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兵庫県立尼崎病院の佐藤 幸人循環器内科部長による「ASCOT試験サブ解析」の解説で勉強しました。
左室拡張能の改善は降圧薬により異なる
組織ドプラー法を用いたASCOT試験サブ解析から
研究の背景:拡張性心不全の予後改善,心不全状態形成後では困難
■高齢の女性に多く,心房細動や高血圧の合併が病態を悪化させると推測される拡張障害または収縮能保持心不全であるが,その予後は収縮能が低下した心不全と同等に悪いことが知られている。
収縮能が低下した心不全の治療はβ遮断薬,ACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を中心とした薬剤により予後の改善が時代とともに見られるが,拡張性心不全に関しては時代変化を見ても予後に改善が見られず,決定的な治療法に欠ける可能性がある。
■収縮能が保持された心不全に対する介入試験としてはCHARM-Preserved(カンデサルタン),I-PRESERVE試験(イルベサルタン)がある。
しかし,一度心不全状態が形成されると治療介入は困難な可能性が高く,カンデサルタンに心不全による入院の抑制効果が認められた程度しか有効性が報告されていない。
■では,高血圧から心不全へ至る過程での介入ではどうだろうか。
高血圧患者を対象とした場合,心肥大の退縮効果はACE阻害薬,ARBが大きいことが知られている(ただし大規模な試験はない)。
また,最近は高血圧対象の多施設試験で新規心不全発症の抑制効果が確認されているものがあるが,これらの新規発症心不全のなかには,当然,拡張性心不全が多く含まれていると予想される。
■今回,ASCOT試験※のサブ解析であるが,高血圧患者を対象に拡張能を検討した研究が報告されたので紹介する(J Am Coll Cardiol 2010; 55: 1875-1881)。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20413040
#研究のポイント:β遮断薬よりもCa拮抗薬のほうがE’,BNPの改善が大きい
■β遮断薬アテノロールベース治療群411例と,Ca拮抗薬アムロジピンベース治療群413例を対象に,通常の血流ドプラー所見と組織ドプラー所見とを用いて拡張能の改善を1年後に評価した。
収縮期血圧はそれぞれ137±17mmHg,136±15mmHgと両群間に有意差は認められなかった。
■しかし,ドプラー法による左室拡張能の評価指標であるE', E/E'比,およびB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)はアムロジピンベース治療群で有意に改善していた。
E/A比はアテノロールベース治療群で有意に改善したが,E/A比,E/E’比は心拍数に影響を受けるため,年齢,性別,左室重量係数(LVMI),収縮期血圧,心拍数を用いて順次補正していくとE/A比,E/E'比については両群間の有意差は消失した。
一方,E',BNPについては,最終補正後もアムロジピンベース治療群のほうがアテノロールベース治療群よりも有意に改善していた。
佐藤先生の考察:高血圧段階からの介入が有用,評価には組織ドプラー法導入を
■高血圧患者を対象とした多施設試験において,初めて組織ドプラー法によって拡張能を検討した試験である。
降圧,心肥大の改善とは独立して,拡張能がアムロジピンベース治療群で改善した。
■本試験から得られる重要なことは2つある。1つは,高血圧という心不全の前段階から介入すると,拡張能改善が認められ,新規心不全発症を抑制できる可能性があるということ。
もう1つは,従来拡張能の指標として用いられているE/A比は,心拍数の影響を受けるため不正確であり,組織ドプラー法の導入などによる正確な拡張能の評価が求められることである。
※ASCOT試験
高血圧患者約2万例を対象に,「β遮断薬アテノロール+降圧利尿薬」をベースにした群と,「Ca拮抗薬アムロジピン+ACE阻害薬」をベースにした群に割り付けたASCOT-BPLA試験(Lancet 2005; 366: 895-906)と,そのうち総コレステロール値が250mg/dL以下の患者1万症例を,プラセボ群とアトルバスタチン10mg/日群に割り付けたASCOT-LLA試験として報告されている(Lancet 2003; 361: 1149-1158)。
ASCOT-BPLA試験では,アムロジピンベース群のほうが,アテノロールベース群よりも2次エンドポイントである脳梗塞,冠動脈イベント,総死亡が有意に低値であり,新規糖尿病発症も低頻度であった。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/16154016
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/12686036
出典 MT pro 2010.5.5
版権 メディカルトリビューン社