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ちょっと古いかも知れませんが第32回日本高血圧学会(2009.10.1〜10.3 滋賀県大津市)で発表された演題の紹介記事で勉強しました。
会長(滋賀医科大学上島弘嗣特任教授)講演が「疫学的エビデンスをどう作りどう理解するか」、特別講演の1つが、Framingham研究に基づくリスクチャートを構築した米Emory大学のPeter W. E. Wilson氏による「心血管疾患予測の最新動向」、特別企画1が「日本のエビデンスをつくる:JALS(The Japan Arteriosclerosis Longitudinal Study)」など、疫学的な演題が目立った学会だったようです。
①高血圧患者の酸化ストレス防御能をシルニジピンが改善
(日本薬科大学統合医療教育センター 永田勝太郎氏)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jsh2009/200910/512543.html
出典 NM online 2009.10.2
版権 日経BP社
■酸化ストレス防御系は自律神経系、免疫系、内分泌代謝系とともに生体のホメオスタシス(恒常性)維持機能を担っており、その障害は動脈硬化性疾患や癌などの発症に関与するとされる。
■永田氏らは、FRAS 4(イタリアWismerll社)という装置を用いて酸化ストレス関連指標を測定した。
この装置は、活性酸素やフリーラジカルによって血中に生じたヒドロペルオキシド(ROOH)を光度計で測定するd-ROM(reactive oxygen metabolites)検査と、血中抗酸化物質の鉄イオン還元に伴う色の変化を測定するBAP(biological antioxidant potential)検査が可能。
前者で酸化ストレス度、後者で抗酸化力を評価でき、さらに両者の比(BAP/d-ROM比)を、潜在的な抗酸化力の指標として用いることができるという。
■ アムロジピンとシルニジピンの降圧効果はほぼ同等だが、酸化ストレス防御系に対する作用が異なり、シルニジピンには酸化ストレス防御能を高める作用があることを示唆した。
■ 永田氏は、「シルニジピンの酸化ストレス抑制作用の詳細な機序は明らかでないが、心拍数低下をもたらすN型Caチャネル阻害作用が、酸化ストレス防御系にも好ましい影響を及ぼしている可能性があり、降圧治療のエンドポイントが梗塞性疾患の予防にあることを考えると、シルニジピンはその付加的作用から合目的的な薬剤である」と述べた。
②脈波速度でみる動脈の硬さはCKDの予測因子
(東京医科大学第二内科 冨山博史氏)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jsh2009/200910/512551.html
出典 NM online 2009.10.2
版権 日経BP社
■動脈の硬さの亢進は心血管疾患発症の危険因子とされるが、慢性腎臓病(CKD)発症についても有意な予測因子になり得るようだ。
■腎機能障害は、血圧の上昇や交感神経系の亢進、炎症、酸化ストレス、脂質代謝異常などを介して血管障害を進める。
一方、血管が硬くなると内膜へのストレスが高まるために血管障害が進む。
さらに、血流の多い臓器では左室からの圧脈波が直接伝播し、血流量の多い腎臓などの臓器障害につながる。
「血管が硬くなることが腎機能障害を起こす要因となり、腎機能障害も様々な因子を介して血管を硬くする方向に進む」と冨山氏は述べた。
③N/L型Ca拮抗薬で2型糖尿病性腎症マウスの尿蛋白が減少
(京都大学内分泌代謝内科 横井秀基氏)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jsh2009/200910/512546.html
出典 NM online 2009.10.2
版権 日経BP社
■Ca拮抗薬はL型Caチャネルの阻害により血管拡張作用を発揮するが、一部のCa拮抗薬は交感神経終末に局在するN型Caチャネルも併せて阻害し、交感神経活性を抑制する作用がある。
腎臓では糸球体輸出細動脈にN型Caチャネルが存在し、慢性腎臓病患者においては、N/L型Ca拮抗薬が尿蛋白を減少させることが明らかになっている。
■横井らは、N/L型Ca拮抗薬シルニジピンが2型糖尿病性腎症モデルマウスの尿中アルブミン排泄量を低下させることを報告、その機序として糸球体内の細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)のリン酸化が関与している可能性を示唆した。
④実地医はもっと原発性アルドステロン症を疑って!
地域連携で、2年で300超の原発性アルドステロン症を診断
(東北大学病院腎高血圧内分泌科 佐藤文俊氏)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jsh2009/200910/512550.html
出典 NM online 2009.10.2
版権 日経BP社
■高血圧症は全国で4000万人、そのうち少なくとも5%(200万人)は原発性アルドステロン症(PA)とされる。
臓器障害の合併が多く予後不良な疾患だけに、早期発見・早期治療が重要。
しかし1000人に1人程度の患者しか見つかっていないとされる。佐藤氏は、「間違いでもいいから(患者を)送ってほしい」と実地医に呼びかけ、2007年から2008年の2年間で328人ものPA患者を確定診断した。
■同氏が説明する原発性アルドステロン症の特徴は、高血圧患者のうち、比較的若年者、治療抵抗性、重症高血圧、急な血圧コントロール不良、低カリウム血症などと、初診時の血漿アルドステロン濃度(PAC)と血漿レニン活性(PRA)の比が、PAC(ng/dL)/PRA>20、PAC(ng/dL)>12かつPRA<1となる症例だ。
■紹介された患者に対しては、30分間の安静臥床後、負荷試験(カプトリル50mg負荷後もPAC/PRA>20、またはPRA<1で、ACTH負荷後のPAC(ng/dL)>20)で確定診断を行う。
■この結果、紹介されたPA疑いの724人の45%に当たる326人がPAと確定診断された。
このうち204人(62%)は入院となったが、残りの124人(38%)は、地域連携による薬物治療で、4〜6カ月ごとの経過観察を行った。
■佐藤氏は、「薬を出してもなかなか血圧が下がらない、30代、40代で家族歴もないのに血圧が高い、アンジオテンシン2受容体拮抗薬(ARB)を出しているのに低カリウム血症などといった症例に遭遇したら、ぜひアルドステロン症を疑っていただきたい。PAを見逃した患者が腎不全、心不全を発症して病院に送られるのは、医療経済上も大きなマイナス」と強調した。
<番外編>
収縮期高血圧を有する高齢患者における血圧の厳格管理 vs 適度な管理: VALISH試験
VALISH試験より、収縮期高血圧を有する高齢患者において、適度な降圧と比較し、厳格な血圧管理によるイベント抑制効果は確認されなかったものの、高齢者での血圧目標<140mmHgは安全に達成可能であることが、Osaka University Graduate School of MedicineのToshio Ogihara氏らにより、8月1日号のHypertension誌で報告された。
Ogihara氏らは、収縮期血圧(座位血圧160-199mmHg)を有する70-84歳の3,260人を、厳格管理群(<140mmHg: 1,545人)、又は適度な管理群(≧140-<150mmHg: 1,534人)に無作為に割り付けた。患者背景は両群で類似しており、平均年齢は76.1歳、平均血圧は169.5/81.5mmHgであった。
3.07年(中央値)の追跡を行い、3年の血圧は厳格管理群で136.6/74.8mmHg、適度な管理群で142.0/76.5mmHgを記録し、両群の差は5.4/1.7mmHgであった。
主要複合評価項目である心血管イベントの全体の割合は、厳格管理群で10.6/1,000人年、適度な管理群で12.0/1,000人年であった(HR 0.89 [95%CI 0.60-1.34] p=0.38)。
Ogihara氏らは、「本試験は厳格な血圧管理が適度な管理と比べ、優れていることを証明するにはパワー不足であったが、収縮期高血圧を有する比較的健康な70歳以上の患者における目標血圧<140mmHgは安全に達成可能であることが示された」と、まとめている。
原文
Ogihara T, et al. Hypertension. 2010; 56: 196-202
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=medical&no=765&id=1

2010.8.14撮影 蓼科イングリッシュガーデン
<きょうの一曲>
栄冠は君に輝く ~全国高等学校野球選手権大会の歌~
http://www.youtube.com/watch?v=A3pd2U_6Fxk&feature=related
沖縄興南高校の優勝で全国高等学校野球選手権大会も幕を閉じました。
我喜屋監督と島袋投手の冷静な姿が印象的でした。
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/ があります。