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血管内皮細胞で産生される一酸化窒素(NO)は,血小板活性や白血球接着の調節を通じた抗動脈硬化作用,血管拡張作用に必須の因子です。
NO産生状態は血管内皮機能の直接的指標となりうるが,血中に放出されたNOはすぐに失活するため測定は困難とされてきました。
きょうは、ヒト冠血流中NO濃度のリアルタイム測定に関する記事で勉強しました。
特殊なカテーテル開発によりこの壁を越えたのが川崎医療福祉大学の後藤真己客員教授(循環器内科・医用工学)らで,このほど,ヒト冠血流中NO濃度のリアルタイム測定に成功した。
血流中のNO濃度直接計測で血管内皮機能を評価
後藤客員教授は,1988年からカリフォルニア大学心臓血管研究所でドプラガイドワイヤの開発研究に携わるなど,長年,冠循環の研究を行ってきた。
1992年にMalinskiとTahaのグループが,摘出血管でNOを独自のセンサーにより捉えたとNatureで報告したのを契機にNOに注目。血流中のNOを生体内で捉えたいと模索を続けてきた。
内皮細胞で産生されるNOは,血中の酸化ヘモグロビンや溶存酸素などによってごく短時間(約400秒)で酸化・失活するため,生体内の計測は困難とされてきた。
ところが近年,ビーカー内の血液中と血流中ではNO動態は異なっており,血流中ではNOの半減期が静止血液中よりはるかに長いことが明らかになってきた。
2002年には,米国のグループがヒト上腕動脈にNOを投与する実験で用量依存性に血流が増加することを示した。
これらの結果から生体内でNOが測定可能と確信した同客員教授らは,Ziad Tahaが開発したNOセンサーを組み込んだカテーテルを試作,動物実験に乗り出した。TahaのNOセンサーは,酸化作用の強い多孔性ファイバーを作用電極とし,その周囲をガス透過性の高い素材でコーティング,NOが作用電極に到達して酸化される際の電流値を計測するというもの。
このセンサーをカテーテルに装着し,イヌでの実験を行った。
ヒト生体内初のNO計測DCM患者で内皮機能低下を確認
NO研究でノーベル生理学賞を受賞したIgnarro博士の助言も得て,2005年にイヌ冠静脈洞に留置したカテーテルでNO測定に成功。ドプラガイドワイヤで血流を同時測定したところ,アセチルコリン(ACh)用量依存性にNO濃度が上昇するのに対して,血流速度はほとんど変化が認められず,血流と血管内皮の調節機構が異なることが示唆された。
この成果をベースに,和歌山県立医科大学の赤坂隆史教授らとの共同研究で,今回,世界で初めてヒトの生体内のNO測定に成功した(European Heart Journalオンライン版)。
対象は冠動脈疾患を合併していない拡張型心筋症(DCM)患者10例と対照10例。
カテーテル型NOセンサーを大腿静脈経由で冠静脈内に留置し,ドプラガイドワイヤは左前下行枝に留置して,血流と血漿NO濃度を同時測定した(図)。

血漿NO濃度は,両群とも左前下行枝のカテーテル経由で投与したACh濃度依存性に上昇が認められたが,冠動脈径の拡張変化,血流速度,NO濃度の変化のいずれもDCM群で有意な低下が認められ,DCM群の内皮機能低下が示唆された。
ACh注入直後にNO合成酵素阻害薬L- NMMAを投与すると,両群ともに血漿NO濃度の増加はほぼ完全に阻害された。
また,NO濃度が血流速度の上昇にやや遅れて上昇することも初めて示された。
後藤客員教授は「グループの久米輝善助教はメタボリックシンドロームのイヌモデルで,冠血流は正常に保たれている状態でもNO濃度が既に低下していることを報告した。冠血流動態からのアプローチには限界があり,NO動態も同時に見ることで,冠血流調節の未知の側面に迫ることができるのではないか」と述べている。
出典 Medical Tribune 2010.8.26
版権 メディカルトリビューン社
<NO濃度計測 関連サイト>
[PDF] カテーテル型NOセンサ ~生体機能調節分子一酸化窒素のリアルタイム計測システム〜
http://www.ciicz.jp/bio/guidebook/077.pdf
(NOセンサーの写真と構造図が出ています)
■一酸化窒素(nitric oxide: NO)の生理作用:
生体内でNO は、NO 合成酵素(NOS)によってアルギニンから合成されます。
NO は細胞内サイクリックGMP(cGMP)の合成を促し、シグナ
ル伝達に関与します。
血管内皮細胞はNO を産生して周囲の平滑筋を弛緩させ、血管を拡張させて血流量を増やします。
狭心症に使う亜硝酸誘導体はNO に変化して作用します。
発毛剤ミノキシジル(リアップ®)はcGMP 分解を抑制して毛細
血管の血流量を増やし、シルデナフィル(バイアグラ®)もcGMP 分解を抑制して作用します。
NO は神経伝達物質としても重要で、記憶に関与します。NO のシグナル機能の発見により1998 年のノーベル生理学・医学賞はF・ムラド、R・F・ファーチゴットとL・イグナロに授与されました。
■血管内皮機能:
血管の内側で血液に接する血管内皮細胞は、血流でこすられることによってNO を産生し、産生されたNO は動脈硬化を防ぐが、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙など酸化ストレスが亢進すると、NO の産生能が低下して、内皮細胞自身が最も早く障害を受けることになります。
最近では、生活習慣の悪化に伴って、青少年でも内皮機能障害が発生・進展していることが知られるようになり、内皮機能の正常化の取り組みが求められています。
血管内皮細胞のNO産生能を調べる方法としては、腕の動脈などを一時的に圧迫して血流を途絶させた後に再開させ、急激な血流増加によってこすられた内皮細胞から出たNO が血管を拡張させる程度を調べるFlow-Mediated Dilation (FMD)が用いられますが、FMD は必ずしもNO 産生能を反映せず、内皮機能評価法としては問題があります。
<きょうの一曲> この素晴らしき世界
What A Wonderful World- Louis Armstrong - Binaca (Breath Spray) Music Videos
http://www.youtube.com/watch?v=ZQckLuSOwnM&feature=related
What A Wonderful World(歌詞)
http://htrjazz.hp.infoseek.co.jp/lyrics/8.htm
その他