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2年前に中止となった血糖管理試験に続き,ACCORD試験(血圧管理試験,脂質管理試験;N Engl J Med3月14日オンライン版)は大きな反響を呼んでいます。
両試験とも一次エンドポイントで有意差がつかない“ネガティブ”な結果でした。
以下はMedical Tribune誌の記事(一部改変)からです。
東京医科大学(内科学第三講座)の小田原雅人主任教授は,臨床試験の結果を実地臨床に生かす際には短絡的な判断は禁物で,慎重かつ多面的に考察する必要があると主張する。
以下は
両試験の結果から提示された2つの命題―
(1)糖尿病患者の降圧目標値(130/80mmHg)の変更は必要か,
(2)スタチンへのフィブラート薬の上乗せは必要ないのか
―についての同教授の解説です。
血圧管理試験
脂質試験糖尿病患者の降圧目標値変更は必要か?
標準治療のレベルの高さが一次エンドポイントに差がつかなかった要因か
(1)ACCORD血圧管理試験では,収縮期血圧(SBP)120mmHg未満を目指した標準管理群と140mmHgを目指した厳格管理群で,一次エンドポイントの複合心血管イベント発生率に差がなかった
■とても意外な気がした。
というのは,血圧管理研究は血糖管理研究に比べ,明確な結果が得られやすいからだ。
現在は優れた降圧薬がそろっており,介入群と対照群で血圧値に違いを出すのは比較的容易である。
実際,ACCORD血圧管理試験でも1年後の平均SBPは厳格管理群で119.3mmHg,標準管理群で133.5mmHgと,両群間には14.2mmHgの差がついていた。
これまでの臨床試験の例から考えると,これくらいの差があればイベント発生率で差がついてもおかしくない。
■一次エンドポイントに差がつかなった1つの要因としては,最近の臨床試験全般に言えることだが,介入治療以外の対照群の治療内容が以前に比べ充実しており,イベントの発生が少なくなっていることが考えられる。
介入群でそれを上回る治療成績を挙げることが困難になっている。ACCORD血圧管理試験では標準管理群におけるイベント発生率は事前に想定した半数以下。試験デザインを策定する際には,ぎりぎり有意差がつくイベント数を計算して,症例数や追跡期間を設定しているはずなので,標準管理群のイベント数が予想の半数では有意差を出すのは難しい。
■ACCORD試験の対象は,心血管疾患(CVD)リスクが高い糖尿病患者。
高リスク患者が対象なら,イベントも発生しやすく,結果に差が出やすいだろうと考えられがちだが,高リスク患者を放置することは人道上できないので,いままで集積されたエビデンスで有効と考えられる治療を積極的に行うことになり,かえって差が出にくくなる一面もある。
いまの高リスク群は昔の高リスク群ほど高リスクではないことを理解する必要がある。
降圧目標を直ちに変更しなくてもよいが,「下げ方」には要注意
(2)降圧治療による重篤な副作用は,厳格管理群のほうが有意に高率だった。この点も踏まえ,ガイドラインが定める130/80mmHgという糖尿病患者の降圧目標は変更する必要はあるのか
■糖尿病患者の場合,疫学的には120/80mmHgまではCVDのリスクが低下することがわかっている。
しかし,血圧が高い人を120/80mmHgまで下げてイベントが減るかどうかについての,介入試験のエビデンスはなかった。
その意味で,ACCORD血圧管理試験の結果は注目されていた。
■臨床試験でネガティブな結果が出ると,“この治療は有効ではない”と捉えられがちだが,決してそうではなく,“有効だということが証明できなかった”ということ。
120/80mmHgまで下げると全員に副作用が発生するわけではない。高齢者や動脈硬化が進んだ人では注意が必要だが,安全にそのレベルまで下げられる人もいるはずだ。
■大切なのは血圧の“下げ方”。ポイントは「早めに治療を始めてゆっくり下げる」ことにある。
若い人は血圧が下がっても脳血流を維持する自律神経の機構が保持されているが,高齢者や糖尿病患者では自律神経障害があるため急に下げると脳血流が低下して,起立性低血圧が生じやすく,場合によっては脳梗塞を起こすこともある。
また,高齢者など動脈硬化が進んでいる人では,拡張期血圧が下がりやすく,その結果,循環動態が悪化する。症状を見ながらゆっくり下げることが重要で,ふらつきが見られたらそれ以上下げてはいけない。
■ACCORD試験は血圧管理試験だけでなく血糖管理試験もそうだが,かなり“乱暴に”下げるデザインで,副作用が出現しやすかったのだろうと思われる。
(3)厳格管理群では血清クレアチニン上昇例や推算糸球体濾過量(eGFR)低下例が多いなど,腎機能関係の副作用が目立った
■これも急に下げたことが影響しているかもしれない。
また,利尿薬の使い方が適切でなかった可能性もある。
利尿薬は循環血漿量を減らすので,eGFRを低下させる。利尿薬は少量使うことが重要。
血圧の“下げ方”や利尿薬の使い方などに十分留意すれば,130/80mmHgという糖尿病患者の降圧目標を直ちに変更する必要はないのではないか。
出典 MT pro 2010.4.6
版権 メディカルトリビューン社
<関連サイト>
ACCORD試験,血圧・脂質でも予想外の結果
http://blog.m3.com/reed/20100319/ACCORD_
降圧目標135/85mmHgは効果なし?
http://blog.m3.com/reed/20090731/_135_85mmHg_
<番外編>
[最終話]“僕ならこう診る”編 5
さよなら,そして…
出典 MT pro 2010.4.1
版権 メディカルトリビューン社
■心移植適応基準のなかに「運動負荷心肺機能検査」が含まれていることからもわかるように,心不全患者の機能評価は「動かしてみないとわからない」
■僕のボスであるDr. Stevensonの方針は,
「患者を診ないものには臨床研究はやらせない」
「患者を診ないものによいClinical Questionは見つけられない」
というものです。
いささか過激な発言ではありますが,僕もそう思います。
ただ,日本で働く自分を想像してみると,
「臨床を診ていて研究ができるのだろうか?」
と,不安になったりします。それは医師の日常業務が忙しすぎるからです。
■日本においては「立派な臨床医となる」そのモチベーションは「奉仕の心」以外にはないと断言できます。
とかく世間からは「医者はお金がもうかる」と思われがちですが,医師になれるだけ優秀な人材が本気で金もうけをしようと思ったら,まず最初にすることは「医者をやめること」でしょう。
■ 僕自身のことを語れば,「よい医師」とは患者をなおす医師のことで,いたずらに病棟で時間をつぶす医師のことではないこと,そして臨床医として「思い込みの医療」ではなく「患者のためになる医療」を実践するためには,たくさん勉強しなくてはなりません。
そしてまず,「わからないことを知る」ことから始めなければなりません。
それがDr. Stevensonの言うところの「よいClinical Question」であるわけです。
■僕の結論は,
「日本では新しいデバイスは必要ない,聴診器こそが最高のデバイスだ」
というものでした。
つまり,慢性心不全患者の予後をよくするためには「再入院をいかに防ぐか?」が大切なのですが,そのために新しい科学技術は必要ない,ということです。
それでは何が必要なのか?その答えは,
「クリニックで心不全を診る」
という所にありそうです。
<自遊時間>
聴診器の話が出たので思い出しました。
リットマンの聴診器のバネの部分が最近折れました。
以前にもあったので2回目です。
ちょうど臨床実習の始まる息子が生協でクラスの同士でまとめて一緒に「お値打ち価格で」注文するということでした。
いいタイミングということで便乗しようとしましたが、注文日に帰って来ての言葉は「お父さん、一人分しか駄目だった」というものでした。
息子にはリットマンではポリクリ仲間の中で間違えやすいからウエルチアレンがいいかもと、へそ曲がりの提案をしました。
私も久しぶりの気分転換にこの聴診器を注文し、リットマンも修理に出すつもりです。
勤務医の頃は結構重いリットマンの”Cardiology”を使っていましたが、先生方の聴診器は何をお使いでしょうか。
研修医相手に「聴診器ではなく左右の耳あての間が問題なんだよ」とイヤミをいっていた時代が懐かしい。
リットマン・ウェルチアレン聴診器
http://www.brightsmile.jp/
(「価格.com」に聴診器も出ているのにはびっくりしました)
その他
葦の髄(このブログのイラスト版です)
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。