戯れ言たれる侏儒
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TOPCAT

戯れ言たれる侏儒 / 2010.06.05 00:36 / 推薦数 : 0

レニン-アンジオテンシン系(RAS)は高血圧から心不全まで心血管疾患の病因において重要な役割を果たしています。  

(Cardiovascular Continuum)
  参考
  Cardiovascular ContinuumからみたRA系とその遮断の意義
    
http://www.diovan.jp/media/nikkei/24_0712/index.html

近年では下流のアルドステロンが心血管イベントや臓器障害に関与していることが明らかになり,心血管疾患におけるアルドステロンブロックの重要性が注目されています。
選択的アルドステロンブロッカー(SAB)であるエプレレノン(セララ®)は治療抵抗性の高血圧を良好にコントロールすることが出来,心リモデリングの改善も見られるなど,アルドステロンブロックに関する研究結果が蓄積されつつあります。
きょうは、EPHESUS(Epleronone Post-acute myocardial infarction Heart failure Efficacy and SUrvival Study)などの大規模臨床試験を主導するミシガン大学名誉教授のBertram Pitt先生と日本の専門家たちが参加した座談会で勉強しました。
現在進行中の臨床試験TOPCATと心不全合併高血圧におけるアルドステロンブロッカーの意義が主な内容です。

 

 

心不全合併高血圧に対するアルドステロンブロッカーの有用性とTOPCATへの期待

司会:
北海道大学大学院 循環病態内科学 筒井 裕之教授
出席者(発言順):
ミシガン大学  Bertram Pitt 名誉教授
奈良県立医科大学 第1内科学教室 斎藤 能彦教授
国立循環器病研究センター 心臓血管内科 北風 政史部長
拡張期心不全患者を対象としたTOPCATが進行中

筒井 
収縮機能の保持された心不全,拡張期心不全の治療は確立しておらず,これまでに死亡率を顕著に低下させる治療薬はありませんでした。
しかし,アルドステロンの病態生理学的な役割や高血圧性心疾患の研究が進むにつれ,拡張期心不全合併高血圧患者へのアルドステロンブロッカーの投与に期待が寄せられています。
現在,拡張期心不全患者を対象とした臨床試験TOPCAT(Treatment Of Preserved Cardiac function heart failure with an Aldosterone anTagonist)がPitt先生を中心として進行中です。

Pitt 
TOPCATは,50歳以上の,収縮機能が保持され〔左室駆出率(LVEF)≥45%〕,収縮期血圧がコントロールされている心不全患者にアルドステロンブロッカーまたはプラセボを投与する大規模ランダム化比較臨床試験です(図1)。
アルドステロンブロッカーの追加が拡張期心不全患者の死亡率と罹患率の低下に寄与する結果が出ることを期待しています。

 

 

Pitt 
糖尿病,慢性肺疾患,腎疾患などの合併症が多いため,全死亡でなく心血管死と心不全による入院をエンドポイントとしました。二次エンドポイントでは,心房細動なども見ます。
また,拡張機能障害を検討するエコーサブグループ解析(約300人)も実施します。

斎藤 
腎機能障害を持つ患者は除外されたのですね。

Pitt 
eGFR<30mL/分/1.73m2を除外基準としています。
現在,K結合能が高く,消化管内での流動性に優れるポリマーの治験中ですが,活用が進めば,重症腎疾患を合併している患者も視野に入れられるかもしれません。

筒井 
一次エンドポイントとされた心血管死についてですが,LVEFにかかわらず同等とする疫学的研究も報告されています1,2)。
しかし,LVEFが保たれた患者では突然死や心不全死は少ない可能性があります。

Pitt 
大規模臨床試験のデータがないので明確には言えませんが,LVEFが保たれた患者でも突然死は多いと想定されます。
これは心肥大・線維化の存在によるもので,アルドステロンブロッカーが奏効すれば大きなメリットです。

北風 
つまりアルドステロンブロッカーは心筋リモデリングを回復させうるというご意見でしょうか。

Pitt 
アルドステロンには心肥大と線維化に対するパラクリン作用があり,拡張期心不全合併高血圧性患者でコラーゲン形成,心リモデリングが促進されたこと3,4)から,アルドステロンブロッカーは心肥大をある程度回復させ,線維化・心室性不整脈・突然死を抑制すると考えています。

 

アルドステロン/コルチゾールがMRを活性化させ,予後を左右する
筒井 
心疾患におけるミネラロコルチコイド(MR)とその役割について,もう少し掘り下げたいと思います。
アルドステロン,コルチゾールなどに結合するMRは加齢に応じて活性化すると考えられていますが,性差はあるでしょうか。

Pitt 
コルチゾールを分解する2型11βヒドロキシステロイド脱水素酵素(HSD2)やアルドステロン抑制因子の男性ホルモン,デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は加齢とともに減少し,酸化ストレスは逆に増加すると考えられています。
女性では,閉経後にエストロゲン産生の減少により,アルドステロン抑制因子である一酸化窒素(NO)の生体内利用率が下がります。
このように,加齢に伴うMR活性化の原因は複数指摘できます。

80歳以上の患者では,副腎皮質刺激ホルモンによる産生以外のアルドステロンの産生が最大で30歳時の2分の1ぐらいまで減少するとされ,全般的に高齢者ではアルドステロン濃度は下がります。しかし,アルドステロンはたとえ通常濃度であったとしてもNa,酸化ストレスとのバランスによってMR活性化に関与します。
ですから血漿アルドステロン濃度で患者を3,4分位に分けたとき,高値群に入るかどうかが,心筋梗塞や冠動脈疾患の予後リスクの予測因子として重要になります。

 

NO減少による心血管リモデリングの進行をアルドステロンブロッカーが抑制
北風 
Pitt先生からNOとアルドステロン濃度の関係やアルドステロン濃度の上昇が予後予測因子となるという大変興味深い話を伺いましたが,われわれの施設でも動物実験を進めています。
一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害薬をラットに投与すると,8週後にはNOS阻害薬群で心筋の間質に線維化を認めますが,エプレレノンはこれを抑制していました。
また,心筋の横断面積,左室重量/体重比はNOS阻害薬群で増加し,心肥大の誘発が疑われますが,エプレレノン投与により部分的な軽減が認められました。
一方,経胸壁心エコーにて収縮機能障害の指標である左室短縮率(LVFS),拡張機能障害の指標であるE/A比を測定すると,NOS阻害薬群では有意に低下しますが,エプレレノンはLVFS,E/A比を改善することがわかりました(図2)。

ちなみに投与4週後ではNOS阻害薬群のLVFSは正常でしたが,E/A比は既に低下しており,収縮機能障害に先立って拡張機能障害が発生することが示唆されました。
さらに,冠動脈リモデリング指標である中膜―内径比はNOS阻害薬投与で増加し,エプレレノンにより抑制されました。

つまり,高血圧や糖尿病,喫煙などでNO産生が低下すると心肥大や線維化などの心血管リモデリングが発生します。
これらがアルドステロンブロックで改善することが,動物モデルで確認できたことになります。

筒井 
血圧との関係についてはいかがでしょう。

北風 
NOS阻害薬群でも血圧は下がりましたが,血管拡張薬の場合は血圧が下がっても心血管リモデリングは改善しないので,これらの作用に血圧は直接関係しないと考えます。

斎藤 
アルドステロンが少量しか産生されない心臓のリモデリングが抑制されるとき,エプレレノンがブロックするのはアルドステロンの合成ではなくMRシグナリングです。
NOS阻害薬はMRを活性化させ,エプレレノンがそれをブロックすると考えればよいでしょうか。

Pitt 
心不全ではアルドステロン産生が亢進するため,MRの阻害が病態の抑制につながると考えられます。
心臓でMRに結合するのがコルチゾールかアルドステロンかも正確に把握できない状況ではっきり言えるのは,MRをブロックすれば致命的な心疾患の発症に至る系を切ることができるということです。

筒井 
北風先生の研究結果は,高血圧治療のターゲットを考えるうえで非常に意味のあるデータだと思います。

Pitt 
拡張期心不全患者ではエストロゲンが欠乏する高齢の女性が大きな割合を占めるので,NO産生が低下した患者にアルドステロンブロッカーが有益であろうというこの研究結果は非常に興味深いですが,結論については,さらなるデータの集積を待たねばなりません。

 

アルドステロンブロッカーに寄せられる今後の期待
筒井 
アルドステロンブロッカーの投与が有益と考えられる例として心肥大・線維化を伴う高血圧患者が挙げられましたが,ほかにどのような適応があるのでしょうか。

Pitt 
アルドステロンブロッカーはどのタイプの高血圧にも有効ですが,特に治療抵抗性高血圧で優れた降圧が得られます(図3)。

 

 

3剤以上の服薬で降圧不十分な治療抵抗性高血圧患者のアルドステロン/レニン比を測定してアルドステロンブロッカーを投与した結果では,原発性アルドステロン症か否かにかかわらず安定した降圧効果が得られることが示されました5)。
アルドステロンは脂肪細胞で局所的に産生されるため,メタボリック症候群(内臓型肥満)を伴う治療抵抗性高血圧患者への投与にも期待が持てます。
さらに,アルドステロン濃度は脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)死亡の予測因子とされているので,アルドステロンブロッカーの脳卒中抑制作用や動脈硬化・腎疾患の病態への影響(図4)についても解明が急がれています。

 

斎藤 
脳卒中を抑制する可能性があるというのは,アルドステロンブロッカーが血小板凝集作用を阻害するからでしょうか。

Pitt 
NOが欠乏すると血小板凝集作用が亢進しますが,動物実験ではアルドステロンブロッカーの投与で血栓を伴う梗塞が減少したというデータがあります6)。

北風 
われわれの施設で行ったイヌの実験でも,アルドステロンブロッカーにより心筋虚血が軽減するという結果が出ています7)。

斎藤 
どのタイプの高血圧にも有益と伺いましたが,低レニン性高血圧は対象となりますか。

Pitt 
動物実験では酸化ストレス下の低レニン性高血圧において,低食塩食でもアルドステロンブロッカーが臓器障害を抑制したというデータがあります。

筒井 
心房細動例についてはいかがでしょう。アルドステロンブロッカー投与により症状が改善するエビデンスはあるのでしょうか。

Pitt 
動物実験ではアルドステロンブロックがNOの生体内利用率を改善し,心房性不整脈や心房細動をブロックすると示唆されています。

北風 
急速ペーシングで心房細動を誘発させたラットを用いたわれわれの実験でも,エプレレノンは心房細動を抑制し,心房のリモデリングに作用しました。

Pitt 
RALES(Randomized ALdactone Evaluation Study)やEPHESUSでは心房細動の減少は認められませんでしたので,証明には臨床試験の実施が必要です。

筒井 
高血圧の病因と心肥大におけるアルドステロンの役割,また,注目を集めている大規模臨床試験TOPCATについてご討議いただきました。
心不全のなかでも収縮機能が保持された心不全は全体の30~50%を占め,高血圧をはじめとする多くの合併症を伴いますが,効果的な治療は確立していません。
今回論じたように,アルドステロンブロッカーは治療抵抗性高血圧,心不全合併高血圧の治療において重要な役割を担っています。脳卒中や動脈硬化性疾患患者への投与など,今後さらなる展開が期待されます。

文献
1)Bhatia RS, et al. N Engl J Med 2006; 355: 260-269
2)Tsuchihashi-Makaya M, et al. Circ J 2009; 73: 1893-1900
3)Müller-Brunotte R, et al. J Hypertens 2007; 1958-1966
4)Martos R, et al. Circulation 2007; 115: 888-895
5)Nishizaka MK, et al. Am J Hypertens 2003; 16: 925-930
6)Iwanami J, et al. Eur J Pharmacol 2007; 566: 153-159
7)Fujita M, et al. Hypertension 2005; 46: 113-117

 

<自遊時間>
MLB アルマンド・ガララーガ 審判誤審?で完全試合逃す・・
http://www.youtube.com/watch?v=NL4wWfr9cBs
(世紀の誤審”で、完全試合をふいにしたタイガースのアルマンド・ガララーガ投手。とても態度が爽やかでした。すっかりファンになってしまいました。たしか中日の山本投手も森野のエラーで完全試合を逃しましたが爽やかでした)

 

 

その他
ふくろう医者の診察室 
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)
2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)
~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
があります。
   

 

 

 

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