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ポストDESとして期待が高まる生体吸収性ステント,国際的な臨床治験へ
遅発性ステント血栓症の克服に期待
血管内治療の歴史は1970年代後半から始まり,バルーン血管形成術(POBA)からベアメタルステント(BMS),さらには薬剤溶出ステント(DES)へと約10年ごとに新規治療が導入されてきた。 この過程のなかで手技的成功率が向上,課題だった再狭窄も減り,現在は1割を切ることが報告されている。
一方で,金属ステント留置部位での遅発性ステント血栓症の問題も指摘されている。
そこで,留置後に薬剤だけでなくステントも生体に吸収される次世代ステントとして,生体吸収性ステントの開発に期待が集まっている。
アボット バスキュラーが主催した記者説明会では,同社が開発中のBVS(bioresorbable vascular scaffold)について,最近の動向が紹介された。
欧米ではパイロット試験が進行中で,国際的な大規模臨床治験も登録が開始されているという。
2年かけてステントも生体に吸収
研究開発責任者であるJames Oberhauser氏によると,同社が開発を進めているBVSは,ステント部分にポリ乳酸からなる生体吸収性ポリマーを使用している。
また,薬剤としては今年(2010年)承認されたエベロリムス溶出ステントと同様,エベロリムスが用いられている。
BVSでは留置後3か月程度でエベロリムスが血管に溶出され,ポリマーは2年以内に再吸収されるため,異物は体内に残らない。
血管壁に対する刺激の軽減による遅発性ステント血栓症の回避や,2剤抗血小板療法の期間短縮,さらには留置後に冠動脈疾患が発生した場合の治療選択の幅が広がることが期待できる。
従来の金属ステントと同程度の血管拡張作用が一定期間保持できるかどうかが重要となるが,同ステントでは留置3か月間での十分な血管拡張作用が確認されており,これが臨床治験での良好な成績につながっていると考えられる。
その治験成績であるが,30例が登録された第 I 相試験(ABSORB試験)では,3年間の追跡で主要有害心血管イベント(MACE)や血栓症の発生が認められていない。
留置2年後の光干渉断層計(OCT)画像ではBVSが完全に消失していることも確認されている。
また,第II相試験では欧州,オーストラリア,ニュージーランドの12施設が参加し,101例が登録された。
30日経過時点で血栓症の発生はなく,現在追跡が行われている。
さらに,欧州,カナダ,南アメリカ,アジアから最大で1,000例の患者登録が予定されているABSORB EXTEND試験には,日本からの登録も検討されている。
日米共同研究で早期の承認が可能に
今年承認されたエベロリムス溶出ステントの治験責任者であった湘南鎌倉総合病院(神奈川県)循環器内科部長(副院長)の齋藤滋氏は,この治験(SPIRIT III試験)が日米同時,かつ同じプロトコルで実施されるという画期的なものであったことを説明した。
同氏をはじめとする日米両国の産・官・学が,医療機器の承認や規制について年次的に会議の場を持つHBD(Harmonization By Doing) ※と呼ばれるコミュニティを形成。
このなかでプロトコルが検討された。
※ 当初,心血管系の医療機器の承認審査の日米の規制の整合化を図ることを目的に、2003年12月に開始された活動で,日米両国の官・学・産が協同して行う活動の場

同試験には日本から88人が登録され,レジストリー調査として102病変が追跡された。
一方,米国からは1,090例が参加,このうちレジストリー調査に88人,ランダム化比較試験(RCT)に1,002人が登録さた。
RCTではエベロリムス溶出ステントとパクリタキセル溶出ステントが比較されたが,この時点においては,日本ではパクリタキセル溶出ステントも未承認の段階であった。
このため,日本で登録された102病変と米国のRCT試験で登録されたパクリタキセル溶出ステントが仮説検証比較として行われ,日本での承認も早期に行われることとなった。
同氏は「対照群となるステントの承認を待てば認可が数年遅れることになる一方,対照ステントとの比較を行わなければ科学的な裏付けが不十分になる状況だった」として,このような国際共同治験が日本で問題視されているデバイスラグと,承認審査に必要な安全性・有効性の検証を同時に満たす1つの解決策となりうることを示した。
なお,前述のSPIRIT III試験では,2年後の遅発性ステント血栓症の発症が日本では皆無であり,米国の成績と比較しても良好であったが,同氏はその理由として同ステントの性能に加え,「全例で血管内超音波検査(IVUS)が施行されているため,ステントの十分な拡張が行われ,血管壁に密着した状態で留置されている」と分析している。 生体吸収性ステントの適応の見通しについて同氏は「すべての病変が適応になるだろう」との見解を示した。
しかし,現時点では同ステントの病変への到達度など総合的なパフォーマンスが明らかでないため,今後の治験の成績を見極めていきたいとしている。
出典 MT pro 2010.4.23
版権 メディカルトリビューン社
<生体吸収型エベロリムス溶出ステント〜ABSORB試験の結果より>
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr090307.html
出典 MT pro 2010.3.18
版権 メディカルトリビューン社
■DESには
(1)遅発性ステント内血栓形成の可能性がある,
(2)冠動脈の収縮,拡張といった生理的反応を抑制する,
(3)将来冠動脈バイパス術(CABG)を行う必要が生じたときに,ステント部位が切開,縫合できない,
(4)ステントのためにマルチスライスCTでの非侵襲的評価が永久的に不可能になる
—などの欠点がある。
■昨年の2009年のLancet誌で生体吸収性エベロリムス溶出ステント(BVS)の2年後の臨床成績がABSORB試験として報告された(Lancet 2009; 373: 897-910)。
BVSは,ポリL乳酸でできたポリマーの支持体に,エベロリムスを含有したポリD,L乳酸がコーティングされている。
■生体吸収性ステントの研究は最近10年間で行われており,Igaki-Tamaiステントとして報告されたポリL乳酸でできたポリマー素材(Circulation 2000; 102: 399-404)と,マグネシウムによる素材が報告されている(Lancet 2007; 369: 1869-1875)。
しかし,これらには薬剤は載せられておらず,再狭窄率はベアメタルステント並みに高率であった。
Circulation 2000; 102: 399-404
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/10908211
Lancet 2007; 369: 1869-1875
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18342684
■今回のABSORB試験では,薬剤溶出性の生体吸収性ステントが使用されており,再狭窄の程度はベアメタルステントとDESの中間くらいが予想されていた(Lancet 2008; 371: 899-907)。
今回はその2年後の追跡結果であり,5年後の追跡も予定されている。
Lancet 2008; 371: 899-907
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18342684
■PCIに使用するステントに求められる要件として,
(1)手技的に病変部に到達しやすい,
(2)血管を支える力が強い,
(3)ステント内血栓症を生じない,
(4)慢性期再狭窄が少ない
—ことが挙げられる。
BVSでは(3),(4)については期待が持てるが,(1),(2)については今後も開発の余地があると思われる。
実際,今回発表された成績では, 6か月の時点ではステント自体の血管壁への圧着不良が一部のステントストラットに認められている。
この原因はステント自体,最初から支える力が弱いことや,ステントが消失してゆくことでステントが支える力が弱くなることなどが考えられる。
高圧拡張にステントが耐えられるかの検討も必要である。
■今回の病変は単純で,簡単な病変での検討であったが,リアルワールドでは石灰化病変やびまん性病変,分岐部病変が多く,病変部へステントが到達できるかという問題がある。
■ポリマー素材としての利点には,マルチスライスCTがステント後も行え,冠動脈内腔の評価が可能ということもあるので,素材は同じでステント構造を変更する検討がなされているようである。
■BVSは、生理的変化や薬剤に対する血管内皮の反応性が保持されている(冠動脈径が臨機応変に拡張したり収縮する)。
<関連サイト>
ポストDESに向けた展望
http://blog.m3.com/reed/20100520/_DES_
ABSORB試験
http://blog.m3.com/reed/20090331/ABSORB_
生体吸収性ステントの安全性
http://blog.m3.com/reed/20090805/1
その他
「葦の髄」循環器メモ帖(このブログのイラスト版ないしはミラーサイトです)
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
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井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
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井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
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(内科医向き)
があります。