戯れ言たれる侏儒
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尿酸生成抑制薬が抗狭心症薬になるのか
アロプリノールに関する英研究から
研究の背景:キサンチンオキシダーゼの阻害で狭心症抑制の可能性
血中尿酸値は高血圧,心不全において心血管イベントの独立した予測因子であることが知られている。
尿酸はヒポキサンチンまたはキサンチンからキサンチンオキシダーゼにより産生されるが,その際に活性酸素を発生し組織を障害する。

さらに虚血状態では組織のアデノシン三リン酸(ATP)がアデノシン二リン酸(ADP)を経てアデノシン一リン酸(AMP)となり,AMPは代謝されてヒポキサンチンになるという悪循環が形成される。
アデノシンとヒポキサンチンはともにAMPの代謝産物であるため,ヒポキサンチン系の亢進はアデノシン産生の抑制に働き,血圧上昇などを生じたりする。

尿酸の直接作用による動脈硬化促進という機序も考えられている。
動物実験ではキサンチンオキシダーゼ阻害薬を投与することにより血管壁肥厚の抑制や,心不全モデルでは心筋酸素消費量の抑制などが報告されている。

今回,英国の研究者によって,尿酸生成抑制薬でキサンチンオキシダーゼ阻害作用を持つアロプリノールの,安定狭心症患者に対する抗狭心症作用を示す臨床データがLancet 6月8日オンライン版に発表されたので,その結果について考察したい。

研究のポイント:運動可能時間,ST低下までの時間,胸痛発症までの時間が改善
65例の安定狭心症患者(血管造影で有意狭窄が認めされ,運動負荷試験陽性。
心不全症例は除外)をアロプリノール600mg/日群またはプラセボ群に割り付けた(二重盲検ランダム化プラセボ対照交差試験。交差後投与期間は6週間)。

参加施設は英国の1病院と2附属機関である。アロプリノール群に割り付けられた31例中28例と,プラセボ群に割り付けられた34例中32例が解析の対象とされた。
治療後,アロプリノール群ではプラセボ群と比較して尿酸値が有意に低下したが(P<0.0001),盲検性を保つために数値は知らされなかった。血中ヘモグロビン,尿素,クレアチニン,コレステロール値に両群間で有意差が認められなかった。

その結果,運動負荷試験において,アロプリノール群ではプラセボ群と比較して,運動可能な時間(アロプリノール群393秒 vs. プラセボ群307秒,P=0.0003),心電図でST低下が見られるまでの時間(同298秒 vs. 249秒,P=0.0002),胸痛発症までの時間(同304秒 vs. 272秒,P=0.001)すべてにおいて有意な改善が認められた(図,ベースラインからの変化量で表示)。

 


また,Bruceプロトコル運動負荷ステージ1終了時において収縮期血圧値は,プラセボ群と比較してアロプリノール群で有意に低く(同135.5mmHg vs. 140.0mmHg,P=0.042),最大運動負荷時に心拍数はアロプリノール群で有意に高値(同118.5/分 vs. 112.4/分,P=0.0006)であった。
B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値はアロプリノール群で有意に低く(同65.6pg/mL vs. 80.4pg/mL,P=0.045)。C反応性蛋白(CRP)値の変化については両群間に有意差が認められなかった。
さらに有意ではなかったものの,アロプリノール群ではプラセボ群と比較して1週間の狭心症発作の回数,ニトログリセリンの使用数の低下が認められた。

佐藤先生の考察600mg/日は日本人には高用量,副作用が懸念される
本論文の考察では「ST低下が認められるまでの時間を今回アロプリノールは約19%延長させたが,Ca拮抗薬アムロジピンでは13%,ニトログリセリンでは11%延長させると報告されているので,これらの薬剤と比較してもまずまずの抗狭心症効果である」と指摘されている。

アロプリノールの抗狭心症作用のメカニズムは何だろうか。
アロプリノール投与群では血圧と心拍数の積はプラセボ群と比較して有意に増加したので,心臓の仕事量を減少させているわけではないと考えられる。
本論文の考察では以下のように要約されている。

1. キサンチンオキシダーゼは酸素を消費して酸化ストレスを産生するが,アロプリノール投与によりキサンチンオキシダーゼを阻害することで酸素の消費が抑制され,結果として心筋が消費できる酸素が増えた
2. 酸化ストレス自体が心筋虚血を生じることが報告されているので,キサンチンオキシダーゼが阻害されて酸化ストレスが減少して,心筋虚血が軽減した
3. 心筋の栄養であるATPの基質AMPはキサンチンオキシダーゼにより分解されるが,キサンチンオキシダーゼを阻害することで心筋へのエネルギー供給が保たれた
4. 心筋への直接作用機序以外に,アロプリノールに見られる内皮機能改善により冠循環や全身血管抵抗が改善した
 
さらに,本論文の著者らの以前の検討では,アロプリノールは300mg/日までは効果がなく600mg/日で内皮機能,酸化ストレスの改善が見られ,投与量が鍵を握っているとも述べている。

しかし,わが国でのアロプリノールの認可用量は200~300mg/日であり,600mg/日というのは日本人にとってはかなりの高用量である。
私個人の意見としては,アロプリノールは副作用として比較的皮疹が多く,Steven-Johnson症候群がまれに見られる薬剤と思っている。
したがって,不安定狭心症に効果があるのならともかく,安定狭心症に抗狭心症薬としてわざわざアロプリノールを投与するかどうかは疑問である。
同様の作用機序で副作用の少ない薬剤が望まれるところである。
出典 Medical Tribune 2010.6.11
版権 メディカルトリビューン社

<コメント>
ごく最近、当地に転勤して来たMRさんが挨拶に来ました。
その際に、どういったわけかアロプリノールと心疾患の話をしていました。
今一つ要領を得ない内容でしたが、この記事がネタだったようです。
それにしても最新情報を日々チェックしているようです。
当院および私の略歴もHPで十分調べてから訪問していてアンテナの張り方もなかなかのMRさんです。
ある大学病院を長く担当していたとのことでこれからいろんな情報が得られそうです。

<番外編> 2010.6.14追加
アロプリノールは慢性腎疾患患者の腎疾患進行を抑制する
http://www.biotoday.com/view.cfm?n=39922&ref=rss&utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+biotoday+%28BioToday.com+%5B新着ニュース%5D%29
■慢性腎疾患患者113人が参加した無作為化試験でアロプリノール(allopurinol)の腎疾患抑制効果と心血管イベントリスク低下作用が示されました。
(ちょっと興味深い記事です。残念ながら有料会員登録しないと全文が読めません。)


その他
「葦の髄」循環器メモ帖(このブログのイラスト版ないしはミラーサイトです)
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 
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 井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
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があります。  

 

 

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