戯れ言たれる侏儒
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< 進化するペースメーカーとその適応 その1... | メイン | 厳格な血圧コントロールと臓器保護 >

昨日の

進化するペースメーカーとその適応 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20100628/1

続き(後半)です。

 

不要な心室ペーシングを回避する機能の登場
デバイスの進化は,軽量小型化・長寿命化だけではない。
静田助教は,機能面における最もエポックメーキングな進歩の1つとして,心室ペーシングの宿命とも言えるdyssynchronyを回避するシステムが開発されたことを挙げている。

Dyssynchronyとは,プルキンエ線維を介した生理的な刺激伝導による心室興奮とは異なり,右室への人工的なペーシングによる心室興奮の際に生じる左室壁運動の“ねじれ”であり,長期的には心機能を悪化させる原因となるほか,心房細動を誘発する危険性も指摘されている。

房室伝導が正常な洞不全症候群のケースでは,理屈から言えば,ペースメーカ治療は心房ペーシング(AAI)のみで十分なはずであるが,のちに房室ブロックを併発した場合にAAIでは対応できないため,万全を期すために,通常,心房心室ペースメーカ(DDD)が埋め込まれる。
しかし,そのために不要な右室ペーシングが行われることになり,左室壁運動にdyssynchronyを生じ,結果として心房細動や心不全の発症リスクが高まることがMOST試験(Circulation 2003; 107: 2932)で示され,心室ペーシングの是非を巡る議論が活発化していた。

こうしたなか,心室ペーシングによるdyssynchronyを回避する有効な手段として,通常はAAIモードで作動し,房室伝導が悪化した場合にのみDDDモードに切り替わるMedtronic社のMVP(Managed Ventricular Pacing)というシステムが開発され(図4),現在では各社から同様の機能を持つペースメーカが発売されている。

 

 

2007年に発表されたSAVEPACe試験(NEJM 2007; 357: 1000)では,従来のDDDペースメーカに比べて,MVP機能を搭載したDDDペースメーカでは洞不全症候群における心房細動の発生が40%も抑制されたことが報告されている。
こうしたことから,近年の洞不全症候群の治療は,このタイプのペースメーカが主流となっている。

CRT/CRT-Dの登場と適応の拡大
一方,心室興奮を100%ペースメーカに依存する房室ブロック例では,洞不全例と異なり,右室ペーシングによるdyssynchronyを回避することは困難である。
とはいえ,生命予後にかかわる房室ブロックには心室ペーシングが必要不可欠であり,これによる利益が不利益を上回ることも明らかである。
しかし,長年にわたる右室ペーシングによって,徐々に心機能の低下を来す症例は少なくない。
そうした患者に対する治療の切り札となる存在が両室ペーシング,すなわちCRTとなるのである。

 

CRTは心室ペーシングによる左室壁運動の“ねじれ”を矯正
CRTは,もともとは徐脈性不整脈ではなく,難治性の慢性心不全患者に対する心不全治療の手段として開発された新しいペーシングシステムである。
その背景には,難治性心不全患者の約3分の1に心室内刺激伝導障害と,それに起因するdyssynchronyが見られるという事実があった。
CRTは,そうした患者に対し,右室と左室を同時にペーシングすることによって収縮の不同期を解消する治療であり,左室機能や血行動態の速やかな改善が得られるだけでなく,生命予後の有意な改善も得られることがCARE-HF(NEJM 2005; 352: 1539)などによって確認されている。

こうしたエビデンスを受け,わが国のガイドラインでは,CRTまたはCRT-Dの絶対適応ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類Ⅲ~Ⅳ度で,左室駆出率(LVEF)35%以下,QRS幅130msec以上で薬物治療抵抗性の慢性心不全となっている(図2)。
この基準には,少なからぬ従来型ペースメーカ使用者が該当し,実際多くの患者がCRTへのアップグレード手術を受けている。
静田助教は「最近のCRT植え込み術の4分の1程度はアップグレード手術の症例なのではないか」と言う。

一方,米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)の最新ガイドライン(Circulation 2008; 117: e350)では,QRS幅の規定を120msec以上とし,適応を広げているほか,ペースメーカを使用している患者についてはNYHA分類Ⅰ度またはⅡ度であってもCRTの相対適応(クラス Ⅱbの推奨)としている。
すなわち,米国ではCRT/CRT-Dの適応がより拡大する傾向にあり,ペースメーカ使用者については,特にそのハードルが低くなっているわけである。

さらに,心機能低下が全くない徐脈性不整脈の患者においても,最初からCRTを植え込んだほうが従来型のペースメーカを植え込むより1年後の心機能が良好に維持されたとするランダム化比較試験の結果が香港のYuらによって報告(NEJM 2009; 361: 2123)された。
しかし,この報告は177例と少数の検討であり,現段階では結果をうのみにすることはできない。
また,長年のペースメーカ装着にもかかわらず心機能低下を来す人と来さない人が存在するなかで,すべてのペースメーカ適応者に高価で植え込みに時間のかかるCRTを用いることは現実的とは言えないだろう。

また,CRT用のリードを冠静脈洞に留置する際は,冠静脈の穿孔などの合併症を生じることもあり,冠静脈からのペーシングが横隔膜刺激を生じることもある(図5)。

 

 

さらに,左室ペーシングには催不整脈作用の可能性も指摘されている。
荻ノ沢講師は,必要性が明らかでない人にこうしたリスクを伴う治療を適応することには懐疑的だ。

しかし,LVEF 35%以下やNYHA分類Ⅲ/Ⅳ度という基準に達していなくても,心機能低下の進行が認められる場合など,電池交換の際などにアップグレードすべきと考えられる症例も多く存在するという。
厳密に基準に従って電池交換時にアップグレードを見送り,1年もたたないうちにCRTへの交換手術を再度行うような事態はできるだけ回避したいところであろう。
ガイドラインや保険の適応に関しては,こうした現実に配慮した改訂・運用を期待したいという点で,両氏の意見は一致している。

 

ペースメーカよりCRT,CRTよりCRT-Dがよいとは限らない
なお,従来型からCRTへのアップグレードの場合は左室リードを1本追加するだけでよいが,CRT-Dへのアップグレードには左室リードに加えて除細動コイルリードを追加する必要があり,手技が少し煩雑になる。
そのため,前掲のACC/AHAガイドラインでは,切り替えに関する推奨においてはCRTのみを掲げているが,初めての埋め込みとなる場合は,すべてCRTとCRT-Dを併記して同等に推奨している。

しかし,薬物療法とCRT,CRT-Dの3群を比較したCOMPANION試験(NEJM 2004; 350: 2140)では,総死亡が薬物療法群に比べてCRT群では24%,CRT-D群では36%減少しており,効果の面ではCRT-Dに軍配が上がるとの意見が優勢だ。
そのため,米国ではCRT/CRT-Dの適応とされた患者のほとんどにCRT-Dが選択されているのが現状である。

静田助教は「明確な使い分けは難しい」としつつも「心筋自体が傷んでしまっている心筋症の場合にはCRT-Dを選択するが,右室ペーシングによるdyssynchronyが心機能低下の主因と考えられ,CRTにより心機能の大幅な改善が期待できるケースや,超高齢者などの場合には除細動機能のないCRTを選択することもある。
いずれにせよ,除細動機能のある機種とない機種両方について患者に説明を尽くすことが重要」と言う。
除細動機能付きの機種のほうが本体が大きく,また電気ショックの誤作動のリスクもゼロではないことなども考え,最適なデバイスを選択することが重要であろう。

出典 Medical Tribune 2010.6.24
版権 メディカル・トリビューン

 

<きょうの一曲>  Hello, My Friend
Hello, My Friend / 12人のヴァイオリニスト
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松任谷由実/Hello, my friend
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