戯れ言たれる侏儒
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僧帽弁閉鎖不全症へもカテーテル治療の可能性
低侵襲な血管内治療の適応は,冠動脈のみならず末梢血管や頸動脈,腎動脈,大動脈と年々広がりを見せているが,弁膜疾患においても経皮的大動脈弁形成術/置換術(TAVI)がわが国へも導入されたところである。
米国心臓病学会(ACC)2010と米国心血管造影インターベンション学会(SCAI)の合同学術集会(ACC 2010&i2 Summit,3月14〜16日)では,僧帽弁閉鎖不全症に対してもカテーテル治療が選択肢となりうる可能性が示された。
米ノースショア大学保健システム心臓カテーテル研究センター所長のTed Feldman氏が,僧帽弁閉鎖不全症の手術適応患者に対するカテーテル治療(僧帽弁形成術)と外科手術の1年間の臨床成績(EVEREST ※1 II試験)を報告。
安全性と有効性の面でカテーテル治療の非劣性が証明されたが,逆流症回避は1年後の時点で従来手術が良好な結果だった。

#経皮的に弁尖をクリップで結合
Feldman氏によれば,米国では年間25万人以上が僧帽弁閉鎖不全症と診断されているが,このうち治療が必要な患者の2割程度しか弁置換術や弁形成術といった外科的治療を受けていないという。

近年,小切開術の試みも一部では行われているが,全般的に外科手術へのハードルが高い一方で,内科治療には対症療法しか見込めない状況であった。

このような背景で開発されたのが, アボット バスキュラー社のMitraClip®システム(図)で,大腿静脈からのカテーテル挿入後に僧帽弁前尖と後尖をクリップによって結合するというものだ。

欧州ではすでにCEマークを取得,米国では米食品医薬品局(FDA)へ承認申請中だ。

 


逆流症回避は従来手術が確実
EVEREST II試験は同デバイスの第II相試験として行われ,北米37施設から279人が登録された。
対象は,ACC/米国心臓協会(AHA)ガイドラインで僧帽弁手術の適応のある患者。
患者はランダムにMitraClipデバイス群(デバイス群,184例)と弁形成術または弁置換術群(外科手術群,95例)に2:1で割り付けられた。
対象患者の平均年齢は65歳で,男性が6割超,冠動脈疾患が4割強を占めた。
心不全はデバイス群91%に対して外科手術群78%だった。

評価項目は安全性と有効性に分かれており,安全性については治療後30日間の死亡や脳卒中,再手術など12項目の主要な有害事象(MAEs ※2)が検討された。
その結果,MAEsはデバイス群9.6%に対して外科手術群57%とデバイス群で有意に少なかった(P<0.0001)。
MAEsのなかでも死亡,脳卒中,緊急事態など重症なイベントはデバイス群では0,外科手術群で順に2,2,1例という結果だった。

なお,外科手術群のMAEsは約4分の3が2単位超の全輸血であった。

生存率,弁機能不全に対する再手術,中等度から重度の僧帽弁逆流症の回避率を見た有効性評価(臨床的成功率)はデバイス群72.4%に対して外科手術群87.8%と外科手術群のほうが高かったが,両者の差は15.4%で非劣性マージンの31%は超えなかったため,デバイス群の非劣性が証明された。
逆流症の改善は外科手術群が良好な結果だったが,ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類は両群とも有意に改善し,症状のうえでは同等の成績であった。

ディスカッションでは,従来の外科手術のほうが逆流症の回避には確実な治療と言え,長期予後の観点からどこまでカテーテル治療を適応すべきかが議論された。
患者の症状としては同等であり,再手術に従来手術が施行可能な点が挙げられる一方,長期的には再手術がどの程度にのぼるのかが憂慮された。

報告したFeldman氏は,外科手術か効果の低い内科治療しか選択肢がなかったなかで,低侵襲かつ有効な治療法が新たに加わった点を強調した。
同試験では,心エコー検査による5年間の追跡が続けられる予定だ。
※1:The Endovascular Valve Edge-to-Edge Repair Study
※2:以下の12項目。死亡,脳卒中,僧帽弁再手術,緊急心血管手術,心筋梗塞,腎不全,深部創傷感染症,48時間超のベンチレーション,永続性心房細動の新規発症,敗血症,消化管合併症による再手術,2単位超の全輸血(治療後30日間)

出典 MT pro 2010.3.23
版権 メディカル・トリビューン社

<コメント>
かつての名女優エリザベス・テイラーも、このMitraClipを使用した手術を行っています。
Elizabeth Taylor Prepares For Heart Valve Surgery Via MitraClip
http://www.heart-valve-surgery.com/heart-surgery-blog/2009/10/06/elizabeth-taylor-heart-valve-surgery/

 

<MitraClip 関連イラスト>
MitraClip
http://yaplog.jp/hurst/archive/9

 

<関連サイト>
弁膜症のカテーテル治療
http://blog.m3.com/reed/20091112/1

新しい臨床試験データにより、MitraClip®システムが最も一般的な心臓弁疾患である僧帽弁閉鎖不全において、治療の有用な選択肢となる可能性を証明
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000002119.html

僧帽弁閉鎖不全症に対する経皮的治療介入の現状と将来
http://www.nv-med.com/tct/06/pdf/28.pdf

<コメント>
僧帽弁閉鎖不全症といっても原因はいろいろです。
具体的には弁尖異常(リウマチ熱、感染性心内膜炎)、弁輪異常(左室拡大、弁輪石灰化)、腱索異常(感染性心内膜炎、粘液様変性、外傷)、乳頭筋異常(虚血性心疾患による乳頭筋機能不全、心筋梗塞による乳頭筋断裂)など実に様々です。
したがって、カテーテル治療の適応も当然のことながら原疾患や重症度によって異なるものと思われます。
そのあたりほどうなのでしょうか。

いずれにしろ、術前の僧帽弁閉鎖不全症の評価が重要と思われます。


Chateau Noir1904」
http://www.ibiblio.org/wm/paint/auth/cezanne/chateau-noir/chateau4.jpg

<番外編>
不適切な心臓検査が少なくない
非特異的胸痛の有病率と治療状況
フィリップス大学(独マールブルク)のJulia A. Glombiewski博士らは「非特異的胸痛患者のうち標準的治療により症状が緩和するのは半数未満にすぎず,持続性の胸痛患者の10分の1に不適切な診断的検査が行われていた」との研究結果をArchives of Internal Medicine(2010; 170: 251-255)に発表した。

半数超が心因性胸痛
胸痛患者の半数超は心臓には基礎疾患がないと分類される。
なかには,上気道感染など別の疾患が認められる患者もいるが,病態生理学的原因が見つからない場合が多い。
そのような非特異的胸痛は,プライマリケアで頻繁に見られるが,こうした症状の経過とアウトカムに関する情報は少ない。

そこでGlombiewski博士らは,2005~06年にドイツの74プライマリケア診療所を受診した非特異的胸痛患者807例(平均年齢57.6歳)を調査した。
医師は,患者の胸痛に関する予備診断および,あらゆる検査と治療について記録し,初診から6週間後と6か月後に電話で聞き取り調査を行った。

6か月後の追跡時にデータを提供した755例中419例(55.5%)は依然として胸痛を有していた。
このうち45例(10.7%)は,診断の受け方が不適切(6か月間に心臓専門医を2回以上受診するか,血管造影や心電図などの心臓検査を3回以上受けている)と分類された。
胸痛が軽減した336例では診断の受け方が不適切と分類された患者は24例(7.1%)であった。

持続する胸痛で精神科専門医を受診した患者は6例(2%未満)にすぎなかった。
同博士らは「精神的因子が慢性胸痛の発症に影響することは周知であるため,この結果には驚いた」と説明。
「精神的な原因で非特異的胸痛が生じた患者は,問題のある受診行動を取る傾向が強いが,精神科専門医を受診することはまれであった。患者,一般開業医ともが精神医学的介入を導入することにちゅうちょしているようだ」と述べている。

同博士らは「今回の結果は,一般集団における胸痛有病率の高さを説明するのに役立つ。今後の研究で,非特異的胸痛に有効な介入法の開発と医療システム内での実施を検討する必要がある」と結論付けている。

出典 MT pro 2010.4.1
版権 メディカル・トリビューン社

 

 

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