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昨日の
第32回日本高血圧学会レビュー その1
http://blog.m3.com/reed/20100821/_32_1
の続きです。
⑤シルニジピンは交感神経系と腎RAA系を抑制して腎障害を抑制する
(京都薬科大学臨床薬理学 東條千里氏)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jsh2009/200910/512557.html
出典 NM online 2009.10.4
版権 日経BP社
■L/N型Ca拮抗薬シルニジピンは、顕性蛋白尿を合併した高血圧患者の尿蛋白を、L型Ca拮抗薬に比べて有意に低下させることが報告されている。
L/N型Ca拮抗薬はL型Caチャネル阻害による血管拡張作用に加え、交感神経終末のN型Caチャネルを遮断してノルエピネフリン分泌を抑制し、交感神経活性の亢進をきたすことなく降圧作用を発揮するとされるが、臨床研究で示されたシルニジピンの腎保護作用の機序はまだ明らかでない。
■東條氏らは、片腎摘出の1週後からDOCA(40mg/kg/週、皮下注)と1%食塩水を4週間投与して高血圧ラットを作成した。
そのDOCA食塩負荷高血圧ラットを同期間中に、シルニジピン投与(1mg/kg/日)、アムロジピン投与(1mg/kg/日)、薬剤非投与の3群に分け、血圧、尿中蛋白排泄量、尿中ノルエピネフリン排泄量、CCr、血清クレアチニン、血中尿素窒素、腎組織におけるアンジオテンシン転換酵素(ACE)の活性および発現量、アルドステロン濃度などの変化を比較した。
■DOCA食塩負荷は片腎摘出ラットの血圧を経時的に上昇させたが、シルニジピンとアムロジピンは共に血圧上昇を有意に抑制した。
両薬剤の降圧効果は同等だった。
尿中蛋白排泄量はDOCA食塩負荷により著明に上昇したが、シルニジピンはこれを有意に抑制した。
一方、アムロジピンは尿蛋白をほとんど減少させなかった。
■CCr、血清クレアチニン、血中尿素窒素もDOCA食塩負荷により著明に悪化したが、シルニジピンがこれらすべてを有意に改善したのに対し、アムロジピンが有意な抑制効果を示したのは血清クレアチニンの上昇だけだった。
■また、DOCA食塩負荷により尿中ノルエピネフリン排泄量は著明に上昇したが、シルニジピンのみがこれを有意に抑制した。
DOCA食塩負荷は腎組織内におけるACEの活性と発現量、アルドステロン濃度を著明に上昇させたが、これらの変化もシルニジピンにより有意に抑制されたが、アムロジピンによる変化は認められなかった。
■L/N型Ca拮抗薬シルニジピンは交感神経系と腎レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を抑制し、DOCA食塩負荷高血圧ラットの腎障害を抑制するとの見解を示した。
⑥血管平滑筋細胞の老化が血管石灰化を引き起こす
予防・治療にスタチンとRhoキナーゼ阻害薬が有効な可能性
(京都府立医科大学循環器内科 栗本律子氏)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jsh2009/200910/512560.html
出典 NM online 2009.10.5
版権 日経BP社
■血管の石灰化は、血中カルシウムやリンが血管壁に付着して起きると考えられてきたが、血管平滑筋細胞(VSMC:vascular smooth muscle cells)が老化して骨芽細胞様に変化し、石灰化を引き起こしている可能性が新たに示唆された。
■石灰化が起きている血管壁付近では骨特有の遺伝子群や細胞群が多く、これらが石灰化に関連している可能性が既に指摘されている。
栗本氏らはヒトVSMCを長期間培養して老化VSMCを作り、若いVSMCと比較した。
すると老化VSMCでは、石灰化領域が占める比率とカルシウムの質量比が顕著かつ有意に増強していた。
■骨関連遺伝子の発現を調べたところ、老化VSMCでは若いVSMCに比べ、骨芽細胞に特有なアルカリフォスファターゼ(ALP)と1型コラーゲンの発現が有意かつ大幅に増加しており、骨芽細胞の分化に必要な転写因子であるRUNX-2の発現も有意に増加していた。
一方で、石灰化抑制因子であるMatrix Gla Protein(MGP)の発現は有意かつ著明に減少していた。
■次に、老化VSMCのALPと1型コラーゲンをノックダウンしたところ、いずれの場合も、石灰化は有意に抑制された。
RUNX-2をノックダウンするとALP発現は有意に抑制されたが、1型コラーゲンの発現は有意な減少がみられず、老化VSMCの骨芽細胞様変化には、RUNX-2を経由する系と経由しない系の2つが関与していることが示唆された。
■また、老化VSMCと若いVSMCにスタチンとRhoキナーゼ阻害薬を作用させたところ、どちらの薬剤も老化VSMCのアポトーシスを阻害し、MGP発現を有意に増加させて石灰化を抑制することが確かめられた。
■これらの結果から、加齢による血管石灰化に血管平滑筋細胞の老化が関与していること、予防や治療にスタチンとRhoキナーゼ阻害薬が有効である可能性が示唆されたとした。
⑦シルニジピンは心臓の自律神経バランスに好影響を及ぼす
(京都大学人間健康科学系 猪飼亜希子氏)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jsh2009/200910/512565.html
出典 NM online 2009.10.5
版権 日経BP社
■心臓交感神経活性の上昇は高血圧患者の予後を悪化させることが知られている。
従来の短時間作用型Ca拮抗薬は降圧に伴い交感神経活性の反射性亢進をきたすことが知られているが、この副作用は降圧作用が緩やかに発現する長時間作用型Ca拮抗薬が登場したことによりかなり軽減された。
しかしそれに関する懸念はまだ完全に払拭されたわけではない。
■近年、Ca拮抗薬の中には、血管の収縮に関係するL型Caチャネルとともに交感神経終末に存在するN型Caチャネルを阻害するものが使用されるようになり、交感神経活性を抑制する作用が期待されている。
京都大学人間健康科学系の猪飼亜希子氏らは、高血圧患者を対象にL/N型Ca拮抗薬シルニジピンの心臓交感神経活性に及ぼす影響を検討し、その効果はL型Ca拮抗薬より好ましい影響を及ぼすことを明らかにした。
■対象は、L型Ca拮抗薬アムロジピンを6カ月以上、単独で服用している高血圧患者18例である。
被験者を2群に分け、1群(8例)にはアムロジピン(平均4.4mg/日)を継続投与し、他の1群(10例)についてはアムロジピンからシルニジピン(平均9.0mg/日)に変更して治療を続けた。
■試験期間は6カ月であった。アムロジピン継続投与群では6カ月間隔で2回、シルニジピン投与群では治療薬変更前と変更6カ月後に血圧、脈拍数を測定するとともに、心拍変動のスペクトル解析を行った。
スペクトル解析では、中間周波数成分と高周波数成分の比(LF/HF)を心臓交感神経活性の指標、高周波数成分のトータルパワーに対する比(HF/TP)を心臓副交感神経活性の指標として検討した。
■両群の収縮期血圧と拡張期血圧は試験開始前から有意に変化することなく、前治療で達成された降圧レベルが試験期間を通じて維持された。脈拍数も治療前後で有意な変化を示さなかった。
■しかし、心臓交感神経活性の指標であるLF/HFは、アムロジピン継続投与群ではほとんど変化しなかったが、シルニジピン投与群では有意に低下した。
また心臓副交感神経活性の指標であるHF/TPはアムロジピン継続投与群では治療前後で変化を示さなかったが、シルニジピン投与群のそれは有意ではないものの上昇する傾向を示した。
■L/N型Ca拮抗薬シルニジピンが高血圧患者の心臓交感神経活性を有意に低下させ、心臓副交感神経活性を軽度ながら上昇させたことから、猪飼氏は、L/N型Ca拮抗薬は心臓自律神経活性に好影響を与える可能性があると述べた。
⑧糖尿病合併高血圧患者の糖・脂質代謝、腎機能をシルニジピンが改善
(北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科 増田卓氏)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jsh2009/200910/512568.html
出典 NM online 2009.10.5
版権 日経BP社
■糖尿病を合併した高血圧に対しては厳格な降圧治療が必要とされる。
糖尿病合併高血圧患者の降圧治療ではレニン・アンジオテンシン系抑制薬が第一選択薬として用いられるが、単剤での降圧目標達成は容易でなく、降圧効果の優れたCa拮抗薬が併用されることが多い。
その場合、どのCa拮抗薬を選択するかが問題となるが、L型とN型Caチャネルを阻害するCa拮抗薬は優れた降圧効果とともに交感神経の過剰な興奮を抑制し、糖尿病患者のアルブミン尿を改善する作用を示すことが報告されており、糖尿病合併高血圧の治療に適したCa拮抗薬として期待を集めている。
■外来通院中の本態性高血圧患者77例を、糖尿病合併の有無により2群に分け、L/N型Ca拮抗薬としてシルニジピン10-20mg/日を、L型Ca拮抗薬としてアムロジピン2.5-7.5mg/日をそれぞれ8カ月間投与し、クロスオーバー法で比較した。
■それぞれの投与期間の終了時に、脂質代謝の指標として血清総コレステロール、LDL-コレステロール、HDL-コレステロール、中性脂肪、糖代謝の指標としてHbA1c、空腹時血糖、HOMA-R、腎機能の指標として推算糸球体濾過量(eGFR)、尿中アルブミン/クレアチニン比、レニン活性、アルドステロンを測定した。
■試験期間中は降圧目標(130/85mmHg未満)を達成するため、Ca拮抗薬以外の降圧薬も併用されたが、使用頻度が最も高かったのはアンジオテンシン2受容体拮抗薬(ARB、39.0%)で、以下、β遮断薬(33.8%)、利尿薬(27.3%)、ACE阻害薬(16.9%)の順だった。
これらのうちβ遮断薬の使用頻度は糖尿病合併群が非合併群に比べて低かったが、他の薬剤の使用頻度には糖尿病合併の有無で明らかな差はみられなかった。
試験期間中、個々の患者における併用薬の種類や投与量の変更は行っていない。
■全被験者でみた血圧と心拍数は、シルニジピン投与時130±10/77±8mmHg、64±7拍/分、アムロジピン投与時130±9/78±8mmHg、65±8拍/分と同等であった。
糖尿病非合併群(42例)において、シルニジピン投与時にはアムロジピン投与時に比べインスリン抵抗性の指標であるHOMA-Rが有意に低下した。
糖尿病合併群(35例)において、シルニジピン投与時にはアムロジピン投与時に比べ血清中性脂肪が有意に低下した。
また、シルニジピンはアムロジピンに比べ、腎機能指標のeGFRを有意に上昇させ、レニン活性と尿中アルブミン/クレアチニン比を有意に低下させた。
■本研究の特徴は、高血圧患者を糖尿病合併の有無により2群に分けてL/N型Ca拮抗薬の有効性を検討したことだが、増田氏は、シルニジピンが糖尿病を合併した高血圧患者において脂質代謝と腎機能を改善し、糖尿病を合併していない高血圧患者において糖代謝を改善したことから、本剤が糖尿病合併高血圧の治療だけでなく、糖尿病を合併しない高血圧患者における糖代謝改善の観点からも有用性が期待できると述べた。