戯れ言たれる侏儒
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カルベジロールの適応

戯れ言たれる侏儒 / 2010.08.10 00:38 / 推薦数 : 1

日本医事新報の「質疑応答」のコーナーに、カルベジロールの適応についての質問が掲載されていました。

質問の要点は「狭窄性の弁膜症ならばカルベジロールの適応も理解できるが、閉鎖不全による心不全への適応はあるのか」というものです。
回答者は北大循内の筒井裕之教授です。

以下、引用。
■現在までに、有効性が確認されているβ遮断薬はカルベジロール、ビソプロロール、メトプロロールの3剤である。
(私的コメント:このうちカルベジロールのみがわが国では保険承認がなされている)
■日本でもMUCHA試験において、カルベジロールの有効性が証明されており、唯一慢性心不全に対する適応を有している。
これらの試験の対象となった患者は、虚血性心筋症と拡張型心筋症を原因疾患とする慢性心不全である。
■アーチストの添付文書の適応は「虚血性心疾患または拡張型心筋症に基づく慢性心不全」とされている。
■したがって、現時点では、MRやARによる弁膜症を原因疾患とする慢性心不全に対しては、β遮断薬が予後を改善するとのエビデンスはなく、投与は推奨されない。
■しかし、MRやARは左室の容量負荷をもたらし、交感神経系に代表される神経体液性因子を活性化し、これらは心筋細胞肥大、アポトーシス、間質繊維化などからなる心筋裏モデリングを来す。
このような心不全の基本病態は、拡張型心筋症・虚血性心筋症と共通であると考えられる。
■したがって、β遮断薬が弁膜症による心不全に対しても有効である可能性はあり、実際に有効性を示唆する報告がなされている。
■MRでは逆流が低圧系の左房に流入するため、左室駆出率(LVEF)は一見保持されているように見えるが、心筋収縮性自体は低下している。
■筆者(筒井)らはイヌに重症MRを作成し、3カ月後よりβ遮断薬を投与したところ、左室収縮性が改善することを見出した。
さらに、このようなβ遮断薬の効果は、心筋細胞レベルでの収縮能低下と微細構造変化の改善を伴っていた。
■MRを対象とした研究でも、β遮断薬で死亡率が低下するという報告がある。
■ARについては、β遮断薬による徐脈が弁逆流自体を悪化させる危険性があり禁忌とも考えられる。
しかし、MRと同様に有効性を示唆した報告がある。
<結論>
現時点ではMRやARの患者で高血圧や冠動脈疾患など他のβ遮断薬の適応がある場合には、β遮断薬が心不全に対しても有効である可能性はあるが、心不全そのものに対する投与は推奨されないと考えられる。

出典 日本医事新報 No.4502 2010.8.7  P77-78
版権 日本医事新報社


<β遮断薬と心不全 関連サイト>
ESC心不全ガイドライン
http://blog.m3.com/reed/20081130/ESC_
■左室収縮能が低下した慢性心不全の治療薬としてACE阻害薬,β遮断薬は禁忌がない限り全例に投与し,入院患者の場合,入院中から始めるべきである(class I,エビデンスレベルA)。
■コントロールが困難な心不全悪化中は一度β遮断薬を減量または中断することは可能であるが,心不全症状が安定した後,再び徐々に増量していく。
■β遮断薬の投与量については,心不全症状の悪化,症状のある血圧低下,徐脈が見られない限り増量すべきである。
■慢性心不全に対するβ 遮断薬治療
http://jams.med.or.jp/symposium/full/122065.pdf
○COPERNICUS試験において,重症心不全においてもカルベジロールが有効性を示したことから, 軽症から重症まで慢性心不全に対するβ 遮断薬の有用性が確立した。
○β 遮断薬は通常ACE 阻害薬と併用して用いられるが,予後改善効果のみならず,用量依存的に心機能の改善効果もみられる。
○有効性の機序は単一ではなく,β 受容体の情報伝達障害の改善,Ca 過負荷,酸化ストレスによる心筋細胞障害の抑制,心拍数の減少によるエネルギー代謝や拡張期特性の改善,抗不整脈作用など多面的に作用するものと考えられている。
■重症心不全に対するβ 遮断薬(カルベジロール)
至適投与の指標について
http://www.tokushima-med.jrc.or.jp/zasshi/2007pdf/002.pdf
○重症心不全患者に対してカルベジロールは安全に導入可能であり,年齢のみが予後不良の予測因子であった。
(中止例では年齢が有意に高かった)
○導入前の左室駆出率やその他の各種パラメータでは,副作用の出現を予測することはできなかったが,導入後に左室拡大を認める症例は予後不良であった。
○β遮断薬の慢性心不全への応用は,CIBIS- ,MERIT-HF,COPERNICUSをはじめ多くの大規模臨床試験で評価され,生命予後に関するリスク減少は34~35%と良好な成績が示されている。
○β遮断薬の慢性心不全治療における特徴は,アンジオテンシン変換酵素阻害薬の薬効に相乗的に働くこと,アンジオテンシン変換酵素阻害薬では認められないreversed remodeling 効果が認められること,さらに心臓突然死を減少させることなどが挙げられる。
○カルベジロール投与開始後,約半年間は頻繁に心エコーで左室拡張末期径などの計測をしていくことが望ましいと考えられた。


慢性心不全におけるβ遮断薬療法その1(1/3)
http://blog.m3.com/reed/20071220/1

慢性心不全におけるβ遮断薬療法その2(2/3)
http://blog.m3.com/reed/20071221/1

慢性心不全におけるβ遮断薬療法 その3(3/3)
http://blog.m3.com/reed/20071222/1

<番外編>
#BMSの再狭窄に対するDES vs BMS
BMSの再狭窄に対するDES留置は、BMS留置と比較して、死亡/MI/TLRを低下させることが、アメリカ、Cleveland Clinic のInder M. Singh氏らにより、8月1日号のCatheterization and Cardiovascular Interventions誌で報告された。

Singh氏らは、1999年5月から2007年6月にCleveland Clinic においてBMSの再狭窄に対しPCIを受けた706人のデータを検証し、DES(362人)とBMS(344人)による治療を比較した。

3.2年(中央値)の追跡で、230の累積イベントが認められた。27の変数を補整後、DESによる治療はBMSと比較して、主要評価項目の死亡/MI/TLRの割合が有意に低かった(21% vs 45%: 補整HR 0.63 [95%CI 0.42-0.95] p=0.03)。
死亡はDESで低かったが(DES 8% vs BMS 24%: p=0.005)、MI(3% vs 8%: p=0.31)、及びTLR(13% vs 20%: p=0.23)では統計学的な差はなかった。

Singh氏らは、「BMS内再狭窄を有する患者に対するDESの使用は、BMSと比較して、死亡/MI/TLRの割合を低下させた」と、まとめている。

Singh I, et al. Catheter Cardiovasc Interv. 2010; 76: 257-262

https://www.tcross.co.jp/details.php?category=medical&no=778&id=1
その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります。      

 

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