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開業医は「風邪医者」とも言われるように抗生剤を外来で処方する機会が多くあります。
その中でもクラリスロマイシン(CAM)は特に使用頻度の高い薬剤です。
咳が出る患者にはマイコプラズマ感染症も考えファーストチョイスといってもいい抗生剤です。
今日は、カルシウム拮抗剤(CCB)を服用中の患者にCAMを処方すると、下肢浮腫が発現したり過降圧の可能性があるという話題です。
■ニフェジピンとクラリスロマイシンの相互作用が下肢浮腫発現の誘因になりうる。
●ニフェジピンは主にCYP3A4で代謝される薬物であり、クラリスロマイシンはCYP3A4阻害作用を有することから、併用によってニフェジピンの血中濃度が上昇する可能性が考えられる(その程度については報告がなく不明である)。
(下肢浮腫の報告はないが、)両者の相互作用による血圧低下、頻脈、除脈等が報告されている。
●ニフェジピンをはじめとするカルシウム拮抗薬の副作用として、下肢浮腫が報告されている。
●ニフェジピンとイトラコナゾール(CYP3A4阻害薬)との併用で下肢浮腫が出現した報告がある。
→以上から、両者の相互作用によって、ニフェジピンによる下肢浮腫を誘発した可能性が考えられる。
■下肢浮腫発現のリスクファクターを複数もつ患者は、クラリスロマイシンを服用することで、ニフェジピンとクラリスロマイシンの相互作用を介してニフェジピンによる作用増強が起こり、下肢浮腫が発現する可能性が考察ある。
→下肢浮腫のリスクファクターを有する患者では、クラリスロマイシンとニフェジピンの相互作用に注意を払うべきである。
■クラリスロマイシンの副作用としても下肢浮腫(頻度不明)が添付文書に記載されている。 したがって、クラリスロマイシン自身も下肢浮腫のリスクファクターである。
<参考 その1>
クラリス錠添付文書(併用注意の項)
薬剤名等 カルシウム拮抗剤
CYP 3A4 で代謝される薬剤 ニフェジピン ベラパミル塩酸塩等
機序・危険因子
本剤の CYP3A4 に対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻 害され、それらの血中濃度が上昇する可能性がある。
<参考 その2>
ニフェジピンなどのカルシウム拮抗薬は下肢浮腫の副作用が見られ(日本では少ないとされているが、欧米では20〜30%)、しかも一般的には投与後長期間継続的に服用した後、徐々に出現してくることが多い。
発現機序は末梢動脈における血管拡張作用が静脈での作用に比べて強いため、細動脈の拡張に細静脈の拡張が伴わず、細静脈が拡張することなく細動脈が拡張し、毛細管内圧が上昇するためと考えられている。
<参考 その3>
ニフェジピンは主にCYP3A4で代謝される薬物であり、クラリスロマイシンはCYP3A4阻害作用を有することから、併用によってニフェジピンの血中濃度が上昇して下肢浮腫が惹起する可能性は十分に考えられる。
実際、クラリスロマイシンと同じくCYP3A4阻害作用を有するイトラコナゾール(わが国での商品名:イトリゾールカプセルなど)とニフェジピンの相互作用で足首の浮腫が惹起したとする症例報告がある。
出典 NM online 2010.4.6
版権 日経BP社
昨日届いた「日本医事新報」に興味深い記事がありました。
J-CLEAR理事長、東京都健康長寿医療センター副院長の桑島先生(P50〜51)と日本大学医学部内科学系腎臓高血圧内分泌分野准教授の上野高浩先生(P52〜P55)が書かれています。
桑島先生は大血管・細小血管での寄与因子の違い、上野先生は動脈の基本構造の差異(弾性型動脈、筋型動脈など)や臓器別血管(脳血管、冠動脈、腎血管、大血管など)について解説されています。
それぞれの動脈の特性を理解することは、数多く出ている(出て来る)大規模臨床試験を理解するためにも非常に重要なことと常々考えていました。
常々知りたかったことが明快に書かれていて大変勉強になりました。
■最近の疫学研究や大規模臨床研究は、これらのリスク因子が脳・心・腎の血管障害に及ぼす影響は各臓器で一様に同じでないことを明らかにしている。
例えば久山町研究では、収縮期血圧120mmHg、拡張期血圧80mmHgを最低ポイントとして血圧値上昇とともに、脳卒中発症率は段階的に増加している。
一方、メタ解析の成績によると、心筋梗塞と血圧の関連性は確かに見られるものの、脳卒中に比べると関連性はよわいことが示されている。(P50)
Mac Mahon S,etal:Lancet 335:765:1990
■動脈別特性
○大動脈、総頚動脈、総腸骨動脈などの弾性動脈・・・中膜に弾性繊維が豊富に保有されており、心臓から拍出される高圧に耐えうる構造となっている。
○冠動脈や内頚動脈などの筋性動脈は中膜の平滑筋細胞が発達し、抵抗血管として血圧に対して調節機能を有している反面、脂質異常の影響を受けやすい。
○頭蓋内動脈・・・血管壁が薄く、かつ弾性繊維は内弾性板のみに集中しているために、高血圧の影響を直接的に受けやすい。 (P51)
■多くのリスク因子が重複している高齢者を中心として今日の診療では、リスク因子の重みを考慮した包括的な血管マネージメントが必要とされる。(血管病の包括的管理こそ重要)(P51)
出典 日本医事新報 No.4492 2010.5.29 P50-55
版権 日本医事新報社
<自遊時間>
昨日、某社の講演会に出かけました。
全国規模の講演会だったのですが、要するにその製薬メーカーが発売しているPPIとスタチンの啓蒙が目的でした。
開業医を対象にしたもので、GERDと動脈硬化がテーマでいわば異種格闘技的なものでした。

出席した理由は、近々取り壊される予定のグランドプリンスホテル赤坂が会場であったことと、(主催者には申し訳ないのですが)途中でエスケープして品川のホテルで大学時代の友人と会食する目的があったことの二つでした。
4月に某公立大病院の院長に就任した部活仲間を祝福するという食事会でした。
一杯飲めば数十年前にタイムスリップします。
なんの蟠(わだかま)りもないクラス仲間はいいもんです。
気づけばそのレストランで最後の客に。
品川駅で再会を誓い合って別れました。

(こんな素敵な建物をどうして、またどうやって壊すのでしょうか)

(このホテルの南側の品川プリンスにつながる坂道は、なかなかいい感じです。都心部は坂が多く意外と緑も多いのに感心します。)
(いずれも2010.5.29夕方撮影)
この品川駅前から高輪3丁目と高輪4丁目を西に向けて直線に伸びる坂道は柘榴(ざくろ)坂といいます。
柘榴坂(港区高輪3丁目・4丁目の間)
http://nanashi-nakaji.seesaa.net/article/127752947.html
な、なんとこのホテルも今年9月末で営業休止ということがわかりました。品川駅前の京品ホテルに続く閉鎖のニュースです。
ホテルパシフィック東京が2010年に閉鎖
http://nanashi-nakaji.seesaa.net/article/116212557.html
その他
「葦の髄」メモ帖 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。
経カテーテル大動脈弁の1年成績: SOURCEレジストリー
SOURCEレジストリーのコホート1の1年追跡より、エドワーズライフサイエンスのSapien経カテーテル大動脈弁が、過去に報告されているデータと比較し、良好な生存率を示したことが、イギリス、Guys and St. Thomas’ NHS Foundation TrustのMartin Thomas氏により、EuroPCR 2010のHot Lineセッションで発表された。
本レジストリーでは、Sapien弁が商業化されて以降の2007年11月から2009年1月にヨーロッパの32施設においてSapien弁による治療を受けた連続する外科的手術に高リスクな大動脈弁狭窄症患者1,038人を登録した。
1年の生存率は全体では76.1%、経心尖部アプローチ(TA)群で72.1%、経大腿動脈アプローチ(TF)群で81.1%が記録された。多変量解析では1年の死亡の予測因子として、TA群ではロジスティックEuroScore、腎不全、頸動脈狭窄、腎疾患が確認され、EuroScoreが最も強力な予測因子であった。
一方、TF群ではNYHAクラスIV、腎不全、脂質異常/高コレステロール血症、全身性高血圧、喫煙、僧帽弁形成術、凝固障害が認められ、TF群ではロジスティックEuroScoreは予測因子とはならなかった。
また1年の生存率とEuroScoreとの関連性を検証すると、TA群ではEuroScore>40で59.2%、20-40で73.5%、<20で78.4%、TF群では、>40で72.5%、20-40で83.5%、<20で80.9%が記録され、低リスク患者では両アプローチの生存率は類似していた。
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=pcr2010&no=672
実臨床におけるNoboriステントの成績: NOBORI 2試験
NOBORI 2試験の1年追跡より、生体吸収性ポリマーを使用したNoboriバイオリムスA9溶出ステントは、off-labelの患者群に対しても良好な成績を示したことが、イタリア、Ospedale Maggiore PoliclinicoのGian Battista Danzi氏により、EuroPCR 2010のHot Lineセッションで発表された。
本試験では、ヨーロッパとアジアの125施設からNoboriステントの留置を受けた連続する3,068人を登録した。
1年追跡が97%で完了し、全体でのTLFは3.6%、on-labelでの877人では1.5%、off-labelでの2,192人では4.5%と、off-labelでの使用においても良好な成績が示され、ステント血栓症の発症率は、それぞれ0.6%、0.4%、0.7%と、on-labelとoff-labelでの差は見られなかった。
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=pcr2010&no=673
Nevoシロリムス溶出ステント vs Taxus Liberteステント: NEVO RES-I試験1年追跡
EVO RES-I試験より、リザーバーのあるコバルトクロムのステントをプラットフォームに生体吸収性ポリマーからシロリムスを溶出するNevoステントは1年追跡においてステント血栓症が確認されなかったことが、ブラジル、Institute Dante Pazzanese of CardiologyのAlexandre Abizaid氏により、EuroPCR 2010のHot Lineセッションで発表された。
本試験では、世界の40施設からシングルデノボの冠動脈病変を有する患者を登録し、Nevoステント(302人)、又はTaxus Liberteステント(192人)による治療群に無作為に割り付けた。
主要評価項目の6ヶ月のステント内late lossはNevo群で0.13mm、Taxus群で0.36mmと有意差が確認されている(p<0.001)。
1年追跡では、いずれも両群に有意差はないものの、MACEの割合がTaxus群の10.8%に対しNevo群では6.1%と低く、死亡/MIは、それぞれ5.4%と2.5%、TLRは5.9%と3.6%であり、Nevo群では、6ヶ月から1年の間に死亡とMIの発症は確認されなかった。また、糖尿病患者においても1年のMACEがTaxus群で12.8%、Nevo群で8.3%(p=0.713)と、非糖尿病患者同様(それぞれ、10.2%と5.6%)、Nevo群で低い傾向が示された。
ステント血栓症については、Nevo群では0、Taxus群では、180日にprobableの血栓症が1例、101日にpossibleの血栓症が1例記録された。
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=pcr2010&no=674
糖尿病患者におけるXience Vエベロリムス溶出ステント vs Taxus Liberteステント: SPIRIT Ⅴ糖尿病試験
SPIRIT Ⅴ糖尿病試験より、Xience Vステントの9ヶ月追跡におけるステント内late lossは、Taxus Liberteステントと比較し有意に小さく、1年までにステント血栓症は確認されなかったことが、ドイツ、International Heart Center Rhein-RuhrのEberhard Grube氏により、EuroPCR 2010のHot Lineセッションで発表された。
本試験では、ヨーロッパ、イスラエル、タイ、マレーシアの32施設から糖尿病患者324人を登録し、Xience Vステント(218人)、又はTaxus Liberteステント(106人)による治療群に無作為に割り付けた。
主要評価項目である270日のステント内late lossは、Xience V群で0.19±0.37mm、Taxus群で0.39±0.49mm(p=0.0001)であり、1年の心臓死/MIの発症率も、Xience V群で3.7%、Taxus群で9.6%と有意差が確認された(p=0.04)。総死亡は、それぞれ1.4%と2.9%(p=0.40)、MIは3.3%と8.7%(p=0.05)、TLRは11.2%と6.7%(p=0.23)が記録された。
また、1年追跡でのステント血栓症(ARC定義のdefinite/probable)は、Xience V群では0であり、Taxus群では30日までが0.9%、30日から1年で1.0%であった。
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=pcr2010&no=675
Resoluteゾタロリムス溶出ステント vs Xience Vエベロリムス溶出ステント: RESOLUTE All Comers試験
RESOLUTE All Comers試験より、複雑疾患を持つ患者群においてResoluteゾタロリムス溶出ステントとXience Vエベロリムス溶出ステントは同等の成績を示したことが、オランダ、Thoraxcenter、Erasmus MCのPatrick Serruys氏により、EuroPCR 2010のHot Lineセッションで発表された。
本試験では、ヨーロッパの17施設から冠動脈病変を有する2,300人を登録し、無作為にResoluteステント、又はXience Vステントによる治療群に1,150 人ずつ割り付けた。
主要評価項目の1年のTLFは、Resolute群で8.2%、Xience V群で8.3%であり、Resoluteの非劣性が証明され(p<0.001、psup=0.92)、この結果は事前に設定されたいずれのサブグループにおいても一貫していた。
また、心臓死は、それぞれ1.3%と1.7%(p=0.61)、標的血管のMIは4.2%と4.1%(p=0.92)、虚血由来のTLRは3.9%と3.4%(p=0.50)といずれも差はなかった。
Definite/probableのステント血栓症は、急性がResolute群で0.4%、Xience V群で0.2%、亜急性が0.7%と0.4%、遅発性が0.6%と0.2%であり、いずれの時期においても類似していた。
13ヶ月の造影追跡でのステント内径狭窄率についても、Resolute群で21.7±14.4%、Xience V群で19.8±14.6%であり、非劣性が確認された(p=0.035)。
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=pcr2010&no=678
EuroPCRというのがあるそうです。
インターベンションを行ってみえる先生方には周知な学会でしょうが、写真で見る限りすごい熱気に包まれています。
今年はEuroPCR 2010としてパリで5月25日〜28日まで行われた(行われている)ということでホットな記事が目にとまりました。
一開業医には十分フォロー出来ません。
EuroPCR
世界最大級のインターベンションライブコースに12,000人が集まる
http://www.pcronline.com/
europcr.com
http://www.europcr.com/
過去3年間は会場がバルセロナで、パリでの開催は4年ぶりとなったということです。
「1983年にコースディレクターのJ. Marco氏がライブデモンストレーションコースを開催してから27年にわたって発展を続け、現在ではEAPCI(European Association of Percutaneous Cardiovascular Intervention)のオフィシャルコングレスとして、世界的なPCIコースとなっている」という解説があります。
https://www.tcross.co.jp/list.php?category=pcr2010ope
生体吸収性エベロリムス溶出ステント: ABSORBコホートB試験
ABSORBコホートB試験より、プラットフォームを改良した生体吸収性エベロリムス溶出ステントの6ヶ月のlate lossは0.19mmと、以前のプラットフォーム(0.44mm)と比較し、期待の持てる成績が示されたことが、オランダ、Thoraxcenter、Erasmus MCのPatrick Serruys氏により、EuroPCR 2010のHot Lineセッションで発表された。
本試験では、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドの12施設から100人を登録し、冠動脈病変に対し3.0X18mmのステント留置を行った。
グループ1の45人では6ヶ月と24ヶ月、グループ2の56人では12ヶ月と24ヶ月の追跡を実施する。
グループ1では6ヶ月で、42人でQCA、37人からIVUS、25人でOCTデータが得られた。
6ヶ月でのlate lossは近位部で0.07mm、ステント内で0.19mm、遠位部で0.07mmが記録された。
また、臨床追跡では、心臓死は0であり、30日までにMIが1例(2.2%)、30日から6ヶ月の間にTLRが1例(2.2%)で認められたものの、ステント血栓症は確認されなかった。
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=pcr2010&no=682
分岐部病変に対するBMS+Diorパクリタクセル溶出バルーン: DEBIUT試験
DEBIUT試験より、分岐部病変の本幹へのBMS留置と側枝へのDiorパクリタクセル溶出バルーンによる治療は期待の持てる成績が示されたことが、オランダ、University Medical Center of Utrecht のPieter R. Stella氏によりEuroPCR 2010のHot Lineセッションで発表された。
本試験では、オランダ、ベルギー、ドイツの4施設から冠動脈分岐部病変を持つ患者を登録し、Liberte BMS+POBA(BMS群)、Liberte BMS+Dior DEB(DEB群)、Taxus Liberte DES+POBA(DES群)の3群に無作為に割り付けた。DEB群ではDEBで、BMS群とDES群ではコーティングのないバルーンで、本幹と側枝に前拡張を行い、本幹へのステント留置後はコーティングのないバルーンでキッシングバルーンを行った。
6ヶ月追跡で、本幹近位部の再狭窄率は、BMS群で3.0%、DEB群で0、DES群で5.4%、本幹遠位部の再狭窄率は、18.2%、9.4%、13.5%と、有意差はないもののDEB群で低い傾向が確認された。Late lossは、本幹近位部では、それぞれ0.64mm、0.42mm、0.18mm、本幹遠位部では、0.1mm、-0.04mm、-0.11mmを記録した。側枝の再狭窄率は、それぞれ12.1%、6.3%、2.7%、late lossは0.23mm、0.11mm、-0.08mmと、有意差はないが、DES群で低い傾向が見られた。
また、6ヶ月のMACEはBMS群で27.0%、DEB群で15.0%、DES群で17.5%と同等の成績を示し、DEB群では2重抗血小板療法の継続は3ヶ月であったが、ステント血栓症は確認されなかった(DES群 2.5%)。
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=pcr2010&no=683
近位部塞栓保護デバイスを使用したCASの1年成績
近位部塞栓保護デバイス(MO.MA)を使用した頸動脈ステント術(CAS)の1年にわたる追跡で、良好な成績が確認されたことが、イタリア、Clinica MontevergineのEugenio Stabile氏により、EuroPCR 2010のHot Lineセッションにて発表された。
本レジストリーでは、イタリアのシングルセンターにおいて、2004年7月から2009年4月にCASを受けた連続する1,437人のうち、近位部塞栓保護デバイスを使用した1,300人から1,251人(96.2%)の1年成績を評価した。
30日の死亡/脳卒中の発症率は1.38%を記録しており、1年の追跡での死亡/脳卒中の発症率は全体では4%以下で、再狭窄率は通常の後拡張を行った群では4/460人確認されたのに対し、積極的な後拡張を行った群では0/840人と有意に低いことが示された(p<0.05)。
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=pcr2010&no=681
Zilver PTX 薬物溶出末梢血管用ステント12ヶ月成績
SFA病変に対するZilver PTXパクリタクセル溶出ステントによる治療は、6ヶ月追跡で得られた、臨床上の恩恵が12ヶ月追跡においても維持されていることが、ドイツ、Heart Center LeipzigのDierk Scheinert氏により、EuroPCR 2010のHot Lineセッションで発表された。
本試験では、ヨーロッパ、ロシア、カナダ、韓国の30施設よりSFA病変を有する787人(900病変)を登録し、Zilver PTXステントの安全性と有効性を評価した。
平均病変長は100±82mm、>15cmの病変が22%、完全閉塞病変が38%、再狭窄病変が24%、ステント内再狭窄病変が14%を占め、患者1人あたりの平均ステント留置本数は2.2本、病変あたりの平均ステント留置本数は1.9本であった。
12ヶ月の追跡で評価された1,432本のステントのうち、フラクチャーが確認された割合は1.5%であった。
安全性については、6ヶ月のイベント(死亡、切断、血行再建、Rutherfordスコア悪化)回避率は95.0%で、12ヶ月では87.0%が記録された。有効性については、ABIが術前の0.6±0.3に対し、6ヶ月後では0.9±0.2、12ヶ月後では0.9±0.2と有意な改善を認め、歩行速度についても大きな改善が見られ、Rutherfordスコアは、術前が中央値3であったのに対して、6ヶ月後と12ヶ月後では、それぞれ0を記録した(p<0.01)。
既にCEマークを取得している本ステントは、SFA病変の治療用にデザインされており、ポリマーを使用せずパクリタクセルをコーティングしている。
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=pcr2010&no=680
MO.MA近位部塞栓保護デバイスを使用したCAS: ARMOUR試験
ARMOUR試験より、外科的治療にリスクの高い頸動脈狭窄を有する患者での頸動脈ステント術(CAS)時のMO.MA近位部塞栓保護デバイスの使用は、安全、且つ有効であることが、イタリア、GVM Hospitals of Care and ResearchのAlberto Cremonesi氏により、EuroPCR 2010のHot Lineセッションで発表された。
本試験では、アメリカとヨーロッパの25施設より、内頸動脈/頸動脈分岐部に無症候性の≧80%狭窄、又は症候性の≧50%狭窄を有する外科的治療に高リスクな225人を登録し、FDAで承認を受けたステントとMO.MAデバイスを使用したCASの成績を評価した。
主要評価項目に設定した30日のMACCEの割合は2.7%と低く、重度の脳卒中が0.9%、軽度の脳卒中が1.4%、死亡が0.9%、MIが0、TIA(一過性脳虚血発作)が0.9%であった。
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=pcr2010&no=679
<番外編>
受動喫煙と血圧
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2010/05/28
<きょうの「『葦の髄』循環器メモ帖>
血管新生と心不全
http://yaplog.jp/hurst/archive/50
その他「
葦の髄」メモ帖 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
DES留置後、クロピドグレルとアスピリンの併用はいつまで継続すればよいのか、というのは意外とはっきりしたデータはないようです。
この疑問を検討した論文(NEJM誌2010年4月15日号)が最近発表されました。
韓国ウルサン大学のSeung-Jung Park氏らは、12カ月を超えてこれら2剤を併用した場合と、アスピリン単剤に切り替えた場合とで臨床転帰を比較する無作為化試験を実施。
主旨は
12カ月を超えるクロピドグレルの投与継続は利益をもたらさないこと、逆に心血管複合イベントのリスクを高める可能性がある
というものです。
「心血管複合イベントのリスクを高める可能性がある」ということですのでセンセーションを巻き起こしそうです。
ステント留置後のクロピド・アスピリン併用、1年超えると利益なし
ステント留置後、早い段階でクロピドグレルとアスピリンの2剤併用を中止すると、遅発性ステント血栓症リスクが高まる。
そのため、現行のガイドラインは、出血リスクが高くない患者には、少なくとも12カ月間2剤併用を継続するよう勧めている。
しかし、12カ月を超えて併用を継続した場合の利益とリスクは明らかになっていない。
観察研究では一貫した結果が得られておらず、この問題について調べた無作為化試験はなかった。
そこで著者らは、12カ月を超えて2剤併用を継続した場合の転帰をアスピリンの単剤投与に切り替えた場合と比較する研究を実施した。
対象は、2件の臨床試験に登録され、DESの留置を受けて追跡されていた患者から選んだ。
これらの試験は、韓国の22カ所の医療施設で同時進行していたもので、設計は同様で、対象とする患者が若干異なっていた(1件は別の無作為化試験に登録された患者の中から選出、もう1件は実際の臨床現場に近い広範な患者を登録)。
著者らは、これら試験の登録患者の中から、2剤併用を継続しており、主要な心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、血行再建術再施行)と大出血なしに12カ月以上経過していた患者、計2701人(平均年齢62歳、30%が女性)を登録。
無作為にクロピドグレル(75mg/日)+低用量アスピリン(100mgまたは200mg/日)の併用群(1357人)、またはアスピリンのみの単剤群(1344人)に割り付けた。
割り付け時点で、ステント留置から12〜18カ月経過していた患者が全体の約90%を占めた。
主要エンドポイントは、心筋梗塞または心臓死を合わせた複合イベントに設定した。
割り付けからの追跡期間の中央値は19.2カ月、ステント留置からは33.2カ月だった。
追跡期間中の死亡は33人で、うち心臓死は21人。
急性心筋梗塞は17人、脳卒中は13人、ステント血栓症は9人に発生した。
血行再建術再施行を経験したのは62人、大出血は4人に見られた。出血による死亡はなかった。
2年の時点の複合イベント発生率を、カプランマイヤー法により推定した。
2剤併用群は1.8%、アスピリン単剤群は1.2%で、ハザード比は1.65(95%信頼区間0.80-3.36、p=0.17)と有意差がなかった。
さらに、心筋梗塞、脳卒中、ステント血栓症、血行再建術再施行、大出血、全死因死亡のリスクを個々に比較したが、すべてについて両群間に差なしという結果になった。
ただし、心筋梗塞、脳卒中、全死因死亡を合わせたイベント発生率は、2剤併用群で高い傾向が見られた(ハザード比1.73、0.99-3.00、p=0.05)。
心筋梗塞、脳卒中、心臓死を合わせたイベント発生率についても同様だった(ハザード比1.84、0.99-3.45、p=0.06)。
以上より、12カ月を超えて2剤併用を継続しても、アスピリン単剤に比べ心筋梗塞または心臓死のリスクは低下せず、逆に複合イベント発生リスクが上昇する傾向が見られた。
著者らは、より大規模かつ長期にわたる無作為化試験を行ってこの結果を確認する必要がある、と述べている。
出典 NM online 2010.5.7
版権 日経BP社
<コメント>
以前、日本人と韓国人はルーツが異なるという話を聞いたことがあります。
しかし、東アジア人という観点からは、欧米のデータよりも参考になるかも知れません。
NEJM誌に掲載されたわけですから統計処理もしっかりしているはずです。
ここで知りたいことがあります。
○アスピリンではなくクロピドグレルの単剤投与に切り替えた場合はどうか。
○デザインでは無理ですが、12カ月だけでなく6カ月、24カ月(2年)などのデータもみたいところです。
○割り付け時点で、ステント留置から12〜18カ月経過していた患者が全体の約90%を占めた(割り付けからの追跡期間の中央値は19.2カ月、ステント留置からは33.2カ月)・・・これでいいんでしょうか。大いに疑問です。これではステント留置の際に抗血小板を使用し留置後12か月後の状態を観察したということではないことになります。
○対象は、2件の臨床試験に登録され、DESの留置を受けて追跡されていた患者から選んだ・・・このあたりはちょっとわかりづらい。
○フェーズ3 PLATO試験のサブ解析結果からはクロピドグレルよりticagrelorの方が安全性と有効性が高いことが示されました。
「クロピドグレル+アスピリン」を「ticagrelor+アスピリン」に変えたデザインではどのような結果になるのでしょうか。
○低用量アスピリン(100mgまたは200mg/日)・・・200mg/日?
その他「葦の髄」メモ帖 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
リンチェピング大学(スウェーデン・リンチェピング)のFredrik H. Nystrom博士らが、JAMA(2010; 303: 1167-1172)に発表した内容を紹介した記事で勉強しました。
急性胸痛で入院した患者の入院時血圧と1年後の死亡リスクを検討したものです。
こういった実地診療に直結したテーマの研究は、日本ではなかなか出ません。
「急性胸痛による集中治療室(ICU)収容時の仰臥位収縮期血圧(SBP)と1年後の死亡リスクは逆相関しており,SBP高値の患者では1年予後が良好である」という結論です。
~急性胸痛患者~ 入院時血圧と1年後の死亡リスクが逆相関
128mmHg未満ではリスク上昇
安静時高血圧は,心血管危険因子のなかで最も研究が進み確立されている因子の1つであるが,急性胸痛のような急性のストレス下での血圧とその後の死亡リスクとの関連はほとんど解明されていない。
Nystrom博士らは,1997~2007年に胸痛でICUに収容された患者の死亡率を,収容時の仰臥位SBPとの関連で解析した。
解析では,スウェーデンの全病院を含む患者登録から11万9,151例のデータを抽出し,SBPによる四分位(第1四分位:128mmHg未満,第2四分位:128~144mmHg,第3四分位:145~162mmHg,第4四分位:163mmHg以上)を用いて分類した。平均追跡期間は2.5年であった。
各種交絡因子で調整した1年後の死亡率は第1四分位群で最も高く,逆に第4四分位群は最も予後良好であった。
調整後,第4四分位群と第3四分位群では,第2四分位群と比べ,1年以内の死亡の絶対リスクがそれぞれ21.7%,15.2%低かったが,第1四分位群では40.3%高かった。
同博士は「急性胸痛患者の仰臥位SBP高値は,1年後の良好な予後と相関していた。胸痛で内科系ICUに収容された患者では,収容時の仰臥位SBPと1年死亡率との間に逆相関が認められた。同じことが虚血性心疾患と診断された患者や,将来の心筋梗塞発症リスクが高い患者にも当てはまる」と結論付けている。
出典 Medical Tribune 2010.5.20
版権 メディカルトリビューン社
<コメント>
「急性胸痛」の定義がはっきりしません。
ACS、GERD、大動脈解離、肺梗塞、緊張性気胸,食道破裂、心膜炎,心筋炎、さらには肺炎,膵炎、胆道疾患、帯状疱疹など実に様々な原因疾患があります。
「急性胸痛」というくくりでザックリまとめられても俄に信じることの出来ない論文です。
たとえば、狭心症や心筋梗塞の場合、低心拍出状態(LOS)で血圧が上がらない場合には予後が悪いということなら理解出来ます。
<番外編>
AMIに対するPCI後のno-reflowの予後への影響
ST上昇型MI患者におけるプライマリーPCI後のno-reflowは、5年の死亡率の強力な独立予測因子であることが、ドイツ、Technische UniversitätのGjin Ndrepepa氏らにより、5月25日号のJournal of the American College of Cardiology誌で報告された。
Ndrepepa氏らは、プライマリーPCIを受けたST上昇型MI患者1,406人を対象とし、治療後のno-reflowと5年追跡での死亡率の関連性を評価した。
造影上no-reflowは410人(29%)で確認され、左室の梗塞サイズはno-reflowを起こした患者では15.0%(6.0%-29.0%)、re-flowが確認できた群では8.0%(2.0%-21.0%)であった(p<0.001)。
追跡期間中132人の死亡が確認され、うち59例はno-reflow、73例はre-flowが確認された患者であり、カプランマイヤーによる5年死亡率は、それぞれ18.2%と9.5%であった(OR 2.02 [95%CI 1.44-2.82] p<0.001)。
梗塞サイズとその他の変数を補整したCox比例ハザードモデルで、no-reflowは5年死亡率の独立関連因子として示された(HR 1.66 [95%CI 1.17-2.36] p=0.004)。
Ndrepepa氏らは、「プライマリーPCIにより治療されたST上昇型MI患者において、no-reflowは5年の死亡率の強力な予測因子であり、梗塞サイズとは独立し、梗塞サイズよりも予後に対する影響が強いことが示された」と、まとめている。
Ndrepepa G, et al. J Am Coll Cardiol. 2010; 55: 2383-2389 https://www.tcross.co.jp/details.php?category=medical&no=665
安定冠動脈疾患へのPCI後、2剤抗血栓療法に加えω3多価不飽和脂肪酸(PFUA)を投与すると、抗血小板作用が増強する可能性がある。
ポーランドJohn Paul II病院のGrzegorz Gajos氏らが行った、OMEGA-PCI(OMEGA-3 Fatty Acids After PCI to Modify Responsiveness to Dual Antiplatelet Therapy)試験で明らかになりました。
これまでの研究で、ω3-PFUAの抗血小板作用については示唆されていました。
しかしアスピリンとクロピドグリルを併用した2剤抗血栓療法
にω3-PFUAをアドオンした際の、抗血小板作用の強化の有無については不明でした。
きょうは、このことについて検討したOMEGA-PCI試験について勉強しました。
自治医科大学 循環器科 苅尾七臣教授が監修された記事です。
冠動脈インターベンション後の強化抗血小板療法―ω3多価不飽和脂肪酸で抗血小板作用が増強?The OMEGA-PCI試験
服用開始30日のP2Y12反応性指標、ω3-PFUA群で2割強低下
OMEGA-PCI試験は、PCI実施後の安定冠動脈疾患患者に関する、前向き無作為化二重盲プラセボ対照試験。被験者は、標準2剤抗血栓療法として、アスピリン75mg/日とクロピドグレルを初回600mg、2回目以降75mg/日を服用した。
加えて、一方の群(33例)にはω3エチルエステル1g/日を、もう一方の群(30例)にはプラセボが投与された。
血小板機能と血管拡張薬刺激性リン蛋白質のリン酸化状態を、試験開始時点、12時間後、3~5日後、30日後に測定し両群を検討した。
おもな結果は以下のとおり。
●服用開始後30日のP2Y12反応性指標は、ω3-PFUA群がプラセボ群に比べ、22.2%低かった(p=0.020)。
●服用開始後30日時点の、アデノシン2リン酸5μmol/Lと20μmol/Lで誘発した最大血小板凝集は、ω3-PFUA群が13.3%(p=0.026)と、プラセボ群9.8%(p=0.029)に比べて低かった。
●アラキドン酸刺激後の血小板凝集は、両群ともに追跡期間全般を通じて低かった。
●追跡期間中にアスピリン抵抗性を示した人はいなかった。
<苅尾七臣教授のコメント>
ω3多価不飽和脂肪酸が、すでにアスピリンとチエノピリジン系抗血小板薬で治療を受けている冠動脈疾患患者の抗血小板作用を増強することを示した臨床的にも興味深い論文である。
これまで、エイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸などのω3多価不飽和脂肪酸は、青背の魚に多く含まれ、抗動脈硬化作用や抗不整脈作用に加え、抗血小板作用を有し、心血管イベントの抑制に働くことが知られている。
本研究では、アスピリン・クロピドグレル併用療法で治療中の冠動脈疾患患者の、残存するアデノシン二リン酸(ADP)凝集は、糖尿病、高脂血症、さらに腹部肥満と関連していた。
この残存する血小板凝集能の亢進は、急性冠症候群において、予後不良と関連することが知られている。
この残存血小板凝集能がさらに、ω3多価不飽和脂肪酸を加えることにより、抑制されることが示され、この作用は、クロピドグレルの抗血小板作用を主に抑制することによることが示された。
すなわち、アスピリン・クロピドグレル併用群に、さらにω3多価不飽和脂肪酸を加えた群では、血小板凝集のADP凝集が抑制され、VASP(vasodilator-stimulated phosphoprotein)のリン酸化で評価したP2Y12受容体の細胞内シグナル伝達を減少させていた。
今後、さらにω3多価不飽和脂肪酸が、チエノピリジン系抗血小板療法の臨床的2次予防効果を増強し、実際に心血管合併症の抑制につながっているかを検討する必要がある。
出典 Care Net.com 2010.5.24
版権 ケアネット社
<元文献>
Gajos G, et al. J Am Coll Cardiol. 2010; 55: 1671-1678
<関連サイト>
日本人の心臓は遺伝ではなく魚で守られている?
http://www.dryumi.com/?p=332
魚油の心血管系へのベネフィット
http://blog.m3.com/reed/20090820
きょうの「『葦の髄』循環器メモ帖
血圧付ワイヤレス12誘導負荷心電計
http://yaplog.jp/hurst/archive/47
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ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
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井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。
##~抗不整脈薬無効の発作性心房細動~
##カテーテルアブレーションが有効
ロヨラ大学医療センター(イリノイ州メイウッド)心血管科学のDavid J. Wilber教授らは,抗不整脈薬療法(ADT)が奏効しなかった発作性心房細動(AF)の患者に対し,カテーテルアブレーションが有効だとする研究結果をJAMA(2010; 303: 333-340)に発表した。
#ランダム化比較試験で評価
AFは心筋梗塞と心不全,全死亡のリスクを長期にわたって増大させることから,公衆衛生上の重要な問題となっている。
通常,ADTがAF患者に対する第一選択となるが,ADTは長期にわたる有害作用の蓄積と関連する半面,効果はいまだに安定していない。
このため,現在ではカテーテルアブレーションも選択肢となっている。
Wilber教授らは,少なくとも1種類の抗不整脈薬が奏効しなかった症候性発作性AF患者を対象に,カテーテルアブレーションとADTを比較するランダム化比較試験(RCT)を行った。
19病院で過去6か月以内に3回以上のAF症状を発現した患者167例を登録した。
被験者を2004年10月~07年10月に登録し,最後の追跡調査を2009年1月19日に行った。
被験者を,
(1)カテーテル切除群(106例)
(2)ADT群(61例)
―にランダムに割り付け,9か月間の追跡期間中に治療効果を評価した。
なお,カテーテル切除群5例とADT群3例は治療から脱落した。
#QOLも顕著に向上
主要アウトカムは,プロトコルに規定した治療不全までの期間。特に評価期間の9か月が経過した後もプロトコル規定の治療不全とならなかった患者の割合は,カテーテルアブレーション群で66%,ADT群で16%であった。
同様に,9か月後までに症候性の心房性不整脈を再発しなかった患者の割合は,カテーテルアブレーション群で70%,ADT群で19%だった。
さらに,無症候性も含めた心房性不整脈を再発しなかった患者の割合は,カテーテルアブレーション群で63%,ADT群で17%であった。
QOL評価については,ADT群に比べてカテーテルアブレーション群で3か月時点での平均の症状頻度スコア,重症度スコアがはるかに良好であった。
一方,治療に関連した30日以内の重篤な有害事象がカテーテルアブレーション群103例中5例(4.9%),ADT群57例中5例(8.8%)に発生した。
Wilber教授らは「今回の多施設RCTにより,少なくとも1種類の薬剤が奏効しなかった発作性AF患者の治療法として,ADTに比べてカテーテルアブレーションが有効であることが示された。また,これにより安全性プロフィールが良好に保たれ,心律動の調整やQOLも向上した。今回の結果から,薬理学的に心律動を調整できない発作性AF患者に対しては,早い段階でのカテーテルアブレーションの施行が重要であることがわかった」と結論付けている。
出典 MT pro 2010.4.1
版権 メディカル・トリビューン社
<関連サイト>
[PDF] 心房細動治療(薬物)ガイドライン
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2006_ogawa_d.pdf
心房細動治療ガイドライン(日本心臓財団)
http://www.jhf.or.jp/a&s_info/guideline/sinbosaido.html
1. 治療の進め方
(1) 心拍数100以上の心房細動の場合:緊急の場合は、ヘペリン投与の後、電気的除細動を行う。レートコントロールのためには、心機能正常であれば、β遮断薬、ジゴキシン、ベラパミル、ジルチアゼム、ベプリジルを用いる。
WPW症候群があれば、ベラパミル、ジゴキシンは禁忌である。
(2) 心拍数が99以下の発作性心房細動の場合:心房内血栓がなければ、ヘパリン投与後に除細動する。
血栓があれば、ワルファリン投与し、3週間後に除細動する。
(3) 心拍数が99以下の慢性心房細動の場合:心房細動が1年以上持続、左房径が5cm以上、除細動歴が2回以上、患者が希望しない、などの場合は除細動せず、抗凝血療法、抗血小板療法を行う。
2. 抗凝血療法の進め方
(1) 基礎心疾患をもつ場合:ワルファリンでコントロールする。
INR2.5~3.5を指標とする。
これで塞栓を発症したときは、アスピリンかチクロピジンを併用する。
(2) 基礎心疾患をもたない場合:リスクをもつ場合には、抗凝血療法を考慮する。
70才未満ではINR2.0~3.0を目標とする。
70才以上では1.6~2.6を目標とする。
リスクをもたない場合には、60才未満では抗凝血療法は不要、75歳以下では抗血小板薬、75才以上ではINR1.6~2.6のワルファリン療法とする。
3. 心房細動治療薬の選択
(1) 心機能正常の場合:
第一選択はジソピラミド、シベンゾリン、ピルメノール、ピルジカイニド、フレカイニド、第二選択はプロカインアミド、キニジン、ベプリジル、ル、ソタコール、プロパフェノン、アプリンジン
(2) 心機能軽度低下または肥大型心筋症の場合:
第一選択はプロカインアミド、キニジン、第二選択はジソピラミド、シベンゾリン、ピルメノール、ピルジカイニド、フレカイニド、ベプリジル、ソタロール、プロパフェノン、アプリンジン、第三選択として、アミオダロン。
(3) 心機能が中等度以上低下している場合:
第一選択にプロカインアミド、キニジン、アプリンジン、第二選択として、アミオダロン。
日本循環器学会Circulation Journal 65(Suppl 5) 2001、改訂版 2006を参考に作成
心房細動
http://www.udatsu.vs1.jp/af.htm
心房細動の解説Q&A(詳細解説)
http://www.m-junkanki.com/heart_diseases/atrial_fibril.html
心房細動~アブレーション治療など~
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000399.html
(慶應義塾大学病院 KOMPAS)
不整脈 | Minds医療情報サービス | ガイドライン | 心房細動
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0047/1/0047_G0000130_0029.html
心房細動の目標心拍数はそれほど厳しくしなくてもよいかもしれない
http://dobashin.exblog.jp/10211952/
心房細動のレートコントロール RACE II試験
http://blog.m3.com/reed/20100403/_RACE_II_
心房細動治療に新指針
一般医は心拍数調節までを行い病診連携を
![]()
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200908/511870.html
座談会 心房細動に伴う塞栓症予防としてのワルファリン
http://www.lifescience.co.jp/cr/zadankai/0504/1.htm
心房細動の薬物療法(抗凝固療法、抗不整脈剤)とアブレーション治療
https://square.umin.ac.jp/saspe/news/11.pdf
サノフィ・アベンティス、永続性心房細動(AF)患者さん 1 万人が参加するMultaq®の試験を開始 -新たなAF患者群におけるdronedaroneのエビデンスを拡張する新たなアウトカム試験-
http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:8R5lqDu0yxkJ:www.sanofi-aventis.co.jp/l/jp/ja/download.jsp%3Ffile%3D8FCE0AFB-A169-4423-9392-8D581AB4FF01.pdf+心房細動+ガイドライン&cd=17&hl=ja&ct=clnk&gl=jp
[PDF] 心房細動の治療
http://www.nishiizu.gr.jp/images/conference/h19/conference-19_13.pdf
[PDF] 心房細動の抗凝固療法 v.s.抗血小板療法(ACTIVE W)(080110)
http://rockymuku.sakura.ne.jp/zyunnkannkinaika/ACTVE%20W.pdf
ワーファリンによる血栓塞栓症の予防
http://www.miyake-naika.or.jp/05_health/shinbousaidou/shinbousaidou_07.html
warfarin
http://www007.upp.so-net.ne.jp/yamanote1/warfarin/warfarin.html
<番外編>
#非石灰化プラークの予測因子は糖尿病
#多変量回帰分析で有意差を確認
(第29回日本画像医学会)
冠動脈CTは冠動脈の非侵襲的評価に有用であるが,プラークの石灰化が強くCTによる狭窄度判定が困難な場合にはシンチグラフィーが施行される。
あらかじめ,石灰化プラークか非石灰化プラークかを予測因子をもとに推測できれば,検査の効率化という観点からも有用性は高いと考えられるが,石灰化プラークと非石灰化プラークの予測因子を比較検討した報告は少ない。
そこで,東邦大学医療センター大橋病院循環器内科の正井博文氏は両者の予測因子の比較を試み,「石灰化プラークと非石灰化プラークの予測因子は異なる可能性が示唆された」と報告した。
#石灰化の有無で異なる予測因子
対象は2009年1~8月に同院で冠動脈疾患が疑われ,推算糸球体濾過量(eGFR)60mL/分/1.73m2以上で冠動脈CTが施行された連続250例(男性132例,女性118例,平均年齢65.1歳)。
撮像に際しては64列CTを使用し,dual injection法で行われた。CT値130HU以上で3mm以上の部位を石灰化プラーク,冠動脈の短軸で1.0mm2を上回りCT値130HU未満の部位を非石灰化プラークと定義した。
患者の内訳は,高血圧139例,高コレステロール血症132例,糖尿病45例,喫煙者96例,家族歴ありが47例であった。
また,石灰化プラークは90例に,非石灰化プラークは35例に認められた。
上述の背景因子を用いて石灰化プラークの予測因子を検討したところ,単変量ロジスティック回帰分析においては年齢,高血圧,糖尿病に有意差が,多変量ロジスティック回帰分析では年齢65歳以上〔オッズ比(OR)2.73,P=0.007〕と高血圧(OR 2.64,P=0.005)に有意差が認められた。
さらに,非石灰化プラークの予測因子に関する検討の結果,単変量ロジスティック回帰分析では男性と糖尿病に,多変量の回帰分析では糖尿病(OR 2.87,P=0.01)に有意差が認められた。
以上の結果から,正井氏は「石灰化プラークの予測因子は年齢(65歳以上)と高血圧であるのに対し,非石灰化プラークの予測因子は糖尿病であることが示された」と指摘した。
出典 MT pro 2010.4.1(一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社
font color="#6600ff">その他
きょうの「『葦の髄』循環器メモ帖
吹田研究
http://yaplog.jp/hurst/archive/46
<自遊時間>
「吹田研究」を大阪大学 老年・腎臓内科学 老年内科|スタッフ紹介」でググっていたら、面白いことがわかりました。
勝谷 友宏先生
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/geriat/www/jstfd.html
この先生の紹介は関西風にこってりとしています。
「趣味」もしっかり書かれており、
「ちなみに私、生まれも育ちも尼崎という下町で、現在も自宅、といっても持ち家はなく、父の医院の2階に1人の妻と2人の娘、1人の息子共々居候しています。あと少し風変わりな兄がおりまして、TVや雑誌でご覧の方もいらっしゃるかと思います。」
と紹介されています。
何とその「少し風変わりな兄」こそ勝谷誠彦氏でした。
http://ja.wikipedia.org/wiki/勝谷誠彦
(医学部を2度挑戦して失敗したということでまんざら医療に関係ないわけではありません)
「葦の髄」メモ帖 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
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井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
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井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
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(内科医向き)
があります。
フラミンガム研究をはじめ,国内外で多数のコホート研究がさまざまな危険因子を明らかにするために実施されています。
そのなかでも世界に誇る規模で行われているの研究に,国立循環器病研究センターが1989年から実施している吹田研究があります。
この研究は久山町研究、端野・壮瞥町研究、大迫研究などと異なり。都市部の研究という点でユニークです。
きょうは、同センター予防健診部医長の小久保喜弘先生が5月21日,東京都内で開かれた健康日本21推進フォーラム(理事長=自治医科大学学長・高久史麿氏)の総会で講演した記事で勉強しました。
##「危険因子は時代とともに変化」国循・小久保氏が吹田研究を解説 健康日本21推進フォーラ総会で
#定点観測のように危険因子の監視を
わが国は,第二次世界大戦前後で死因の構成割合が大きく変化している。
戦前は感染症が大部分を占めていたが,ペニシリンなど抗菌薬の登場によって戦後には激減した。
これによってわが国は世界でも有数の長寿国となったものの,その一方で脳卒中や虚血性心疾患が増加。
さらにその後は,がんが増加の一途をたどっている。
この点について,小久保氏は「戦後に脳卒中,虚血性心疾患が増えたのは抗菌薬の発明があったからで,がん増加の最大の要因は高血圧対策がもたらした長寿」と説明。
また,疾患とともに国民の生活習慣も変化していることを指摘し,「危険因子は見つかったら未来永劫不変というわけではなく,時代とともに変化していくもの。どう変わっていくかを把握し,公衆衛生や社会学に従事する人々は定点観測のように見ていかなければならない」とした。
ここで重視されるのがコホート研究だが,わが国を含め,これまで都市部を対象とした著名なコホート研究は少なかった。
それは,人口の移動が激しいため,対象者の追跡が困難だからだ。
しかし,多くの人が都市部で生活している現状(国民の3分の2が都市部在住)を考えると,都市部におけるコホート研究の意義は非常に大きいだろう。
大阪府吹田市は,大阪北部の人口35.5万人都市で,梅田まで15分とアクセスがよいことから,市北部はベッドタウン,南部は工業・商業地域として機能している。
人口密度は1万人弱/k㎡で,ニューヨーク市と同規模の大都市だ。吹田研究は,1989年に吹田市住民台帳から性年齢階層別に1万2,200人を,さらに96年に3,000人を無作為抽出し,そのうち国立循環器病研究センターで基本健診を受診した者を対象に,循環器疾患リスクを検討しているコホート研究。
対象者は,89年抽出の一次コホートが6,485人,96年抽出の二次コホート1,329人,ボランティア集団546人で構成されており,現在は一次コホートを対象に研究を行っている。
同氏によると,吹田研究の対象者は全国平均と比べ,各年齢層ともに血圧が低く,総コレステロール値が高い点が特徴。
これは,近畿地方で脳卒中死亡率が低く,心筋梗塞死亡率が高い傾向にあることを裏づけているという。
#血圧に基づいた脳心血管リスクはJSH2009と同様
吹田研究ではこれまで,女性(男性は60歳未満のみ)でメタボリックシンドローム診断基準と循環器疾患が関係していること(Hypertens Res2008; 31: 2027-2035),女性のみで腹囲と脳卒中発症が関係していること(Stroke2010; 41: 550-553)などを明らかにしている。
腹囲について,小久保氏は「腹囲を必須項目にすると,リスクにならない要因を引っ張り込んでしまう恐れがある。
一方で,現在の診断基準では太っていない人で血圧の高い人を見落とす危険性がある」と説明。
吹田研究では腹囲の心血管疾患発症リスクに対するカットオフ値が女性で80cmだったが,「腹囲が循環器疾患に及ぼす影響が非常に緩やかなため,他の地域では別のカットオフ値が出るかもしれない」とし,腹囲がエビデンスのある危険因子として世界のガイドラインに含められるかどうか検討していく必要があると訴えた。
また,わが国の高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)では血圧に基づいた脳心血管リスクを表のように層別化しているが,吹田研究でも,至適血圧+正常血圧のリスク第一層と比べ正常高値血圧のリスク第二,三層,高血圧のすべてのリスク層で有意なリスク上昇が認められたという。
吹田研究によって初めて示されたエビデンスは多く,これからも数々のことが明らかになっていくだろう。
同氏は,同研究で解明された事実を各医師が患者の生活指導などに活用することを求めている。

出典 MT pro 2010.5.17
版権 メディカル・トリビューン社
Hypertens Res2008; 31: 2027-2035
Impact of metabolic syndrome components on the incidence of cardiovascular disease in a general urban Japanese population: the suita study.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19098374
Stroke2010; 41: 550-553
The relationship between waist circumference and the risk of stroke and myocardial infarction in a Japanese urban cohort: the Suita study.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20056924
<関連サイト>
吹田研究の結果に対する端野・壮瞥町研究からのコメント
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0901/0901001.html
<番外編>
「高血圧の日」について
毎年5月17日は”高血圧の日”
http://www.jpnsh.org/general_0517.html
■世界高血圧デー
「世界高血圧デー:World Hypertension Day」は、国際高血圧学会の一部門である世界高血圧リーグにより、高血圧およびその管理に関する啓発を目的として、2005年に創設されたものです。
創設以来、その参加国は増え続け、2007年からは日本も参加し、合わせて25カ国以上が参加しています。
■世界高血圧リーグ(World Hypertension League)
世界高血圧リーグ(WHL)は1984年に設立以来、高血圧の危険性と高血圧がもたらす深刻な病気や合併症についての知識を一般市民に伝えるよう世界各国の団体に推奨し、予防と発見、治療に関する情報を提供しています。
WHLは国際高血圧学会 (ISH)の一部門で、現在81のメンバーと11のサポート・メンバーで構成されており、日本では日本高血圧学会がメンバーとなっています。
■啓発キャンペーン「ウデをまくろう、ニッポン!」
2007年5月17日の「世界高血圧デー」に合わせて行った「ウデをまくろう、ニッポン!」では、健康な生活を送るためには生活習慣の改善と日頃の血圧測定が重要という、高血圧の啓発を目的として、様々なイベントと情報提供活動を行いました。
5月17日の「世界高血圧デー」の日には、高血圧(140/90 mmHg以上)を適切に管理して、望ましい血圧値を維持することの重要性を啓発するために、千葉マリンスタジアムで、24時間以内に、どれだけ多くの人が一箇所で「ウデをまくって」血圧測定できるかというギネス世界記録.に挑戦し、世界記録を樹立しました。
またスタジアム以外の活動としては、首都圏の大規模スーパーマーケットでの血圧測定のイベントを行うとともに、キャンペーン期間中は、「ウデをまくろう、ニッポン!」啓発ポスターやインターネットの高血圧に関する情報提供ウェブサイトを通して積極的な情報提供を行いました。
日本高血圧学会と日本高血圧協会は、今後も「高血圧の日」のキャンペーン活動を主 催し、啓発活動を展開していく予定です。
<コメント>知らないまま5月17日は静かに過ぎて行きました。
日本は総人口の21%以上を65歳以上の高齢者が占める「超高齢社会」になりました。
高齢者では加齢に伴う動脈硬化から腎機能障害が起こるため,慢性腎臓病(CKD)が高頻度に見られます。
CKDは末期腎不全および心血管系疾患(CVD)の発症の重要な危険因子ですが,CKDでは脂質異常症の治療により,CVDのリスク低下だけでなく腎機能低下の抑制も期待できます。
きょうは、「高齢者におけるCKD合併脂質異常症」, 「CKDおよびCVD抑制に関するスタチンのエビデンス」,「高齢のCKD合併例に対する脂質管理の在り方」についての討論の記事で勉強しました。
高齢者におけるCKD合併脂質異常症の治療
司会:
荒井 秀典 氏 京都大学大学院人間健康科学系専攻 近未来型人間健康科学融合ユニット 教授
出席者:
庄司 哲雄 氏 大阪市立大学大学院 代謝内分泌病態内科学 講師
木原 進士 氏 大阪大学大学院 内分泌・代謝内科学 講師
西尾 善彦 氏 滋賀医科大学 糖尿病・腎臓・神経内科 講師
高齢の日本人脂質異常症患者の約40%がCKDを合併
荒井
「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2009」(以下,ガイドライン)によると,臨床的に問題とされる中等度(ステージ3)以上のCKD患者は,日本で1,098万人と推計されています。
CKDの有病率は加齢とともに増加し,70歳以上では推計で約30%以上に達します。
一方,平成18年の国民健康・栄養調査によると,65歳以上の高齢者の40~50%が脂質異常症を有しており,患者数は推計で1,240万人にのぼります。
しかし,このうちの約60%はスタチンによる治療を受けていないと推定されています。
西尾
当施設において調べたところ,糖尿病経過外来では,65歳以上の糖尿病患者のうち,34%がステージ3以上のCKD,60%が脂質異常症を合併しており,糖尿病合併脂質異常症の半分以上の患者が未治療でした。
荒井
脂質異常症がCKDに及ぼす影響は多くのコホート研究で示されており,Physicians' Health Studyでは,健康男性においてベースラインの総コレステロール(TC)値が高いほど,血清クレアチニン値 ≥ 1.5mg/dLの腎機能低下例が多くなることが示されています1)。
このように,脂質異常症とCKDは合併することが多く,プラバスタチン(メバロチン®)の日本のエビデンスであるMEGA Studyにおいても,65歳以上の脂質異常症患者の37.8%が,ステージ3以上のCKDを合併していました。
<CKD合併脂質異常症の病態の特徴について>
庄司
CKD合併脂質異常症は2タイプに分かれます。
1つ目はネフローゼ症候群に合併するタイプで,蛋白尿が多いため,代償的に肝臓での超低比重リポ蛋白(VLDL)の合成が増加します。
VLDLは中間比重リポ蛋白(IDL),LDLへと代謝されるので通常はLDLが増加しますが,この過程に異化障害が生じると,VLDLが増加します。
2つ目は,糸球体濾過量(GFR)の低下による腎不全タイプで,末梢でのVLDLの異化障害が脂質異常症の主因であり,VLDLやIDLは増加しますが,LDLの上昇はありません。
CKD合併例では,LDLコレステロール(LDL-C)が上昇しない場合があるため,LDL-Cのみを基準としていると,脂質異常症を見逃す危険性があります。
以上から,CKD患者における脂質異常症の診断では,LDLだけではなく,VLDLやIDLを含む指標として,TCからHDLコレステロール(HDL -C)を引いた non HDL-Cを指標とすることが望ましいと思います。
<メタボリックシンドローム(MetS)の観点から>
木原
MetSでは腎臓の過剰濾過が起こるので,初期に推算糸球体濾過量(eGFR)はむしろ増加します。
しかし,脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンが減少し,アルブミン尿やCKDの進展につながります。
したがって,MetS患者において検尿で蛋白尿がプラスマイナスを示した場合,微量アルブミン尿検査をすることが望ましいと思います。
1)Schaeffner ES, et al. J Am Soc Nephrol 2003; 14: 2084-2091.
CKDを合併した脂質異常症患者に対するスタチン治療の意義が明確に
荒井
スタチンを用いた多くの大規模臨床試験のサブ解析により,スタチンのCKD合併脂質異常症におけるCVD抑制のエビデンスが示されています。
MEGA Study,Prava III,ASCOT-LLA試験におけるステージ3~4のCKD患者を対象としたサブ解析の結果,スタチン群では対照群に比べ,1次エンドポイントであるCVDのハザード比が0.52~0.77と,有意なリスク低下が認められています2)。
特に,中等度CKDを合併した脂質異常症に対するプラバスタチンのCVD発症抑制を検証したMEGA StudyのCKD解析では,食事療法+プラバスタチン併用群は食事療法単独群に比べ,1次エンドポイントである冠動脈疾患(CHD)の発症リスクを48%有意に低下させました。
特に,脳卒中や脳梗塞の発症リスクをそれぞれ73%,82%と有意に低下させました(図1)。

一方,維持透析患者を対象とした4D3),AURORA試験4)のサブ解析では,スタチンによるCVD発症抑制は認められませんでした。
庄司
維持透析患者ではスタチンを投与してもCVDが抑制されなかったことから,CKDの早期からのスタチン治療が重要と言えるのではないでしょうか。
CKD患者を対象にスタチンによる脂質管理を考える場合,CKDステージ3は特に重視すべき対象だと思います。
西尾
CKDステージ3以上の患者などでは,絶対リスクを考えて治療することが重要だと言えます。
荒井
CKDの重症度別にプラバスタチンの血清脂質改善効果を比較したところ, LDL-Cの低下率は約20%とほぼ同等でした(図2)。MEGA Studyの主解析ではプラバスタチンによるCHDの発症リスクが33%有意に低下したのに対し(Log-rank検定:P=0.01)5),CKD解析では48%有意に低下しました。
さらに,1イベントを予防するために必要な治療例数(NNT)も,主解析の119に対しCKD解析では82と少なくなったことから,CKD合併例ではスタチンの治療効果が大きく得られることが示唆されました(図1)。

木原
MEGA Studyが日本人のデータであることは貴重だと思います。
また,マイルドな脂質低下作用によってCVDが抑制された理由として,スタチンのなかでもユニークな水溶性のプラバスタチンはアディポネクチンを増加させるという報告が多く,脂肪組織の機能異常を改善する作用が関与しているのではないかと推察しています。
2)庄司哲雄ほか: 血圧 2006; 13: 411-416.
3)Wanner C, et al. N Engl J Med 2005; 353: 238-248.
4)Fellström BC, et al. N Engl J Med 2009; 360: 1395-1407.
5)Nakamura H, et al. Lancet 2006; 368: 1155-1163.
早期からのスタチン治療がCKDに及ぼす影響
荒井
スタチンがCKDそのものに好影響を及ぼすことも報告されています。
MEGA StudyのCKD解析において,プラバスタチン併用群では,食事療法単独群に比べ,eGFRが有意に増加しました(図3)。

<スタチンによる腎保護の機序>
庄司
スタチンの腎保護機序としては,
(1)脂質レベル低下を介する機序,
(2)スタチンが直接的に腎臓の細胞に作用する機序,
(3)心機能改善を介した腎血流・GFR増加の3点が考えられます(表1)。
糸球体上皮細胞保護には(1),(2),糸球体基底膜のスリット膜分子であるネフリン発現に(2)が関与していることが知られています。

西尾
私どもの施設では,糖尿病経過外来における早期糖尿病腎症患者において,4つの基準(HbA1C値<6.5%,血圧<130/80mmHg,TC<200mg/dL,トリグリセライド<150mg/dL)を多く達成した例ほど,腎症の寛解率が高かったことから,CKDでは血糖,血圧,脂質を早期のうちから包括的に管理することが重要だと考えています。
木原
糖尿病を発症してしまった患者については,スタチンはあまり悪影響を及ぼさないと思います。
しかし,糖尿病になっていないレベルの糖代謝異常を有する患者へのスタチン投与は,耐糖能を悪化させる可能性もあり,注意が必要です。
高齢のCKD合併例に対するスタチン治療では,特に安全性を重視
荒井
高齢のCKD合併脂質異常症患者に対するスタチンを用いた薬物治療では,横紋筋融解症など安全性が懸念されますが,先生方はどのように薬剤を選択されていますか。
庄司
高齢者は多剤を併用することが多いため,安全性を重視して薬物相互作用のリスクが低い薬剤を選択しています。
プラバスタチンは水溶性で薬物相互作用が少なく,安全性が評価されている薬剤です。
荒井
MEGA StudyのCKD解析では,食事療法単独群とプラバスタチン併用群とで,肝機能障害,腎機能障害および横紋筋融解症の指標であるクレアチンキナーゼ(CK)上昇の発現率はほぼ同等でした(表2)。

庄司
CKD合併例に対するスタチンの有害事象はあまり公開されていないので,今回のMEGA Study CKD解析において示されたCKD合併例に対するプラバスタチンの安全性データは非常に重視しています。
木原
庄司先生のおっしゃる通りだと思います。
また,耐糖能に影響を与えにくいスタチンという点でもプラバスタチンが有用ではないかと考えています。
西尾
糖尿病患者を中心に診療するなかで,高齢の脂質異常症患者ではCKD合併例が多く,その場合は基本的にスタチンを選択していますが,安全性が評価されたプラバスタチンは使いやすい薬剤だと思います。
荒井
高齢のCKD合併脂質異常症患者に対し,早期からのスタチン治療がCVDの発症抑制はもちろん,CKDの進展抑制に期待できる可能性が示唆されました。
しかし,日常診療では多くの高齢のCKD合併例がスタチン治療を受けていないと推測されるため,今後は高齢者における適切なリスク評価と,安全性を重視したスタチン治療の推進に取り組まなくてはならないという結論になると思います。
出典 Medical Tribune 2010.5.20
版権 メディカルトリビューン社
<番外編>
RAS阻害薬によるAFの予防: メタ分析
レニン・アンジオテンシンシステム(RAS)阻害薬が、心房細動(AF)の一次、二次予防に有効性を示す可能性が、ドイツ、University of Erlangen-NurembergのMarkus P. Schneider氏らにより5月25日号のJournal of the American College of Cardiology誌で報告された。
Schneider氏らは、AFの一次、又は二次予防においてACE阻害薬、又はARBの効果を検証した出版されている全ての無作為試験(23試験、患者87,048人)のメタ解析を行った。
一次予防では、6試験が高血圧、2試験がMI後、3試験が心不全患者を対象とし、二次予防では、8試験が電気的除細動後、4試験が薬剤による再発の予防効果を評価したものであった。
RAS阻害薬は全体でAFのオッズ比を33%低下させることが示されたが(p<0.00001)、試験間で不均一性が認められた。
一次予防においては、RAS阻害薬は心不全、及び高血圧、左室肥大を有する患者において有効性が示されたが、MI後の患者には有効性は認められなかった。
二次予防では、RAS阻害薬は、アミオダロンを含む抗不整脈薬への追加投与が一般的であり、電気的除細動後のAFの再発のオッズをさらに45%低下させ(p=0.01)、薬物療法下にある患者では63%の低下をもたらした(p<0.00001)。
Schneider氏らは、「AFの一次、及び二次予防に対するRAS抑制薬の有用性が示されたが、本分析に用いた一次予防を検証したデータの一部は事後解析であり、特定のRAS抑制薬と抗不整脈薬との相互作用、相乗効果については不明である」と、まとめている。
Schneider M, et al. J Am Coll Cardiol. 2010; 55: 2299-2307
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=medical&no=666
その他「葦の髄」メモ帖 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy