戯れ言たれる侏儒
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SABの今後の展望

戯れ言たれる侏儒 / 2010.04.25 00:01 / 推薦数 : 0

世界初の選択的アルドステロンブロッカー(SAB)であるエプレレノン(セララ®)の発売から2年が経過しました。
薬価が高いため少し苦戦しているようです。
しかし、食塩摂取量が過剰な日本人の高血圧治療には適した降圧剤という見方もあります。

さらにこのエプレレノンは高血圧症のみならず,心・腎などの臓器保護にも寄与するという多くの報告があります。

エプレレノンは発売時に多くの記事が出ました。
しばらくぶりに,このエプレレノンの記事でおさらいをしました。

#各専門家から見た選択的アルドステロンブロッカーの臨床的意義
~今後の展望を踏まえて~

司会:
伊藤 裕 氏 慶應義塾大学 腎臓内分泌代謝内科 教授
出席者(発言順):
吉村 道博 氏 東京慈恵会医科大学 内科学講座循環器内科 教授
佐藤 敦久 氏 国際医療福祉大学 三田病院内科 教授


#高食塩下で細胞障害性を示すアルドステロン
エプレレノンの心保護作用
■私たちは,アルドステロンの意義について研究を進める過程で,アルドステロンの細胞内に食塩を取り込む作用を明らかにしました。
心筋細胞を,培養液の食塩濃度をわずかに上昇させて2時間静置すると,心筋細胞は脱水を起こして変形しますが,あらかじめアルドステロンを添加しておくと脱水が抑制されます。
つまり,アルドステロンは細胞外液のナトリウム(Na)濃度が上がると細胞内にNa+を流入させて脱水から守る保護作用(非ゲノム作用)を示します。私たちは,この機序にかかわるkey moleculeとして,Na+/H+exchanger(NHE)1を考えています。
NHE1は,アルドステロンの作用により心筋細胞内にNa+を流入させる重要なチャネルであります。

一方,このような細胞外液のNa濃度が高い状態を72時間継続させると,NHE1の蛋白レベルの増加を介して心筋細胞内にNa+が過剰に流入します。
続いて,Ca2+が上昇し,心筋細胞の肥大を招きます。
つまり,アルドステロンのゲノム作用が進行します。

これに対し,あらかじめ培養液にエプレレノンを添加しておくと,心筋細胞の肥大が抑制されることがわかりました。
エプレレノンは,「食塩+アルドステロン」の悪い作用だけをブロックすると私は考えています。(吉村)


#ハイリスク群からCKDステージ3の患者にエプレレノンの併用を
エプレレノンの腎保護作用
■超高齢社会を迎えた日本において,必然的に高血圧患者が増え,そのことが慢性腎臓病(CKD)患者の増加を引き起こします。
CKD患者では,心血管系イベントのリスクが高く,早期発見・治療が重要になります。

高血圧治療ガイドライン(JSH)2009では,CKD患者における降圧療法の3原則として,
(1)降圧目標の達成
(2)レニン・アンジオテンシン(RA)系の抑制
(3)尿アルブミン,蛋白尿の減少・正常化
-が挙げられていますが,
私は特にRA系抑制薬とエプレレノンの併用投与による降圧療法が重要だと考えています。

私たちは,メタボリックシンドローム(MetS)合併例を含む本態性高血圧患者で,ACE阻害薬またはCa拮抗薬の投与によっても血圧157±11/94±6mmHgを示す68例に対し,エプレレノン50mg/日を追加投与しました。
その結果,4週後から有意な降圧を示し,24週後には130±6/76±5mmHgに降圧されました(図1)。

血清カリウム(K)値はACE阻害薬を最大量まで投与した症例においても治療前後で有意な変化を認めませんでした。
特筆すべきことに,アルブミン尿が3分の1にまで減少しました(図2)。

現在のCKDステージ分類には,蛋白尿,あるいはアルブミン尿は組み込まれていません。
高齢者のCKDでは,生理的に自然経過のなかで腎機能が低下しているだけでCKDとは考えられない,とする意見もあります。
蛋白尿をCKDのステージ分類の診断に組み入れ,リスクを層別化する必要がありそうです。
したがって今後は糸球体濾過量(GFR)だけでなく,蛋白尿,アルブミン尿を指標とし,できるだけ減少するように治療を徹底することがさらに大切になってくると思います。(佐藤)


#治療抵抗性高血圧に著明な降圧MR活性化症例にも期待
■内分泌・代謝の立場から見ますと,RA系抑制薬,直接的レニン阻害薬(DRI)が奏効せず,アルドステロンブロッカーのみが有用である病態の1つとして,血漿レニン活性が低いのにもかかわらずアルドステロン濃度が高いアルドステロン関連高血圧が考えられます。
もう1つは,アルドステロン濃度が正常であるにもかかわらず,ミネラロコルチコイド受容体(MR)の感受性が上がって臓器障害を来す病態です。

アルドステロン関連高血圧には,3剤以上の降圧薬を使用しても良好な血圧コントロールが得られない治療抵抗性高血圧(RH)が含まれ,こうした症例に対しては少量のアルドステロンブロッカーの併用により著明な降圧が得られることが知られています。
私たちが,健診受診者を対象に血漿アルドステロン/レニン比(ARR)を検討した結果,高血圧群では正常血圧群に比べARRが高値を示す例が2倍多く,ARR高値を示す高血圧群は左室肥大,蛋白尿が高頻度であることがわかりました。
このような患者さんにはエプレレノンが奏効すると思われます。

実際,ARB単独またはARBを含む2剤の投与によっても降圧不十分な症例に対し,エプレレノンはいずれも収縮期約20mmHg,拡張期約10mmHgの降圧を示しています(図3)。
また,ARBで降圧不十分な症例にエプレレノンを追加することで,追加前のBNP値が高いほどBNP値を改善したという報告もあります(図4)。

MRの感受性を上げる要因の1つとして,食塩過剰摂取が指摘されています。
一方,最近では蛋白の機能制御においてリン酸化,メチル化,アセチル化,SUMO化などによる蛋白の翻訳後修飾の重要性が注目されています。
私たちは,アルドステロンがMRのSUMO化を促進して安定性を高め,感受性を亢進することを明らかにしました。
こうした病態においても,エプレレノンが唯一臓器保護作用を示しうると推測しています。(伊藤)


#心不全傾向,MetS合併,難治性高血圧をはじめ幅広い患者層に期待されるエプレレノンの有用性
エプレレノンの有用性が期待できる患者像
■高血圧を合併する原発性アルドステロン症(PA),心不全傾向(BNP上昇),心肥大,拡張不全,MetS,低K血症,Non-dipper型,さらに禁忌に当たらない糖尿病,軽症腎不全合併高血圧患者にも積極的な適応があると考えています。
また,軽症から難治性高血圧にまで使えますし,RA系抑制薬,Ca拮抗薬,DRI,少量の利尿薬との併用も相性がよいと言えます。
臨床家の先生方には,幅広い高血圧患者さんにエプレレノンを少量から試していただきたいと思います。(吉村)

■エプレレノンの臨床効果を安全に得るために最も大切なのは,腎機能評価です。
したがって,おもな対象は40~70歳代前半であり,高齢化の進展を考慮し,若年から積極的にCKDの予防・治療に努めることが重要です。
また,食塩過剰摂取な高血圧患者,糖代謝異常やMetS合併高血圧患者,PAで手術を拒否される高血圧患者では特に勧められます。そして,臓器障害を合併した高血圧患者に対しては,高K血症に注意しながらRA系抑制薬,Ca拮抗薬などと併用していく必要があると考えます。(佐藤) 

■エプレレノンはRHに対する治療効果のエビデンスが示されていますし,CKDを抑制するうえでRA系抑制薬との併用も勧められます。
また,肥満,MetS,臓器障害の合併高血圧についても有用性が期待されます。
私は現状では,こうした症例に対し,エプレレノンは十分に使用されていないと思います。(伊藤)  

■エプレレノンはRA系の最下流を抑える薬剤という認識は誤りであり,アルドステロンは独自の活性化経路を持ち,多彩な有害性を示すことから,その臨床的意義は大きいと言えます。

<コメント>
セララ®とACE阻害薬,ARBは併用注意ということですが、現在の多くの降圧療法ではACE阻害薬,ARBが使用されています。
そのあたりが普及の足かせになっているかも知れません。

出典  MT Pro 2010.4.1
版権 メディカル・トリビューン社


<きょうの「葦の髄」>
タナトリル(イミダプリル) 2010.4
http://yaplog.jp/hurst/archive/20


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