戯れ言たれる侏儒
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ご存知のようにENHNCEの結果は、デザインの問題もあってか結果は散々でした。
おかげでLDLコレステロールを下げる治療法自体にも疑問符を投げかける専門家さえ出るほどで、おけげでスタチンまでがとばっちりを受けました。
私は逆に、同程度のLDL低下を図ってもスタチンとエゼチチミブの両者間で差が出るとすると、多面作用の方が抗動脈硬化に有効ではないかという仮説を立てました。
要するに、脂質の低下値はサロゲートマーカーではないかという大胆な仮説です。

そこでスタチンと同様にエゼチミブが多面作用があるのかどうかということに興味を持っていました。
そんななか、「エゼチミブの多面的な作用」をテーマとしたタイムリーな記事が見つかりました。

徳島大学の佐田教授自身の臨床研究の結果を糖尿病,循環器領域のエキスパートの先生方がコメントするという記事で勉強しました。
#エゼチミブの多面的な作用が臨床にもたらす可能性
平野 勉 氏(司会) 昭和大学糖尿病・代謝・内分泌内科 教授
佐田 政隆 氏 徳島大学循環器内科学 教授
小林 淳二 氏 金沢大学脂質研究講座 特任教授
後藤田 貴也 氏 東京大学附属病院 22世紀医療センター 臨床分子疫学講座 准教授
小川 渉 氏 神戸大学糖尿病・代謝・内分泌内科 准教授
 
生活習慣,特に食生活の欧米化にともなって,複数の代謝異常症を合併した患者の数が増加している。
これらの患者では,脳・心血管イベントの発生リスクが高く,リスクを総合的に低下させる治療アプローチが必要とされている。小腸コレステロールトランスポーター阻害剤エゼチミブは,血清脂質を低下させるのみならず,多面的な作用を有することが示唆されており,脂質異常症以外に合併する代謝異常症や循環器疾患に対しても有益に作用することが明らかになりつつある。

Presentation
エゼチミブの多面的な作用
佐田 政隆 氏 徳島大学循環器内科学 教授
エゼチミブが脂質代謝,炎症や酸化ストレス,インスリン抵抗性などに及ぼす影響を検討
2007年にわが国でも臨床導入された脂質改善薬エゼチミブは,スタチンとはまったく異なる作用機序を有しており,小腸コレステロールトランスポーターNiemann-Pick C1 Like 1(NPC1L1)蛋白に作用して小腸からのコレステロール吸収を選択的に阻害する。エゼチミブは,LDLコレステロール(LDL-C)を低下させるのみではなく,全般的な代謝改善作用や血管保護作用を併せ持つことが示唆されており,詳細解明に期待が持たれている。

そこでわれわれは,エゼチミブの代謝改善作用および血管保護作用を明らかにすることを目的に,自施設にて臨床研究を実施した。
対象は,動脈硬化性疾患予防ガイドラインが推奨する脂質管理目標値を達成していない,脂質異常症患者38例(平均63.7歳)である。
うち28例では高血圧,13例で耐糖能異常および糖尿病を合併しており,すでにスタチンを服用している症例は8例であった。
なお,左室機能低下例(EF<40%),腎障害例(Cr>2mg/dL,尿中アルブミン>300mg/g・Cr)および1年以内に脂質代謝異常の治療を変更した症例は対象から除外している。
エゼチミブを1か月間投与し,脂質代謝,インスリン抵抗性,血圧,炎症,酸化ストレス,腎機能などの変化を評価した。

エゼチミブはLDL-C低下効果を発揮するだけではなく,炎症や酸化ストレスにも好影響を及ぼす

エゼチミブ投与1か月後のLDL-C低下率は,全例平均で24%(146mg/dL→111mg/dL)であり,良好なLDL-C低下効果が得られることが示された。
HDLコレステロールには有意な変動はみられなかったが,トリグリセライドは低下傾向を認めた。

1か月という短い投与期間であったにも関わらず,体重は65.3kgから64.2kgへ,BMIは25.1から24.3,腹囲は87.6cmから85.7cm へとそれぞれ有意に減少し(いずれもp<0.05,Student's t-test),高血圧合併例では降圧薬を変更していないにも関わらず,収縮期血圧は139mmHgから132mmHgへ,拡張期血圧は75.6mmHgから71.4mmHgへと有意に低下した(いずれもp<0.05,同)。
炎症と酸化ストレスは脳・心血管イベント発症に重大な影響を及ぼす因子と考えられているが,炎症マーカーであるhs-CRP,TNF-αは有意に低下し(いずれもp<0.01,同),
エゼチミブが炎症に対して好影響を及ぼすことが示された。
また,尿中の酸化ストレスマーカーである8-OHdG濃度が有意に低下し,NO代謝物の濃度が有意に上昇したことから(いずれもp<0.05,同),エゼチミブは酸化ストレスにも好影響を及ぼしNOの生物学的利用率を改善することが示された。
また,インスリン抵抗性の指標であるHOMA-Rが有意に低下し,腎機能の指標である尿中アルブミン排泄量も有意に低下した(いずれもp<0.01,同)。

以上の検討から,エゼチミブはLDL-C低下効果に加えて,腹囲減少,血圧低下,抗炎症,インスリン抵抗性改善,尿中アルブミン排泄量低下など,多面的な作用を有することが示唆された。

Discussion
エゼチミブの臨床的ベネフィットを検討する
エゼチミブはLDL-C低下効果に加えて多彩なベネフィットが期待できる

平野 
佐田先生より,エゼチミブはLDL-C低下効果のみならず,多面的な作用を有するというデータをご紹介いただきました。
これらの作用がもたらされる機序および臨床に与えるベネフィットはいかがでしょうか。

小林 
インスリン抵抗性の指標であるHOMA-Rが低下したことから,エゼチミブは肝臓のインスリン抵抗性に好影響を及ぼすと考えてよいと思います。

後藤田 
エゼチミブが脂肪肝を改善することは幾つかの動物モデルで示されており(図1),臨床においても同様の作用が明らかになりつつあります。
ヒトでは肝細胞でもNPC1L1が発現しており,肝細胞では脂肪酸合成に関わる経路とインスリン作用に関わる経路がオーバーラップしていることから,脂肪肝の改善がインスリン抵抗性改善に関わる可能性が考えられます。


小川 
炎症とインスリン抵抗性は密接に関連していることが知られていますので,エゼチミブによるhs-CRPやTNF-αの低下がインスリン抵抗性の改善に寄与した可能性があるのではないでしょうか。
また,エゼチミブにより腹囲が87.6cmから85.7cmへと減少しました。
一般的に,腹囲が3cm減少すると代謝面での好影響が顕在化するといわれていますので,エゼチミブによる腹囲の減少は,複数の代謝異常症を合併した症例では非常に重要なポイントになると思います。

平野 
尿中アルブミン排泄量が低下した機序はどのようにお考えですか。

佐田 
血管内皮機能が改善し,糸球体機能に影響を及ぼしたのではないでしょうか。

平野 
炎症マーカーが低下した機序についてはいかがですか。

佐田 
LDL-Cが低下したことに加えて,酸化ストレスをもたらす食事由来の酸化(劣化)コレステロールも吸収阻害できることが,炎症マーカーの低下につながったと考えられます。
炎症や酸化ストレスの抑制は血管内皮機能の改善をもたらし,動脈硬化の発症・進展抑制や臨床的なイベントの抑制へとつながるため,このような抗炎症作用の意義は大きいといえるでしょう。


#LDL-C低下効果とは独立した機序を持つことが示唆される
後藤田 
エゼチミブによって有意な血圧低下と体重減少が得られたことも,注目すべき点だと思います。
この血圧低下や体重減少などの効果は,エゼチミブによるLDL-C低下効果と相関するのでしょうか。

佐田 
検討してみましたが,相関は認められませんでした。
LDL-C値がそれほど低下していなくても,血圧や体重などが低下した症例もありましたので,これらはLDL-C低下効果とは独立した機序によるものだと考えられます。

小川 
α-グルコシダーゼ阻害剤が,グルコーススパイクといわれる食後の急激な血糖上昇を抑制することによって,血管内皮機能の低下を抑制することが明らかになりつつあります。
血清脂質に関してもこれと同様の機序,つまり,食事由来の酸化(劣化)コレステロールなどが食事のたびに血管を傷害する機序が存在し,それをエゼチミブが抑制していると想定できないでしょうか。

佐田 
非常に説得力のある仮説だと思います。

平野 
食後高脂血症に近い概念になるのでしょうか。

小林 
そうですね。
エゼチミブは食後高脂血症に有用性が期待できる薬剤だと思います。
エゼチミブによって炎症マーカーであるTNF-αが低下したことから,リポ蛋白リパーゼの活性が高まり,食後の脂質代謝に好影響をもたらす機序が考えられます。

平野 
食後高脂血症では,カイロミクロンの分解過程で生じるレムナントが高値となりますが,レムナントは動脈硬化惹起性が非常に高いため,食後高脂血症を考える際には十分な注意が必要です。
エゼチミブによるコレステロール吸収阻害は,カイロミクロンの合成を低下させ,レムナントを減少させることが報告されています。


#実地臨床においてエゼチミブを積極的に投与したい症例とは
佐田 
コレステロール吸収が亢進している症例,酸化(劣化)コレステロールを含む食物を多く摂取していると思われる症例に適していると思います。
エゼチミブはファーストライン療法でLDL-Cを約20%低下させることが示されています(図2)。
また,スタチン治療では十分なLDL-C低下効果が得られない症例も,エゼチミブのよい適応になるかと思われます。


平野 
スタチンによって肝臓におけるコレステロール合成を阻害すると,代償的に小腸からのコレステロール吸収が亢進することが報告されていますから,それをエゼチミブで抑制するということですね。

佐田 
実際,スタチンのみでは脂質管理目標値に到達できない症例において,エゼチミブを追加併用するとLDL-Cはさらに約25%低下することが示されており(図3),スタチンにコレステロール吸収阻害剤であるエゼチミブを併用することは,大変理にかなった治療アプローチであると考えられます。


小林 
コレステロール吸収が亢進している病態,例えば肥満,メタボリックシンドロームの合併例では特に効果が期待できると思います。
また,エゼチミブ投与によって尿中アルブミン排泄量や血圧なども低下したことから,慢性腎臓病(CKD)合併患者もよい適応になるのではないでしょうか。

平野 
メタボリックシンドロームとCKDは無関係ではなく,両者の病態はオーバーラップしています。
特に肥満例では微量アルブミン尿が出現しやすく,糸球体濾過圧も上昇しますから,腎機能の低下が懸念されます。エゼチミブの作用がメタボリックな因子に関連するものかどうかはわかりませんが,非常に興味深いです。
また,エゼチミブはその大半が胆汁から排出されますので,CKD患者の腎臓に負担をかけない薬剤だと考えられます。

後藤田 
また,良好な忍容性を示すことから,食事療法で脂質管理目標値に到達しない症例への投与も適応になると思います。
脂質異常症治療の基本は食事療法ですが,実際に根気よく継続するのは容易ではなく,薬物療法に進まざるをえない症例は少なくありません。

小川 
佐田先生のデータからエゼチミブには多面的作用があると考えられますので,糖尿病,高血圧などの危険因子を有する症例に適していると思います。
(コメント;糖尿病にはエゼチミブは慎重投与になっています)

平野 
まとめますと,LDL-C低下効果に加えて多面的な作用を有するエゼチミブは,肥満やメタボリックシンドローム,2型糖尿病,CKDなどを合併した症例に適した脂質改善薬といえるかと思います。

出典 Medical Tribune 2010.3.11
版権 メディカルトリビューン社


<コメント>
きょうの夕方、ゼチーアを販売している製薬メーカーS社の支店に行って来ます。
MRさんの、ゼチーアのパンフを用いた説明にドクターがコメントするというものです。
OSCE(オスキー)のMR版といったところで、私はいわば試験管です。
少し心配、少し楽しみといったところです。
雰囲気作りのために白衣と聴診器を持参するつもりでいます。
熱意を買われるか、ひょうきんと思われるか。


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