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2000年以降,弁膜症の血管内治療の開発が加速してきています。
欧米では,経皮的大動脈弁留置術(TAVI)の臨床経験が積み重ねられており,近年は僧帽弁についても導入が進んでいるということです。
国内ではようやくTAVIの導入が始まったところです。
東京医科歯科大学大学院心臓血管外科の荒井裕国教授へのインタビュー記事で勉強しました。
欧米で進む弁膜症の血管内治療,その位置付けは?
血管内治療の位置付けを考える際の前提事項として,荒井教授は次の2点を挙げる。
まず,弁置換術/弁形成術は安全性や治療成績が飛躍的に向上してきており,この手術の恩恵を受けられる患者に「もうすぐ低侵襲の治療が導入される」と治療を先延ばしにするのは本末転倒という点だ。
2つ目は,血管内治療が導入された後も,標準治療は現行の弁置換術/弁形成術で変わらないという点で,これは,既に多くの臨床経験を有する欧米の専門家の意見でもあるという。
安全性に課題残るTAVI,慎重な導入を
現在のTAVIの適応としては,高度石灰化大動脈による手術禁忌症例や手術の高リスク症例が挙げられている。
欧米からの手術成績は報告によって異なり,30日後の死亡率が高いものでは25%となっている(弁置換術は約2%)。
治療リスクとして,急性大動脈解離や左主幹部閉塞,大動脈弁輪破裂など従来手術にはない重篤な合併症が報告されている点も懸念材料だ。
これらの背景から,荒井教授は「弁置換術/弁形成術が可能な症例にまで安易に推奨する治療ではない」と強調する。
また,従来は大動脈の高度石灰化で手術適応とならなかった症例へも,超音波破砕吸引法などの手術手技の工夫で可能となってきていることから,禁忌症例の範囲についても慎重に検討すべきだという。
TAVIの位置付けで期待されるのは,生体弁機能不全に対して再手術を行わずに再留置を行える点であるという。
また,今後の開発の動向としては,直視下ながら縫合せずに容易に装着できる人工弁,Sutureless ValveがTAVIと従来の生体弁の中間的デバイスとして注目されている。
一方,僧帽弁については弁尖をクリップで止める治療法が導入されているが,従来の外科手術でも同様の術式としてAlfieri法(弁尖の先端を縫縮)がある。
しかし,実際の手術では弁尖の逸脱箇所や組織硬化の程度に応じた複雑な工程を踏むことが求められることがほとんどで,この術式が選択されることは少ないという。
同教授は「弁の先端を止めるという大ざっぱとも思える治療でどれだけの効果が期待できるのか,現時点では確信が持てない」と述べる。一方,虚血による左室拡大のために軽度~中等度の機能的僧帽弁逆流を伴う症例では,虚血部位へのステント留置とこのクリップ術で「心筋リモデリングの改善効果が期待できる可能性もある」とするが,現時点では推測の域であると強調する。
血管内治療の導入は,これまで手術適応外,すなわち,なすすべのなかった患者への治療選択肢となるもので,この点は同教授も高く評価している。
わが国でこの治療導入が進むかどうかは,適切な患者選択にかかっていると言える。
出典 Medical Tribune 2010.4.22
版権 メディカル・トリビューン社
<コメント>
昨日も弁膜症をとりあげました。
心臓弁膜症の診断・治療
http://blog.m3.com/reed/20100429/1
きょうも引き続き「心臓弁膜症」がテーマです。
弁膜症の血管内治療の今後予想される普及は、正直言って心臓外科医の胸中は複雑だと思います。
ちょうど冠動脈のインターベンションと冠動脈再建術との関係に似ています。
今や先天性心疾患のうちのASDも血管内治療が行われるようになって来ています。
VSDも自然閉鎖例もあるわけですから、いよいよ複雑心奇形が残された領域になりつつあります。
もちろん解離性大動脈瘤や大動脈瘤が残ってはいますがそれとてステントが使用されつつあります。
ところで、血管内治療は何科の医師が行うのでしょうか?
施設によって異なるでしょうが、心臓外科医、循環器内科医、放射線科医が行うものと考えられます。
そして何科が行っているかによっても、その施設での適応が微妙に異なって来るような気もするのですが。
その他「葦の髄」メモ帖 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy