戯れ言たれる侏儒
Profile

ブログ内検索

カレンダー

<< 2010/05 >>
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

新着コメント

新着トラックバック

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

脂質代謝異常の治療では,患者が保有する脳・心血管イベントリスクに応じた血清脂質管理が求められます。

LDLコレステロール(LDL-C)を効率的に低下させるためには,生体内のコレステロール代謝,コレステロール吸収と合成のバランスを考慮して治療方針を選択するとの考え方があります。
##コレステロールの吸収と合成のバランスを見据えたLDL-C低下療法の重要性
荒井 秀典 氏(司会) 京都大学 人間健康科学系専攻 教授
Brian Tomlinson 氏 Professor of Medicine & Therapeutics, Division of Clinical Pharmacology, Department of Medicine & Therapeutics, The Chinese University of Hong Kong, Prince of Wales Hospital, Hong Kong, China
杉山 正悟 氏 熊本大学 生命科学研究部 循環器病態学 准教授
古川 裕 氏 神戸市立医療センター 中央市民病院 循環器内科 部長
福本 義弘 氏 東北大学病院 循環器内科 講師
石田 達郎 氏 神戸大学 循環器内科学 准教授

#Presentation 1
#コレステロール吸収および合成の双方をターゲットとしたLDL-C管理の意義
Brian Tomlinson 氏
大規模臨床試験の結果から,一次予防,二次予防のいずれにおいても,LDL-C値が低いほど冠動脈性心疾患(CHD)発症リスクは低下することが示されており,また,LDL-C値を75mg/dL未満に低下させることによりプラークが退縮することが明らかにされている。
こうした知見に基づいて,NCEP ATP IIIでは,LDL-C管理目標値としてハイリスク例では100mg/dL未満,超ハイリスク例では70mg/dL未満に管理することを推奨している。

しかし,実地臨床におけるハイリスク例の管理目標値到達率は低く,CHD既往患者では20%に満たないことが示されている。
LDL-C管理が困難な理由の1つとして,スタチンでは用量を2倍に増量してもLDL-C低下の上乗せ効果は6%程度であるという「6%ルール」が知られている。
これは,血液中に供給されるコレステロール量が肝臓における合成と,小腸からの吸収によって調節されていること,コレステロールの合成を抑制すると,代償的に小腸からの吸収が亢進することによる。LDL-C値を厳格に管理するためにはスタチンによる合成阻害に加えて,小腸における吸収阻害を見据えた治療が重要であることが指摘されている。

小腸コレステロールトランスポーター阻害剤であるエゼチミブは小腸からのコレステロール吸収を効果的に阻害することから,スタチンへの追加投与によりLDL-C値をさらに約25%低下させることが示されている(図1)。

高コレステロール血症患者を,スタンダードスタチン(シンバスタチン20mg)+エゼチミブ10mg併用群あるいはストロングスタチン(ロスバスタチン10mg)単独群に無作為に割り付け比較した検討では,投与6週間後におけるLDL-C低下率はストロングスタチン単独群で45.8%であったのに対し,エゼチミブ併用群では51.5%と有意に大きかった。
また,ハイリスク例および超ハイリスク例におけるLDL-C管理目標値の到達率もエゼチミブ併用群で高かった(図2)。
薬剤に起因する有害事象は,両群で同等であった。


スタチンとエゼチミブの併用療法は,合成と吸収の2つの経路を同時に阻害するという点で理にかなった治療法であり,それに加えてスタチンの増量に伴う副作用への懸念を回避できることから,非常に有用な治療選択肢といえる。

#Presentation 2
#2型糖尿病を合併した脂質異常症患者におけるコレステロール吸収と合成のバランス
杉山 正悟 氏

2型糖尿病は心血管イベントの重大なリスク因子であるが,2型糖尿病患者ではLDL-C低下により,心血管イベントの発症リスクが低下することが明らかにされている。
しかし,最近Rajpathakらにより報告されたメタ解析において,スタチン投与例では2型糖尿病の新規発症リスクが13%上昇することが示されており,糖尿病患者および予備軍におけるLDL-C低下療法の在り方については,十分な検討が必要とされている。
また,2型糖尿病患者ではコレステロール吸収の亢進が示唆されているが,日本人の2型糖尿病患者におけるコレステロール吸収と合成バランスの詳細は明らかにされておらず,その解明が求められている。

こうした背景のもと,われわれは脂質に対する治療を行っていない2型糖尿病患者106例を対象に,LDL-C値が管理目標値内にある群(到達群44例)と管理目標値に到達しておらずLDL-C低下療法が必要と考えられる群(非到達群62例)において,コレステロール吸収および合成のバランスを比較検討した。
非到達群では到達群と比較して,コレステロール吸収/合成比(コレスタノール/ラソステロール,シトステロール/ラソステロール,カンペステロール/ラソステロール)が有意に高く(p=0.04,p=0.04,p=0.03,unpaired t-test),非到達群においてコレステロール吸収が相対的に亢進していることが明らかになった。
また,全例を対象に患者背景とコレステロール吸収/合成比を検討したところ,BMIが25未満の群,腹囲が男性85cm未満,女性90cm未満の群,経口血糖降下剤を複数服用している群,インスリン投与を行っている群では,相対的にコレステロール吸収が亢進していることが示された。
これらの結果から,LDL-C低下療法が必要とされる日本人の2型糖尿病患者では,コレステロール吸収が相対的に亢進状態にあることが明らかになり,LDL-Cを効率的に低下させるためには,コレステロール吸収阻害剤を使用することが有用であろうと考えられた。


Discussion
コレステロール吸収が亢進する病態とエゼチミブの臨床的有用性
日本人の2型糖尿病患者ではコレステロール吸収が亢進

古川 杉山先生のお話で,日本人に多い肥満を伴わないインスリン分泌不全型の糖尿病で,特にインスリン治療を行っている症例では,相対的にコレステロール吸収が亢進していたという結果でしたが,2型糖尿病の病態によってコレステロール吸収/合成のバランスが異なる可能性があるのでしょうか。

杉山 循環器科に紹介されてくる糖尿病患者は,多くが肥満を伴わないインスリン分泌不全型の症例なので,病態による違いについて明確にはお答えできませんが,私の印象ではそのように思います。

福本 肥満例ではコレステロール吸収が亢進していると理解していたのですが。

荒井 確かに肥満例ではコレステロール吸収の絶対量は増加していると考えられますが,今回のご検討は吸収と合成のバランスを評価されたわけですよね。

杉山 はい。おそらく肥満例では,合成と吸収の両方が亢進していると思います。当然肥満例においても,コレステロール吸収亢進を念頭に置いた治療アプローチが必要と考えられます。

荒井 コレステロール吸収/合成比の上昇とCHD発症リスクの上昇が密接に関連していることが報告されていますが(図3),将来的には日常臨床で吸収/合成マーカーを測定するようになるのでしょうか。

福本 現時点で重要なのは,LDL-Cを管理目標値に到達させることだと思いますので,必ずしも全例で吸収/合成マーカーを測定する必要はないと思います。管理目標値に到達しない症例を選んで測定するというような方法が現実的かもしれません。

Tomlinson 現在の臨床においても,スタチンでLDL-Cが十分に低下しない症例は,コレステロール吸収が亢進していると推測できますので,合成と吸収のバランスを見据えた治療が可能です。こうした症例はエゼチミブのよい適応になります。


#脂質異常症の臨床におけるエゼチミブの位置付け
荒井 
先生方は臨床でエゼチミブをどのようにお使いですか。

杉山 
コレステロール吸収が亢進していると考えられるメタボリックシンドロームや糖尿病注)を合併する患者はもちろんですが,LDL-Cがそれほど高くない患者で,空腹時トリグリセライドが高値の患者にはエゼチミブを単独で使用しています。

石田 
エゼチミブはレムナントを低下させますから,食後高脂血症の存在が疑われる患者がよい適応になりますね。
食後高脂血症は脳・心血管イベントのリスク因子であることから,重要な治療戦略になると思います。

福本 
LDL-Cを厳格に管理するという観点からは,エゼチミブとスタチンを併用して吸収と合成を同時に阻害すべきだと思います。
一方で,エゼチミブは食物中に含まれる酸化(劣化)コレステロールの吸収も阻害しますから,ファーストラインとしての単独投与も考慮しています。

Tomlinson 
一次予防を目的とした場合,低リスクや中リスクでは多くの症例がエゼチミブ単独投与の対象になると思います。
エゼチミブの忍容性は良好ですから,長期に治療を継続することを考えると,ファーストラインとして使用しやすい薬剤です。

古川 
私が担当する患者のほとんどはLDL-Cの管理目標値が低い二次予防例ですから,スタチンとの相乗効果を期待してエゼチミブを追加投与しています。

Tomlinson 
4Sのサブ解析から,スタチンによるイベント抑制に限界がみられる患者群の存在が明らかになりました。
CHD急性期においてはやはりスタチンを投与することになると思いますが,二次予防として考えた場合には,エゼチミブの追加投与だけでなく,スタチンに対する反応性によってはエゼチミブへの切替えも考慮すべきだと思います。

荒井 
わが国では今後,ますます高齢化が進むと予想されることから,高齢者における脂質管理が重要な課題となっています。
現在われわれは75歳以上の高齢者におけるエゼチミブ単独療法の有用性を検討する臨床試験を行っています。
そのほかにもエゼチミブのエビデンスは集積されつつありますので,今後,エゼチミブの臨床における位置付け,有用性がさらに明確になってくることでしょう。

出典 Medical Tribune 2010.5.13
版権 メディカルトリビューン社


固定リンク | コメント (2)