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ショック患者の場合,ドパミン,ノルエピネフリンのいずれが適しているのか。
ショックと点滴強心薬について検討した欧州の多施設によるSOAP II試験がN Engl J Med誌に発表されました。
( 2010; 362: 779-789)
きょうは兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤 幸人部長によるこの論文の紹介とコメントの記事で勉強しました。
誰も考えていなかった点滴強心薬同士の比較
ショック患者の治療にノルエピネフリンがドパミンに勝る可能性
研究の背景:十分な症例数での検討がなかった
急性心不全の領域では,点滴強心薬は血圧が保持されている間は第一選択ではないが,収縮期血圧が低く臓器灌流が保たれない状態では,すみやかに投与して血行動態の安定を図るべきであると考えられている。
しかし,昇圧薬としてドパミン,ノルエピネフリンのいずれが優れているのか,また心原性ショック以外に敗血症性ショック,hypovolemicショックを対象とした検討も十分な症例数ではされていなかった。
研究のポイント:ドパミン群で不整脈,心原性ショックにおける死亡が多い
1,679例のショック患者を,血圧を維持するためにドパミン(858例)またはノルエピネフリン(821例)投与群にランダムに割り付けた。ドパミン20μg/kg/分またはノルエピネフリン0.19μg/kg/分でも維持できない場合はオープンラベルでノルエピネフリンの追加投与を行った。
一次エンドポイントはランダム化28日後の死亡,二次エンドポイントは副作用発現とした。
一次エンドポイントについて28日後の死亡はドパミン群52.5%,ノルエピネフリン群48.5%と両群間に有意差が認められなかった(P=0.10,図1)。
しかし,ドパミン群ではノルエピネフリン群よりも不整脈の副作用が有意に多く見られた(24.1% vs. 12.4%,P<0.001)。

心原性ショック,敗血症性ショック,hypovolemicショックという原因別に見たサブグループ解析では,心原性ショック患者を対象とした場合,ドパミン群に28日後の死亡が多く見られた(P=0.03,図2)。

佐藤先生の考察:強心薬についての知識の再整理が必要
ショック患者に対する昇圧薬はドパミンか,ノルエピネフリンかという基本的な問題であるが,これまで本研究のように1,000例規模での検討,さらに死亡と副作用を検討した論文は存在しなかった。
本研究ではショック全般を対象とした場合には,ドパミン群とノルエピネフリン群の死亡に差が認められなかったが,ドパミン群で心房細動,心室頻拍などの不整脈の副作用が多く,心原性ショック対象ではドパミン群に死亡が有意に多く見られた。
心原性ショック患者は合計280例(ドパミン135例,ノルエピネフリン群145例)であり,ほとんどが心筋梗塞,冠動脈バイパス術後という虚血性の原因であった。
心筋梗塞の状態,治療など詳しい情報が不明であるが,本論文の考察ではドパミン群で心拍数が多くなったことが悪い結果の原因の一つである可能性を指摘している。
私自身は循環器医であるが,経験的にドパミン20μg/kg/分で血圧が維持できなければノルエピネフリン追加という感じで治療を行っていた。
今後,強心薬についての知識の再整理の必要性を感じた研究である。
ガイドライン的には今後どうなるのかも興味深い。
急性心不全を例にとると米国,欧州,日本ではいずれも社会背景や,使用薬剤の好みなどが異なっており,解釈が個々の国によって異なる。
さらには,どの血管拡張薬がよいのか(ナトリウム利尿ペプチド製剤 vs. 硝酸薬),点滴強心薬は本当にすべての患者で心筋障害を生じるのかどうかも個々の研究者で結果が異なり混沌としている。
まして,点滴強心薬同士の比較など,誰も考えていなかった検討であった。
<私的コメント>
点滴強心薬同士の比較は検討されたことがなかったというコメントは俄にに信じられません。
開発や申請の時点に検討されパンフにも当然記載されているものと思っていました。
ドパミンといえば、大昔の勤務医時代に発売された強心昇圧剤で、ノルエピネフリンと異なり利尿が保たれるということで一世を風靡しました。
その後、ドブタミンが発売され両者の使い分けが循環器医の一つの生き甲斐(?)でした。
もちろん、ドブタミンが登場した際にはドブタミンとの異同を示す論文も数多く紹介されています。
海外の論文は、一度評価が定まったような事象(事実?)を再度検討するという伝統があるようです。
よくいわれる「教科書に書かれていることも正しいとは限らない。すべてのことは疑ってかかれ」式です。
この論文もその類(たぐい)のものと思われます。
ドパミン(商品名イノバン)といえば、その言葉を聞くだけで未だに頭に浮かぶイヤな思い出があります。
それは、鼻息の荒かった開業時(開業の際には誰しも気が大きくなります。そのことについては日本医事新報の連載漫画「がんばれ!猫山先生!」に上手に描かれています。)のことです。
薬剤によるアナフィラキシーショックの患者さんが院内で発生したり心原性ショックの患者さんが来院することを想定して、イノバンを購入し救急薬品として常備したのです。
結局は一度も使用する機会のないまま期限切れで泣く泣く廃棄処分する羽目になってしまったのです。
その時初めて気づいたのですが、イノバンって結構高い薬品なのです。
その後は一切置かないことにしています。
思い出したくもない過去です。
<自遊時間>
使用前・使用後

齢を重ねると、こんな些細なことにも感動を覚えます。
まさに自然の見事さ(自然の営み)を感じます。
若い先生はただただ汚いとお思いでしょうが。
年配の先生の声。
「やっぱり汚い」
さて、お口直しです。
<きょうの一曲>
モーツァルト ケーゲルシュタット・トリオ
Clarinet Trio "Kegelstatt" by Mozart (1st movement)
http://www.youtube.com/watch?v=hWpcUrw44HM&feature=related
http://ja.wikipedia.org/wiki/ケーゲルシュタット・トリオ
■ニックネームの由来は、ボウリングの前身である「ケーゲルシュタット(九柱戯とも訳される)」に興じながら作曲したという言い伝えによるものである。
■この一風変わった編成は、友人のクラリネット奏者アントン・シュタットラーら仲間うちで演奏するために作曲されたからだと言われる。モーツァルトはピアノの神童として有名だが、ヴィオラを弾いたことでも知られる。
■クラリネットに隠れがちであるが、ヴィオラパートも魅力的である。
奏法的にも、一つの独立した声部としての取り扱い方からいっても、その能力を十分に発揮させたヴィオラの名曲でもある。
その他 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
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井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
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(内科医向き)
があります。