戯れ言たれる侏儒
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RAA系の研究が進むなか,AngⅡと臓器障害との関連性が明らかにされ,AT1受容体拮抗薬(ARB)による臓器保護作用に注目が集まっている。
そして,ARBのなかでも,オルメサルタン メドキソミル(オルメテック®)〔以下,オルメサルタン〕は,その多彩な作用機序により,多面的な臓器保護作用を発揮することが期待されている。

また,近年,高血圧が骨粗鬆症やアルツハイマー病といった加齢に伴って発症する疾患の病態に関与していることが明らかになり,高血圧治療と抗加齢医学との関連性に注目が集まっている。

 

オルメサルタンの多面的臓器保護作用
RAA系抑制作用が血管・骨・認知機能に及ぼす影響
司会 
愛媛大学大学院 分子心血管生物・薬理学  堀内 正嗣 教授
カナダ・マギル大学内科  Ernest L. Schiffrin 教授
大阪大学大学院循環器内科学 小室 一成 教授
熊本大学大学院生命科学研究部 生体機能薬理学 光山 勝慶 教授
大阪大学大学院 臨床遺伝子治療学 森下 竜一 教授


血管内皮機能障害を惹起するAngⅡとアルドステロンのクロストーク
堀内 

RA系には,血管収縮,高血圧,臓器障害を惹起するACE/AngⅡ/AT1受容体軸(Devil)と,血管保護,血圧低下,臓器保護に働くACE2/Ang-(1-7)/Mas受容体軸(Angel)という,相反する2つの調節系が存在することが明らかになっています。
ARBオルメサルタンは,優れた降圧効果を示すとともに(図1,略),ACE/AngⅡ/AT1受容体軸を抑制して降圧効果,抗酸化作用,抗炎症作用などをもたらし,ACE2/Ang-(1-7)/Mas受容体軸を活性化することで多面的な臓器保護作用を発揮するものと考えられています(図2)。


Schiffrin (RAA系と血管障害の関係について)
私たちは約25年前に,AngⅡとミネラルコルチコイドであるアルドステロンに相互作用があることを報告しています。
AngⅡは,血管内皮依存性血管拡張機能を低下させて血管壁厚の増大と血管内皮機能障害を引き起こすほか,アルドステロンの分泌を促進します。
アルドステロンは,ミネラルコルチコイド受容体を介して血液中のナトリウムやカリウムの調節を行うホルモンですが,一方で酸化ストレスや炎症を惹起して心臓や血管の肥大・線維化を促進し,血管内皮機能にも影響を与えることもわかっています。

最近の研究では,AngⅡによる血管内皮依存性血管拡張機能の低下がミネラルコルチコイド受容体拮抗薬で改善すること,アルドステロンによる血管壁の活性酸素産生の亢進をARBで抑制できることなどが明らかになりました。
また私たちは,ラットの血管平滑筋細胞に対して薬物活性用量に満たない低用量のAngⅡとアルドステロンを同時に投与したところ,細胞増殖や血管新生に影響を及ぼす非受容体型チロシンキナーゼであるc-Srcが活性化し,これによってNADPHオキシダーゼが活性化して,活性酸素産生の亢進が認められたことを報告しています。
これらの結果から,AngⅡとアルドステロンは相互に協調(クロストーク)しながら,血管障害や血管リモデリングを引き起こすと考えられます。

問題は,AngⅡとアルドステロンの相互作用を抑制することで血管リモデリングや血管内皮機能障害を改善できるかどうかということです。
私たちが高血圧患者を対象に行った臨床試験VIOSでは,オルメサルタンの52週投与により,高血圧患者の血管壁厚(中膜)/内腔径比が正常血圧者と同等のレベルにまで改善しました(図3)。
β遮断薬では血管壁厚の改善がみられなかったことから,私たちは,オルメサルタンがAT1受容体を強力に遮断するとともに,AngⅡ依存性のアルドステロン産生を抑制して血中アルドステロン濃度を減少させたことで,このような結果が得られたのではないかと考えています。

 


 

オルメサルタンによるeNOSアンカップリング阻害の重要性
光山
 (抗酸化作用の観点から見た心臓リモデリングへのARBの影響)
近年の研究から,血管内皮機能障害や心臓リモデリングには,血管内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の「アンカップリング」と呼ばれる現象が関連することがわかってきました。
eNOSは一酸化窒素(NO)を産生し,血管拡張など血管保護的に作用する二量体の酵素ですが,補酵素であるテトラヒドロビオプテリン(BH4)が高血圧や糖尿病などの危険因子によって低下すると,アンカップリングが起きて一量体となります。
これによって活性酸素が産生され,酸化ストレスが増加し,血管内皮機能障害が引き起こされます。
私たちの実験では,eNOSアンカップリングを認める食塩感受性高血圧ラット心不全モデルにBH4を投与したところ,血管のeNOSアンカップリングの指標である二量体/一量体比が改善したうえ,血管内皮機能改善だけでなく,心機能の改善も得られています。このことから,eNOSアンカップリングは血管内皮機能障害のみならず,心不全の進展にも重要な役割を果たしていると考えています。

また,eNOSアンカップリングを認める食塩感受性高血圧モデルラットにオルメサルタンを投与すると,eNOSの二量体/一量体比が改善し(図4A),酸化ストレスの低下(図4B)と血管内皮機能の改善も得られました。
これらの結果から,オルメサルタンにはeNOSのアンカップリングを阻害して酸化ストレスを低下させ,血管保護はもちろん心保護にも寄与する作用があると思われます。

 


堀内 
このような基礎研究の結果を考慮すると,ARBを用いた高血圧治療の意義は大きいと考えられます。
しかし,実地診療ではARBの単剤投与で十分な降圧効果が得られないことも想定されます。
そうした場合には,ARBの増量とCa拮抗薬など他の降圧薬との併用のどちらが好ましいのでしょうか。

光山 
現在,日本でその問題を検証する無作為化比較試験であるOSCAR試験が進行中です。
対象は心血管危険因子を1つ以上有する65歳以上の高齢高血圧患者で,オルメサルタン20mg/日投与で降圧目標の140/90mmHgに達しなかった患者を,高用量ARB(オルメサルタン40mg/日)群とARB(オルメサルタン20mg/日)+Ca拮抗薬(アゼルニジピンまたはアムロジピン)併用群に無作為に割り付け,心血管系イベント抑制作用を比較検討しています。
フォローアップ期間は終了しており,2011年には最終解析結果が報告される予定です。

Schiffrin 
私は,ACCOMPLISH試験の結果から,RA系抑制薬で降圧目標に達しない際の併用薬はCa拮抗薬が有望と考えています。
ただし,OSCAR試験では基礎薬となるARBに多面的な作用を有するオルメサルタンが用いられていることから,興味深い結果が得られることが期待されます。


AngⅡは老化細胞を増加させ血管の老化を促進している
堀内 
抗酸化は抗加齢医学の中心的な概念でもあります。
小室先生は,血管細胞の老化に関する研究を行っておられますね。

小室 
私たちの研究は,RA系と血管細胞の老化との関連を調べたものです。
in vitroにおいて,ヒト培養平滑筋細胞にAngⅡを作用させたところ,老化シグナル分子であるp53と,その下流のp21の発現が亢進し,細胞老化のマーカーであるSAβ-gal陽性細胞数が増加しました。
また,in vivoでの検討として,コレステロール代謝に深くかかわるアポリポ蛋白Eを欠損させた動脈硬化モデルマウス(アポEノックアウトマウス)にAngⅡを投与したところ,偽薬群と比較してp21の発現の亢進と血管壁におけるSAβ-gal陽性細胞数の増加が認められました。
また,アポEノックアウトマウスとp21ノックアウトマウスをかけあわせたp21/アポEダブルノックアウトマウスでは,AngⅡを投与してもアポEノックアウトマウスと比較してSAβ- gal陽性細胞数の増加が抑えられ(図5),大動脈の内膜肥厚および大動脈瘤の形成も抑制されていました。
これらの結果から,AngⅡは細胞老化を早めて動脈硬化を促進していると考えられます。
そのAngⅡをAT1受容体で遮断するARBは,血管の老化を遅延させ,動脈硬化を防ぐ可能性があると思います。

 


Schiffrin 
興味深い知見ですね。
血管の老化についてはTNF-α,インターフェロンγなどのサイトカインによる炎症反応も関連していると考えられており,研究の進展が期待されます。


破骨細胞に対するAngⅡの作用と骨粗鬆症の発症
堀内 

RA系の抑制が細胞の老化を遅延させるとの研究結果を小室先生にお示しいただきましたが,これは加齢に伴って発症する他の疾患もRA系と関連があるということでしょうか。
森下先生は,動物モデルを用いて骨粗鬆症とアルツハイマー病に対するARBの影響について報告されていますが,ご紹介いただけますか。

森下 
まず,骨粗鬆症とRA系の関連についてご説明します。高血圧が骨粗鬆症の発症因子であることは複数の疫学研究からも周知ですが,その機序は,高血圧により尿中カルシウム排泄が促進されて血中カルシウムが減少するためと考えられていました。
しかし最近,AngⅡが破骨細胞に作用して,骨密度を低下させるという新たな機序の存在が判明しました。

私たちは高血圧と骨密度との関連を調べるため,雌Wistarラットの卵巣を摘出して閉経後骨粗鬆症モデルラットを作成しました。この卵巣摘出ラットを観察したところ,非卵巣摘出ラットと比較しても破骨細胞の活性化を示す酒石酸抵抗性産生フォスファターゼ(TRAP)の活性に変化はなく,骨密度の低下もわずかにとどまっていました。
しかし,AngⅡを投与すると,非卵巣摘出ラットと比較して卵巣摘出ラットではTRAP活性が亢進するとともに骨密度も低下し,骨粗鬆症の進展と同様の経過を示しました。

また,高血圧自然発症ラット(SHR)を使用した検討では,卵巣を摘出するだけでTRAP活性の亢進と骨密度の減少が示されました。
この卵巣摘出SHRにオルメサルタンを投与したところ,TRAP活性を非卵巣摘出SHRと同程度にまで抑制し,骨密度の低下も用量依存的に抑制しました(図6)。
血管拡張薬ではそのような結果が得られなかったことから,高血圧による骨粗鬆症誘発の予防にはAT1受容体の遮断が有望と考えられました。

 

 

血管機能の改善を介した認知機能への影響
森下 (アルツハイマー病について)
現在,アルツハイマー病は,高血圧,糖尿病,高コレステロール,動脈硬化,肥満や喫煙などの危険因子によって誘発される血管性疾患と認識されています。
これらの因子を検討した結果,多様な作用を有するARBにはアルツハイマー病の病態を改善する可能性があるのではないかとの仮説を立て,アルツハイマー病の脳に出現する老人班に蓄積するβアミロイド蛋白(Aβ)1-40を脳内に注入したモデルマウスを用いて実験を行いました。
Aβ1-40注入マウスの認知機能をMorris水迷路法で評価したところ,対照群としてペプチドを逆順のシークエンスにしたAβ40-1を注入したマウスと比較して逃避潜時が延長し,認知機能の低下を認めました(図7)。

 


しかし,Aβ1-40注入の28日前よりオルメサルタンを投与していたマウスでは逃避潜時が有意に短縮し,対照群と同程度まで認知機能が改善したことが明らかになりました。
なお,他の降圧薬で同程度に降圧した際には,Aβ1-40マウスの認知機能に改善がみられませんでした。
このことから,オルメサルタンの認知機能保護作用は,降圧効果とは異なる独立した機序によるものと考えられました。

また,異なるアルツハイマー病モデルである,アミロイド前駆蛋白(APP)23トランスジェニックマウス(APP23マウス)にオルメサルタンを投与して,Aβの沈着を観察したところ,影響はみられませんでした。
一方で,APP23マウスは対照群の野生型マウスと比較すると,ひげ刺激時の脳血流量が著明に減少していましたが,オルメサルタンを投与したAPP23マウスでは脳血流量が保たれていました。
これらの結果から,オルメサルタンが示した認知機能保護作用には,血管機能改善作用が関係していると考えられます。

Schiffrin 
AngⅡが脳内のアストロサイトなどの非神経系細胞に直接作用して代謝を促進し,Aβの沈着を増加させている可能性はあるのでしょうか。

森下 
大いにあると考えます。AβはeNOSを阻害して血管内皮に影響を与えることがわかっていますから,アルツハイマー病の病態とRA系の間には何らかの関連性があると思います。

Schiffrin 
強力にAngⅡを遮断するオルメサルタンのようなARBを用いて,活性酸素産生を抑制し,炎症性メディエータを持続的に抑えることは,細胞の老化の進行に対しても好ましい影響を与え,加齢に伴って発症する疾患に対しても有効な可能性があると思います。

小室 
一般的に,ヒトの寿命は心血管病と癌に大きく影響されます。ARBは,癌に対する影響はまだ明らかではないですが,血管細胞の老化を遅延して動脈硬化を防止する可能性がありますから,抗加齢医学の観点からも研究を続けたいと考えています。

出典 Medical Tribune 2010.6.25
版権 メディカルトリビューン社

 


<番外編 その1>
男性の長身は静脈血栓塞栓症の危険因子
男性の長身は静脈血栓塞栓症(VTE)の危険因子の1つであると,ノルウェーのグループがAmerican Journal of Epidemiologyの5月15日号に発表した。

同グループは,1994~95年に地域の25~96歳の男女2万6,727例を登録。
2007年9月まで追跡して身長とVTEリスクとの関係を検討した。追跡期間の中央値は12.5年で,462件のVTEイベントが確認された。

解析の結果,身長は男性ではVTEの危険因子だったが,女性ではその関係は認められなかった。
年齢,BMI,糖尿病,喫煙,ホルモン療法(女性)を調整後の身長10cm当たりのVTEの多変量ハザード比は男性が1.34(95%信頼区間1.09~1.64),女性が1.13(同0.91~1.40)であった。
男性における身長の最高四分位(181cm超)は,最低四分位(173cm未満)と比べVTEのリスクが2倍高かった。

Brækkan SK, et al. Am J Epidemiol 2010; 171: 1109-1115.

出典 Medical Tribune 2010.6.10
版権 メディカルトリビューン社

 

<番外編 その2>
今月、「脳卒中死亡率、コレステロール値高い方が低い!? 」という内容の記事で注目(?)された東海大の大櫛陽一教授(医療統計学)の論文は、以下のサイトで閲覧することが出来ます。

 

脳卒中患者での高脂血症による臨床指標への影響
大櫛 陽一 その他
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/32/3/242/_pdf/-char/ja/


■調査対象は
”薬物治療の影響を排除するために、高脂血症・高血圧・糖尿病での薬物治療をしていない脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血の16,850 症例”
■薬物療法をしていないということは、高脂血症は軽症であった可能性が考えられます。
■高脂血症群、非高脂血症群の総コレステロール値・LDL-コレステロール値・HDL-コレステロール値・中性脂肪値についての記載がありません。
■要旨には”日本人では特に高齢者における低栄養が脳卒中の発症や予後に影響しているものと思われる”と書かれており、ちょっと腰砕けです。
■同じく要旨に書かれている”日本の脂質異常症診断基準が低すぎる”という内容も、この論文からは導き出されません。
■方法の項目に”高脂血症の判断は主治医に依存しているが,登録された期間における日本動脈硬化学会の診断基準が使われているものと思われる”と書かれており、実際の数値に当っていないことがわかります。
最も重要な、2群のグループ分けとなる対象者が”いるものと思われる”といったように仮定にもとづいて分類さt¥れています。
■”TC ≧ 220 mg/dl,LDL-C ≧ 140 mg/dl, 中性脂肪
(TG) ≧ 150 mg/dl のいずれかに該当する”と推定していますが、論理の展開がコレステロール値に終始しています。


その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります。      

 

 

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