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LDLのなかでもsmall dense LDLは特に動脈硬化を促進させる作用が強く,冠動脈疾患との強い関連性が指摘されています。
small dense LDLとは何か,エゼチミブがsmall dense LDLに及ぼす影響などについて討論(Presentationと Discussionで構成)
された座談会の記事で勉強しました。
来週、エゼチミブを販売している製薬メーカーのMRさんからMRさんのロールプレイイングのコメントのために出かける予定をしています。
私自身の個人的な事情で先生方にはあまり興味の湧かない分野が続いたかも知れません。
もしそうであれば申し訳ありません。
司会:
池脇 克則 氏 防衛医科大学校 内科学講座老年内科 教授
出席者(発言順):
木庭 新治 氏 昭和大学循環器内科 講師
綾織 誠人 氏 防衛医科大学校 内科学講座老年内科
山川 正 氏 横浜市立大学附属市民総合 医療センター内分泌・糖尿病内科 部長
井上 郁夫 氏 埼玉医科大学 内科学内分泌・糖尿病内科 准教授
脂質代謝異常の病態に応じた脂質低下療法
コレステロール吸収阻害がもたらす臨床的ベネフィット
Presentation
small dense LDLの臨床的意義とエゼチミブの脂質低下効果
木庭 新治 氏 昭和大学循環器内科 講師
small dense LDLはLDL粒子のなかでも動脈硬化惹起性が高い
■血液中のLDL粒子はサイズと密度から分類されるが,最も小さくて密度が高いのがsmall dense LDLである。
動脈硬化は動脈壁に侵入したマクロファージがLDLを取り込んで泡沫細胞となり,プラークを形成することで進行する。
LDLはそのままではマクロファージに取り込まれないが,酸化などの変性を受けると盛んに取り込まれるようになる。
LDLはサイズが小さいほど酸化されやすいため,small dense LDLは容易に酸化されてマクロファージに取り込まれ,泡沫化を促進する。
また,通常のLDLの血中滞在時間は約2.5日だが,small dense LDLは約3.9日と長く,酸化されやすい性質と相まって,動脈硬化惹起性が高い。
■血清LDL-C値が同一であっても,LDL粒子の数や組成は同様とは限らない。
粒子数が多い場合には相対的にsmall dense LDLの数が多くなり,動脈硬化惹起性が高くなる。
米国のFramingham研究では,メタボリックシンドロームの構成要素の保有数が多いほど,サイズの小さいsmall LDLの量が増え,それに伴ってHDLは低下し,トリグリセライド(TG)は上昇していることが明らかになった。
また,冠動脈疾患では重症度が高い群ほど,また頸動脈内膜-中膜複合体厚値が肥厚した症例ほどsmall dense LDLの量が多いことがわかっている。
食品由来の酸化(劣化)コレステロールが動脈硬化を進展させる
■small dense LDLのような内因性の変性脂質だけではなく,食事により体内に取り込まれる劣化変性した外因性の酸化(劣化)コレステロールも,動脈硬化の進展に大きく影響することがわかっている。
動物モデル(ウサギ)では,酸化(劣化)コレステロールを含んだ食餌を負荷すると動脈硬化が進展することが確認されている。酸化(劣化)コレステロールは,通常のコレステロールと同様に小腸のNiemann-Pick C1 Like 1を介して吸収されカイロミクロンに含まれて血中に放出される。
カイロミクロン中の酸化(劣化)コレステロールは,おもにコレステロールエステル転送蛋白(CETP)によってVLDL,LDL,HDLといった内因性リポ蛋白へ転送され,また酸化ストレスを上昇させることで動脈硬化を進展させると考えられる。
■小腸からのコレステロール吸収を阻害する脂質改善薬エゼチミブは,通常のコレステロールのみならずこの酸化(劣化)コレステロールの吸収も阻害することが示されている(図1)。
コレステロール吸収の亢進が心血管イベントのリスク因子であることが示唆されていることからも,エゼチミブによるコレステロール吸収阻害の臨床的な意義は大きいと考えられる。

エゼチミブはsmall dense LDLを効率的に低下させる
エゼチミブは単独およびスタチンとの併用療法においてLDL-C値を良好に低下させることが知られているが,血清脂質値を改善するとともにLDL粒子の組成にも好影響を与え,small dense LDLを良好に減少させることが示されている(図2)。

■高LDL-C血症患者39例を対象にエゼチミブの単独あるいはスタチンへの追加投与がlarge LDL,small dense LDLなど血清脂質分画別のコレステロールに及ぼす影響を検討した。
small dense LDL分画はヘパリンマグネシウム沈殿法を用いて定量した。その結果,LDLでは単独例(18例)で17%,スタチンへの追加併用例(21例)で25%低下し,small dense LDLでは単独例で28%,併用例で34%低下した。
TGやレムナント様リポ蛋白コレステロールについても両群で低下が認められた。
また,large LDLやsmall dense LDLでの低下率は,冠動脈疾患既往例のほうが大きかった。
なお,エゼチミブ投与前の吸収マーカーとlarge LDL,small dense LDLでの低下率には相関が認められ,吸収亢進例ほど低下率は大きくなることが示された。
■こうした知見を総合すると,小腸からのコレステロール吸収を選択的に阻害するエゼチミブは,動脈硬化惹起性の高いsmall dense LDLを効率的に低下させ,動脈硬化の進展を抑制しうると考えられる。
Discussion
冠動脈疾患のリスク因子としてのsmall dense LDLをターゲットとした治療戦略
small dense LDLが高値を示す病態とは
池脇
木庭先生からsmall dense LDLの特徴,エゼチミブがsmall dense LDLに及ぼす影響についてお話いただきました。
脂質異常症の病態について研究が進みつつある今こそ,small dense LDLの臨床的意義を考えるよい機会だと思います。
まず,冠動脈疾患との関連性をどのようにお考えですか。
綾織
冠動脈疾患とLDLとの関連性は広く知られていますが,日本人の場合にはTG高値,HDL低値の影響も大きく,これらを背景にしたsmall dense LDL高値例が多いと思います。
池脇
small dense LDL粒子はどのような過程で生成されるのでしょうか。
木庭
肝臓から放出されたVLDLが代謝されてレムナントになり,CETPの働きによって脂質の交換が行われ,TGリッチとなったLDLが肝性リパーゼによって代謝されて生じるのがsmall dense LDLです。
池脇
生成過程を考えると,TG代謝やインスリン抵抗性の影響を受けやすいことがわかりますね。
木庭
確かにインスリン抵抗性が存在すると,VLDLが増え,またsmall dense LDLが高値になります。
エゼチミブがsmall dense LDLを効率的に低下させる機序
池脇
木庭先生にご提示いただいたデータでは,エゼチミブによるsmall dense LDL低下率は,large LDL低下率を上回っていました。
山川
私の検討でも,LDLはスタチンのほうが下がるのに,small dense LDLの低下率はエゼチミブの方が良好でした。
井上
木庭先生のご提示いただいた成績からすると,エゼチミブは特にサイズの小さいLDLを低下させる作用が強いと思います。
綾織
フィブラートもsmall dense LDLを低下させますが,違いは何でしょうか。
池脇
フィブラートはlarge LDLを増やす傾向がありますから,それがエゼチミブとの違いだと思います。
エゼチミブが特にsmall dense LDLを低下させるのは,どのような機序によるものでしょうか。
木庭
肝臓のLDL受容体の発現を亢進させるだけではなく,VLDLレムナントのようなTGリッチリポ蛋白の代謝を促進するためだと考えられます。
井上
エゼチミブ投与により,小腸から吸収されるコレステロール量が減りますから,肝臓に輸送されるカイロミクロンの組成も量も変化しているはずです。
それが肝臓から放出されるVLDLの組成や量に影響して,結果的に,small dense LDLの血中濃度に関与していると思います。
山川
エゼチミブを投与すると,VLDLの産生と代謝のバランスはどのように変化しますか。
池脇
スタチンにエゼチミブを併用するとVLDLの異化が著しく促進されることが分かっています。
VLDLの産生はほとんど変わらないのですが,カイロミクロンの産生は強く抑制されます。
外因性のリポ蛋白であるカイロミクロンの産生抑制,内因性のリポ蛋白であるVLDLの異化促進が相加的に作用してsmall dense LDLは良好に低下するのだと考えられます。
木庭
また,スタチン治療ではコレステロール合成抑制の代償としてコレステロール吸収が亢進することが報告されていますが,エゼチミブを併用することによりコレステロールの合成と吸収を同時に阻害することが可能となり,強力なLDL低下効果が得られることが確認されています(図3)。

インスリン抵抗性を基盤とした病態にエゼチミブは効果的
池脇
small dense LDLとコレステロール吸収亢進,代謝異常との関連性をどのようにお考えですか。
木庭
コレステロール吸収量の増加は,TG高値,HDL低値と関連していると思われます。
池脇
そうすると,コレステロール吸収が亢進した方は,small dense LDLも高く,インスリン抵抗性も増悪している可能性がありますね。そして,コレステロール吸収の阻害は,これらの病態に好影響を及ぼすということですね。
山川
エゼチミブは肥満モデルでインスリン抵抗性や糖代謝に好影響を及ぼしたという報告がありますので,今後の臨床的な検討が待たれます。
池脇
エゼチミブはHDLにも影響を及ぼしますか。
綾織
エゼチミブはHDL粒子のサイズを大きくするようです。
HDLサイズが小さくなるとコレステロールを細胞から引き抜きやすいと考えられますが,疫学データをみると,HDLサイズが大きい方が予後は良好です。
池脇
small dense LDLの観点からエゼチミブのよい適応となるのはどのような患者でしょうか。
木庭
メタボリックシンドローム,2型糖尿病,冠動脈疾患などはsmall dense LDLが高値になりやすいですから,エゼチミブのよい適応になります注)。
井上
その他,カイロミクロンの産生・合成を抑制するエゼチミブ投与は,肝へのカイロミクロンおよびカイロミクロンレムナントの流入も減少させたり,また,内蔵脂肪への脂肪の流入も減少させることが考えられ,長期のエゼチミブの投与は,内臓脂肪型肥満,脂肪肝を伴うような病態の方,さらには,small dense LDLが高い家族性複合型高脂血症の患者さんにも適していると思います。
池脇
基盤にインスリン抵抗性があるような病態の方が該当しそうですね。
山川
腎不全例でもsmall dense LDLは高値になります。
腎機能に影響を及ぼさないという観点からもエゼチミブはよい選択肢になると思います。
井上
その他に,食事療法が上手くいかない方もエゼチミブの効果が期待できますね。
出典 Medical Tribune 2010.4.22
版権 メディカル・トリビューン