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##高血圧治療ガイドライン2009にみる厳格な血圧コントロールの重要性と臓器保護への期待
(司会)
愛媛大学大学院 分子心血管生物・薬理学 堀内 正嗣 教授
自治医科大学循環器内科 島田 和幸 教授
「高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)」では,厳格な血圧コントロールの重要性が強調されているが,AT1受容体拮抗薬(ARB)のなかでも,オルメサルタン メドキソミル(オルメテック®)〔以下,オルメサルタン〕は厳格な血圧コントロールが期待される降圧薬といえる。 オルメサルタンは,レニン・アンジオテンシン(RA)系のうちACE/AngⅡ/AT1受容体軸(Devil)を抑制するだけでなく,ACE2/Ang-(1-7)/Mas受容体軸(Angel)を活性化させるという新知見も得られつつある。
一方,わが国で実施されたJ-CORE試験では,オルメサルタンとCa拮抗薬アゼルニジピン(カルブロック®)の併用で中心収縮期血圧が有意に低下することが示された。
先ごろ,オルメサルタンとアゼルニジピンとの配合剤(レザルタス®配合錠)が発売され,治療の選択肢も増えてきている。 本対談では,こうした新しい状況をふまえながら,オルメサルタンの有用性について意見を交換していただいた。
#JSH2009にみる厳格な降圧とその持続の重要性
島田 (JSH2009の特徴について) 大きな特徴の1つは,前回のガイドライン(JSH2004)で設定された厳格な血圧コントロールの重要性がいっそう強調されたことだと思います。
厳格な血圧コントロールの意義に関しては,メタアナリシスにおいて治療期の収縮期血圧の差と心血管死や脳卒中の発症リスクが比例することや,HOT試験における糖尿病患者の解析では,降圧目標値が低いほど心血管系イベントリスクが低下することなどの成績がすでに示されていました。
最近では,厳格な血圧コントロール(収縮期血圧130mmHg未満)は,通常の血圧コントロール(収縮期血圧140mmHg未満)よりも左室肥大合併や心血管系イベント発症を有意に抑制することが,非糖尿病高血圧患者を対象にしたCardio-Sis試験で報告されています。
島田 (JSH2009での家庭血圧の降圧目標について)
その患者さんの血圧コントロールの状況を知るためには,診察室血圧測定だけでなく家庭血圧測定も重要です。
われわれは,降圧薬服用中の高血圧患者(969例)を対象に早朝高血圧の実態調査(J-MORE研究)を行いました。
その結果,診察室収縮期血圧が良好にコントロールされていても(140mmHg未満),早朝の服薬前の家庭血圧コントロール不良例(135mmHg以上)がその約半数に認められました。
これらの家庭血圧コントロール不良例は,診察室血圧が正常であるにもかかわらず診察室外の血圧が高血圧であるという,いわゆる仮面高血圧に相当します。
大迫研究において,仮面(早朝)高血圧は未治療者よりも既治療者に多いとのデータも得られています。
また,仮面高血圧は心血管系イベント発症率が非常に高いことがSHEAF試験によって示されています。
島田 (早朝高血圧の原因について)
高血圧治療中であることからも,その最大の原因は降圧不十分,つまり降圧薬の効果が早朝まで持続しないことにあると考えられます。
ですから,早朝高血圧の予防には単剤でも併用でも持続時間が長く早朝までカバーできるような降圧薬を選択することが重要になります。
堀内
JSH2009でも24時間にわたる降圧の重要性が指摘されています。JSH2009においてARBは第一選択薬の1つに推奨されていますが,24時間自由行動下血圧測定(ABPM)による検討で,オルメサルタンは24時間,日中,早朝(起床2,4時間前)ともに優れた降圧効果が報告されています。
厳格な降圧とその持続という点からみて,オルメサルタンはfirst choiceとして選択可能な降圧薬であると考えられます。
#オルメサルタンの降圧や臓器保護にRA系を介する新メカニズムが関与している可能性
堀内
最近,RA系は悪影響ばかりを及ぼしているわけではないことがわかってきています。
RA系は,これまでに知られていたACE/AngⅡ/AT1受容体軸だけではなく,最近著しい研究の集積をみせているACE2/Ang-(1-7)/Mas受容体軸によっても調節されていることが明らかになってきました。
興味深い点は,ACE/AngⅡ/AT1受容体軸は臓器障害を惹起させる方向に作用するのに対し,ACE2/Ang-(1-7)/Mas受容体軸は臓器保護の方向に作用しているということです。
前者をDevil,後者をAngelに例えると,AngelはAng-(1-7)の受容体(Mas受容体など)を介して,Devilに拮抗的に働いているものと思われます。
さらに注目すべきは,ARBにはこのAngelを活性化させるものとさせないものがあるという事実です。
オルメサルタンはACE2の発現を増加させることが報告されています。
オルメサルタンは,ダブルチェーンドメインと呼ばれる2つの側鎖によりアンジオテンシン(Ang)ⅡのAT1受容体への結合を強力にブロックしますが,これに加えてACE2/Ang-(1-7)/Mas受容体軸を活性化させて,降圧効果,臓器保護をもたらしている可能性があります(図1)。
われわれが行った,ヒトのレニンおよびアンジオテンシノーゲン過剰発現マウスを使った実験においても,オルメサルタンはL-NAME投与により低下したACE2 mRNAとACE2活性を降圧とは関係なく上昇させました。
堀内 (オルメサルタンがACE2活性を上昇させるメカニズム)
詳細なメカニズムはまだ不明ですが,オルメサルタンでは他のARBと違って血漿AngⅡ濃度が増加せず,逆に減少します。
ですから,その分ACE2/Ang-(1-7)/Mas受容体軸のほうに流れている可能性が考えられます。
#中心血圧低下が予後改善に
島田 (単剤で効果がなければ増量か併用か)
最近,単剤の増量と他剤との併用による降圧効果の違いを検討した興味深いデータが報告されました。
42試験をメタ解析したところ,サイアザイド系利尿薬,β遮断薬,ACE阻害薬,Ca拮抗薬のいずれの降圧薬も,通常用量を倍量に増量するよりも通常用量の他剤を追加するほうがより降圧効果が期待できるという結果が得られています。
他剤との併用は,単剤を倍量に増量した場合の約5倍の降圧効果があると報告されています。
島田 (併用による降圧効果と予後に与える影響)
それに関しては,これまでに実施された臨床試験の成績が参考になります。
3個以上のリスク因子を有する高血圧患者を対象としたASCOT-BPLA試験では,β遮断薬をベースにした利尿薬併用群と比較してCa拮抗薬をベースにしたACE阻害薬併用群において予後改善効果が立証されています。
また,ハイリスク高血圧患者を対象としたACCOMPLISH試験では,ACE阻害薬+利尿薬併用群と比較してACE阻害薬+Ca拮抗薬併用群において予後改善効果が立証されています。
島田 (RA系阻害薬+Ca拮抗薬併用の有用性) ASCOT-BPLA試験では,Ca拮抗薬をベースにしたACE阻害薬併用群は,β遮断薬をベースにした利尿薬併用群と比べて上腕収縮期血圧の低下では有意差がないのに対し,中心収縮期血圧では有意な低下がみられたというサブ解析(ASCOT-CAFE)のデータも話題になりました。 中心収縮期血圧の低下が予後改善につながったと考えられます。
島田 (中心血圧は上腕血圧とどう違うか)
専用の機器を使って橈骨動脈で測定した中心血圧は,大動脈起始部の血圧を反映していると考えられます。
中心血圧は心室からの駆出波と血管抵抗部位から戻ってくる反射波の合成によって表されます。
加齢などにより動脈硬化が進むと反射波の速度が上がり,駆出波と重なって中心血圧が上昇するのです。
#オルメサルタン+アゼルニジピン併用で中心血圧が有意に低下(J-CORE試験)
島田 (中心血圧からみた降圧薬の組み合わせ)
それを知る一環として,われわれはJ-CORE試験を実施しました。J-CORE試験の対象は,オルメサルタン20mg/日による12週間の単独療法を行っても降圧目標(診察室血圧:140/90mmHg以下)に達しなかった日本人高血圧患者です。
対象患者をオルメサルタン+アゼルニジピン群,オルメサルタン+少量利尿薬群に無作為に割り付け,24週間観察しました。
その結果,両群間で上腕血圧に有意差はありませんでしたが, 中心血圧はオルメサルタン+アゼルニジピン群で有意に低下しました(図2)。
大動脈脈波伝播速度(PWV)や大動脈増幅係数(AIx)も,オルメサルタン+アゼルニジピン群で有意に減少しました(図3)。
島田 (オルメサルタン+アゼルニジピン群で中心血圧が有意に低下したメカニズム)
末梢動脈拡張による反射波の大きさの減少と,PWV改善による反射波の戻りの遅れという2つのメカニズムが考えられます。
堀内 カフ血管傷害マウスモデルを使ったわれわれの基礎実験でも,オルメサルタン+アゼルニジピン併用により,
(1)血管平滑筋増殖抑制に相乗効果が得られる,
(2)血管傷害に伴う炎症が相乗的に抑制される,
(3)相乗的に抗酸化作用が発現する,
などのデータが得られています。
いずれも,オルメサルタン,アゼルニジピン単独では効果が得られない低用量の併用です。
そのメカニズムとしては,アゼルニジピンの持つCa感受性キナーゼ阻害(血管平滑筋増殖抑制),NF-κBの活性化抑制(抗炎症作用),スーパーオキシド産生抑制(抗酸化作用)など,Ca流入ブロックとともに構造特異的な作用がオルメサルタンの血管保護作用と相乗的に働いた可能性が考えられます。
#わが国でオルメサルタンの臨床試験が進行中
島田
オルメサルタン+アゼルニジピン併用で中心血圧が有意に低下したというJ- CORE試験の成績をご紹介しましたが,先ごろオルメサルタン/アゼルニジピン配合剤「レザルタス配合錠」が発売になりました。 強力な降圧効果と24時間にわたり安定かつ持続した降圧効果を持つのが特徴です(図4)。
これには高親和性ARBオルメサルタンと脂溶性の高いCa拮抗薬アゼルニジピンの持つ心拍数低下作用も関与しているものと思われます。
堀内
JSH2009が推奨している「24時間にわたる厳格な降圧」が期待される降圧薬といえますね。
J-CORE試験に続いて,ハイリスク高齢者高血圧患者を対象に心血管系イベントを評価項目として,オルメサルタン+Ca拮抗薬併用群とオルメサルタン+低用量利尿薬併用群を比較するCOLM試験,オルメサルタン増量群とオルメサルタン+Ca拮抗薬併用群を比較するOSCAR試験,慢性心不全合併高血圧患者を対象にして現行治療にオルメサルタンを追加した場合の心血管系イベント抑制を検討するSUPPORT試験などがわが国で進行中です(図5)。
これらの臨床試験において,死亡に至る心血管系イベントの連鎖を遮断して,患者さんの予後を改善する成績が得られることが期待されます。
出典 MT pro 2010.6.17
版権 メディカル・トリビューン社
その他
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~ http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15 http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~ http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。
昨日の
進化するペースメーカーとその適応 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20100628/1
続き(後半)です。
不要な心室ペーシングを回避する機能の登場
デバイスの進化は,軽量小型化・長寿命化だけではない。
静田助教は,機能面における最もエポックメーキングな進歩の1つとして,心室ペーシングの宿命とも言えるdyssynchronyを回避するシステムが開発されたことを挙げている。
Dyssynchronyとは,プルキンエ線維を介した生理的な刺激伝導による心室興奮とは異なり,右室への人工的なペーシングによる心室興奮の際に生じる左室壁運動の“ねじれ”であり,長期的には心機能を悪化させる原因となるほか,心房細動を誘発する危険性も指摘されている。
房室伝導が正常な洞不全症候群のケースでは,理屈から言えば,ペースメーカ治療は心房ペーシング(AAI)のみで十分なはずであるが,のちに房室ブロックを併発した場合にAAIでは対応できないため,万全を期すために,通常,心房心室ペースメーカ(DDD)が埋め込まれる。
しかし,そのために不要な右室ペーシングが行われることになり,左室壁運動にdyssynchronyを生じ,結果として心房細動や心不全の発症リスクが高まることがMOST試験(Circulation 2003; 107: 2932)で示され,心室ペーシングの是非を巡る議論が活発化していた。
こうしたなか,心室ペーシングによるdyssynchronyを回避する有効な手段として,通常はAAIモードで作動し,房室伝導が悪化した場合にのみDDDモードに切り替わるMedtronic社のMVP(Managed Ventricular Pacing)というシステムが開発され(図4),現在では各社から同様の機能を持つペースメーカが発売されている。

2007年に発表されたSAVEPACe試験(NEJM 2007; 357: 1000)では,従来のDDDペースメーカに比べて,MVP機能を搭載したDDDペースメーカでは洞不全症候群における心房細動の発生が40%も抑制されたことが報告されている。
こうしたことから,近年の洞不全症候群の治療は,このタイプのペースメーカが主流となっている。
CRT/CRT-Dの登場と適応の拡大
一方,心室興奮を100%ペースメーカに依存する房室ブロック例では,洞不全例と異なり,右室ペーシングによるdyssynchronyを回避することは困難である。
とはいえ,生命予後にかかわる房室ブロックには心室ペーシングが必要不可欠であり,これによる利益が不利益を上回ることも明らかである。
しかし,長年にわたる右室ペーシングによって,徐々に心機能の低下を来す症例は少なくない。
そうした患者に対する治療の切り札となる存在が両室ペーシング,すなわちCRTとなるのである。
CRTは心室ペーシングによる左室壁運動の“ねじれ”を矯正
CRTは,もともとは徐脈性不整脈ではなく,難治性の慢性心不全患者に対する心不全治療の手段として開発された新しいペーシングシステムである。
その背景には,難治性心不全患者の約3分の1に心室内刺激伝導障害と,それに起因するdyssynchronyが見られるという事実があった。
CRTは,そうした患者に対し,右室と左室を同時にペーシングすることによって収縮の不同期を解消する治療であり,左室機能や血行動態の速やかな改善が得られるだけでなく,生命予後の有意な改善も得られることがCARE-HF(NEJM 2005; 352: 1539)などによって確認されている。
こうしたエビデンスを受け,わが国のガイドラインでは,CRTまたはCRT-Dの絶対適応がニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類Ⅲ~Ⅳ度で,左室駆出率(LVEF)35%以下,QRS幅130msec以上で薬物治療抵抗性の慢性心不全となっている(図2)。
この基準には,少なからぬ従来型ペースメーカ使用者が該当し,実際多くの患者がCRTへのアップグレード手術を受けている。
静田助教は「最近のCRT植え込み術の4分の1程度はアップグレード手術の症例なのではないか」と言う。
一方,米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)の最新ガイドライン(Circulation 2008; 117: e350)では,QRS幅の規定を120msec以上とし,適応を広げているほか,ペースメーカを使用している患者についてはNYHA分類Ⅰ度またはⅡ度であってもCRTの相対適応(クラス Ⅱbの推奨)としている。
すなわち,米国ではCRT/CRT-Dの適応がより拡大する傾向にあり,ペースメーカ使用者については,特にそのハードルが低くなっているわけである。
さらに,心機能低下が全くない徐脈性不整脈の患者においても,最初からCRTを植え込んだほうが従来型のペースメーカを植え込むより1年後の心機能が良好に維持されたとするランダム化比較試験の結果が香港のYuらによって報告(NEJM 2009; 361: 2123)された。
しかし,この報告は177例と少数の検討であり,現段階では結果をうのみにすることはできない。
また,長年のペースメーカ装着にもかかわらず心機能低下を来す人と来さない人が存在するなかで,すべてのペースメーカ適応者に高価で植え込みに時間のかかるCRTを用いることは現実的とは言えないだろう。
また,CRT用のリードを冠静脈洞に留置する際は,冠静脈の穿孔などの合併症を生じることもあり,冠静脈からのペーシングが横隔膜刺激を生じることもある(図5)。

さらに,左室ペーシングには催不整脈作用の可能性も指摘されている。
荻ノ沢講師は,必要性が明らかでない人にこうしたリスクを伴う治療を適応することには懐疑的だ。
しかし,LVEF 35%以下やNYHA分類Ⅲ/Ⅳ度という基準に達していなくても,心機能低下の進行が認められる場合など,電池交換の際などにアップグレードすべきと考えられる症例も多く存在するという。
厳密に基準に従って電池交換時にアップグレードを見送り,1年もたたないうちにCRTへの交換手術を再度行うような事態はできるだけ回避したいところであろう。
ガイドラインや保険の適応に関しては,こうした現実に配慮した改訂・運用を期待したいという点で,両氏の意見は一致している。
ペースメーカよりCRT,CRTよりCRT-Dがよいとは限らない
なお,従来型からCRTへのアップグレードの場合は左室リードを1本追加するだけでよいが,CRT-Dへのアップグレードには左室リードに加えて除細動コイルリードを追加する必要があり,手技が少し煩雑になる。
そのため,前掲のACC/AHAガイドラインでは,切り替えに関する推奨においてはCRTのみを掲げているが,初めての埋め込みとなる場合は,すべてCRTとCRT-Dを併記して同等に推奨している。
しかし,薬物療法とCRT,CRT-Dの3群を比較したCOMPANION試験(NEJM 2004; 350: 2140)では,総死亡が薬物療法群に比べてCRT群では24%,CRT-D群では36%減少しており,効果の面ではCRT-Dに軍配が上がるとの意見が優勢だ。
そのため,米国ではCRT/CRT-Dの適応とされた患者のほとんどにCRT-Dが選択されているのが現状である。
静田助教は「明確な使い分けは難しい」としつつも「心筋自体が傷んでしまっている心筋症の場合にはCRT-Dを選択するが,右室ペーシングによるdyssynchronyが心機能低下の主因と考えられ,CRTにより心機能の大幅な改善が期待できるケースや,超高齢者などの場合には除細動機能のないCRTを選択することもある。
いずれにせよ,除細動機能のある機種とない機種両方について患者に説明を尽くすことが重要」と言う。
除細動機能付きの機種のほうが本体が大きく,また電気ショックの誤作動のリスクもゼロではないことなども考え,最適なデバイスを選択することが重要であろう。
出典 Medical Tribune 2010.6.24
版権 メディカル・トリビューン
<きょうの一曲> Hello, My Friend
Hello, My Friend / 12人のヴァイオリニスト
http://www.youtube.com/watch?v=BJF8NTi5uLo&feature=fvw
松任谷由実/Hello, my friend
http://www.youtube.com/watch?v=1aZUkFv0JQo
多くの患者の心拍を維持し,突然死から守る文字通りの「命綱」として働くペースメーカー。
きょうは、その適応と最先端のテクノロジーについての産業医科大学第二内科の荻ノ沢泰司講師と京都大学循環器内科の静田聡助教へのインタビュー記事で勉強しました。
ペースメーカの進化,適応を探る
ペースメーカーは,ここ数十年で目覚ましい小型軽量化・高機能化を遂げた。
従来の右室および右房に対するペーシング機能を有するペースメーカに加え,わが国でも2004年に心臓再同期療法(CRT)が,2006年には除細動機能を備えたCRT(CRT-D)の保険適用が承認された。
その結果,これらを含めた広義のペースメーカ治療の適応病態は,徐脈性不整脈の枠を超えて心不全にまで広がり,CRT/CRT-Dを含めたペースメーカ植え込み件数は年間5万件を超えるまでになっている。
従来型ペースメーカの適応と進歩
両室ペーシング機能を持たない通常の右室ペースメーカの植え込み患者数は,新規植え込みと交換を合わせて近年増加傾向にある(図1)。

適応となる病態は,基本的には徐脈性不整脈で,房室ブロックと洞不全症候群,徐脈性心房細動に大別されるが,予後不良な房室ブロックと比較的予後が良好な洞不全症候群や徐脈性心房細動ではペースメーカを埋め込む目的が異なる。
すなわち,前者には突然死の予防や生命予後の改善が,後者では症状の改善が目的となる。
房室ブロックは突然死のリスクに応じて洞不全症候群は症状に応じて適応を決定
危険な不整脈である房室ブロックへのペースメーカ適応は,将来の突然死リスクに応じて決定される。
伝導障害の程度や障害が生じる部位によって突然死のリスクが左右されるため,日本循環器学会の「不整脈の非薬物治療ガイドライン」では,適応となる病態を細かに規定している。
しかし,実臨床では,「逆にペースメーカを用いなくてもよい病態かどうかを見るほうが簡単で合理的」(荻ノ沢講師)だ(図2)。

具体的には,
(1)伝導の遅延(PQ間隔0.2秒超)はあるが1対1の伝導が保たれている1度房室ブロックで症状がない
(2)時に伝導が途絶する2度房室ブロックであっても,PQ間隔の漸次延長に引き続いて伝導途絶を来すWenckeback型で症状がない,または
(3)薬剤性など房室ブロックの原因が明らかで,一過性と考えられる
-であれば,原則としてペースメーカの適応とならない。
ただし,Wenckeback型の房室ブロックには,PQ延長を伴わずに突然伝導が途絶するMobitz Ⅱ型の房室ブロックとオーバーラップするものがまれにあり,こちらは適応となるので注意が必要だ。
一方,洞不全症候群については,失神やめまいのために転倒して頭を打つようなことでもない限り,不整脈自体が原因で命を落とすことはほとんどないため,治療の目的は症状を改善し,QOLを高めることに置かれる。
したがって,病型分類のいかんにかかわらず,適応はすべて症状に応じて決定される(図2)。
また,徐脈性心房細動の場合も,考え方は洞不全症候群と同様である。
重さは30年前の4分の1,電池寿命は4倍
徐脈性不整脈を有する患者に対し,心臓に人工的な電気刺激を与えることによって本来の心拍の回復を図るというペースメーカ治療の原理は,1932年に米国のHymanらが開発に成功した当時から変わらない。
しかし,当時の巨大な体外式ペースメーカはもちろん,日本で保険償還された1974年当時に普及した初期の体内植え込み式ペースメーカと比べても,現在のペースメーカの軽量化・小型化には隔世の感がある(図3)。
また,電池寿命も2年程度であった初期モデルに比べ,現在のものは7,8年から10年前後も持つという。

電池寿命の延長は,電池自体の高性能化による部分も少なくないが,それ以上に大きな要因は,刺激閾値に合わせて出力レベルを自動的に調節するオートキャプチャー機能が備わったことである。
これにより,従来は刺激閾値の変動に備えて出力レベルを高めに設定していたものが必要最小限の出力ですむため,電池の無駄な消費が抑えられるようになった。
ただし,速やかに修正されるとはいえ,刺激閾値の上昇直後はペーシングが一瞬途絶えることになる。
そのため,「頻繁に刺激閾値が変動する場合は,あえてオートキャプチャー機能を使わず,従来通りマニュアルで測定した刺激閾値に3倍程度のマージンを加えた出力を設定するという選択もある」(静田助教)。
どちらを優先するかは症例次第になる。
<自遊時間>
夜中のW杯、ドイツ対イングランド戦は観られましたか。
私は前半だけ観て寝てしまいましたが、朝起きてからの結果が気になりました。
前半の幻のゴールが脳裡を離れなかったからです。
ドイツのキーパーが一番分かっていた筈ですが、すぐに試合をリスタートしました。
狡猾といえば狡猾でした。
これだけ熱狂的なスポーツで審判が誤診いや誤審で身に危険が及ぶことはないでしょうか。
そんなことも心配してしまいました。
まさか八百長はないとは思うのですが、審判のジャッジ一つで勝敗が変わってしまう競技であることは間違いありません。
人間的といえば人間的ですが、イエローやレッドカード、PK、シュミレーションの見逃し、オフサイド、ゴールの判定。
イタリア対スロバキア戦。
イタリア選手のイタいシュミレーション。
イエローカードで済んだスロバキアのGK。
観ているといろいろあって逆に面白い(?)ですね。
その他
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
かつて原因不明とされた心筋症ですが,細胞工学,遺伝子工学などの手法を用いて病因解明が進み,治療法にも新たな展開が見られるます。
第74回日本循環器学会のプレナリーセッション「Cardiomyopathy UP to DATE」(座長=高知大学老年病・循環器・神経内科学・土居義典教授,ロンドン大学心血管科学研究所・William J. McKenna所長)での記事で勉強しました。
##~拡張型心筋症~ 細胞内蛋白の質制御機構の破綻が関与
トロント大学(カナダ)のPeter P. Liu氏は,拡張型心筋症(DCM)の成因に,細胞内蛋白の“質”を制御するprotein quality controlメカニズムの破綻による異常蛋白の蓄積がかかわっているなどの知見を明らかにした。
#異常蛋白の蓄積が引き金に
まずLiu氏らは,アクチンフィラメントの切断・重合阻止などの調節蛋白ゲルソリンが,HIF-1α,DNase Iの活性化や,抗アポトーシス生存因子のダウンレギュレーションなどのメカニズムを介して,心不全の進展に重要な役割を担うことを,動物実験で見出した。
一方,熱ショック蛋白α-B-crys-tallinのミスセンス突然変異は,異常蛋白のアミロイド沈着を伴ってデスミン関連心筋症を引き起こす。通常,生体内には細胞内蛋白の分解経路としてユビキチン・プロテアソーム系(UPS)とオートファジー(自食作用)・リソソーム系の2つの経路が存在し,細胞内でうまく折り畳まれずに生じたunfoldの蛋白や凝集体などの異常蛋白を処理し,細胞内蛋白の質を制御している。
したがって,UPSの障害による異常蛋白の増加,その結果生じるオートファジーの過剰な活性化は心筋細胞障害,細胞死を来す。
そこで同氏らは,DCM患者のプロテオミクス解析,遺伝子発現解析などによりDCM関連遺伝子候補を探索。ストレス反応蛋白がカスパーゼを介して細胞死の活性化を来し,DCMに関連することを突き止めた。
異常蛋白が蓄積すると,unfoldの蛋白の反応が活性化され,細胞内シグナル経路を修飾してリモデリングを惹起,同時にカルシウム(Ca)の過剰存在下でカスパーゼを活性化し,最終的にアポトーシスに至る。
異常蛋白の蓄積はまた,炎症細胞を介する経路からも,細胞死や線維化を招く。
以上から,同氏は「異常蛋白の蓄積減少,異常ストレスの除去,UPS系やオートファジー・リソソーム系メカニズムの改善は,新しいDCM治療につながる可能性がある」とした。
##~拡張型心筋症による重症心不全~ 免疫吸着療法が代替療法として有望
自己免疫異常は,ウイルス感染,遺伝子異常とともに心筋症の三大病因を成す。
慶應義塾大学循環器内科の吉川勉准教授らは,抗心筋自己抗体陽性のDCMによる重症心不全患者に対し,抗体を除去する免疫吸着療法が,新たな治療選択肢となる可能性を示した。
#BNP,LVEFなどが改善
吉川准教授らは,DCM患者の85%にミオシン重鎖,β1アドレナリン受容体,ムスカリンM2受容体,Na-K-ATPase,ラミニン,ミトコンドリアなどの抗心筋自己抗体が検出されることを明らかにしている。
そこで,DCMによる重症心不全患者16例(男女各8例,年齢53歳)を対象に,抗体を除去する免疫吸着療法が心機能,神経体液性因子やサイトカインなどに及ぼす影響を検討した。
今回免疫吸着療法に用いられたのは,低抗原性で免疫グロブリン(Ig)G3サブクラスに高親和性のトリプトファンカラム。
1回2時間血漿2,000mLを処理するセッションを3~5回実施した。患者の背景因子は,ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類III度12例,IV度4例で,β1アドレナリン受容体抗体陽性が14例,ムスカリンM2受容体抗体陽性13例,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が7例,β遮断薬が16例に使用されていた。
検討の結果,血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)はベースラインの752±156pg/mLから免疫吸着療法施行後432±96pg/mLへ(P=0.016),左室駆出率(LVEF)は18±2%から施行3か月後に21±2%へ(P=0.039),6分間歩行距離は314±39mから施行後360±30mへ(P=0.01),それぞれ有意に改善。
しかし,血漿中の炎症性サイトカイン腫瘍壊死因子(TNF)α,インターロイキン(IL)- 6は施行前後で有意な変化はなかった。
今回の結果を受けて,免疫吸着療法の有用性を検証する大規模臨床試験が進行中であるという。
同准教授は「トリプトファンカラムを用いて抗心筋自己抗体を除去する免疫吸着療法は,DCMによる重症心不全の有望な代替療法となる可能性がある」と述べた。
##~肥大型心筋症~ QOLと長期生存改善には総合管理が不可欠
肥大型心筋症(HCM)の予後に影響する主要な決定因子は心臓突然死と心不全の進行であり,これらの防止が患者管理の鍵となる。
榊原記念病院(東京都)の高山守正副院長は,同院での取り組みについて解説した。
#家族向けトレーニングコースも
同院ではHCM患者に対し,次のような総合管理方針を定めている。
(1)薬物治療の調整
(2)的確な心エコーや心臓MRI評価
(3)心臓突然死のリスク層別化
(4)適応例への植え込み型除細動器(ICD)の積極的使用
(5)薬物治療抵抗性の有症状患者への経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)
(6)PTSMA不適切例への外科的中隔心筋切開切除術(7)PTSMAまたは外科手術後,不動が長引いた患者への心臓リハビリテーション
(8)患者家族への心脳蘇生法の教育
(9)ICD適応外患者への自動体外式除細動器(AED)の自宅設置(10)外来での定期的なフォローアップ。
薬物療法に関し高山副院長は,閉塞性HCM(HOCM)では,ACE阻害薬,ARBはガイドラインでも禁忌であるにもかかわらず,紹介例の24%に投与されていたと注意を促した。
また,HCMの状況やリスク評価におけるMRIの役割を強調。
しかし,リスク評価によっても致死性不整脈の発生時期は予期できないとして,ICD植え込みの重要性を指摘した。
一方,同院におけるPTSMAの適応は,
(1)適切な薬物治療下でNYHA心機能分類IIm~IV度
(2)安静時または誘発時の圧較差>30mmHgである。
2007年12月17日~10年3月1日に63例に施行し,圧較差の有意な改善,ペースメーカー植え込み3例,ICD植え込み8例との成績を得ている。
また,心脳蘇生法の家族向けトレーニングコースを20年以上にわたって毎月実施しており,これにはAEDの使用方法なども含まれる。
現在,ICD適応外のHCM患者4例が,自宅にAEDを設置しているという。
同副院長は「HCM患者のQOLや長期生存改善には,コメディカルの役割や家族の協力を含めた総合管理が欠かせない」と強調した。
出典 Medical Tribune 2010.4.15
版権 メディカル・トリビューン社

(東京・白金台 「八芳園」 2010.6.12撮影)
<きょうの一曲>
2008ピティナ・入賞者記念コンサート 中村芙悠子/シューベルト:3つのピアノ曲 D.946 第1番 変ホ長調
http://www.youtube.com/watch?v=WKTCfHybg78
シューベルト : 3つのピアノ曲(即興曲)
http://www.piano.or.jp/enc/dictionary/composer/schubert/000309.html
その他
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。
低比重リポ蛋白コレステロールがきわめて低値であるにもかかわらず進行するプラークの臨床的予測因子
Clinical Predictors of Plaque Progression Despite Very Low Levels of Low-Density Lipoprotein Cholesterol
Ozgur Bayturan, MD et al
J Am Coll Cardiol, 2010; 55:2736-2742
目的
本研究は、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)がきわめて低値に達しているにもかかわらず進行するプラークの決定因子の特性を評価することを目的とした。
背景
LDL-Cがきわめて低値に達しているにもかかわらず、多くの患者で依然として疾患の進行や臨床的事象が認められている。
方法
7つの臨床試験で、冠動脈疾患患者計3,437例を対象に血管内超音波検査を連続的に実施した。
治療中のLDL-C値が70 mg/dL以下に達した患者(n=951)を、進行患者(n=200)と非進行患者(n=751)で層別化し、比較した。
結果
LDL-C値が70 mg/dL以下に達したにもかかわらず、患者の20%超で依然として疾患進行が認められた。
両群に人口統計学的な差はなかった。
進行患者では、ベースラインのグルコース値(117.1±42.5 mg/dL 対 112.1±40.0 mg/dL、p=0.02)およびトリグリセリド値(157.5 mg/dL 対 133.0 mg/dL、p=0.004)が高く、追跡調査の時点でアポリポ蛋白B(-25.1±3.4 mg/dL 対 -27.4±3.35 mg/dL、p=0.01)の減少幅が若干小さかった。
多変量解析では、LDL-C値が70 mg/dL以下の患者における独立した進行リスク因子として、ベースラインのアテローム容積率(p=0.001)、糖尿病の有無(p=0.02)、収縮期血圧の上昇(p=0.001)、高比重リポ蛋白コレステロールの増加が少ないこと(p=0.01)およびアポリポ蛋白B値の低下が少ないこと(p=0.001)が挙げられたが、C反応性蛋白(p=0.78)やLDL-C(p=0.84)の変化は含まれなかった。
結論
残存するリスク因子は、LDL-C値がきわめて低値に達した患者においても疾患が進行する可能性と関連している。
また、アポリポ蛋白Bとアテロームの進行との関連により、LDL-Cが至適コントロールに達した患者において、LDL粒子濃度が重要である可能性が明らかになった。
これらの所見は、冠動脈疾患患者における包括的リスクを集中的に改善する必要があることを強調するものである。
原文抄録
http://content.onlinejacc.org/cgi/content/abstract/55/24/2736
http://ds-pharma.jp/medical/gakujutsu/jacc/archive/jacc1006_2736.html
<番外編>
ARBITER 6-HALTS(Arterial Biology for the Investigation of the Treatment Effects of Reducing Cholesterol 6-HDL and LDL Treatment Strategies in Atherosclerosis)試験
最終結果および服薬遵守率、用量、投与期間による影響
The ARBITER 6-HALTS Trial (Arterial Biology for the Investigation of the Treatment Effects of Reducing Cholesterol 6-HDL and LDL Treatment Strategies in Atherosclerosis)
Final Results and the Impact of Medication Adherence, Dose, and Treatment Duration
Todd C. Villines, MD et al
目的
ARBITER 6-HALTS(Arterial Biology for the Investigation of the Treatment Effects of Reducing Cholesterol 6-HDL and LDL Treatment Strategies in Atherosclerosis)試験の最終結果について報告する。
背景
ARBITER 6-HALTS試験は、予め設定した中間解析において頚動脈内膜中膜厚(CIMT)の変化についてナイアシンがエゼチミブに比べ優れることが示されたことに基づき、早期中止された。
中止の後に、新たに107症例に対し治験終了時の評価が実施された。
方法
冠動脈疾患(CHD)またはCHDに相当する患者で、安定したスタチン治療を受けており低比重リポ蛋白コレステロール100 mg/dL未満かつ高比重リポ蛋白コレステロール50 mg/dL未満(男性)もしくは55 mg/dL未満(女性)の患者を、エゼチミブ群(10 mg/日)またはナイアシン徐放性製剤群(目標用量2,000 mg/日)のいずれかに無作為に割り付けた。
主要評価項目はCIMT平均値の変化量とし、欠測値を直近の測定値で代用する方法(LOCF法)に基づいて解析した。
CIMTの変化量と、試験薬の服薬遵守率、用量および累積曝露量(遵守率と用量と時間の積)との関係について検討した。
結果
315症例の結果には、14カ月間の経過観察を完了した208症例の結果と、平均7±3カ月の治療を受けた107症例の結果が含まれた。ナイアシン群(n=154)ではベースラインと比較してCIMT平均値(-0.0102±0.0026 mm、p<0.001)およびCIMT最大値(-0.0124±0.0036 mm、p=0.001)の有意な減少(退縮)がみられたのに対し、エゼチミブ群(n=161)ではCIMT平均値(-0.0016±0.0024 mm、p=0.88)またはCIMT最大値(-0.0005±0.0029 mm、p=0.88)の減少はみられなかった。CIMTの平均変化量にはエゼチミブ群とナイアシン群の間で有意差が認められ、CIMT平均値(p=0.016)とCIMT最大値(p=0.01)の双方についてナイアシン群の方が優れていた。薬剤に対する累積曝露量の増加は、ナイアシン群ではCIMTの退縮に、エゼチミブ群ではCIMTの進行に、それぞれ関連していた。
結論
スタチン投与を受けている患者に対して、ナイアシンはCIMTの退縮を促し、エゼチミブよりも優れている。
原文アブストラクト
http://content.onlinejacc.org/cgi/content/abstract/55/24/2721
<きょうの一曲>
世界一難しいピアノ曲 English Country Tunes
http://www.youtube.com/watch?v=wItuWEgs9Sc&feature=related
RhoキナーゼはRho/Rhoキナーゼ系の中核を担う酵素であり、細胞増殖や遊走、接着、アポトーシス、収縮など細胞の多彩な機能を媒介することがわかっています。
また、このRho/Rhoキナーゼ系は、細胞のCa2+感受性を亢進させることによって血管平滑筋の収縮を促進し、高血圧の継続や進展に関連することが推測されている重要な系です。
##Rhoキナーゼ
Rhoキナーゼは,低分子量グアノシン三リン酸(GTP)結合蛋白質Rhoの標的蛋白質として同定された細胞内セリンスレオニンリン酸化酵素である。
分子量は約160kDで,Rhoキナーゼには,Rhoキナーゼα(Rho-kinase2;ROCK2)ROCK2とRhoキナーゼβ(Rho-kinase1;ROCK1)ROCK1の2つのアイソフォームがある。
Rhoキナーゼは細胞の収縮,増殖,遊走,活性酸素産生などさまざまな生理機能に深く関与していることがわかっている。
なかでも,平滑筋細胞の収縮・弛緩作用に関する研究が最も進んでおり,血管平滑筋の収縮能の亢進が原因の1つである異型狭心症が選択的Rhoキナーゼ阻害薬で抑制されることが証明された。
これらは既に臨床試験が進行中で,異型狭心症患者の冠動脈内に選択的Rhoキナーゼ阻害薬を投与すると,アセチルコリン負荷による冠動脈攣縮,虚血性心電図変化が抑制されることが示されている。
当研究室では,肝細胞にDominant negative Rhoキナーゼを導入することにより,肝臓移植後の冷虚血再灌流障害を抑制できることを明らかにした。
肝再灌流直後の炎症反応の最初のスイッチとなる活性酸素はおもに肝細胞のRhoキナーゼを介した経路で産生されており,遺伝子導入による障害耐性グラフト作製の可能性を示した。
また,最近になってがん細胞におけるRhoキナーゼの役割も重要であることがわかってきた。
Rhoキナーゼは,細胞遊走におけるアクチン-ミオシンによる収縮,微小管を介した細胞骨格蛋白質の輸送などをコントロールしており,がん細胞の浸潤・転移に必要な蛋白質として働いている。
当研究室は,ヒト乳がん組織の浸潤部に活性化したRhoキナーゼが強発現しており,臨床病理学的にリンパ節転移やリンパ管浸潤と非常に強く相関することを示した。
強発現群で予後不良であることもわかっており,今後,乳がん薬物療法における新たな分子標的薬の1つとなる可能性も秘めている。
文献
田原俊介,下川宏明. Rhoキナーゼ研究の進展と阻害剤の将来展望. YAKU GAKU ZASSHI 2007; 127(3): 501-514.
Shiotani S, et al. Rho-kinase as a novel gene therapeutic target in treatment of cold ischemia/reperfusion-induced acute lethal liver injury: effect on hepatocellular NADPH oxidase system. Gene Therapy 2007; 14: 1425-1433.
(九州大学大学院消化器・総合外科・塩谷聡子)
出典 Medical Tribune 2008.8.28
版権 メディカル・トリビューン
<関連サイト その1>
#アムロジピンは本態性高血圧患者のRhoキナーゼ活性を阻害
出典 NM online 2010.3.8
版権 日経BP社
■広島大学循環器内科の端孝樹氏らは、カルシウム拮抗薬(CCB)にはRhoキナーゼ活性を抑制する作用があり、それがCCBの血管拡張、降圧機序の一端を担っている可能性があることを、第74回日本循環器学会総会・学術集会(2010.3.5~3.7、京都)にて報告した。
■端氏らは、降圧薬治療中の本態性高血圧患者コホートにおける横断調査と、未治療の本態性高血圧患者を対象としたCCBアムロジピン対ARBロサルタンの前向き比較試験という2つのアプローチにより、Rhoキナーゼ活性に及ぼすCCBの影響を検討した。
■降圧薬にて治療中の本態性高血圧患者571例の末梢血白血球を採取し、ミオシン脱リン酸化酵素のミオシン結合サブユニット(MBS;Rhoキナーゼによるリン酸化の標的)の総量と、リン酸化を受けたMBS量を定量し、両者の比(pMBS/MBS比)を求めることによってRhoキナーゼ活性を評価した。
■CCB投与を受けていない患者のpMBS/MBS比に対し、CCB投与を受けている患者のpMBS/MBS比は有意に低く(p<0.05)、Rhoキナーゼ活性の低下が示唆された。
一方、レニンアンジオテンシン系(RAS)阻害薬や利尿薬、β遮断薬の投与とRhoキナーゼ活性の間には有意な相関は認められなかった。
■さらに未治療の本態性高血圧患者24例を無作為に2群に分け、一方にはアムロジピン5mgを、もう一方にはロサルタン100mgを12週間にわたって投与し、治療に伴う両群のRhoキナーゼ活性の変化を比較した。
■その結果、アムロジピン群のpMBS/MBS比は、ベースライン時に比較して有意に低下した(4週間後・12週間後ともにp<0.05 vs ベースライン時)。
これに対し、ロサルタン群のpMBS/MBS比には有意な変化は認められなかった。
■血圧は両群ともに有意に低下し、4週、12週とも両群の降圧効果に有意差は認められなかった。
■(結論)本態性高血圧患者のRhoキナーゼ活性は、CCBアムロジピンの投与によって抑制される可能性が示唆された。
<関連サイト その2>
#血管平滑筋細胞の老化が血管石灰化を引き起こす
予防・治療にスタチンとRhoキナーゼ阻害薬が有効な可能性
出典 NM online 2009.10.4
版権 日経BP社
■血管の石灰化は、血中カルシウムやリンが血管壁に付着して起きると考えられてきたが、血管平滑筋細胞(VSMC:vascular smooth muscle cells)が老化して骨芽細胞様に変化し、石灰化を引き起こしている可能性が新たに示唆された。
■ヒトVSMCを用いたin vitroの研究成果として、京都府立医科大学循環器内科の栗本律子氏らが、第32回日本高血圧学会総会(2009.10.1~10.3、大津)で報告した。
■石灰化が起きている血管壁付近では骨特有の遺伝子群や細胞群が多く、これらが石灰化に関連している可能性が既に指摘されている。
栗本氏らはヒトVSMCを長期間培養して老化VSMCを作り、若いVSMCと比較した。
すると老化VSMCでは、石灰化領域が占める比率とカルシウムの質量比が顕著かつ有意に増強していた。
■骨関連遺伝子の発現を調べたところ、老化VSMCでは若いVSMCに比べ、骨芽細胞に特有なアルカリフォスファターゼ(ALP)と1型コラーゲンの発現が有意かつ大幅に増加しており、骨芽細胞の分化に必要な転写因子であるRUNX-2の発現も有意に増加していた。
一方で、石灰化抑制因子であるMatrix Gla Protein(MGP)の発現は有意かつ著明に減少していた。
■次に、老化VSMCのALPと1型コラーゲンをノックダウンしたところ、いずれの場合も、石灰化は有意に抑制された。
RUNX-2をノックダウンするとALP発現は有意に抑制されたが、1型コラーゲンの発現は有意な減少がみられず、老化VSMCの骨芽細胞様変化には、RUNX-2を経由する系と経由しない系の2つが関与していることが示唆された。
■また、老化VSMCと若いVSMCにスタチンとRhoキナーゼ阻害薬を作用させたところ、どちらの薬剤も老化VSMCのアポトーシスを阻害し、MGP発現を有意に増加させて石灰化を抑制することが確かめられた。
■(結論)加齢による血管石灰化に血管平滑筋細胞の老化が関与していること、予防や治療にスタチンとRhoキナーゼ阻害薬が有効である可能性が示唆された。
<参考>
[PDF] Rho/Rho-キナーゼと血管収縮機構
http://www.jc-angiology.org/journal/pdf/2007/337.pdf
Rho-Rho-kinase
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/Yakuri/group/rho-kinase-group-folder/rho-kinase-group.html
[PDF] 創薬の標的としての Rho/Rho キナーゼ経路の重要性
http://nenkai.pharm.or.jp/126/program/pdf/11.pdf
<自遊時間>
世界一難しいらしいゲームstage10
http://www.youtube.com/watch?v=rDnhG0MX_bY&feature=related
ショック患者の場合,ドパミン,ノルエピネフリンのいずれが適しているのか。
ショックと点滴強心薬について検討した欧州の多施設によるSOAP II試験がN Engl J Med誌に発表されました。
( 2010; 362: 779-789)
きょうは兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤 幸人部長によるこの論文の紹介とコメントの記事で勉強しました。
誰も考えていなかった点滴強心薬同士の比較
ショック患者の治療にノルエピネフリンがドパミンに勝る可能性
研究の背景:十分な症例数での検討がなかった
急性心不全の領域では,点滴強心薬は血圧が保持されている間は第一選択ではないが,収縮期血圧が低く臓器灌流が保たれない状態では,すみやかに投与して血行動態の安定を図るべきであると考えられている。
しかし,昇圧薬としてドパミン,ノルエピネフリンのいずれが優れているのか,また心原性ショック以外に敗血症性ショック,hypovolemicショックを対象とした検討も十分な症例数ではされていなかった。
研究のポイント:ドパミン群で不整脈,心原性ショックにおける死亡が多い
1,679例のショック患者を,血圧を維持するためにドパミン(858例)またはノルエピネフリン(821例)投与群にランダムに割り付けた。ドパミン20μg/kg/分またはノルエピネフリン0.19μg/kg/分でも維持できない場合はオープンラベルでノルエピネフリンの追加投与を行った。
一次エンドポイントはランダム化28日後の死亡,二次エンドポイントは副作用発現とした。
一次エンドポイントについて28日後の死亡はドパミン群52.5%,ノルエピネフリン群48.5%と両群間に有意差が認められなかった(P=0.10,図1)。
しかし,ドパミン群ではノルエピネフリン群よりも不整脈の副作用が有意に多く見られた(24.1% vs. 12.4%,P<0.001)。

心原性ショック,敗血症性ショック,hypovolemicショックという原因別に見たサブグループ解析では,心原性ショック患者を対象とした場合,ドパミン群に28日後の死亡が多く見られた(P=0.03,図2)。

佐藤先生の考察:強心薬についての知識の再整理が必要
ショック患者に対する昇圧薬はドパミンか,ノルエピネフリンかという基本的な問題であるが,これまで本研究のように1,000例規模での検討,さらに死亡と副作用を検討した論文は存在しなかった。
本研究ではショック全般を対象とした場合には,ドパミン群とノルエピネフリン群の死亡に差が認められなかったが,ドパミン群で心房細動,心室頻拍などの不整脈の副作用が多く,心原性ショック対象ではドパミン群に死亡が有意に多く見られた。
心原性ショック患者は合計280例(ドパミン135例,ノルエピネフリン群145例)であり,ほとんどが心筋梗塞,冠動脈バイパス術後という虚血性の原因であった。
心筋梗塞の状態,治療など詳しい情報が不明であるが,本論文の考察ではドパミン群で心拍数が多くなったことが悪い結果の原因の一つである可能性を指摘している。
私自身は循環器医であるが,経験的にドパミン20μg/kg/分で血圧が維持できなければノルエピネフリン追加という感じで治療を行っていた。
今後,強心薬についての知識の再整理の必要性を感じた研究である。
ガイドライン的には今後どうなるのかも興味深い。
急性心不全を例にとると米国,欧州,日本ではいずれも社会背景や,使用薬剤の好みなどが異なっており,解釈が個々の国によって異なる。
さらには,どの血管拡張薬がよいのか(ナトリウム利尿ペプチド製剤 vs. 硝酸薬),点滴強心薬は本当にすべての患者で心筋障害を生じるのかどうかも個々の研究者で結果が異なり混沌としている。
まして,点滴強心薬同士の比較など,誰も考えていなかった検討であった。
<私的コメント>
点滴強心薬同士の比較は検討されたことがなかったというコメントは俄にに信じられません。
開発や申請の時点に検討されパンフにも当然記載されているものと思っていました。
ドパミンといえば、大昔の勤務医時代に発売された強心昇圧剤で、ノルエピネフリンと異なり利尿が保たれるということで一世を風靡しました。
その後、ドブタミンが発売され両者の使い分けが循環器医の一つの生き甲斐(?)でした。
もちろん、ドブタミンが登場した際にはドブタミンとの異同を示す論文も数多く紹介されています。
海外の論文は、一度評価が定まったような事象(事実?)を再度検討するという伝統があるようです。
よくいわれる「教科書に書かれていることも正しいとは限らない。すべてのことは疑ってかかれ」式です。
この論文もその類(たぐい)のものと思われます。
ドパミン(商品名イノバン)といえば、その言葉を聞くだけで未だに頭に浮かぶイヤな思い出があります。
それは、鼻息の荒かった開業時(開業の際には誰しも気が大きくなります。そのことについては日本医事新報の連載漫画「がんばれ!猫山先生!」に上手に描かれています。)のことです。
薬剤によるアナフィラキシーショックの患者さんが院内で発生したり心原性ショックの患者さんが来院することを想定して、イノバンを購入し救急薬品として常備したのです。
結局は一度も使用する機会のないまま期限切れで泣く泣く廃棄処分する羽目になってしまったのです。
その時初めて気づいたのですが、イノバンって結構高い薬品なのです。
その後は一切置かないことにしています。
思い出したくもない過去です。
<自遊時間>
使用前・使用後

齢を重ねると、こんな些細なことにも感動を覚えます。
まさに自然の見事さ(自然の営み)を感じます。
若い先生はただただ汚いとお思いでしょうが。
年配の先生の声。
「やっぱり汚い」
さて、お口直しです。
<きょうの一曲>
モーツァルト ケーゲルシュタット・トリオ
Clarinet Trio "Kegelstatt" by Mozart (1st movement)
http://www.youtube.com/watch?v=hWpcUrw44HM&feature=related
http://ja.wikipedia.org/wiki/ケーゲルシュタット・トリオ
■ニックネームの由来は、ボウリングの前身である「ケーゲルシュタット(九柱戯とも訳される)」に興じながら作曲したという言い伝えによるものである。
■この一風変わった編成は、友人のクラリネット奏者アントン・シュタットラーら仲間うちで演奏するために作曲されたからだと言われる。モーツァルトはピアノの神童として有名だが、ヴィオラを弾いたことでも知られる。
■クラリネットに隠れがちであるが、ヴィオラパートも魅力的である。
奏法的にも、一つの独立した声部としての取り扱い方からいっても、その能力を十分に発揮させたヴィオラの名曲でもある。
その他 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。
冠動脈アテローム動脈硬化の進行比較: 糖尿病 vs メタボリック症候群
冠動脈疾患患者において、糖尿病(DM)は代謝異常とは独立し、動脈壁に悪影響を与え、プラークの進行と収縮性リモデリングに関与することが、アメリカ、Cleveland ClinicのOzgur Bayturan氏らにより、6月15日号のThe American Journal of Cardiology誌で報告された。
Bayturan氏らは、冠動脈疾患患者3,459人をDM、メタボリック症候群(MS)、又はいずれも認められなかった患者の3群に分け、IVUSによるアテローム動脈硬化の連続評価にてプラーク量、プラークの進行、及び動脈リモデリングを比較した。
3群の中で、MS群の患者は個人における心血管危険因子の数が最も多く、DM群ではアテローム量の割合が高く(DM群40.3±9.0% vs MS群37.6±8.9% vs 非DM/非MS群38.1±9.1%: p<0.001)、総アテローム量が多かった(DM群198.3±85.9mm³ vs MS群190.7±85.0mm³ vs 非DM/非MS群186.3±79.1mm³: p=0.05)。
非DM/非MS群と比較して、MS群は外弾性板の拡張が確認されたが(501.3±174.3mm³ vs 484.4±160.7mm³: p=0.02)、DM群は内腔収縮と関連していた(290.6±111.7mm³ vs 298.1±105.5mm³: p<0.0001)。連続評価では、DM群のみが、非DM/非MS群と比較し、%アテローム量(+0.8±0.3% vs +0.3±0.2% vs +0.1±0.2%: p<0.0001)、及び総アテローム量(-1.0±1.8mm³ vs -3.3±1.8mm³ vs -4.0±1.8mm³: p=0.001)への関与を示し、MS群ではDM群のように疾患進行への影響は確認されなかった。
Bayturan氏らは、「DM群では個人の危険因子の数はMS群よりも少なくと(て?)も、MS群よりもプラークの進行、及び収縮性リモデリングに関連しており、代謝異常とは独立して、DMによる動脈壁に対する悪影響が示された」と、まとめている。
原文
Bayturan O, et al. Am J Cardiol. 2010; 105: 1735-1739
出典 TCROSS Medical News
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=medical&no=713&id=1
<コメント>
DMはしばしばMetSを合併します。
MetSの診断基準の中に「FBS高値」があるわけですから当然といえば当然です。
したがって、多くの先生がDM例とMetS例を奇麗に分類することが出来るのかという疑問が湧く筈です。
糖尿病(DM)は代謝異常ではないのか、という問題もあります。
いずれにしろ、この論文は論理的破綻はないのでしょうか。
本当に科学的論文でしょうか。
最近の糖尿病関連の論文は「糖尿病と大血管障害」についてのテーマが多い傾向があります。
この論文も、その一連のものと思われます。
細小血管障害ほどにはいい結果が出ない印象を受けるのは私だけでしょうか。
<番外編>
「スタチンと白内障の関係」は不思議です。
ある論文では白内障のリスク軽減、別の論文ではリスク増加となっています。
動脈硬化のペニシリン“スタチン”の発見と開発―遠藤 章先生に聞く
http://www.jhf.or.jp/shinzo/mth/images/History-37-8.pdf
(開発にまつわる興味深いお話です)
■1950~60年代にかけて,アメリカで開発されたトリパラノールというコレステロール合成阻害薬の事件がありました。
トリパラノールはコレステロール合成の一番最後のところを阻害する薬剤で,日本では塩野義製薬株式会社が導入しましたが,白内障の副作用が出て,1962年に発売中止,回収という大きな騒ぎになりました。
(私的コメント;これはスタチンではありません)
スタチン系薬剤が白内障リスクを軽減
http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&task=view&id=408
■コレステロール低下薬のスタチン系薬剤を服用している高齢患者では、服用していない患者に比べ、水晶体の中央部分に濁りを生じる最も一般的な核性白 内障の発症率が40%低いことが、ある地域の人口集団を対象に行われた観察研究で明らかになった。
白内障発症には酸化ストレスが一部関与しているとされ、 スタチンのもつ抗酸化作用が発症予防に関連していると見られる。
高脂血症治療薬スタチンの継続的服用が白内障発症リスクを低下させる
http://shenq.blogzine.jp/2501/2010/03/post_ed1a.html
■継続的なスタチン使用は、75才未満の男性と女性で、白内障発病率を顕著に低下させた。
(私的コメント;上記サイトと同じソース)
スタチンの継続服用が白内障に保護的に作用
http://cocktail-glass.at.webry.info/201003/article_6.html
■ スタチンの継続服用が75歳未満の男女の白内障発症に保護的に作用するとのデータが,イスラエルのグループによりAnnals of Epidemiologyの2月号に発表された。
スタチンと有害事象・合併症のリスク(英国研究)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/100516.html
■スタチン使用と食道がんリスク減少と関係していたが、中等度以上の筋障害、中程度以上の肝障害、急性腎不全、白内障ではリスクが増した。
■白内障のリスクは治療をやめれば、1年で元に戻る。
(私的コメント;「元に戻る」というのも不思議です)
スタチンの利点 リスクを上回る
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/36456167.html
最近「可溶性LOX-1」という言葉が目にとまり気になって少し調べてみました。
きょうは、2002年と随分前の日本循環器学会(第66回、2002.4.24〜26)で「ポストゲノムの循環器学の展望と社会への貢献」というシンポジウムで京都大学医学部老年医学の久米典昭先生(現 循環器内科学)が発表された内容で勉強しました。
血中の酸化LDL受容体濃度が急性冠症候群の新たな予知マーカーとなる可能性
アポトーシスや内皮機能障害に中心的役割果たす受容体
急性冠症候群のハイリスク患者を同定する予知マーカーとしては,C反応性蛋白やインターロイキン6といった炎症性マーカーや,酸化LDLを挙げることができる。
久米氏らは,酸化LDLの受容体であるLOX-1やSR-PSOXもまた有用な予知マーカーとなりうることを示した。
動脈硬化病変において酸化LDLは,マクロファージの泡沫化,平滑筋細胞のアポトーシスなどを誘導して,血管病変部のコレステロール蓄積や血管壁の細胞障害を引き起こし,プラークの破裂や急性冠症候群を促すことが知られている。
このため酸化LDLは急性冠症候群のマーカーのひとつと捉えられている。
酸化LDLのこのような作用は,いずれも血管壁の酸化LDL受容体を介することから久米氏らは,自らが同定したLOX-1,SR-PSOXという2つの酸化LDL受容体について急性冠症候群との相関を検討した。
LOX-1は,炎症性刺激や酸化LDL,酸化ストレスなどにより誘導される酸化LDL受容体で,動脈硬化性プラーク内のマクロファージや,動脈硬化病変部の血管内皮および平滑筋細胞に多く発現する。
酸化LDLが平滑筋細胞のアポトーシスや,血管内皮機能障害を引き起こす際に中心的役割を果たす受容体だ。
#急性冠症候群では可溶性LOX-1の血中濃度が有意に上昇
LOX-1は一方で細胞表面に発現すると分解酵素により切断され,可溶性蛋白となって循環血中に放出されるというユニークな特徴をもつ。
そこで久米氏らは,循環血中での可溶性LOX-1の濃度と冠動脈疾患との関係を調べたところ,ACS患者では,正常人や安定狭心症患者に対し,可溶性LOX-1血中濃度が有意に上昇していることが示された(正常人に対しp<0.01,不安定狭心症に対しp<0.05)。
糖尿病,高血圧,高脂血症など他のリスクファクターと可溶性LOX-1血中濃度とのあいだには有意な相関はみられなかった。
以上から久米氏は,可溶性LOX-1の血中濃度が,C反応性蛋白やインターロイキン6,または酸化LDLとならび,急性冠症候群の予知やハイリスク患者の同定に有用な新マーカーとなるかも知れないと述べた。
一方,2000年に同定されたばかりのSR-PSOX受容体もLOX-1同様,切断されて可溶性蛋白となり血中に流れる特徴をもつ。
このため可溶性SR-PSOX血中濃度にもマーカーとしての可能性があるかもしれない,と久米氏は指摘した。
http://www.gclew.com/gakkai/66th_jcs/contents/sub_24_1.php
<関連サイト>
レクチン様酸化LDL受容体における新たな展開とその臨床的意義
http://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/127/2/127_103/_article/-char/ja
■酸化ストレスは,活性酸素産生系/消去系の不均衡にて生じる.
亢進した酸化ストレスは,内皮傷害の直接的な要因であり,また一方でLDLの酸化的修飾により生成された酸化LDLを介して内皮機能障害をきたす.
■酸化LDLは,内皮機能障害因子として心血管病のinitiatorとして働くだけはなく,promoterとしても機能する.
酸化LDLは,レクチン様酸化LDL受容体(lectin-like oxidized LDL receptor-1:LOX-1)を介した系にて種々の細胞反応を引き起こす.
■LOX-1は,内皮細胞だけではなく,血管平滑筋細胞,炎症細胞など様々な細胞種に発現を認め,その発現は様々な条件下,刺激により,ダイナミックに調節されている.
■LOX-1は,酸化LDLだけではなく,アポトーシスの陥った細胞,老化赤血球,炎症細胞などを認識し,生体防御機構や炎症性機転などの様々な生命現象において重要な役割を果たしていることが明らかになった.
■最近,幅広い分野においてLOX-1の病態生理学的意義に関する研究が展開されており,高脂血症下での内皮機能障害だけではなく,血管バルン傷害後の内膜肥厚,糖尿病血管病変,敗血症,急性冠動脈症候群などの種々の病態形成に深く関与している可能性が示された.
■今後,LOX-1をターゲットにした薬剤の開発が,酸化ストレスを基盤とした病態の理解,さらには新たな治療戦略の構築につながる可能性がある.
[PDF] 動脈硬化性疾患から心疾患へのマルチ・バイオマーカー
http://j-jabs.umin.jp/32/32.113.pdf
■LOX-1は酸化LDLやアンギオテンシンⅡなどによる血管内皮傷害に始まる一連のプラーク不安定化に関与している。
すなわち、平滑筋のアポトーシスや泡沫細胞によるMMPの分泌亢進などによりプラークの不安定化を生ずる。
また、血小板を活性化してプラーク破裂後の血栓形成に関与している。
マクロファージや平滑筋に発現しているLOX-1は酵素分解により可溶性となり血中に放出される。
血中可溶性LOX-1はNSTEMⅠの診断に対し、感度91%、特異度83%と優れたマーカーであり、心筋トロポニンT(cTnT)より早期から上昇する(文献)。
文献
Hayashida K, et al.: Serum soluble
lectin-like oxidized low-density lipoprotein receptor-1 levels are elevated in acute coronary syndrome: A novel marker for early diagnosis.
Circulation, 112:812-818, 2005
フィブラート系薬はおもに冠イベントを予防する
脂質降下薬のフィブラート系薬はおもに冠イベントを予防することによって主要な心血管イベントのリスクを下げると,オーストラリアのグループがLancetの5月29日号に発表した。
フィブラート系薬の心血管イベント抑制効果を検討した臨床試験の結果は一致していない。
同グループは,1950〜2010年3月に報告された研究で,心血管転帰に対するフィブラート系薬の有効性をプラセボと比較した前向きランダム化試験のメタ解析を実施。
主要心血管イベント,冠イベント,脳卒中,心不全,冠動脈血行再建術,全死亡,心血管死,非心血管死,突然死,新規アルブミン尿発症リスクを評価した。
18試験(患者数4万5,058例)が該当し,主要心血管イベント2,870件,冠イベント4,552件,死亡3,880件であった。
解析の結果,プラセボ群と比べフィブラート系薬群では主要心血管イベントの相対リスク(RR)が10%低かった(P=0.048)。
この効果は主として冠イベントの有意な減少によるもので(−13%,P<0.0001),脳卒中の減少は有意ではなかった(−3%,P=0.69)。
両群の全死亡,心血管死,非心血管死,突然死のリスク に有意差はなかったが,フィブラート系薬群では新規アルブミン尿の発症が有意に少なかった(−14%,P=0.028)。
フィブラート系薬群で血清クレアチニン値の上昇が見られたが(RR 1.99),薬剤に関連する重篤な有害事象の増加は観察されなかった。
原文
Jun M, et al. Lancet 2010; 375: 1875-1884.
抄録
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20462635
<コメント>
「冠イベントを予防することによって主要な心血管イベントのリスクを下げる」・・・最初に読んだときには何を言っているのかわかりませんでした。
要するに
フィブラート系薬は「主要心血管イベント,冠イベント,脳卒中,心不全,冠動脈血行再建術,全死亡,心血管死,非心血管死,突然死,新規アルブミン尿発症リスク」を減少させるという結論のようです。
のうち「で冠イベントと新規アルブミン尿発症リスクを減少させる」
<関連サイト>
フィブラート薬の選択的投与
http://blog.m3.com/reed/20100411/1
スタチンとフィブラート製剤の併用は?
http://blog.m3.com/reed/20100421/1
<自遊時間>
昨日は「父の日」でした。
年に一度食べれるかどうかの大好物のアワビが食卓に出てつい飲み過ぎてしまいました。
反省。

その他
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。