| 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ||||||
| 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
| 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
| 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 |
| 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 |
| 30 | 31 |
日本は総人口の21%以上を65歳以上の高齢者が占める「超高齢社会」になりました。
高齢者では加齢に伴う動脈硬化から腎機能障害が起こるため,慢性腎臓病(CKD)が高頻度に見られます。
CKDは末期腎不全および心血管系疾患(CVD)の発症の重要な危険因子ですが,CKDでは脂質異常症の治療により,CVDのリスク低下だけでなく腎機能低下の抑制も期待できます。
きょうは、「高齢者におけるCKD合併脂質異常症」, 「CKDおよびCVD抑制に関するスタチンのエビデンス」,「高齢のCKD合併例に対する脂質管理の在り方」についての討論の記事で勉強しました。
高齢者におけるCKD合併脂質異常症の治療
司会:
荒井 秀典 氏 京都大学大学院人間健康科学系専攻 近未来型人間健康科学融合ユニット 教授
出席者:
庄司 哲雄 氏 大阪市立大学大学院 代謝内分泌病態内科学 講師
木原 進士 氏 大阪大学大学院 内分泌・代謝内科学 講師
西尾 善彦 氏 滋賀医科大学 糖尿病・腎臓・神経内科 講師
高齢の日本人脂質異常症患者の約40%がCKDを合併
荒井
「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2009」(以下,ガイドライン)によると,臨床的に問題とされる中等度(ステージ3)以上のCKD患者は,日本で1,098万人と推計されています。
CKDの有病率は加齢とともに増加し,70歳以上では推計で約30%以上に達します。
一方,平成18年の国民健康・栄養調査によると,65歳以上の高齢者の40~50%が脂質異常症を有しており,患者数は推計で1,240万人にのぼります。
しかし,このうちの約60%はスタチンによる治療を受けていないと推定されています。
西尾
当施設において調べたところ,糖尿病経過外来では,65歳以上の糖尿病患者のうち,34%がステージ3以上のCKD,60%が脂質異常症を合併しており,糖尿病合併脂質異常症の半分以上の患者が未治療でした。
荒井
脂質異常症がCKDに及ぼす影響は多くのコホート研究で示されており,Physicians' Health Studyでは,健康男性においてベースラインの総コレステロール(TC)値が高いほど,血清クレアチニン値 ≥ 1.5mg/dLの腎機能低下例が多くなることが示されています1)。
このように,脂質異常症とCKDは合併することが多く,プラバスタチン(メバロチン®)の日本のエビデンスであるMEGA Studyにおいても,65歳以上の脂質異常症患者の37.8%が,ステージ3以上のCKDを合併していました。
<CKD合併脂質異常症の病態の特徴について>
庄司
CKD合併脂質異常症は2タイプに分かれます。
1つ目はネフローゼ症候群に合併するタイプで,蛋白尿が多いため,代償的に肝臓での超低比重リポ蛋白(VLDL)の合成が増加します。
VLDLは中間比重リポ蛋白(IDL),LDLへと代謝されるので通常はLDLが増加しますが,この過程に異化障害が生じると,VLDLが増加します。
2つ目は,糸球体濾過量(GFR)の低下による腎不全タイプで,末梢でのVLDLの異化障害が脂質異常症の主因であり,VLDLやIDLは増加しますが,LDLの上昇はありません。
CKD合併例では,LDLコレステロール(LDL-C)が上昇しない場合があるため,LDL-Cのみを基準としていると,脂質異常症を見逃す危険性があります。
以上から,CKD患者における脂質異常症の診断では,LDLだけではなく,VLDLやIDLを含む指標として,TCからHDLコレステロール(HDL -C)を引いた non HDL-Cを指標とすることが望ましいと思います。
<メタボリックシンドローム(MetS)の観点から>
木原
MetSでは腎臓の過剰濾過が起こるので,初期に推算糸球体濾過量(eGFR)はむしろ増加します。
しかし,脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンが減少し,アルブミン尿やCKDの進展につながります。
したがって,MetS患者において検尿で蛋白尿がプラスマイナスを示した場合,微量アルブミン尿検査をすることが望ましいと思います。
1)Schaeffner ES, et al. J Am Soc Nephrol 2003; 14: 2084-2091.
CKDを合併した脂質異常症患者に対するスタチン治療の意義が明確に
荒井
スタチンを用いた多くの大規模臨床試験のサブ解析により,スタチンのCKD合併脂質異常症におけるCVD抑制のエビデンスが示されています。
MEGA Study,Prava III,ASCOT-LLA試験におけるステージ3~4のCKD患者を対象としたサブ解析の結果,スタチン群では対照群に比べ,1次エンドポイントであるCVDのハザード比が0.52~0.77と,有意なリスク低下が認められています2)。
特に,中等度CKDを合併した脂質異常症に対するプラバスタチンのCVD発症抑制を検証したMEGA StudyのCKD解析では,食事療法+プラバスタチン併用群は食事療法単独群に比べ,1次エンドポイントである冠動脈疾患(CHD)の発症リスクを48%有意に低下させました。
特に,脳卒中や脳梗塞の発症リスクをそれぞれ73%,82%と有意に低下させました(図1)。

一方,維持透析患者を対象とした4D3),AURORA試験4)のサブ解析では,スタチンによるCVD発症抑制は認められませんでした。
庄司
維持透析患者ではスタチンを投与してもCVDが抑制されなかったことから,CKDの早期からのスタチン治療が重要と言えるのではないでしょうか。
CKD患者を対象にスタチンによる脂質管理を考える場合,CKDステージ3は特に重視すべき対象だと思います。
西尾
CKDステージ3以上の患者などでは,絶対リスクを考えて治療することが重要だと言えます。
荒井
CKDの重症度別にプラバスタチンの血清脂質改善効果を比較したところ, LDL-Cの低下率は約20%とほぼ同等でした(図2)。MEGA Studyの主解析ではプラバスタチンによるCHDの発症リスクが33%有意に低下したのに対し(Log-rank検定:P=0.01)5),CKD解析では48%有意に低下しました。
さらに,1イベントを予防するために必要な治療例数(NNT)も,主解析の119に対しCKD解析では82と少なくなったことから,CKD合併例ではスタチンの治療効果が大きく得られることが示唆されました(図1)。

木原
MEGA Studyが日本人のデータであることは貴重だと思います。
また,マイルドな脂質低下作用によってCVDが抑制された理由として,スタチンのなかでもユニークな水溶性のプラバスタチンはアディポネクチンを増加させるという報告が多く,脂肪組織の機能異常を改善する作用が関与しているのではないかと推察しています。
2)庄司哲雄ほか: 血圧 2006; 13: 411-416.
3)Wanner C, et al. N Engl J Med 2005; 353: 238-248.
4)Fellström BC, et al. N Engl J Med 2009; 360: 1395-1407.
5)Nakamura H, et al. Lancet 2006; 368: 1155-1163.
早期からのスタチン治療がCKDに及ぼす影響
荒井
スタチンがCKDそのものに好影響を及ぼすことも報告されています。
MEGA StudyのCKD解析において,プラバスタチン併用群では,食事療法単独群に比べ,eGFRが有意に増加しました(図3)。

<スタチンによる腎保護の機序>
庄司
スタチンの腎保護機序としては,
(1)脂質レベル低下を介する機序,
(2)スタチンが直接的に腎臓の細胞に作用する機序,
(3)心機能改善を介した腎血流・GFR増加の3点が考えられます(表1)。
糸球体上皮細胞保護には(1),(2),糸球体基底膜のスリット膜分子であるネフリン発現に(2)が関与していることが知られています。

西尾
私どもの施設では,糖尿病経過外来における早期糖尿病腎症患者において,4つの基準(HbA1C値<6.5%,血圧<130/80mmHg,TC<200mg/dL,トリグリセライド<150mg/dL)を多く達成した例ほど,腎症の寛解率が高かったことから,CKDでは血糖,血圧,脂質を早期のうちから包括的に管理することが重要だと考えています。
木原
糖尿病を発症してしまった患者については,スタチンはあまり悪影響を及ぼさないと思います。
しかし,糖尿病になっていないレベルの糖代謝異常を有する患者へのスタチン投与は,耐糖能を悪化させる可能性もあり,注意が必要です。
高齢のCKD合併例に対するスタチン治療では,特に安全性を重視
荒井
高齢のCKD合併脂質異常症患者に対するスタチンを用いた薬物治療では,横紋筋融解症など安全性が懸念されますが,先生方はどのように薬剤を選択されていますか。
庄司
高齢者は多剤を併用することが多いため,安全性を重視して薬物相互作用のリスクが低い薬剤を選択しています。
プラバスタチンは水溶性で薬物相互作用が少なく,安全性が評価されている薬剤です。
荒井
MEGA StudyのCKD解析では,食事療法単独群とプラバスタチン併用群とで,肝機能障害,腎機能障害および横紋筋融解症の指標であるクレアチンキナーゼ(CK)上昇の発現率はほぼ同等でした(表2)。

庄司
CKD合併例に対するスタチンの有害事象はあまり公開されていないので,今回のMEGA Study CKD解析において示されたCKD合併例に対するプラバスタチンの安全性データは非常に重視しています。
木原
庄司先生のおっしゃる通りだと思います。
また,耐糖能に影響を与えにくいスタチンという点でもプラバスタチンが有用ではないかと考えています。
西尾
糖尿病患者を中心に診療するなかで,高齢の脂質異常症患者ではCKD合併例が多く,その場合は基本的にスタチンを選択していますが,安全性が評価されたプラバスタチンは使いやすい薬剤だと思います。
荒井
高齢のCKD合併脂質異常症患者に対し,早期からのスタチン治療がCVDの発症抑制はもちろん,CKDの進展抑制に期待できる可能性が示唆されました。
しかし,日常診療では多くの高齢のCKD合併例がスタチン治療を受けていないと推測されるため,今後は高齢者における適切なリスク評価と,安全性を重視したスタチン治療の推進に取り組まなくてはならないという結論になると思います。
出典 Medical Tribune 2010.5.20
版権 メディカルトリビューン社
<番外編>
RAS阻害薬によるAFの予防: メタ分析
レニン・アンジオテンシンシステム(RAS)阻害薬が、心房細動(AF)の一次、二次予防に有効性を示す可能性が、ドイツ、University of Erlangen-NurembergのMarkus P. Schneider氏らにより5月25日号のJournal of the American College of Cardiology誌で報告された。
Schneider氏らは、AFの一次、又は二次予防においてACE阻害薬、又はARBの効果を検証した出版されている全ての無作為試験(23試験、患者87,048人)のメタ解析を行った。
一次予防では、6試験が高血圧、2試験がMI後、3試験が心不全患者を対象とし、二次予防では、8試験が電気的除細動後、4試験が薬剤による再発の予防効果を評価したものであった。
RAS阻害薬は全体でAFのオッズ比を33%低下させることが示されたが(p<0.00001)、試験間で不均一性が認められた。
一次予防においては、RAS阻害薬は心不全、及び高血圧、左室肥大を有する患者において有効性が示されたが、MI後の患者には有効性は認められなかった。
二次予防では、RAS阻害薬は、アミオダロンを含む抗不整脈薬への追加投与が一般的であり、電気的除細動後のAFの再発のオッズをさらに45%低下させ(p=0.01)、薬物療法下にある患者では63%の低下をもたらした(p<0.00001)。
Schneider氏らは、「AFの一次、及び二次予防に対するRAS抑制薬の有用性が示されたが、本分析に用いた一次予防を検証したデータの一部は事後解析であり、特定のRAS抑制薬と抗不整脈薬との相互作用、相乗効果については不明である」と、まとめている。
Schneider M, et al. J Am Coll Cardiol. 2010; 55: 2299-2307
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=medical&no=666
その他「葦の髄」メモ帖 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy