戯れ言たれる侏儒
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J-METHOD study

戯れ言たれる侏儒 / 2010.05.11 05:19 / 推薦数 : 1

近年,わが国でもASOが急増しています。

このASOについては,欧米のエビデンスは数多く発表されていますが,日本人における疫学データは集積されてきませんでした。

そんな中で、わが国で初めて多施設を対象にしたthe Japan Medication Therapy for Peripheral Arterial Disease(J-METHOD) studyが行われました。

きょうは、東京大学大学院外科学専攻血管外科学准教授の宮田哲郎先生へのインタビュー記事(質疑応答形式)で勉強しました。

 

J-METHOD studyから見る日本人閉塞性動脈硬化症(ASO)患者における血管イベントリスク
Q 前向きコホート研究J-METHOD studyで明らかとなった日本人ASO患者の特徴をご解説ください。
A 日本人においてもASO患者の予後が不良であることが再認識されました。
■近年,高齢化や糖尿病・透析患者の急増に伴い,ASO患者数は増加の一途をたどっています。
ASOが進行すると,下肢切断に至るだけでなく,血管イベントにより生命予後が不良であることから,適切な治療が望まれます。昨年末にわが国初の末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドラインが刊行されました。
これまで長らく国際的なガイドラインとして用いてきたTASC(Trans-Atlantic Inter-Society Consensus)IIはおもに欧米のエビデンスに基づき作成されているため,日本における疫学データの集積がますます求められています。
そこで,わが国で初めて多施設でASO患者を対象に血管イベント発生率を調査したのが,J-METHOD studyです1)。

■本研究では,日本人ASO患者を対象に,患者背景や合併症,薬物治療が心血管イベントの発生に与える影響について検討されました。

■ASO患者における合併症は,高血圧症,糖尿病,脂質異常症といった生活習慣病の頻度が高く,また虚血性心疾患,脳血管障害,腎障害も併存しているという結果であり,世界44か国を対象にしたREACHレジストリー*での日本人のデータと似た分布でした2)。
*末梢動脈疾患,冠動脈疾患,脳血管障害の各既往群,または年齢,喫煙などのアテローム血栓症リスクを3つ以上有する群を対象にした国際的な前向き観察研究

■一方,2.6年の平均追跡期間中,血管イベント発生率は,心血管死が6.3%,心疾患が11.3%,脳疾患が7.0%,下肢イベントが16.9%でした。
全死亡率14.6%のうち心血管死による死亡が約半数を占め,欧米のデータと同様の傾向が示されました。

■日本でも生命予後の改善を図ることの重要性が,あらためて認識されたと言えます。

*末梢動脈疾患,冠動脈疾患,脳血管障害の各既往群,または年齢,喫煙などのアテローム血栓症リスクを3つ以上有する群を対象にした国際的な前向き観察研究


Q ASO患者において心血管死の発生を増加させる因子についてお教えください。
A 心血管死の増加に影響を及ぼす因子は年齢(75歳以上),虚血性心疾患,Fontaine分類で,より集中的に医学介入をすべき対象が明確になりました。
■J-METHOD studyで血管外科医として注目した点は,Fontaine分類が心血管死の危険因子の1つとして,科学的に明らかになったことです。
下肢重症度分類であるFontaine分類が進行すると,全身の動脈における血管病変も悪化し,予後の改善が難しくなると考えられてきました。
今回,心血管死の増加に影響を及ぼす因子として,Fontaine分類に加えて年齢(75歳以上),虚血性心疾患の3項目が挙げられ(図2),日本人ASO患者において,心血管死の高リスク群の抽出が可能になった有意義な結果であり,これら危険因子も考慮した治療が必要になると考えられます。

 

 

Q ASO患者における薬物療法についてお教えください。
A 下肢の冷感症状の改善のみならず,全身の血管イベントを抑制する観点から,ベラプロストは有用な薬剤であると考えています。
■J-METHOD studyでは,追跡期間を通して,ベラプロスト,シロスタゾール,アスピリンの3剤が高頻度で使用されていました。また,虚血性心疾患などの既往患者ではアスピリンとベラプロストの投与率が高いなど,合併症ごとの薬剤選択に違いが見られました。

■ASOは,歩行が困難になったり,下肢が壊死して切断に至るなど,ASO症状によるQOLの低下を防ぐことと,ASO患者の生命予後を伸ばすという2つを目標に治療します。

■プロスタサイクリン(PGI2)誘導体であるベラプロストナトリウム(ドルナー®)は,血管拡張作用に加え,抗血小板作用,血管平滑筋増殖抑制作用などを有し,ASO患者の下肢虚血症状の1つである冷感の改善効果が報告されています。
また,ベラプロストは全身の血管イベントを抑制することがメタ解析で明らかになっているほか,日々の臨床において副作用が少ない印象を持っています。

■患者さん個々の治療効果や副作用などを検討したうえで薬剤を投与していることが,J-METHOD studyでの使用薬剤の頻度の違いに反映されたと言えます。
ASOの治療は長期にわたりますので,私も特に心疾患・腎疾患などの合併症がある場合,心臓への影響,薬剤の代謝などを考慮して治療薬を選択しています。

1)Shigematsu H, et al. Internationalangiology 2010; 29 Suppl.1: 2-13
2)Bhatt DL, et al. JAMA 2006; 295: 180-189

出典 Medical Tribune 2010.4.22
版権 メディカルトリビューン社

 

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