戯れ言たれる侏儒
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心疾患患者のコレステロール管理目標値
シュレスヴィヒ・ホルシュタイン大学病院(独リューベック)第2医学クリニックのHeribert Schunkert部長らは,心疾患リスクの高い患者のうち,正しいコレステロール管理目標値を指示されている患者は半数にすぎないとの研究結果をEuropean Heart Journal(2010; オンライン版)に発表した。

 

男性患者では半数をやや上回る
Schunkert部長らは,プライマリケア医が患者のコレステロール管理目標値を決定する際,危険因子や健康問題をどのように評価しているかを明らかにするため,ドイツの患者2万5,250例を対象に調査した。
同部長らは,今回の研究はドイツの患者のみを対象としたが,欧州の他の国の状況も反映していると考えている。

コレステロール高値はアテローム動脈硬化や心疾患の主要な危険因子の1つであるため,薬物や食事,ライフスタイルの改善によるLDLコレステロール(LDL-C)値の管理は重要な予防手段となる。

同部長らが907人の医師を通して患者2万5,250例に関して調査したところ,男性患者の55%と女性患者の49%が正しいLDL-Cの管理目標値を指示されていた。
バイパス術の有無にかかわらず心筋梗塞や冠動脈疾患(CAD)の既往歴,糖尿病などを有する患者では正しい目標値を与えられる率が高かった。


女性のリスクを過小評価
しかし,
医師は女性のリスクについて過小評価する傾向があり,不正確な目標値を指示する率が高かった。
例えば,直近の心筋梗塞既往歴は同じであるにもかかわらず,男性ではほぼ68%がLDL-Cの管理目標値を正しく伝えられていたのに対し,女性では60%にすぎなかった。

Schunkert部長によると,コレステロール管理に関して現行のガイドラインを遵守する医師がさらに増えれば,心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患の罹患率とそれによる死亡をさらに減らすことができる。

同部長は「スタチン療法により,LDL-C値を40mg/dL低下させれば,10年間の主要CADイベント発生リスクが30~40%減少することがわかっている。今回の研究では,ガイドラインの知識が最も乏しい医師と最も豊富な医師との間で目標LDL-C値が平均で17mg/dL超も異なり,この差が主要な心血管疾患の発症率の差につながっていることが確認された」と説明している。

さらに「高リスク患者では,LDL-Cの管理目標値のこのような差は,イベント発生率として13~17%の差をもたらす。概算ではガイドラインのコレステロール管理目標値を最も遵守する医師から治療を受けた場合,10年間で1,000例当たり50~80例の心血管疾患やそれによる死亡が減ることになる。これはあくまで概算だが,この数値は高リスク患者にとって重大な意味を持っている」と述べている。


一般人口の平均値でも高すぎる
ドイツの成人人口におけるLDL-Cの平均値はおよそ140mg/dLであるが,これは心疾患患者には高すぎる値で,コレステロール値を低下させるためにスタチンなどによる治療を行う。
患者の心疾患リスクが高ければ高いほど,LDL-C値を低くする必要がある。
心筋梗塞,CAD,冠動脈バイパス術,末梢動脈疾患,脳卒中,糖尿病,一過性脳虚血発作の既往歴のある患者,または10年間のCADイベントリスクが20%超の患者のLDL-C目標値は100mg/dL未満とされている。130mg/dL未満は,複数の主要な危険因子があり,10年間のCADイベントリスクが20%以下の患者に適用される。
さらに,LDL-C値160mg/dL未満は,危険因子がないか1つだけの患者で,10年間のCADイベント発生リスクが10%未満の患者に適用される。

Schunkert部長らによると,正しいLDL-Cの管理目標値を指示された患者の割合が最も高かったのは,目標LDL-C値が100mg/dL未満の群(1万7,227例のうち57.4%)だった。
心筋梗塞の既往歴がある男性群では,100mg/dLという正しい目標値を示される率が最も高かった(77.1%)。
与えられた目標値が130mg/dL未満だった群(5,551例)または160mg/dL未満だった群(2,472例)では,正しい目標値を与えられていた患者は41.7%にとどまった。


イタリアからも同様のデータ
Schunkert部長は「今回の研究は,ドイツにおけるコレステロール治療に焦点を当てたもので,患者背景によってLDL-Cの管理目標値をどの程度変えるべきかという点に関するプライマリケア医の認識に注目したものである。今回の結果は,欧州諸国や世界中の国々においても同様のことが言えるかもしれない。実際にイタリアからは,同様のデータが報告されている。重要なのは患者のリスクに関する認識だ。例えば,女性の心血管疾患リスクは実際よりも低く認識される場合が多く,治療が十分に行われていない可能性がある。この点については,世界の他の地域からも同様の報告がある」と指摘し,さらに「今回の研究結果によって医師が各患者の目標値を計算する際に,ガイドラインを遵守し,すべての患者に最高の治療を提供できることを期待したい」と述べている。


原因の一端はガイドラインにも
Schunkert部長は,医師がガイドラインを忠実に遵守しない理由をいくつか挙げ,「残念ながら,心血管リスクに関して女性は医師に看過されている。膨大な数のエビデンスがあるにもかかわらず,LDL-Cの管理目標値の修正によるリスク低下を信じていない医師もいる。その原因は複数考えられるが,さまざまなガイドラインがしばしば変更され,改訂されることで混乱している医師がいるのかもしれない。また,プライマリケアでは患者に費やす時間が少ない可能性もある。医師が患者のリスクを評価するには,もっと支援が必要だ。例えば,電子カルテから患者のリスクを計算するコンピュータプログラムなどである」と指摘している。

また「ガイドラインをさらに理解しやすい簡便なものにする必要がある。高リスク患者をより容易に同定できるツールを開発すべきだ。さらに女性や心血管疾患と診断されてはいないものの危険因子の集積が認められる患者には,特別な注意が必要である。このような患者は,積極的なコレステロール低下治療の対象として医師が見落としやすいからだ」と述べている。


欧州全体への指針普及に有用
今回の研究に加わっていないアデレード・アンド・ミース病院(アイルランド・ダブリン)のコンサルタント心疾患専門医,Ian Graham教授は,欧州心臓病学会(ESC)を代表して「高コレステロールは心筋梗塞の危険因子の1つである。今回の研究は,ドイツのプライマリケア医の約半数が,血中コレステロール値が上昇している患者に対してLDL-Cの適切な管理目標値を指示できていないことを示している。目標が明確でなければ,治療も適切なものでなくなる可能性が高い。今回の研究では米国の目標値を採用しているが,欧州の目標値は米国よりもやや厳格なので,実際の状況はさらに悪いかもしれない。今回の研究結果は,欧州全体へのガイドラインの普及と実施を目指しているESCの予防対策委員会,および大学や大学院で医学教育に携わっているすべての人にとって有用である」と述べている。


出典 Medical Tribune 2010.6.3
版権 メディカル・トリビューン

 

<コメント>
「プライマリケアでは患者に費やす時間が少ない可能性もある」・・・プライマリケア医としては、大病院の方が少ないだろうとツッコミを入れたくなります。

 

 

 

 

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