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葦の髄から循環器の世界をのぞく
老境に入った内科開業医が、昔専門とした循環器科への熱い思い断ちがたく一人でお勉強した日記です。
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糖尿病医が考えるARB発がん問題
戯れ言たれる侏儒
/ 2010.07.28 00:46 / 推薦数 : 0
「ARBとがんリスク」というショッキングな話題については、すでに
ARB使用で肺がんリスク25%上昇?
http://blog.m3.com/reed/20100618/ARB_25_1
でもとりあげました。
糖尿病専門医は、この報告をどのように捉えているか。
北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟先生が書かれた興味深い記事で勉強しました。
糖尿病医として考えるARB発がん問題
Lancet Oncology論文とFDA7月15日コメントを踏まえて
研究の背景:ARB,お前もか
ARBが発がんに関与するという驚がくの報告がLancet Oncol(2010; 11: 627-636)になされた。
Lancet Oncol 2010; 11: 627-636
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20542468
FDA Drug Safety Communication: Ongoing safety review of the angiotensin receptor blockers and cancer
米食品医薬品局(FDA)のコメント(7月15日発表)
http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/PostmarketDrugSafetyInformationforPatientsandProviders/ucm218845.htm
研究のポイント1:CHARM試験の結果からARBでのメタ解析を着想
CHARM試験は全体で7,601例の慢性心不全患者を対象にしたARBカンデサルタンの心血管イベント抑制効果を示した試験である(Lancet 2003; 362: 759-766)。
しかし,この試験でがんによる死亡に群間差があった(カンデサルタン群86例,プラセボ群59例,P=0.038)ことが,今回の論文著者(I. Sipahi氏)らにARBとがんとの関連に興味を抱かせたらしい。
同氏らは,その後のONTARGET試験(N Engl J Med 2008; 358: 1547-1559),TRANSCEND試験(Lancet 2008; 372: 1174-1183)においてテルミサルタン群での発がんがコントロール群より多かったことを確認すると〔CHARM試験の全体解析(CHARM-OVERALL)でがんを含む非致死的新生物の報告は群間に有意差はなかったのではあるが〕,ARBにより発がんリスクが高まるという仮説を立てた。
この仮説を検証するために行われたのが今回のメタ解析である。
同氏らは,まずMedline,Scopus,Cochraneのデータベースを利用して2009年11月の時点でARBを用いて英語で報告された無作為臨床試験の抽出を行った。
2,057件の報告がヒットしたが,試験期間が1年未満であったり,ARB同士が比較されていたり,症例数が100例未満であったりした報告は除外され,60件の報告が残った。
このなかで発がんデータが確認できる試験は5件であった。
また,そこにFDA公式サイトからの検索もなされ,臓器特異的な発がんやがん死のデータが抽出可能な4件の試験が追加された。
こうして9件の試験が選択された(LIFE,ONTARGET,TRANSCEND,PROFESS,CHARM-OVERALL,TROPHY,VAL-HEFT,OPTIMAAL,VALIANTの各試験)。
研究のポイント2:ARB群で発がんが有意に増加していた
9件の試験のうち,全身での発がんについてデータを解析できたのは,LIFE(ロサルタン,N=9,193),TROPHY(カンデサルタン,N=787),TRANSCEND(テルミサルタン,N=5,926),ONTARGET(テルミサルタン,N=2万5,620),PROFESS(テルミサルタン,N=2万64)の5試験であった。
これらの5試験をフォレストプロットに示したのが図1Aであり,リスク比1.08(95%CI 1.01~1.15,P=0.016)とARBで発がんのリスクが有意に高まっていた(ARB 7.2%,コントロール6.0%)。
これを,発がんをエンドポイントとして定めていた3試験(LIFE,ONTARGET,TRANSCENDの各試験)に絞っても同様の結果であった(
図1B
)。
この結果は,ACE阻害薬と併用しているか否かによる影響は受けていなかった。
また,臓器特異的な発がんで検討すると肺がんが有意に増加しており(リスク比1.25,P=0.01),前立腺がんや乳がんでは有意な増加は認められなかった。
また,がん死についてフォレストプロットを作成したところ,Sipahi氏らが注目したCHARM-OVERALL試験が有意ながん死の増加を示すだけで,ARBによる有意な増加は認められなかった(
図2
)。
研究のポイント3:FDAが試験の限界指摘するコメント
この論文を受けて7月15日付けで発表されたFDAのコメントでは,以下のようなことが述べられた。
■このメタ解析にはいくつかの限界があり,さらなる調査なしに今回の知見の妥当性を判断することは困難である
■限界点としては,
(1)解析された試験における発がんが真に新たな発がんか不明である,
(2)ARBを用いた適切な臨床試験をすべて含んでいるわけではない可能性がある,
(3)データが患者個人レベルのものではない,
(4)発がんについて解析されたデータの約85%がテルミサルタンのものであり,すべてのARBに対して当てはめてよいかどうか不明である,
(5)仮説を立てる際に用いられた3試験のうち2試験(ONTARGET試験とTRANSCEND試験)がそのまま仮説検証のためのデータ解析に用いられており,独立した仮説検証研究になっていない
―ことが挙げられる
■FDAはARBが発がんのリスクを増加させるとは結論付けておらず,今後安全性情報を更新していく
■FDAは(現時点では)ARBの発がんに対する潜在的リスクよりも,ARBの降圧・心疾患予防に対するベネフィットのほうが勝っていると考える
■医療従事者はARBを既存の勧告に従って使用し続けることを推奨する
山田先生の考察:ARBの使用を手控えなくてよいが,がんが日本人糖尿病の最大死因であることは強く意識すべき
どうも毎年5月から7月はハラハラドキドキさせられることが多い。
○2007年
rosiglitazoneによる心血管イベント増加(N Engl J Med 2007; 356: 2457-2471,5月にオンライン版)
○2008年
ACCORD試験における厳格血糖管理群での死亡率の増加(N Engl J Med 2008; 358: 2545-2559,6月に学会発表)
○2009年
インスリングラルギンによる発がんの増加(Diabetologia 2009; 52: 1732-1744,6月にオンライン版)
であった。
今年はARBでの発がんであり,思わず「ARB,お前もか」と口にした先生方もおられたのではなかろうか。
中略
生物学的に発がんの機序が説明できず,また,マウスやラットを用いた実験データでARBによる発がん性は確認されておらず,さらに,テルミサルタンを用いた試験でもPROFESS(N Engl J Med 2008; 359: 1225-1237)では発がんが少ない(有意ではない),といったことを考えても,今の時点ではテルミサルタンを含めARBの使用を手控える必要はなさそうである。
しかし,ARBを使用することの多い糖尿病医は,日本人糖尿病患者の死因の第1位が悪性新生物である(糖尿病 2007; 50: 47-61)ことを強く意識すべきであろう。
年齢,性別に応じて適切にがんのスクリーニング検査を受けるよう糖尿病患者に勧めるべきであるというADAとACSのコンセンサスリポート(Diabetes Care 2010; 33: 1674-1685)の勧告は,日本においてこそ強調されるべきである。
Diabetes and cancer: a consensus report.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20587728
<番外編>
着用型除細動器の使用に関する全国的な累積情報
事象発生率、コンプライアンスおよび生存
Aggregate National Experience With the Wearable Cardioverter-Defibrillator
Event Rates, Compliance, and Survival
目的
本研究は、着用型除細動器(WCD)による不整脈治療における患者コンプライアンスや有効性を検討することを目的とした。
背景
突然死を予防するためのWCDの有効性は、イベントの種類、患者コンプライアンスおよび心室頻拍/心室細動(VT/VF)に対する適切な処置の有無によって左右される。
方法
略
結果
略
結論
50%超の患者でWCDの装着時間は1日の90%を超えており、コンプライアンスは良好であった。
使用中の突然死の発生率は低かった。生存率はICD患者と同等であったが、突然の心停止における重要な死因は心静止であった。
http://ds-pharma.jp/medical/gakujutsu/jacc/archive/jacc1007_0194.html
<一部追筆>
CKD患者におけるARBとCCB 講演会メモ(未完)
http://blog.m3.com/reed/20100725
<今日の一曲>
アマポーラ ロス・インディオス・タバハラス
http://www.youtube.com/watch?v=d_nRCxbzuPU&feature=fvw
2010.7.18撮影 東京・丸の内
歩道と車道が同じ色調となっており開放感と広がりを演出しています。
さすがに日本の首都の街並に相応しい風格が感じられます。
横浜の伊勢佐木町も、随分前にアーケードが撤去されモール化さたようです
。
その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
があります。
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