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最近「可溶性LOX-1」という言葉が目にとまり気になって少し調べてみました。
きょうは、2002年と随分前の日本循環器学会(第66回、2002.4.24〜26)で「ポストゲノムの循環器学の展望と社会への貢献」というシンポジウムで京都大学医学部老年医学の久米典昭先生(現 循環器内科学)が発表された内容で勉強しました。
血中の酸化LDL受容体濃度が急性冠症候群の新たな予知マーカーとなる可能性
アポトーシスや内皮機能障害に中心的役割果たす受容体
急性冠症候群のハイリスク患者を同定する予知マーカーとしては,C反応性蛋白やインターロイキン6といった炎症性マーカーや,酸化LDLを挙げることができる。
久米氏らは,酸化LDLの受容体であるLOX-1やSR-PSOXもまた有用な予知マーカーとなりうることを示した。
動脈硬化病変において酸化LDLは,マクロファージの泡沫化,平滑筋細胞のアポトーシスなどを誘導して,血管病変部のコレステロール蓄積や血管壁の細胞障害を引き起こし,プラークの破裂や急性冠症候群を促すことが知られている。
このため酸化LDLは急性冠症候群のマーカーのひとつと捉えられている。
酸化LDLのこのような作用は,いずれも血管壁の酸化LDL受容体を介することから久米氏らは,自らが同定したLOX-1,SR-PSOXという2つの酸化LDL受容体について急性冠症候群との相関を検討した。
LOX-1は,炎症性刺激や酸化LDL,酸化ストレスなどにより誘導される酸化LDL受容体で,動脈硬化性プラーク内のマクロファージや,動脈硬化病変部の血管内皮および平滑筋細胞に多く発現する。
酸化LDLが平滑筋細胞のアポトーシスや,血管内皮機能障害を引き起こす際に中心的役割を果たす受容体だ。
#急性冠症候群では可溶性LOX-1の血中濃度が有意に上昇
LOX-1は一方で細胞表面に発現すると分解酵素により切断され,可溶性蛋白となって循環血中に放出されるというユニークな特徴をもつ。
そこで久米氏らは,循環血中での可溶性LOX-1の濃度と冠動脈疾患との関係を調べたところ,ACS患者では,正常人や安定狭心症患者に対し,可溶性LOX-1血中濃度が有意に上昇していることが示された(正常人に対しp<0.01,不安定狭心症に対しp<0.05)。
糖尿病,高血圧,高脂血症など他のリスクファクターと可溶性LOX-1血中濃度とのあいだには有意な相関はみられなかった。
以上から久米氏は,可溶性LOX-1の血中濃度が,C反応性蛋白やインターロイキン6,または酸化LDLとならび,急性冠症候群の予知やハイリスク患者の同定に有用な新マーカーとなるかも知れないと述べた。
一方,2000年に同定されたばかりのSR-PSOX受容体もLOX-1同様,切断されて可溶性蛋白となり血中に流れる特徴をもつ。
このため可溶性SR-PSOX血中濃度にもマーカーとしての可能性があるかもしれない,と久米氏は指摘した。
http://www.gclew.com/gakkai/66th_jcs/contents/sub_24_1.php
<関連サイト>
レクチン様酸化LDL受容体における新たな展開とその臨床的意義
http://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/127/2/127_103/_article/-char/ja
■酸化ストレスは,活性酸素産生系/消去系の不均衡にて生じる.
亢進した酸化ストレスは,内皮傷害の直接的な要因であり,また一方でLDLの酸化的修飾により生成された酸化LDLを介して内皮機能障害をきたす.
■酸化LDLは,内皮機能障害因子として心血管病のinitiatorとして働くだけはなく,promoterとしても機能する.
酸化LDLは,レクチン様酸化LDL受容体(lectin-like oxidized LDL receptor-1:LOX-1)を介した系にて種々の細胞反応を引き起こす.
■LOX-1は,内皮細胞だけではなく,血管平滑筋細胞,炎症細胞など様々な細胞種に発現を認め,その発現は様々な条件下,刺激により,ダイナミックに調節されている.
■LOX-1は,酸化LDLだけではなく,アポトーシスの陥った細胞,老化赤血球,炎症細胞などを認識し,生体防御機構や炎症性機転などの様々な生命現象において重要な役割を果たしていることが明らかになった.
■最近,幅広い分野においてLOX-1の病態生理学的意義に関する研究が展開されており,高脂血症下での内皮機能障害だけではなく,血管バルン傷害後の内膜肥厚,糖尿病血管病変,敗血症,急性冠動脈症候群などの種々の病態形成に深く関与している可能性が示された.
■今後,LOX-1をターゲットにした薬剤の開発が,酸化ストレスを基盤とした病態の理解,さらには新たな治療戦略の構築につながる可能性がある.
[PDF] 動脈硬化性疾患から心疾患へのマルチ・バイオマーカー
http://j-jabs.umin.jp/32/32.113.pdf
■LOX-1は酸化LDLやアンギオテンシンⅡなどによる血管内皮傷害に始まる一連のプラーク不安定化に関与している。
すなわち、平滑筋のアポトーシスや泡沫細胞によるMMPの分泌亢進などによりプラークの不安定化を生ずる。
また、血小板を活性化してプラーク破裂後の血栓形成に関与している。
マクロファージや平滑筋に発現しているLOX-1は酵素分解により可溶性となり血中に放出される。
血中可溶性LOX-1はNSTEMⅠの診断に対し、感度91%、特異度83%と優れたマーカーであり、心筋トロポニンT(cTnT)より早期から上昇する(文献)。
文献
Hayashida K, et al.: Serum soluble
lectin-like oxidized low-density lipoprotein receptor-1 levels are elevated in acute coronary syndrome: A novel marker for early diagnosis.
Circulation, 112:812-818, 2005