戯れ言たれる侏儒
Profile

ブログ内検索

カレンダー

<< 2012/05 >>
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

新着コメント

新着トラックバック

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

< 冠動脈石灰化スコア | メイン | 胸部大動脈疾患に新ガイドライン >

##Arch Intern Med誌から
##JUPITER試験を分析し、バイアスの存在を指摘
コレステロール降下薬が心血管イベント一次予防において有効かどうかを調べた研究は数多く行われてきたが、JUPITERほど注目を集めた臨床試験はない。
仏Joseph Fourier大学のMichel de Lorgeril氏らは、LDL-コレステロール(LDL-c)値が正常域の人々におけるロスバスタチンの明確な利益を示したJUPITER試験のデータを詳細に分析し、バイアスの存在を指摘。
その結果に基づいてガイドラインや日常診療に変更を加えてはならないと述べている。
論文は、Arch Intern Med誌2010年6月28日号に掲載された。

JUPITERは、心血管歴のない、コレステロール高値ではないが高感度CRP(hsCRP)高値の人々を対象に行われた。
論文は、偽薬に比べロスバスタチン群で、LDL-c値は50%低下、hsCRPは37%低下、心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、動脈血行再建術の施行、不安定狭心症による入院、心血管死亡を合わせた複合イベント)は44%低下したと報告していた。

Rosuvastatin to Prevent Vascular Events in Men and Women  with Elevated C-Reactive Protein(ABSTRACT)
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/NEJMoa0807646v1
論文発表直後から、その結果に関する活発な議論が行われた。de Lorgeril氏らは、この試験で用いられた方法と得られた結果を詳細に分析し、いくつかの問題点を見い出した。

(1)JUPITERは、あらかじめ設定された条件に基づいて2年に満たないうちに早期中止されたが、あらかじめ設定された条件が何だったのか、どのエンドポイントに基づいて早期中止が決定されたのかは論文に記述されていない。
また、早期中止を指示したのは独立した安全性監視委員会のメンバーだとされているが、委員会の会長は、企業の資金を得た脂質降下薬に関する臨床試験の多くに関係している人物で、利害抵触が懸念される。

(2)主要エンドポイントに設定された複合イベントの中に、血行再建術や入院が含まれていた。
これらは医師の判断に基づくもので、バイアスが入り込む余地がある。
それらを除いて、致死的または非致死的心筋梗塞と脳卒中というハードエンドポイントに限定すると、早期中止時点で発生件数は240件しかなかった。

(3)全死因死亡率の経時的な差を詳細に調べたところ、追跡を続けていれば、介入群と対照群の差は縮小し、いずれは消失した可能性が認められた。

(4)早期中止の理由の1つとされた「ロスバスタチン投与による心血管死亡率の明白な減少」にかかわるデータは論文に含まれておらず、論文の表中の数字から推定すると、心筋梗塞による死亡はロスバスタチン群9人、偽薬群6人、脳卒中死亡はそれぞれ3人と6人で、合計は両群ともに12人ずつとなった。

(5)非致死的脳卒中と心筋梗塞の発生件数は有意に減少していた。
一方で、脳卒中と心筋梗塞による死亡には差がないという状態であれば、試験を継続してこれらイベントの発生件数を追跡していくべきだ。

(6)非致死的心筋梗塞の発生件数(ロスバスタチン群22件、偽薬群62件)に比べ、心筋梗塞による死亡(それぞれ9件と6件)が著しく少ない。
通常なら心筋梗塞の致死率は50%程度になる。
また、論文中の数字が正しいのであれば、心筋梗塞患者の致死率は偽薬群に比べロスバスタチン群で約3倍となり、統計学的に有意な差が見られる。

(7)論文では、心血管死亡はロスバスタチン群31件、偽薬群37件と報告している。
心筋梗塞と脳卒中による死亡は上記のように両群共に12人であるから、それ以外の心血管系疾患による死亡がロスバスタチン群で19件、偽薬群では25件発生したことになる。
心筋梗塞と脳卒中以外の心血管イベントでこれほど多くの人々に死をもたらすものがあるのか。
論文には、心筋梗塞と脳卒中以外の心血管死亡がどのようなものだったのかは説明されていない。

(8)JUPITER試験は心臓突然死を1件も報告していない。過去に発表されたある論文は、心臓突然死がどのように報告されているか、または報告があるかどうかは、その研究の方法論的な質の指標として有用だと述べている。

(9)心血管死亡率には両群間に差なし、という結論はJUPITERの著者らとこの論文の著者の間で一致している。
しかし、de Lorgeril氏らは、総死亡に占める心血管死亡の割合が予想外に低い、と指摘する米国人であれば、その割合は40%程度になるはずだが、その半分にも満たない結果になっている。

(10)2次エンドポイントについても、ロスバスタチン群にとって都合の良い結果が強調されている。
論文は、不都合なデータにはほとんど言及していない。

(11)スポンサーによって行われたJUPITER試験の著者14人中9人がスポンサーと金銭的な関係を持っていた。
また、主任研究官はCRP検査の特許を保有する。

de Lorgeril氏らは、「今回の分析結果は、JUPITER試験のような企業の後援を受けた研究は、バイアスを含み、質的に問題がある可能性を強調した」と言う。
さらに、「生活改善の利益が明確に示されているにもかかわらず、薬剤による予防に関心が向けられすぎている今、コレステロール降下薬の心血管疾患予防効果について再検討を行う必要がある」と述べている。

原文(抄録)
Cholesterol Lowering, Cardiovascular Diseases, and the Rosuvastatin-JUPITER Controversy: A Critical Reappraisal」、
http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/short/170/12/1032

大西 淳子氏(医学ジャーナリスト)
出典  NM online 2010.7.16
版権 日経BP社

<私的コメント>
「JUPITER試験」は査読がきわめて厳格といわれるNEJM誌に掲載され、大きな反響を呼んだ論文です。
一方、格下のArch Intern Med誌に「JUPITER試験」に批判的記事が掲載されたのは、ある意味で痛快なことです。
一流週刊誌や新聞は大企業の広告で成り立っています。
決してNEJM誌がそうだといっているわけではありませんが、二〜三流週刊誌や新聞の記事の中に真実が埋もれているということを聞いたことがあります。
センセーショナルな論文は、それを解析するだけで一つの新たな論文ができるのですね。
こういった反響があってこそ、逆に優れた論文ともいえるのかも知れません。
<JUPITER試験 関連サイト>
JUPITER試験
http://blog.m3.com/reed/20081112/JUPITER_

JUPITER試験アゲイン
http://blog.m3.com/reed/20081203/JUPITER_

JUPITER試験アゲインアンドアゲイン
http://blog.m3.com/reed/20090416/JUPITER_
<番外編>
INVEST International Verapamil-Trandolapril Study
http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2001017.html
目的
冠動脈疾患(CAD)を有する高血圧患者において,Ca拮抗薬をベースとする治療と非Ca拮抗薬(β遮断薬)をベースとする治療の全死亡,非致死的心筋梗塞(MI),非致死的脳卒中抑制効果を比較。
結論
CADを有する高血圧例において,verapamil-trandolaprilをベースとする治療はatenolol-hydrochlorothiazideをベースとする治療と有効性は同等である。


<自遊時間>
一昨日の昼、国立新美術館で開催されているオルセー美術館展2010を鑑賞しに出かけました。
予想はしていたのですが、入場までに1時間待ちという盛況ぶりでした。
待っている間に南の空を見上げると印象深い雲が浮かんでいました。

翌朝の新聞で、その雲が「彩雲」であることが判明しました。
光の具合もあるのでしょうか、東京からみた雲はただの変わった形の雲というだけで色彩はありませんでした。
周囲の誰も、その雲には気づいていないようでした。


2010.7.18 午後1時頃撮影
(そのつもりで撮ったのではないのでうまく写っていません。右端の雲の中の最上段が彩雲です)

#暑さにうんざり、空見上げたら7色の雲!
気象庁によると、彩雲は薄い雲が上空高くにかかった晴天時に起きる現象。
雲を作る氷の粒や水滴に太陽光が当たり、光の方向が変わることで、雲が色づいたように見えるという。
この日、高気圧に覆われ、最高気温が31.7度となった横浜市は、うだるような暑さ。
気象庁や横浜地方気象台には同日、「珍しい雲が出ている」などという問い合わせがそれぞれ数件あった。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100718-OYT1T00541.htm
読売新聞 2010.7.18

その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  

があります。    

固定リンク