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低体温療法は半世紀以上の歴史がある古い治療法だそうです。
私は医学部卒業後、数十年経つ開業医です。
今からして思えばポリクリで外科の開心術を見学した際に低体温療法を採用していました。
私は卒業後は大学には残らず、出身地に戻って医師のスタートを切りました。
10年近く前のことです。
ショットバーで偶々隣に座った客が心臓外科医でした。
意気投合していろんな話をしました。
その先生がまだ若い頃に、低体温療法を利用した開心術の勉強に私の出身大学に行ったことがあるという話をしていました。
その先生は今や某大学の心臓外科の教授になっています。
以上は手術の際の低体温療法の話です。
最近では、低体温療法によって心肺停止蘇生後などの神経学的予後が改善するエビデンスが示され、救急部門を中心に実施する施設が増えているようです。
きょうは「心肺蘇生と低体温療法」の記事で勉強しました。
#蘇る低体温療法
#心肺停止蘇生後の患者への利用が広がる
■2009年、神奈川県立こども医療センターでは、新型インフルエンザで脳症を発症した小児に対し、薬物療法などに加えて積極的に低体温療法を行った。
低体温療法は、厚生労働省のインフルエンザ脳症研究班が作成した「インフルエンザ脳症ガイドライン改訂版」で、有効性を期待できる治療法の一つとして位置付けられている。
■同センターでは、転院してきた12人のうち、髄液検査や脳波、MRI検査などで重症の脳症と診断され、重篤な後遺症が残ることが予想された5人に低体温療法を実施。
最終的に5人とも後遺症なく退院した。
#1970年代には一時停滞
新型インフルエンザの大流行で、注目を集めた低体温療法は、1950年代から実施され、国内外で様々な疾患の治療に臨床応用されてきた。
当初は体温が低いほど有効だと考えられていたため、氷水や冷却ブランケットで患者の体温を20℃台にまで下げる方法が取られた。
しかし、不整脈や出血傾向、感染症、心機能低下などの合併症が問題となり、70年代に入ると低体温療法は一時停滞する。
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図1 低体温療法の冷却法については分かっていないことが多い
成人の心肺停止蘇生後に対する低体温療法では、鎮痛鎮静剤、人工呼吸に加え、必要に応じて筋弛緩剤の投与、輸血、血糖コントロールなどを行う。
低体温療法の有効性が示されたとはいえ、冷却法は確立していない。
冷却法に関する疑問点を解決すべく、国内ではJ-PULSE hypothermia registry(心原性心停止蘇生後の低体温療法に関する多施設共同登録研究)が実施中だ。
■80年代になると、33〜34℃に体温を下げるだけで脳を保護できることが動物実験で示され、低体温療法は再び脚光を浴びる。軽度の低体温療法であれば、従来ほど合併症が起きないことも分かり、頭部外傷や心肺停止蘇生後、脳梗塞などの患者の治療に使われてきた。
■低体温療法による脳保護効果のメカニズムは完全には解明されていない。
これまでの研究から、脳代謝を抑えたり、脳温上昇やフリーラジカル産生を抑制したり、神経細胞死を防ぐなど、複合的なメカニズムで脳を保護して神経学的な予後を改善すると考えられている。
■2000年以降、一部の疾患に対する低体温療法の有効性がランダム化比較試験で示された。
その一つが心肺停止蘇生後も昏睡状態が続く成人への効果だ。
02年、New England Journal of Medicine誌に低体温療法の有効性を示す二つの論文が発表された。
論文の一つである
The Hypothermia After Cardiac Arrest Study Group
が実施した臨床試験は以下のようなものだ。
■院外において心室細動(VF)で心停止し、心拍が再開しても昏睡状態にある患者を、低体温療法を実施する群としない群に振り分け、6カ月後の神経学的予後を比較した。
低体温療法は、患者の直腸温を32〜34℃まで下げ、24時間冷却。その結果、実施群では136人中75人(55%)で神経学的予後が良好だったのに対し、実施しない群では137人中54人(39%)にとどまった。
■これらの結果を受け、国際蘇生連絡協議会は国際コンセンサス2005において、初回心電図がVFまたは心室頻拍を示した心停止で、心拍再開後も昏睡状態にある成人に対し、低体温療法を実施することをクラスIIaで推奨した(表1)。
今秋発表される国際コンセンサス2010では、低体温療法の有用性がさらに強調されるのではないかという見方もある。
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■国内では自動体外式除細動器(AED)の設置が増え、市民が積極的に蘇生にかかわるようになったことで、医療機関外において心原性の心停止に陥った患者の1カ月後の生存率が伸びている。
ただし、生存した患者のうち、30日後に神経学的予後が良好で、社会復帰に至るのは半数程度。
これから目指すべきは、心肺蘇生ではなく心脳蘇生だ、ともいえる。
#国内では登録研究が進行中
■課題は、低体温療法の冷却法が確立していないことだ。
体温が低いほど合併症を起こしやすいとは分かっているが、最適な深部(直腸や咽頭など)体温は分かっていない。
国内では、34℃で冷却するところが多いが、蘇生後はそもそも全身が発熱するため、36℃で維持するだけで有効な可能性もある、と専門家はいう。
■冷却用の機器も、多様化している。
体表を冷やす冷却ブランケットだけでなく、近年は冷却できる熱伝導パット(写真1)や、体外で循環させた血液を冷却する機器(写真2)が登場。
カテーテルを挿入して血液を直接冷やす機器も開発されている。冷却時間も、24時間以下という病院から48時間以上まで様々だ。
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■適応基準も課題の一つ。
低体温療法を実施して神経学的予後が良好なのは、心肺停止から30分以内に蘇生した患者が多い。
どの患者に低体温療法を行うか、その基準を決めることも必要だ。
■最適な冷却法を検討するため、厚労省の研究班は多施設登録研究を実施中。
05〜09年、心原性で心停止し、心拍再開後も昏睡状態が続いて低体温療法を施行した患者が対象だ。
四百数十例が登録され、今秋、最終報告をまとめる。
#循環器医への浸透も課題
■試行錯誤の中、実施されている低体温療法。
ただ、積極的に治療を実施している病院の中には、さらに早期から低体温療法を始めるところもある。
駿河台日本大学病院では、自己心拍が再開した後も昏睡状態にある患者ばかりでなく、自己心拍が再開しない患者に対しても低体温療法を実施している。
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■こうした患者には、低体温療法を行い、経皮的心肺補助装置(PCPS)による体外循環で自己心拍を再開させる。
必要な患者には、すぐに冠動脈インターベンションなどの冠再灌流療法も実施する(表2)。
同病院の臨床研究で、心拍再開前でもより早期から低体温療法を始めることが、患者の神経学的予後を改善させると分かったためだ。
PCPSと組み合わせて、できるだけ早期から低体温療法を実施することで、患者の社会復帰率を底上げできる。
■日本循環器学会が09年に実施した調査では、全国の救急救命センター210カ所のうち、低体温療法を積極的または時々実施している施設は80%強に上る。
一方、冠疾患集中治療室(CCU)を持つなど658カ所の同学会認定病院では、半数にとどまることが分かっている。
国内の循環器医は経皮的冠動脈形成術(PTCA)やPCPSの扱いには慣れているが、低体温療法にはまだ慣れていない。
心肺停止患者の社会復帰率を上げるためにも、積極的に低体温療法に取り組む必要がありそうだ。
出典 NM online 2010.5.7
版権 日経BP社
<関連サイト>
脳低温療法
http://ja.wikipedia.org/wiki/脳低温療法
低体温療法Up to date
http://imimed.jp/temperature/index.html
蘇生後の低体温療法
http://www.dryumi.com/?p=342
(「冷やした静脈点滴、胃管を用いた冷却、氷バッグ、そして扇風機を用いた低コストな方法」が紹介されています)
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