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2010年5月12日より4日間にわたって,第31回Heart Rhythm Society(HRS)2010が米コロラド州デンバーで開催されました。
この学会に参加された東京女子医科大学循環器内科の江島 浩一郎先生が学会印象記を投稿されてみえます。
この学会は不整脈の関連学会としては世界で最も権威があり,その演題採択率は約30%ということです。
最近では,心不全に対するペーシング治療(心室再同期療法)が行われるようになっているため,学会の内容には不整脈のみならず,心不全治療をも含むようになっています。
きょうは、その記事で勉強しました。
アブレーションの進化とデバイス倫理巡るガイドラインの整備,新しいステージを実感
注目集める心房細動,冷凍凝固のバルーンカテーテルが話題に
HRSは米国の3都市(ボストン,サンフランシスコ,デンバー)間で交代に開催されている。
発表演題を抄録のkey word検索から種類別に分析してみたところ,心房細動389,心房頻拍11,心房粗動17,心室頻拍76,心室細動31と心房細動に関する演題の数がひときわ多かった。
患者数が多く臨床研究の裾野が広いこと,また治療が発展途上であることを反映しているのだろう。
そのなかでも,根治術と位置付けられるカテーテルアブレーションの分野は最も進歩が著しい分野であり,注目度も高い。世界中の著名な施設が治療成績を向上させるためしのぎを削っており,有効性が確立された発作性心房細動のみならず,持続性心房細動や永続性心房細動に対してもその可能性を模索するため日々臨床研究がなされている。
学会では,より簡便にアブレーション治療を行う新デバイスの報告が目立っていた。
心房細動のアブレーション治療に関する144演題のうち,新デバイスに関する報告は24演題だ。
そのうちの17演題はバルーンカテーテルに関連したもので,なかでもクライオバルーン(冷凍凝固)に関する報告が10演題にのぼった。
心房細動の多くは,肺から左房へ流入する血液の通り道である肺静脈の期外収縮がきっかけとなって発生するものと考えられている。
このため,治療の基本は,期外収縮のおもな発生源である肺静脈と左房との境界部に対して高周波エネルギーを用いたカテーテル治療により焼灼し,肺静脈を左房から電気的に隔離する治療(肺静脈電気的隔離術)である。
バルーンカテーテルとは,この肺静脈電気的隔離術を肺静脈が左房に流入する入り口にバルーンを当てることにより,バルーンに接した部分を一気に焼灼することを目的としたものだ。
日本では,葉山ハートセンター(神奈川県)で開発された高周波ホットバルーンカテーテルが知られており,今後臨床治験が行われるようであるが,認可・保険償還されたバルーンカテーテルはいまだない。
また,肺静脈電位を記録するために用いられてきた円周状電極カテーテルを用いたアブレーションも可能となることを示す報告も散見された。
これらの新デバイスがわが国でも使用可能となれば,心房細動に対するカテーテルアブレーションの裾野が広がることになるかもしれない。
これに関してはよい面もあるが,基礎的な知識なしに新しいデバイスを用いて,安易にアブレーション治療が行われるようになるのではとの危惧がある。これらのデバイスの健全な普及が望まれる。
デバイス機能停止がガイドラインに
今年のトピックスの1つに,ペースメーカ,植え込み型除細動器や心臓再同期療法といった植え込み型心臓デバイスの機能を止めることについてのガイドライン(表)ができたことも挙げられる。デバイスの進歩とともに植え込み症例数が増大しており,終末期の患者においてデバイス機能を停止することの是非が問題となっていた。
特に,除細動器は患者の安らかな終末期を妨害しかねない。
ガイドラインでは,デバイス機能停止の倫理的また法的な原則を明らかにし,患者とのコミュニケーションについても言及している。
わが国でも早急に作成される必要があると思われる。
心房細動診療を方向付ける3試験
今回の学会では,多施設共同大規模臨床研究が報告されるセッションも設けられた。
5演題は植え込み型心臓デバイスに関してで,6演題は心房細動治療に関連するものだったが,印象的だったのは心房細動に関連する3試験だった。
まず,STOP-AFは前向きランダム化比較試験(RCT)で,発作性心房細動の治療法として確立されたカテーテルアブレーション・肺静脈電気的隔離術と従来通りの抗不整脈薬による薬物治療が比較された。
肺静脈隔離術にはクライオバルーンカテーテルが用いられた。自覚症状の強い,薬物治療抵抗性の発作性心房細動患者245例を対象として,心房細動発作の再発やQOLを表すスコアを比較したところ,いずれにおいてもクライオアブレーションを受けた群で有意に良好な結果が得られた。
クライオアブレーションの問題点は横隔神経麻痺の合併症であるが,多くは遠隔期に改善すること,適切にバルーンサイズを選択すれば回避できる可能性が示された。
2つ目のSAAB試験は,発作性・持続性心房細動へのカテーテルアブレーション後にステロイド静注を行うことの有用性を検討した前向き二重盲検RCTで,アブレーション後のステロイド静注は術後早期の症候性心房細動や胸痛を減少させ,除細動の必要性が著しく減少することが示された。
同様の前向き試験が,日本循環器学会で筑波大学循環器内科からも報告されており,ステロイド使用の標準化が進んでいく可能性があると思われた。
3つ目は日本のJ-RHYTHM Ⅱ試験で,心臓血管研究所の山下武志先生より報告された。同試験は既に日本循環器学会でも発表され,発作性心房細動を有する高血圧症例に対する降圧薬として,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)とカルシウム(Ca)拮抗薬では心房細動発作回数,慢性化および電気的除細動の必要性などに有意差がないことが明らかにされた。
心房の障害変化などを抑制することによって予後を改善するというアップストリーム治療の概念が提唱され,レニン・アンジオテンシン系阻害薬が有効である可能性が示唆されてきたが,その期待を裏切るもので,今後の臨床に影響を及ぼす大事な結果と考えられる。
出典 Medical Tribune 2010.8.26
版権 メディカルトリビューン社
<関連サイト>
Heart Rhythm Society
http://www.hrsonline.org/sessions/
http://www.hrsonline.org/
その他