戯れ言たれる侏儒
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< 薬剤誘発性TdP | メイン | 慢性腎臓病の病期分類に尿蛋白を >

きょうは、腎組織移行・PPARγ刺激作用のメカニズムの視点からイルベサルタン独自のドラッグ・エフェクトをめぐって討論した記事で勉強しました。

いまさらイルベサルタンかとかコマーシャル色の強い内容が鼻につくといった批判はあるでしょうが、何らか得るところはあると思います。

司会
光山 勝慶 氏 熊本大学大学院医学薬学研究部 生体機能薬理学 教授
出席者
小室 一成 氏 千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学 教授/大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学 教授
森下 竜一 氏 大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学 教授
堀内 正嗣 氏 愛媛大学大学院医学系研究科 分子心血管生物・薬理学 教授

優れた腎組織移行とPPARγ刺激作用をもつイルベサルタンの腎保護作用への期待
ARBの腎保護作用はクラス・エフェクトか? 腎組織移行・PPARγ刺激作用のメカニズムから考える

血圧管理をめぐって
強い降圧効果が持続するイルベサルタン

■本年(2009年)1月に,改訂版であるわが国の高血圧治療ガイドライン(JSH)2009が発行になりましたが,従来通り,CKDや糖尿病を合併する高血圧では特に厳格な降圧(130/80mmHg未満)の重要性が強調されています。
そして,CKD,糖尿病/メタボリック・シンドローム(MetS)を合併する高血圧に対してはRA系抑制薬が第一選択薬として推奨されています。(光山)

■多くの基礎・臨床研究によりRA系抑制薬は,インスリン感受性の改善作用があることが示されています。
また,糖尿病の新規発症を抑制したというエビデンスが得られたものもあります。
こうしたことから,糖尿病/MetS合併高血圧ではRA系抑制薬が第一選択薬に推奨されています。
また,RA系抑制薬には降圧を超えたかたちでの蛋白尿抑制作用というエビデンスも豊富にあるので,CKD合併高血圧に対しても第一選択薬になっているわけです。(小室) 

■ARBでは,糖尿病性腎症に対する日本人のエビデンスも集積されつつあります。
いずれにせよ厳格な降圧が求められているわけですから,ARB間での降圧の違いが重要な問題になってきています。(光山)
 
■海外データですが,イルベサルタンの24時間平均降圧効果は,他のARBと同等以上であるとの報告があります(Oparil S, et al : J Clin Hypertens 3 : 283-318, 2001)。(森下)
イルベサルタンは強力かつ持続的にAT1受容体と結合するために,強い降圧効果が持続すると考えられます。
イルベサルタンのAT1受容体の占拠率は,24時間後でも50%以上であったとの報告があります(Belz GG, et al : Clin Pharmacol Ther 66 : 367-373, 1999)。

■イルベサルタンではnon-dipper改善作用も報告されています(Polonia J, et al : J Cardiovasc Pharmacol 42 : 98-104, 2003)。(光山)

■non-dipperでは夜間血圧が高くなるわけですが,やはり強く持続する降圧効果が夜間血圧も低下させるためでしょう。(森下) 

 

世界中のガイドラインで高い評価を受けているイルベサルタンの腎保護作用
優れた腎組織移行
■臨床試験IRMA2において,イルベサルタンは用量依存的に腎保護作用(蛋白尿発現抑制作用)を発揮することが示されました(Parving HH, et al : N Engl J Med 345 : 870-878, 2001)。
また,IDNTにおいて,イルベサルタンは顕性腎症期において有意にイベント発症を抑制しました(Lewis EJ, et al : N Engl J Med 345 : 851-860, 2001)。
このように糖尿病の早期腎症期,顕性腎症期の双方の腎症ステージにおけるエビデンスをもっているのは,ARBのなかでもイルベサルタンだけです。
こうした結果を受けて,世界中の高血圧治療ガイドラインにおいて,イルベサルタンの腎保護作用が高く評価されています。
これは単なるクラス・エフェクトを超えたものであると言えます。(堀内)

■IRMA2やIDNTの成績は,いずれも一次エンドポイントで得られたものですから,非常に質の高いエビデンスだと思います。
薬理学的な根拠はイルベサルタンは腎組織移行に優れるということがまず1つです。
腎組織に速やかに移行したイルベサルタンは,腎でのAT1受容体を強力に抑制すると考えられます。
もう1つは,イルベサルタンのもつPPARγ刺激作用を挙げることができると思います。(森下) 


イルベサルタンのPPARγ刺激作用をめぐって
■ARBのなかでPPARγ刺激作用をもっているのは,イルベサルタンとテルミサルタンの2つだけです(図1)。
イルベサルタンは受容体の3か所の相互作用(トリプルバインディング)により強力なPPARγ活性化作用を発揮すると考えられます(図2)。
PPARγの活性化により,インスリン抵抗性の改善(図3),脂質・糖代謝改善,抗炎症,細胞増殖抑制などの好影響を及ぼし,AT1受容体遮断と重なり合うかたちで心血管イベントの阻止に働くものと思われます。(堀内) 





■イルベサルタンとテルミサルタンでは,PPARγ活性化の機序が異なる可能性が考えられます。
このため,PPARγによって調節されている遺伝子の発現が両薬剤で異なっている可能性が高いのではないかと思います。
in vitroの実験において,テルミサルタンはイルベサルタンより低用量でPPARγ刺激作用を示しますが,イルベサルタンは用量依存的にPPARγ刺激作用を増強します(Schupp M, et al:Circulation 109 : 2054-2057, 2004)。
このような両薬剤の違いは興味のあるところですが,今後,その詳細や臨床的意義についてさらなる研究が必要です。(森下)

■臨床の場でPPARγ刺激作用が有利に働くのは肥満,糖尿病/MetSなどを合併した高血圧患者です。
こうした症例は,イルベサルタンのPPARγ刺激作用からメリットを受けることができると思われます。(森下)

■HGF(Hepatocyte Growth Factor)はPPARγ活性化のプロモーター領域に存在しており,PPARγの活性化でHGFが上昇します。(HGFは,PPARγの下流遺伝子)
したがって,PPARγ活性化作用のあるイルベサルタンは,HGF上昇を介して腎保護作用を発揮している可能性もあります。(森下) 

■PPARγ刺激とAT1受容体遮断/AT2受容体刺激とが相乗的に作用している可能性もあるようです。(堀内) 

■ラットを使ったわれわれの検討でも,PPARγ刺激作用のないARB(AT1受容体遮断作用)とチアゾリジン誘導体(PPARγ刺激作用)との併用が,心筋リモデリング改善や血管内皮障害改善などの点で有用でした。
こうした2剤併用というかたちではなく,ARB1剤でメリットが得られれば,それがベストだと思います。(光山) 

■PPARγ活性化により,心肥大抑制作用も期待できると思います。
イルベサルタンを用いて,左室肥大退縮作用が海外のSILVHIA試験で検討されています(Malmqvist K, et al : J Hypertens 19 : 1167-1176, 2001)。
また,イルベサルタンではうっ血性心不全の新規発症抑制を検討した報告が得られています(Berl T, et al : Ann Intern Med 138 : 542-549, 2003)。(小室)


<まとめ>イルベサルタンに対する今後の期待
森下 
イルベサルタンの強いAT1受容体に対する結合力やPPARγ活性化が,日本人の心血管イベント抑制につながることを期待したいと思います。メタボサルタンともいえるでしょう。

小室 
イルベサルタンは,優れた降圧効果だけでなく,PPARγ刺激作用によるpleiotropic effectをもったARBであり,心保護作用も期待でき,その臨床的有用性は高いと考えます。

堀内 
PPARγ活性化作用をもつイルベサルタンは,強力な臓器保護という点で優れたARBであると思います。

光山 
今後,イルベサルタンはARBのなかでも独自のポジションを占めることが期待されます。


ESC2009(バルセロナ)にてACTIVE-Iが報告に
イルベサルタンが心血管疾患のリスク因子を有する心房細動患者の心血管イベントを世界で初めてARBで検討
■ACTIVE-I試験は,心房細動患者を対象として,心血管イベント抑制を検討した世界で初めての臨床試験で,心房細動患者の心血管イベントとの関係を明らかにした非常に有意義な試験であったと言える。(光山)
■イルベサルタンは腎保護に加えて,脳・心保護作用も期待できるARBであると言えるのではないか。(小室)
■治療ターゲットとしてMetS,肥満,糖尿病,CKDを念頭においたとき,ARBのなかでもイルベサルタンは期待度の高い薬剤として位置付けられると思われる。(光山)

出典 Medical Tribune 2009.12.24,31
版権 メディカルトリビューン社

<コメント>
最近、森下先生の「メタボサルタンとしてのイルベタン」の講演を聴きました。
HGFについても言及されました。
講演後の意見交換会で少し質問もしました。
そのことについては、また機会を改めてお話したいと思います。

 

<関連サイト>
[
PDF] メタボリックシンドロームに 配慮した治療とは
http://www.lifescience.jp/ebm/cms/ms/no.6/no.6_p2_12.pdf
(イラストがとてもきれいです)

 

メタボサルタン
http://yaplog.jp/hurst/archive/8

 

その他

葦の髄(このブログのイラスト版です)
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
 井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)

があります。  

 

 

 

 

 

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