http://blog.m3.com/reed/20091230/BEAUTIFUL_


<きょうの一曲>
Autumn leaves
http://www.youtube.com/watch?v=TzH4zt9Ei8g&feature=related

 

蓼科山山頂(2530m)より穂高・槍ヶ岳を遠望する
2010.9.19 14:56撮影
(登頂が遅かったため、下山時には暗くなっていました)

 

 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります。        

 

 

 

 

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