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2000年以降,弁膜症の血管内治療の開発が加速してきています。
欧米では,経皮的大動脈弁留置術(TAVI)の臨床経験が積み重ねられており,近年は僧帽弁についても導入が進んでいるということです。
国内ではようやくTAVIの導入が始まったところです。
東京医科歯科大学大学院心臓血管外科の荒井裕国教授へのインタビュー記事で勉強しました。
欧米で進む弁膜症の血管内治療,その位置付けは?
血管内治療の位置付けを考える際の前提事項として,荒井教授は次の2点を挙げる。
まず,弁置換術/弁形成術は安全性や治療成績が飛躍的に向上してきており,この手術の恩恵を受けられる患者に「もうすぐ低侵襲の治療が導入される」と治療を先延ばしにするのは本末転倒という点だ。
2つ目は,血管内治療が導入された後も,標準治療は現行の弁置換術/弁形成術で変わらないという点で,これは,既に多くの臨床経験を有する欧米の専門家の意見でもあるという。
安全性に課題残るTAVI,慎重な導入を
現在のTAVIの適応としては,高度石灰化大動脈による手術禁忌症例や手術の高リスク症例が挙げられている。
欧米からの手術成績は報告によって異なり,30日後の死亡率が高いものでは25%となっている(弁置換術は約2%)。
治療リスクとして,急性大動脈解離や左主幹部閉塞,大動脈弁輪破裂など従来手術にはない重篤な合併症が報告されている点も懸念材料だ。
これらの背景から,荒井教授は「弁置換術/弁形成術が可能な症例にまで安易に推奨する治療ではない」と強調する。
また,従来は大動脈の高度石灰化で手術適応とならなかった症例へも,超音波破砕吸引法などの手術手技の工夫で可能となってきていることから,禁忌症例の範囲についても慎重に検討すべきだという。
TAVIの位置付けで期待されるのは,生体弁機能不全に対して再手術を行わずに再留置を行える点であるという。
また,今後の開発の動向としては,直視下ながら縫合せずに容易に装着できる人工弁,Sutureless ValveがTAVIと従来の生体弁の中間的デバイスとして注目されている。
一方,僧帽弁については弁尖をクリップで止める治療法が導入されているが,従来の外科手術でも同様の術式としてAlfieri法(弁尖の先端を縫縮)がある。
しかし,実際の手術では弁尖の逸脱箇所や組織硬化の程度に応じた複雑な工程を踏むことが求められることがほとんどで,この術式が選択されることは少ないという。
同教授は「弁の先端を止めるという大ざっぱとも思える治療でどれだけの効果が期待できるのか,現時点では確信が持てない」と述べる。一方,虚血による左室拡大のために軽度~中等度の機能的僧帽弁逆流を伴う症例では,虚血部位へのステント留置とこのクリップ術で「心筋リモデリングの改善効果が期待できる可能性もある」とするが,現時点では推測の域であると強調する。
血管内治療の導入は,これまで手術適応外,すなわち,なすすべのなかった患者への治療選択肢となるもので,この点は同教授も高く評価している。
わが国でこの治療導入が進むかどうかは,適切な患者選択にかかっていると言える。
出典 Medical Tribune 2010.4.22
版権 メディカル・トリビューン社
<コメント>
昨日も弁膜症をとりあげました。
心臓弁膜症の診断・治療
http://blog.m3.com/reed/20100429/1
きょうも引き続き「心臓弁膜症」がテーマです。
弁膜症の血管内治療の今後予想される普及は、正直言って心臓外科医の胸中は複雑だと思います。
ちょうど冠動脈のインターベンションと冠動脈再建術との関係に似ています。
今や先天性心疾患のうちのASDも血管内治療が行われるようになって来ています。
VSDも自然閉鎖例もあるわけですから、いよいよ複雑心奇形が残された領域になりつつあります。
もちろん解離性大動脈瘤や大動脈瘤が残ってはいますがそれとてステントが使用されつつあります。
ところで、血管内治療は何科の医師が行うのでしょうか?
施設によって異なるでしょうが、心臓外科医、循環器内科医、放射線科医が行うものと考えられます。
そして何科が行っているかによっても、その施設での適応が微妙に異なって来るような気もするのですが。
その他「葦の髄」メモ帖 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
一時減少傾向にあった心臓弁膜症(弁膜症)が再び増加しているようです。
その推定患者数は約200万人ともいわれます。
毎年1万人近くが手術を受けると見られています。
ご存知のように、かつて主因だったリウマチ性の弁膜症は激減しましました。
私が医師をスタートした病院は、循環器科が有名な病院であったためか数多くのリウマチ性弁膜疾患を診察することが出来ました。
心音図学も花形でしたし、心臓エコーの黎明期だったので,
FeigenbaumのTextでUCGの勉強もしたものでした。
中学校の先生をしている中年女性の先生が典型的な僧帽弁顔貌(重度のMS)で来院されましたが、一度も弁膜症を指摘されたことがなかったということもありました。
毎年の職域健診をどうやってくぐり抜けて来たんだろうと頚を傾げたのも今となっては懐かしい思い出です。
さて、最近の弁膜症患者が増加しているのは、もちろん高齢化や動脈硬化性疾患の増加が背景にあり、加齢性変化や動脈硬化による弁膜症が急増しているためです。
この方面のトピックスとしては
①3次元(3D)エコーの導入
②僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術の普及
③カテーテルを用いた生体弁置換術の検討
などがあるようです。
きょうは、こういった弁膜症の最新の診断と治療についての記事で勉強しました。
コメンテーターは岡山大学大学院医歯学総合研究科循環器内科の伊藤浩教授と,新東京病院心臓血管外科の山口裕己主任部長です。
##的確な重症度評価で早期治療の流れをつくる
弁膜症の最大の問題点は加齢。高齢になればなるほど発症リスクが高まることである。
従来の弁膜症の古いイメージを捨て,誰にでも起こりうる疾患と認識を改めなければならない。
高齢化の進行とともに,加齢・変性や動脈硬化による弁膜症が急増し,患者数は以前より増えている。
狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患と同様,弁膜症はまさに現代病と言える。
弁膜症は,心臓にある4つの弁(僧帽弁,大動脈弁,三尖弁,肺動脈弁)が,なんらかの原因でうまく閉じなかったり(閉鎖不全),十分に開かなくなって(狭窄)起こる。
とりわけ異常が発生しやすいのが僧帽弁と大動脈弁である。
なかでも僧帽弁閉鎖不全症,大動脈弁狭窄症が急増しており,高齢者の弁膜症の多くがこれである。
この2つに対する診断と治療戦略が重要である。
#僧帽弁閉鎖不全症
#重症例はできるだけ早く外科に
まず僧帽弁閉鎖不全症であるが,これにはいくつかのタイプがある。
最も頻度が高いのは,僧帽弁逸脱のように弁自体に原因がある器質的僧帽弁閉鎖不全症(primary MR)だが,最近は,虚血性心疾患に伴う心機能の低下によって,弁を支える組織が伸びたり,切れたりして二次的に弁の閉まりが悪くなる機能性僧帽弁閉鎖不全症(secondary MR)が増えている。
弁膜症の有無は,心雑音や身体所見,心不全症状などから推測が付くが,心エコー(特に経食道心エコー)では,原因,病変の局在,重症度まで評価できる。
さらに進化したのが3D食道エコーで,動画で弁膜の異常が一目でわかる。
精密診断はもとより,外科医が手術プランを練るうえで欠かせないツールといえる。
僧帽弁閉鎖不全症の治療は,弁置換術に代わり,弁の形を修復する弁形成術が主流である。
これによって内科の対応も大きく変わった。
弁形成術は,狭窄弁を切開したり,弁の一部を切除し,縫縮することで逆流を止めるもので,置換術に比べて術後の心不全発症率や死亡率が低い。
加えて弁を修復するだけなので,術後にワルファリンを飲み続ける必要がなく,術後のQOLを維持できる。
以前は無症状はもちろん心不全症状のある弁膜症でも,弁置換後の患者の負担を考え,薬物療法で粘る場合が多かった。
しかし弁形成術の普及で,そうした懸念が消え,早期手術の道が開かれた。
一方,重症の僧帽弁逆流があると,たとえ無症状でも3年で死亡率が約30%と予後は不良である(図1)。
また,薬物療法を続けることが予後改善につながるというエビデンスもない。
「重症の逆流と診断された症例は,できるだけ早期に外科に送る決断が大事。それが内科医の役割」と同教授は強調する。

#重症度評価は弁口逆流面積で
そこで問題となるのが,僧帽弁逆流の重症度評価だ。
現在は,カラードプラ法で逆流ジェットを描出し,到達距離や広がりで判定することが多い。
この方法は簡便だが,半定量的でスクリーニングの域を出ない。そこで最近,新たな指標として注目されているのが弁が閉じていない部分の面積である弁口逆流面積(EROA)※1だ。
カラードプラ法に連続波ドプラを併用し,計算式で求めるもので,
EROAが30m㎡未満は軽度,
30~39m㎡は中等度,
40m㎡以上は高度
と判定する。
米メイヨー・クリニックの研究では,EROAが大きくなるほど予後は不良で,40m㎡以上は20m㎡未満の患者に比べ,心臓死のリスクが倍以上になると報告されている(図2)。

EROAの最大のメリットは定量的で客観性に富むこと。判定に主観が入る心配もない。
EROAによって心エコーによる重症度評価の標準化が可能になった。
広く普及することによって,僧帽弁閉鎖不全症の早期治療につなげる可能性がある。
#大動脈弁狭窄症 手術タイミングの見極めが大事
一方,僧帽弁閉鎖不全症と同様,患者数の増加が目立つ大動脈弁狭窄症でもリウマチ性は減少し,動脈硬化により弁が石灰化し変性するタイプが増えている。
大動脈弁狭窄症の特徴は,無症状の期間が長いことだ。
しかしこの間に狭窄は確実に進行し,これを止める手立てはない(図3)。

例えば,加齢変性の大動脈弁狭窄症の場合,弁間圧較差は年に平均約7mmHg増加し,弁口面積は約0.1~0.14㎠減少していく。
そして,いったん心不全,失神,狭心症などの症状が発現すると,心臓の状態は加速度的に悪化し,放置しておくと2~5年以内に半数が死亡するという。
ただし,僧帽弁閉鎖不全症と違って大動脈弁狭窄症は弁形成術が難しく,人工弁による弁置換術が一般的だ。
このため,冠動脈バイパス術や他の心臓手術を受ける患者は別にして「手術は症状が出てから」というのが世界的なコンセンサスとなっている。
しかし,無症状とは言え放置しておくわけにはいかない。
心負荷と症状を軽減するため薬物治療を行うと同時に,定期的に重症度を確認する。
重症度は,心エコーによる大動脈弁口面積,弁間圧較差で評価する。
ここでも重要な指標は定量的に測定できる弁口面積で,日本人の場合,0,75㎠以下が重症と判定される。
そこでポイントとなるのが,手術のタイミングの見極め。
症状が出現した場合は当然だが,無症状でも重症の狭窄と判断された患者は,外科医に紹介するのが望ましい。
大動脈弁狭窄症の有効な治療法は弁置換で,年齢に制限はない。しかし,高齢患者のなかには,開心術が負担になるケースもあることから,最近カテーテルを用いて生体弁を置換する方法(経カテーテル人工弁置換術)が導入された。
手術リスクの大きい高齢患者には朗報であり、新たな試みとして期待される。
##僧帽弁では弁形成術が主流に,大動脈弁では生体弁の置換術が増加
僧帽弁閉鎖不全症では弁形成術が主流に,大動脈弁狭窄症では生体弁による弁置換術が増え,ともに治療成績は目覚ましく向上している。
#僧帽弁閉鎖不全症
#ほとんどのケースで弁形成術が可能,
低侵襲手術の試みも
弁形成術の最もよい適応は,僧帽弁逸脱症である。
僧帽弁は前尖と後尖の2つの弁から成るが,このうち変性によって後尖の腱索が切れたり,伸びきったりして起こる弁逸脱はほとんどが修復できる。
前尖が逸脱している場合は,後尖の一部を前尖の逸脱していない部分に移植するなど高い技術が必要だが,現在はこれも十分可能になっている。
新東京病院心臓外科では,こうした難易度の高い手術を含めて,年間130例もの弁形成術を行っており,日本での実績をリードしている。
弁形成術は,自己弁を温存するため,左心機能が維持され,弁置換術に比べ遠隔期の死亡率も低い。
米国心臓病学会(ACC)/ 米国心臓協会(AHA)ガイドラインでは,弁形成術の適応を心不全症状の有無で分け,有症状で心機能低下が軽度なら弁形成術を,無症状で心機能が正常でも重症の僧帽弁閉鎖不全症には,経験豊富な施設において成功率が90%を上回ることを条件に弁形成術を勧めている。
たとえ無症状でも逆流が高度なら,放置しておけば弁の変性が進む。
心機能を良好に保つためにも早期の弁形成術が望ましい。
もっとも,すべての僧帽弁閉鎖不全症で弁修復ができるわけではない。
例えば,リウマチ性・感染性の弁膜症で弁組織が破壊されていたり,僧帽弁狭窄・不全症の重症例で,弁の一部あるいは全体が石灰化し,固くなっていたりする場合は,弁形成には適さず,むしろ弁置換のほうが安定した成績が得られる。
同院の場合,僧帽弁閉鎖不全症に対する手術の98%が弁形成術で,残り2%が弁置換の対象になっているという。
弁形成術は,僧帽弁閉鎖不全症の標準的な手術療法となりつつあるが,そうしたなか,
さらなる進化を求めて,一部で低侵襲手術も試みられている。
山口主任部長が2年前より行っているのは「小開胸による僧帽弁形成術」だ。
通常の弁形成術では胸の中央を約20cm切開するが(正中切開),小開胸では右の乳房下を8cmだけ切り,その小さな傷から心臓にアプローチし,内視鏡支援下で弁形成術を行う。
安全に手術を実施するため,普通,大腿動脈から挿入する人工心肺装置の管を,腋窩動脈につなぎ,ここから送血するなどの工夫もしている。
現在,小切開手術を手がけているのは数施設であるが,侵襲が小さく,入院期間も短くてすむほか,術後,傷口が目立たたず,女性患者には大きな福音となる。
#大動脈弁狭窄症
#生体弁,機械弁の選択は患者の社会的背景を配慮
一方,大動脈弁狭窄症では,変性した弁を人工弁に取り換える弁置換術が確立された治療法である。
弁置換術の場合,患者は再手術(生体弁)やワルファリンの継続使用(機械弁)といった負担を強いられる。
それだけに,外科医は手術時期を適切に判断しなければならない。
ACC/AHAガイドライン(図5)によると,手術適応となるのは,まず重症で心不全,狭心症,失神などの症状がある場合。
症状が発現すると予後不良なので早期に弁置換を行う。
また無症状でも,左室駆出率が50%未満に低下した重症例も対象となる。
さらに,狭窄が中等度でも冠動脈バイパス術など他の心・大血管手術を受ける場合は弁置換術の適応である。

無症状の大動脈弁狭窄症に対する弁置換術の適応については議論がある。
しかし,なかには心筋障害が進行し,不可逆的な心機能低下を来すような症例もあり,早めに手術したほうがよい。
ただそれには,弁膜症手術の実績が十分で,高い技量を持つ外科医がいる施設という条件が必要である。
弁置換術でもう1つポイントとなるのが,生体弁か機械弁かの選択だ。
生体弁の比率が高い欧米と異なり,わが国では機械弁の使用が多く,以前は8割を占めていた。
その理由として,日本では患者のフォローアップがきめ細かく,ワルファリンのコンプライアンスが比較的良好だったことが挙げられるが,
一方で,医師側が再手術を忌避し,耐久性の優れた機械弁に誘導する傾向があったことも見逃せない。
しかし生体弁が進化し,長期成績が向上したことで,事情は変わり,最近では生体弁が全体の5割を超えるようになっているという。
ちなみに,同院の場合,大動脈弁置換では9割が生体弁だ。
従来,人工弁の選択は,65歳以上は生体弁,それ以下は機械弁と年齢で決めることが多かった。
ワルファリンのリスクや弁の劣化による再手術のリスクを十分に評価したうえで,患者の希望や社会的背景を考慮して選択すべきという意見もある。
カテーテルによる生体弁留置術については,いずれも試験段階で,現在の治療法を超える十分なエビデンスは得られていないのが現状である。
#機械弁,生体弁の進化
#機械弁は二葉弁が主流
弁置換術に用いられる人工弁には機械弁と生体弁の2種類がある(図)。

機械弁は,カーボンやステンレスなどでできており,耐久性に優れる。
しかし,弁に血栓が付着するのを防ぐため,置換後,生涯にわたって抗凝固薬を服用し続けなければならない。
最初に開発された機械弁は,ケージ付きのボール弁で1960年代前半から20年あまりゴールドスタンダードとして世界中で用いられた。
70年代後半になると,より耐久性に富むパイロライティックカーボンを素材にした二葉弁(セント・ジュード・メディカル; SJM弁)が登場する。
2枚の半月型のリーフレットを小さなヒンジで支える構造で,開放角が広く,弁前後の圧差が少ないなどの利点がある。
これまでの30年間での使用実績は190万個以上。4,480例を対象とした長期遠隔調査(平均7年,最長25年)でも,再手術回避率がきわめて高いことが証明されている。
現在,わが国で多く用いられているのは,この二葉弁を改良したタイプ(SJMRegent)。従来型に比べて弁口面積がより広くなり,血液の乱流を防ぐ工夫が加えられている。
さらに開閉のたびに血液が洗い流される構造で,血栓が付きにくいという利点もある。
#生体弁―弁口面積拡大と耐久性向上
一方,生体弁はウシやブタの生体組織からつくる。
血栓の心配はほとんどなく,ワルファリン内服を必要としない。耐久性の面で機械弁には劣るとも言われていたが,近年改善が進み,10~20年の耐久性も報告されている。
生体弁にはステント弁とステントレス弁の2タイプがある。
ステント弁は,金属やポリマーでつくられたステント(フレーム)に,生体組織でできた膜や大動脈弁をマウントしたもの。
僧帽弁,大動脈弁を含めたすべての弁置換に用いることが可能で,置換術も比較的容易だ。
ステント部分があるため弁口面積が狭くなるというデメリットがあったが,弁輪上への植え込みに適した弁が開発され,より広い弁口面積が得られるようになり,大動脈弁の置換術では最も多く用いられている。
これに対してステントレス弁は,大動脈弁の置換術のみに用いられるが,フレームや縫着弁座がなく,心臓になじみやすい利点もある。
特に,大動脈起始部(大動脈弁と上行大動脈)をすべて置換するような手術では有用性が高い。ステント弁に比べ高度な置換技術が必要とされ,弁口面積の広いステント付き生体弁が開発されていることもあり,使用数は減少傾向にある。
なお,胸部外科学会などの統計資料に基づき試算された2008年の人工弁の症例数は,1万5,000件弱で,うち生体弁が56%と推定されている。
出典 Medical Tribune 2010.4.22
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(内科医向き)
があります。
昨日の後半です。
デリケートな内容もありますので、出来るだけ改変しないようにします。
本音で語り合う座談会は読んでいて気持いいものです。
私も講演会に出席する際には出来るだけ意見交換会で演者に迷惑にならない程度にお話を伺うように心がけています。
私の年齢をここで種明かしします。
同級生で院長になっている連中を除けば勤務医はそろそろ定年です。
講演される先生のほとんどは年下です。
医学には年齢は関係ありませんが、何だか老婆心ながら喋りかけてみたい年回りなんだなと思うのです。
心の中では、演者が本物かそうでないかを峻別する楽しみも味わっているのです。
自分ながら悪い趣味だと思いますが生来へそ曲がりだから仕方ありません。
##エビデンスから何を学び,診療に役立てるか(後編)
##日本でエビデンスを構築するには
昨今は,わが国からも数多くのエビデンスが発信され,そのなかからは欧米の主要学会で大々的に発表され,主要雑誌に掲載されるなど諸外国から注目を集めるエビデンスも“輩出”されている。
しかし,全般的に見たわが国のエビデンスには,まだ「詰めの甘さ」が見られるとEBM専門家は指摘する。
<コメント>
MT誌にしては結構珍しい「辛口」の前置きです。
どんな「エビデンス」を想定しているかは賢明な先生方それぞれに思い浮かべる「エビデンス」があると思います。
筒井 裕之 教授 北海道大学大学院循環病態内科学
山下 武志 研究本部長 心臓血管研究所
横井 宏佳 部長 小倉記念病院循環器科
森本 剛 講師 京都大学医学教育推進センター
#質の高いエビデンスには統計家と臨床家のコミュニケーションが必須
■最近の日本の臨床研究論文を見ていて気になるのは,統計解析担当者が共著者に入らずに外注したことが明らかに見て取れる論文が多いことです。
実際,日本には臨床試験などの統計処理を業務としている会社がいくつもあり,お金を出せば共著者に名を連ねることなく解析を請け負ってくれる状況です。
しかし,統計解析担当者が過去にどんな論文を出し,どんな解析をしたかということは非常に重要な情報であり,信用のよりどころにもなります。
それを匿名の外部者に任せ,著者は十分に内容を吟味しないまま論文にまとめてしまうのは無責任なことであり,信頼が得られないのは当然です。
そもそも,質の高いエビデンスをつくるためには,試験をデザインする段階から統計家と臨床家が密にコミュニケーションを取っていくことが必要だと思いますが,残念ながら,日本ではそのあたりの意識が低いように思えます。
(森本)
#J-RHYTHMからの学び
■全くその通りです。実を言うと,われわれが行ったJ-RHYTHMという試験は,まさに統計家不在のもとで進められた失敗例の見本のような試験だったと反省しています。
J-RHYTHMは,心房細動に対するリズムコントロールとレートコントロールを比較した試験です。
当初の計画では持続性心房細動と発作性心房細動を1,300例ずつ集める予定で,デザインペーパーにもそう記載したのですが,ふたを開けてみると持続性心房細動は数が集まらず,発作性のみでの解析となりました。
また,発作性心房細動症例も800例を超えるのがやっとでした。もしデザイン段階から統計家が携わっていたなら,こうした事態に対する備えもできただろうと思います。
また,1次評価項目は複数のイベントの複合なのですが,その1つが「身体的・精神的な理由による治療方針の変更」というソフトエンドポイントであった点も問題です。
つまり,患者さんが「症状が今1つすっきりしない」とか「不快だ」と訴えたために治療法を変更した場合も,死亡や脳卒中と同じ「イベント」として数えられるわけです。
治療はオープンラベルで,医師には「レートコントロールよりリズムコントロールのほうがいいはずだ」という思い入れがありますので,ここに恣意性が働いた可能性は十分にあります。
J-RHYTHMが計画された2002年当時は,統計家にプロトコル作成に加わっていただくという発想自体がほとんどありませんでしたので,ある程度仕方がなかった部分はありますが,今にして思えば発表するに値しない試験であったかもしれません。
その反省を踏まえ,現在進行中のJ-RHYTHM IIでは,最初から統計家に参画していただいています。(山下)

#サンプルサイズが小さい場合はサロゲートの評価項目を活用
■山下先生は「これは出すべき論文じゃなかった」とおっしゃいましたが,私は出して正解だったと思います。
持続性心房細動の症例が集まらなかったことなど都合の悪かったこともきちんと記載して,「その結果こうだった」と報告する姿勢が大事ですし,後の研究にもつながると思います。そうでないと,ポジティブなデータだけが世に出ることになってしまいます。
それから,ソフトエンドポイントの問題については,やはりクレームが付く可能性が高いので避けたと思います。
ハードエンドポイントにするのが理想ですが,サンプルサイズが小さければそれに合わせたサロゲートの評価項目も探したでしょうね。(森本)
■でも,心房細動は死亡率が低いので,死亡はエンドポイントにできませんし,塞栓症もワルファリンの有無でほとんど決まってしまいます。
よいサロゲートマーカーがないのです。(山下)
■例えば,B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)はどうでしょう。比較的客観的でしかも差が出やすいので,例数が少ないときに使えると思うのですが。(森本)
■以前,脳神経内科の先生方とディスカッションしたとき,やはりBNPを塞栓症リスクのサロゲートマーカーにしようとしているとおっしゃっていました。(横井)
■残念ながら,心房細動ではほぼ全例でBNPが上がってしまうので無理です。(山下)
<コメント>
山下先生の講演会でBNPについての質問をしたことを思い出しました。
先生の考え方におは論理の破綻がありませんでした。
臨床指向の姿勢は私なりに評価しています。
■特異性が低いこともネックになると思います。
BNPは心不全で上昇しますが,そのほかに,加齢や腎障害の場合などでも上がりますから。(筒井)
■しかし,ランダム化すれば両群にばらつかせることができるので,交絡因子の影響はある程度減らせることができます。
ランダム化試験が組めるのであれば,サロゲートの評価項目は非特異的な因子でも状況によっては可能だと思います。(森本)
■J-RHYTHM IIでのエンドポイントは心房細動のあった日数としています。(山下)
■それはいいですね。それなら恣意性が働く余地は少ないです。(森本)
■ただ,時にはサロゲートマーカーが真のエンドポイントと一致しないこともあります。
その最たる例が,CAST試験(NEJM 1991; 324: 781-788)です。
心室性期外収縮の抑制に優れたナトリウムチャネル遮断薬(クラスIc群)の抗不整脈薬により,かえって生命予後が悪化することが明らかとなり,世に衝撃を与えました。
心房細動の日数についても,生命予後と相反することが絶対ないとは言えないのではないでしょうか。(筒井)
■その可能性はあります。
ですから,サロゲートの評価項目で見る場合はハードエンドポイントとのconsistency(一致性)を意識することが重要です。
つまり,J- RHYTHM IIの場合なら,日数と合わせて実際のイベント発生数も調べるわけです。
たとえハードエンドポイントのP値が有意でなくてもconsistencyはわかります。(森本)
■逆転が起こっていないかどうか,一定の方向が理解できるということですね。(山下)
#~JCARE-CARD~
#多変量解析でも“consistency”が重要なキーワード
筒井 われわれが行ったJCARE-CARD試験について紹介したいと思います。
■JCARE-CARD試験は,比較試験ではなく前向きの登録観察研究で,左室駆出率(LVEF)の保持された心不全患者(LVEF 50%以上)とLVEFの低下した患者(LVEF 40%未満)の予後(死亡や心筋梗塞による入院)を比較したものです。
試験デザインの段階で専門家に相談してデザインや解析法を決めましたが,解析自体は内部で行っています。
その結果,未補正でもLVEFの保持された患者の予後は,低下した患者と差がなかったのですが,種々の因子を補正しても両者の差は見られませんでした。したがって,LVEFが保持されていても予後は必ずしもよいとは限らないというのが,この試験の結論です。(筒井)
■多変量解析では,どのモデルをお使いになられたのでしょうか。(森本)
■Cox比例ハザードモデルを使いました。(筒井)
■論文にはどのモデルを使ったのか,なぜそのモデルを選んだのかという説明が書かれていないことが気になります。
ご存じのように,補正のかけ方にはいくつかのパターンがあります。(森本)
■それによって結果が違ってきますよね。(山下)
■あるモデルでは有意な差が出たけれども別のモデルでは有意でなかったということになると,consistencyがないということになります。
先ほどイベントのconsistencyが重要だという話をしましたが,多変量解析のconsistencyも重要なキーワードであり,それを表現するには論文にきちんと方法を明記することが大切だと思います。(森本)
■このあたりは方法に書いていますが,補正した因子は別のところに書いており,わかりにくくなっています。
参考になりました。(筒井)
#解析方法や変数は選択理由を明確に
■この試験ではLVEF 50%以上が「LVEFの保持された患者」,40%未満が「LVEFの低下した患者」とされており,真ん中の40~50%に該当する患者は除外されています。
これはなぜなのでしょうか。(森本)
■LVEFが保持された心不全については,カットオフ値のコンセンサスがまだ得られておらず,40~50%の患者は文献によって扱いがまちまちな「グレーゾーン」なのです。
そこで今回は,シンプルに比較するため,50%以上と40%未満の2群での比較という形を取りました。(筒井)
■例えば,40%と45%,50%という感じでいくつか異なるカットオフ値を設け,どこで分けた場合も一定の傾向が得られたというような形でまとめることができるなら,そのほうがいいような気がします。(山下)
■私もそう思います。
解析は恣意的な条件で患者を除外することなく,すべての患者を対象とすることが大原則であり,特定の集団を抜き取ることは避けるべきです。特に,真ん中の集団を抜き取ってしまうとリアルワールドの状況とは変わってしまう可能性があります。
ここはやはり,山下先生がおっしゃったようにカットオフ値を変えるとか,LVEF 40%未満と40~50%,50%以上という3群間で比較し,真ん中は有意じゃなかったけれども上と下には有意差があったという形にしたほうがいいと思います。
あと,論文を査読するエディターからも「真ん中を外したのは何か隠しているからじゃないか」と勘ぐられる可能性があります。そうした事態を避けるためにも,解析の方法や変数は選択理由が明快で再現可能なほうがいいと思います。キーワードは “transparency”,透明性ですね。(森本)
■そうですね。
同様の解析を行ったわれわれの以前の研究や,米国でのOPTIMIZE研究では,先生が指摘されたような形でまとめています。

#臨床に通じた統計家の育成は循環器領域の課題
■森本先生のお話はたいへん参考になりました。
ただ,われわれも臨床研究を行う際には早い時点で先生のような方とコンタクトを取りたいと思うのですが,身近にそういう人がいないため,結局民間の臨床試験受託企業(CRO)のような会社にお願いする形になるのが,今の日本の現状だと思います。
日本から良質なエビデンスが育ちにくい理由の1つには,CROに莫大なお金を持って行かれてしまって,研究そのものに十分な資金が割けないということがあるのかもしれません。(横井)
■ROはそれがビジネスですから…。
でも,解析には臨床のセンスも必要ですから,本来は循環器の臨床の人材のなかから統計に長けた人間を養成すべきではないかと思います。
実際のところ,私も臨床医ですが,「インターベンションが得意な先生がいるのと同じように,私は統計が得意」といった感じなのです。(森本)
<コメント>
森本先生のコメント。
好感が持てますよね。
山下 臨床にも通じているところが重要なポイントですね。純粋な統計家の人と話すと,全然話が通じないことがしばしばありますから。
森本 それに,同じ病院にいればディスカッションの時間もたっぷり取れます。
最初の話に戻りますが,優れたエビデンスを構築するためには,やはり計画段階から統計家と臨床家がコミュニケーションを取っていくことが必要なんです。
山下 ディスカッションを重ねていれば,論文にも解析方法を詳しく書けますね。
横井 内部で統計の部分をしっかり抑えてしまえば,CROに莫大なお金を支払う必要もなくなり,いろいろな研究にお金をかけることができますしね。日本の循環器系の学会がそういうことに投資して,人を育てていく体制が整うといいですね。
森本 同感です。日本の大きな学会は人材も資金も潤沢ですから,本気で取り組めば国際的にも評価される試験がたくさんできると思います。
まとめ
○ 質の高いエビデンスを構築するためには,試験デザインの段階から臨床家と統計家の密なコミュニケーションが必要。統計処理もエビデンスの重要な一部。
統計を匿名の人任せにした論文は信用が低い
○ 評価項目はハードエンドポイントが理想だが,サンプルサイズが小さければそれに合わせたサロゲートの評価項目を活用する。
その際,ハードエンドポイントとのconsistency(一致性)を確認できるようにする
○ consistency(一致性),transparency(透明性)は信頼されるエビデンスの要件。
解析法や変数の選択理由は明確にし,ネガティブデータも隠さず載せたうえで,理由を考察する
○統計解析は臨床のセンスが必要である。
臨床に通じた統計家は,循環器の臨床現場で育成することが望ましい
出典 MT pro 2009.12.24,31
版権 メディカルトリビューン社
<コメント>
「腹を割った」若手の先生達の、久しぶりにいい座談会でした。
こんな座談会を是非継続していただきたいと思います。
薬物治療やデバイスの進歩により循環器領域でも治療選択肢が増えています。
そのため,選択のよりどころとなるエビデンスの重要性はこれまで以上に高まっているといえます。
昨今の循環器診療に重要な課題を提供した試験の概要とその方法,解釈を分析した座談会の記事で勉強しました。
出席者は以下の4人の先生方です。
筒井 裕之 教授 北海道大学循環病態内科学
森本 剛 講師 京都大学医学教育推進センター
山下 武志 部長 心臓血管研究所研究本部
横井 宏佳 部長 小倉記念病院循環器科
Round-table Discussion/座談会 エビデンスから何を学び,診療に役立てるか(前編)
不整脈・心不全・虚血性心疾患の臨床にインパクトを与えた試験結果を読み解く
<不整脈>RE-LY試験 (山下武志部長 紹介)

■2009年8月の欧州心臓病学会(ESC)で報告され,大きな話題となりました。
心房細動患者を対象に,新規抗トロンビン薬dabigatranの脳卒中予防効果を検討した試験で,対照薬にはワルファリンが用いられました。(山下)
■プラセボ比で約70%の相対リスク低下を誇るワルファリンに対抗できる薬剤はなかなか見つかりませんでした。
こうしたなか,ようやく有力な候補であるdabigatranが登場し,両者を比較するRE-LY試験が実施されたわけです。
しかし,ワルファリン群の患者にはプロトロンビン時間のモニタリングが必要になるため,盲検にはできません。
そのため,オープンラベル試験として行われ,dabigatranの2種類の用量間は二重盲検とするデザインが採用されました。(山下)
■2年間の追跡の結果,1次評価項目の発症率は,dabigatranでは低用量群・高用量群ともワルファリン群を下回り,ワルファリンに対する非劣性が証明されました。
さらに,頭蓋内出血の発症率はワルファリン群より有意に低く,相対リスク低下は60%を超えました。
つまり,これまでのゴールドスタンダードだったワルファリンの持つ不便さを解消し,しかも効果と安全性は同等もしくはそれ以上という薬剤が登場したと解釈できる試験ではないかと思います。(山下)
筒井
非劣性試験とはいえ,高用量のdabigatran群では優位性さえ認められたわけですね。
ただ,イベント発生率がすごく低いようですが,NNT(number needed to treat)はどのくらいでしょうか。
山下
200ぐらいです。
ワルファリン自体が非常に効果の高い薬剤ですので,NNTで見たインパクトはわずかです。
そもそも,この試験の目的は利便性を追求することですので,効果についてはほぼ同等と捉えたほうがいいと思います。
森本
ワルファリン群の年間イベント発生率が1.69%というのは,一般的な値より低いのでしょうか。
山下
低くはないと思います。
プラセボでの発生率が5%程度と推定される集団ですので,その7割減ですから1.5%前後なら妥当な数字だと思います。
森本
そうすると,途中で症例数を1万5,000例から1万8,000例に増やしていることが気になります。
予想よりイベント発生率が低かったのなら理解できますが,そうでないのなら,dabigatran群の効果が予想したほどではなかったために例数を増やしたという可能性が疑われます。
山下
1万5,000例では非劣性が証明できなかった可能性があると…。
森本
あるいはもう少し頑張って優位性を示そうと考えたのかもしれません。
いずれにせよ,お金をかけて3,000例も増やしたのには何か理由があるはずですが,「イベント数が少ないため」と書かれているだけで詳細は不明ですね。
山下
これは盲点でした。今までだれも指摘していないと思います。
森本
とはいえ,評価項目は脳卒中や塞栓イベントのハードエンドポイントですし,結果については議論の余地はないと思います。
横井
そうですね。
この結果を受けて,今後の実臨床ではワルファリンからdabigatranにシフトしていくのでしょうか。
山下
日本への導入はまだですが,将来的にはそうなると思います。
<心不全>MUCHA試験 (筒井裕之教授 紹介)

■心不全に対するカルベジロールの有効性をわが国で初めて証明し,それまでβ遮断薬が禁忌とされてきた心不全への適応が承認されるきっかけとなった試験です。
5年も前の試験ではありますが,11月開催の米国心臓協会(AHA)学術集会のLate Breakingで取り上げられるJ-CHF※試験の基盤となる日本での承認を取るための第III相試験です。(筒井)
※Assessment of Beta-Blocker Treatment in Japanese Patients with Chronic Heart Failure
■対象は,虚血性・非虚血性を問わずニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類II〜III度で左室駆出率(LVEF)40%以下の心不全患者174例で,当時の標準治療にプラセボもしくはカルベジロール5mgまたは20mgをadd-onするプラセボ対照試験です。
なにぶん5年前の治験ですので,1次評価項目が全般改善度になっているのですが,死亡もしくは心血管系の入院というハードエンドポイントも見ており,カルベジロール高用量群ではプラセボ群より有意に低下していました。
しかし,イベントの内訳を見ると,プラセボ群では12例すべてが入院で,死亡は0なのですが,カルベジロール5mg群では4例中2例,20mg群でも4例中1例が死亡です。
つまり,死亡に対する抑制効果は認められていなかったのです。
筒井
そこで,今度のJ-CHF試験では,日本人におけるカルベジロールの効果をハードエンドポイントで検証しようというのが目的の1つです。
また,MUCHA試験では,全般改善度でもLVEF増加率の比較でも,低用量より高用量で高い効果が認められましたが,低用量5mgでも効果は十分にありました。
一方で,実際のわが国におけるカルベジロールの平均用量は8mg程度です。
したがって,実際に用いられている5mgや2.5mg,あるいはもっと少ない1.25mgでも効果があるかどうかを検証することがJ-CHF試験のもう1つの目的です。
山下
実際,中等度以上の心不全の場合,20mgを飲むのはきついですよね。
状態がいい人しかランダム化できないような気がします。
筒井
それはありますね。
20mgを服用できそうにない人は試験対象者から外れてしまいます。
横井
日本では毎月こまめにフォローアップするので,20mg群に割り付けられた人もあまり脱落することなく耐えられたということはありませんか。
筒井
確かに欧米の臨床試験では3か月間隔ぐらいでフォローアップされていますが,日本では毎月ですから,可能かもしれません。
森本
そもそも,なぜ5mgと20mgという用量設定だったのでしょうか。
また,1:1:2の割り付けで20mg群に倍の人数が割り当てられている理由もわかりません。
読んで理由がわからない論文は後でクレームが付くリスクが高いので,エディターは避けたがります。
そのあたりは今後改善する余地があると思いました。
あと,もう1つ気になったのですが,LVEFの測定データは主治医にブラインドされていたのですか。
筒井
カルベジロールの用量は当然ブラインドされていますが,LVEFの結果は主治医がわかります。
森本
そうすると,その情報が入院の判断に影響すると思うのです。「この人はLVEFが悪いから入院させよう」というように。戻さないことの倫理性との兼ね合いが難しいところだと思うのですが,そのあたりは少し弱いのではないかと思います。
<虚血性心疾患>COURAGE試験 (横井宏佳部長 紹介)

■2年半前の試験になりますが,われわれインターベンション専門医にとっては,いろいろな意味で衝撃的な試験でした。
これは,オプティマルな薬物療法とこれに経皮的冠動脈インターベンション(PCI)をadd-onした場合との比較試験です。
当然,PCIをadd-onしたほうが予後はよいというのが大方の予想だったのですが,ふたを開けてみると,5年間の追跡で両者のイベント発生率に全く差は見られませんでした。(横井)
横井
折悪しく,前年のESCにおいて薬剤溶出ステント(DES)による遅発性ステント血栓の危険性を指摘する報告が相次いでいたことも影響し,米国における2007年のPCI施行件数は前年の120万件から100万件にまで落ち込み,現在に至るまで回復していません。
しかし,PCI専門医の立場から見ると,この試験にはいくつかの問題点があるように思えます。
まず,対象の選択ですが,3万5,000例をスクリーニングしたにもかかわらず,最終的にランダム化されたのはわずか2,287例でした。
しかも,この集団におけるイベント発生率は非常に低く,死亡率は年間1%台です。
つまり,もともとが低リスクで,PCIの長所を引き出しにくい患者層だったのではないかということが1つです。
また,対象の7割は多枝病変のある方ですが,PCIの内容を見ると36%が1ステントです。
ここから多枝病変患者の半分が,完全血行再建されていないことになります。
さらに,DESの使用頻度はわずか2.7%です。これは,現在のPCIの実態とかけ離れた状況です。
一方,薬物療法は,スタチンが9割の患者に処方され,5年間でLDLコレステロールが100mg/dLから70mg/dLに低下するなど,ほぼ完ぺきに近いコントロールがなされています。つまり,COURAGEはオプティマルな薬物治療とサブオプティマルなPCIの比較試験であるように思えます。
森本
同感です。除外理由を見ても,「ロジスティックな理由」などという訳のわからない理由で除外された人が6,500例もいます。よくわからない人はなんだかんだと理由を付けて除外し,残った非常に状態のよい人だけを対象としてなされた試験という印象です。
ただし,そういう非常に限られた集団では,薬物療法とPCIのハードエンドポイントに差はないということは言えますね。
横井
そうですね。
ただ,そういう集団でさえも,症状を取るということに関しては,術後3年間はPCI群が有意に勝っています。
だとすれば,転帰は同じでも3年間症状なく過ごせるPCI群のほうが患者さんのQOLは高いのではないかと思います。
森本
それはどうでしょうか。
一般に,症状のある人が多ければ急性冠症候群(ACS)の人も多く,ACSが多ければ心筋梗塞も多く,心筋梗塞が多ければ心血管死亡も多いという具合に,程度の軽いものが多ければ,より重症なイベントも増えるはずです。
つまり,統計学的に有意でなくても,イベントの減少率にヒエラルキーが存在するはずです。
しかし,この試験では,症状のない患者が減ってもACSによる入院の数は減っていませんので,プラセボ効果に近いものがあるのではないかと思います。
それよりも,薬物療法群では少なからぬ患者が血行再建術を受けている点が興味深いですね。
横井
ええ。結局3割が血行再建術を受けています。それなら最初からPCIを受けたほうがよかったという評価もあります。
森本
ただし,血行再建術の再施行はすべてがクリティカルなものではないので,脳梗塞や心筋梗塞といったイベントと同等に考えるのはどうかという議論もあります。
臨床医は,そのあたりの「重み付け」も含めて解釈する必要があります。
#デバイス・薬物の治療選択を巡る試験の展望
横井
デバイスを用いた治療は心不全や不整脈の治療でも盛んに行われていますが,デバイス対薬物療法の試験に対する筒井先生と山下先生のご意見はいかがですか。
筒井
心不全領域では,以前アミオダロンと植え込み型除細動器(ICD)を比較したSCD-HeFT試験が行われましたが,今ではデバイスと薬物療法を組み合わせて用いる治療が標準的治療として位置付けられており,PCIと薬物療法のように「どちらかを選ぶ」というのは現実的ではないと感じますね。
しかし,COURAGE試験では,薬物療法群の患者さんの多くがのちにPCIを受けていたということでした。
薬物療法をしっかりやったうえで,さらに必要があればPCIを追加で施行するという形の試験がより実臨床に近いですし,結局のところ,予後も一番いいのではないかと思いました。
山下
デバイスを用いる治療は,どうしても術者の技量に依存する部分が大きいという問題があります。
一般に,PCIは海外より日本の成績が抜群にいいですから,先ほどのCOURAGE試験の結果もその点を考慮して読む必要があるかもしれません。
逆に,カテーテルアブレーション治療に関する研究は,アブレーション手技の技量向上と同じレベルで綿密な薬物療法が行われているかどうかの検証も必要となるのですが,薬物療法の成績が一般的なレベルより悪い傾向があるようです。
論文を出すのはアブレーションの成績のいい施設ですから,アブレーションの成績が過大評価される傾向がある点に注意が必要だと思います。
横井
PCIも最初のころはそうでした。
そういう意味では,COURAGE試験はインターベンション専門医の視点ではなく,一般の目からPCIを評価した最初の論文だと思います。
これからは,そういう視点も大切にしていかなければならないということですね。
出典 Medical Tribune 2009.11.26
版権 メディカルトリビューン社
<エビデンス 関連サイト>
m3.comより拾ってみました。
心血管疾患の治療ガイドライン
http://blog.m3.com/reed/20090616/1
心疾患診療ガイドラインのエビデンスの質
http://blog.m3.com/reed/20090310/1
エビデンスの罠 無駄な研究?続き
http://blog.m3.com/DrBlue/20090103/2
エビデンスの罠 経験主義
http://blog.m3.com/DrBlue/20090105/3
エビデンスの罠 番外編その2
http://blog.m3.com/search?page=7&q=エビデンス
エビデンスの罠 番外編その4
http://blog.m3.com/DrBlue/20081224/2
エビデンスの罠 その9
http://blog.m3.com/DrBlue/20081226/1
エビデンスの罠 年越し
http://blog.m3.com/DrBlue/20081231/9
エビデンスの罠 ふたたびバイアスについて
http://blog.m3.com/DrBlue/20090110/1
エビデンスの罠 メガトライアルの重要性
http://blog.m3.com/DrBlue/20081228/1
エビデンスの罠 無駄な研究??続々
http://blog.m3.com/DrBlue/20090104/2
エビデンスの罠 番外編
http://blog.m3.com/DrBlue/20081218/4
エビデンスの病~その1
http://blog.m3.com/ore_sama/20070706/1
医者を背後から撃つ「医者代表」
http://blog.m3.com/ore_sama/20081026/1
エビデンスオタク
http://blog.m3.com/DrBlue/20091111/1
EBMとNBM 3
http://blog.m3.com/yosshi/20090627/EBM_NBM_
Cochrane
http://blog.m3.com/DrBlue/20081227/Cochrane
Cochrane その2
http://blog.m3.com/DrBlue/20081227/Cochrane__
エビデンス・ベースド・厚労省
http://blog.m3.com/yonoseiginotame/20100321/15
(ちょっと意味合いが異なりますが)
<コメント>
「エビデンス」については、多くの投稿がありました。
特にDr Blue 先生の「エビデンス」についての造詣の深さには敬服しました。
これからはちょこちょこ読まして貰おうと思いましたが2010.2.22以降ブログが更新されていません。
アーカイブでの投稿数も月別に随分バラツキがあるのも気になってしまいました。
Dr Blue 先生。
ブログの投稿を楽しみにしています。
その他
葦の髄(このブログのイラスト版です)
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。
BNPガイドによる治療が75歳未満の心不全患者の死亡減少に寄与
血中の脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値のガイドによる治療で心不全患者,特に75歳未満の心不全患者の死亡が減少すると,オーストラリアのグループがArchives of Internal Medicineの3月22日号に発表した。
BNP値のガイドによる心不全治療が多くのランダム化比較試験(RCT)で検討されているが,この治療法のベネフィットは明らかではない。
同グループは,心不全患者の心血管転帰に対するBNPガイド薬物療法の有効性を検証するメタ解析を行った。
外来心不全患者20例以上を登録し,BNPガイドによる薬物療法(BNPガイド群)と通常治療(コントロール群)を比較したRCTを検索した結果,8試験が該当した。
患者数は計1,726例,試験期間の平均は16か月であった。
解析の結果,コントロール群と比べBNPガイド群で全死亡リスクの有意な低下が認められた〔相対リスク(RR)0.76,P=0.003〕。
サブグループ解析では,BNPガイド群の全死亡リスク低下は75歳未満の患者で有意であった(RR 0.52,P=0.005)。
しかし,75歳以上の患者では有意なリスク低下は見られなかった(RR 0.94,P=0.70)。
あらゆる原因による入院と無入院生存率については両群間で有意差はなかった。
これらのRCTの期間中にACE阻害薬とβ遮断薬の目標投与量に新たに到達した患者の割合はBNPガイド群が平均21%と22%,コントロール群が11.7%と12.5%であった。
同グループは「BNPガイドによる治療がもたらす生存ベネフィットは,心不全患者の死亡率低下が証明されている薬剤の使用増加によるものと考えられる」としている。
原文
Porapakkham P, et al. Arch Intern Med 2010; 170: 507-514.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20308637
出典 MT Pro 2010.4.8
版権 メディカル・トリビューン社
きょうの「葦の髄」
利尿薬・降圧利尿薬
http://yaplog.jp/hurst/archive/22
その他
葦の髄(このブログのイラスト版です)
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室
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(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
があります。
世界初の選択的アルドステロンブロッカー(SAB)であるエプレレノン(セララ®)の発売から2年が経過しました。
薬価が高いため少し苦戦しているようです。
しかし、食塩摂取量が過剰な日本人の高血圧治療には適した降圧剤という見方もあります。
さらにこのエプレレノンは高血圧症のみならず,心・腎などの臓器保護にも寄与するという多くの報告があります。
エプレレノンは発売時に多くの記事が出ました。
しばらくぶりに,このエプレレノンの記事でおさらいをしました。
#各専門家から見た選択的アルドステロンブロッカーの臨床的意義
~今後の展望を踏まえて~
司会:
伊藤 裕 氏 慶應義塾大学 腎臓内分泌代謝内科 教授
出席者(発言順):
吉村 道博 氏 東京慈恵会医科大学 内科学講座循環器内科 教授
佐藤 敦久 氏 国際医療福祉大学 三田病院内科 教授
#高食塩下で細胞障害性を示すアルドステロン
エプレレノンの心保護作用
■私たちは,アルドステロンの意義について研究を進める過程で,アルドステロンの細胞内に食塩を取り込む作用を明らかにしました。
心筋細胞を,培養液の食塩濃度をわずかに上昇させて2時間静置すると,心筋細胞は脱水を起こして変形しますが,あらかじめアルドステロンを添加しておくと脱水が抑制されます。
つまり,アルドステロンは細胞外液のナトリウム(Na)濃度が上がると細胞内にNa+を流入させて脱水から守る保護作用(非ゲノム作用)を示します。私たちは,この機序にかかわるkey moleculeとして,Na+/H+exchanger(NHE)1を考えています。
NHE1は,アルドステロンの作用により心筋細胞内にNa+を流入させる重要なチャネルであります。
一方,このような細胞外液のNa濃度が高い状態を72時間継続させると,NHE1の蛋白レベルの増加を介して心筋細胞内にNa+が過剰に流入します。
続いて,Ca2+が上昇し,心筋細胞の肥大を招きます。
つまり,アルドステロンのゲノム作用が進行します。
これに対し,あらかじめ培養液にエプレレノンを添加しておくと,心筋細胞の肥大が抑制されることがわかりました。
エプレレノンは,「食塩+アルドステロン」の悪い作用だけをブロックすると私は考えています。(吉村)
#ハイリスク群からCKDステージ3の患者にエプレレノンの併用を
エプレレノンの腎保護作用
■超高齢社会を迎えた日本において,必然的に高血圧患者が増え,そのことが慢性腎臓病(CKD)患者の増加を引き起こします。
CKD患者では,心血管系イベントのリスクが高く,早期発見・治療が重要になります。
高血圧治療ガイドライン(JSH)2009では,CKD患者における降圧療法の3原則として,
(1)降圧目標の達成
(2)レニン・アンジオテンシン(RA)系の抑制
(3)尿アルブミン,蛋白尿の減少・正常化
-が挙げられていますが,
私は特にRA系抑制薬とエプレレノンの併用投与による降圧療法が重要だと考えています。
私たちは,メタボリックシンドローム(MetS)合併例を含む本態性高血圧患者で,ACE阻害薬またはCa拮抗薬の投与によっても血圧157±11/94±6mmHgを示す68例に対し,エプレレノン50mg/日を追加投与しました。
その結果,4週後から有意な降圧を示し,24週後には130±6/76±5mmHgに降圧されました(図1)。

血清カリウム(K)値はACE阻害薬を最大量まで投与した症例においても治療前後で有意な変化を認めませんでした。
特筆すべきことに,アルブミン尿が3分の1にまで減少しました(図2)。

現在のCKDステージ分類には,蛋白尿,あるいはアルブミン尿は組み込まれていません。
高齢者のCKDでは,生理的に自然経過のなかで腎機能が低下しているだけでCKDとは考えられない,とする意見もあります。
蛋白尿をCKDのステージ分類の診断に組み入れ,リスクを層別化する必要がありそうです。
したがって今後は糸球体濾過量(GFR)だけでなく,蛋白尿,アルブミン尿を指標とし,できるだけ減少するように治療を徹底することがさらに大切になってくると思います。(佐藤)
#治療抵抗性高血圧に著明な降圧MR活性化症例にも期待
■内分泌・代謝の立場から見ますと,RA系抑制薬,直接的レニン阻害薬(DRI)が奏効せず,アルドステロンブロッカーのみが有用である病態の1つとして,血漿レニン活性が低いのにもかかわらずアルドステロン濃度が高いアルドステロン関連高血圧が考えられます。
もう1つは,アルドステロン濃度が正常であるにもかかわらず,ミネラロコルチコイド受容体(MR)の感受性が上がって臓器障害を来す病態です。
アルドステロン関連高血圧には,3剤以上の降圧薬を使用しても良好な血圧コントロールが得られない治療抵抗性高血圧(RH)が含まれ,こうした症例に対しては少量のアルドステロンブロッカーの併用により著明な降圧が得られることが知られています。
私たちが,健診受診者を対象に血漿アルドステロン/レニン比(ARR)を検討した結果,高血圧群では正常血圧群に比べARRが高値を示す例が2倍多く,ARR高値を示す高血圧群は左室肥大,蛋白尿が高頻度であることがわかりました。
このような患者さんにはエプレレノンが奏効すると思われます。
実際,ARB単独またはARBを含む2剤の投与によっても降圧不十分な症例に対し,エプレレノンはいずれも収縮期約20mmHg,拡張期約10mmHgの降圧を示しています(図3)。
また,ARBで降圧不十分な症例にエプレレノンを追加することで,追加前のBNP値が高いほどBNP値を改善したという報告もあります(図4)。


MRの感受性を上げる要因の1つとして,食塩過剰摂取が指摘されています。
一方,最近では蛋白の機能制御においてリン酸化,メチル化,アセチル化,SUMO化などによる蛋白の翻訳後修飾の重要性が注目されています。
私たちは,アルドステロンがMRのSUMO化を促進して安定性を高め,感受性を亢進することを明らかにしました。
こうした病態においても,エプレレノンが唯一臓器保護作用を示しうると推測しています。(伊藤)
#心不全傾向,MetS合併,難治性高血圧をはじめ幅広い患者層に期待されるエプレレノンの有用性
エプレレノンの有用性が期待できる患者像
■高血圧を合併する原発性アルドステロン症(PA),心不全傾向(BNP上昇),心肥大,拡張不全,MetS,低K血症,Non-dipper型,さらに禁忌に当たらない糖尿病,軽症腎不全合併高血圧患者にも積極的な適応があると考えています。
また,軽症から難治性高血圧にまで使えますし,RA系抑制薬,Ca拮抗薬,DRI,少量の利尿薬との併用も相性がよいと言えます。
臨床家の先生方には,幅広い高血圧患者さんにエプレレノンを少量から試していただきたいと思います。(吉村)
■エプレレノンの臨床効果を安全に得るために最も大切なのは,腎機能評価です。
したがって,おもな対象は40~70歳代前半であり,高齢化の進展を考慮し,若年から積極的にCKDの予防・治療に努めることが重要です。
また,食塩過剰摂取な高血圧患者,糖代謝異常やMetS合併高血圧患者,PAで手術を拒否される高血圧患者では特に勧められます。そして,臓器障害を合併した高血圧患者に対しては,高K血症に注意しながらRA系抑制薬,Ca拮抗薬などと併用していく必要があると考えます。(佐藤)
■エプレレノンはRHに対する治療効果のエビデンスが示されていますし,CKDを抑制するうえでRA系抑制薬との併用も勧められます。
また,肥満,MetS,臓器障害の合併高血圧についても有用性が期待されます。
私は現状では,こうした症例に対し,エプレレノンは十分に使用されていないと思います。(伊藤)
■エプレレノンはRA系の最下流を抑える薬剤という認識は誤りであり,アルドステロンは独自の活性化経路を持ち,多彩な有害性を示すことから,その臨床的意義は大きいと言えます。
<コメント>
セララ®とACE阻害薬,ARBは併用注意ということですが、現在の多くの降圧療法ではACE阻害薬,ARBが使用されています。
そのあたりが普及の足かせになっているかも知れません。
出典 MT Pro 2010.4.1
版権 メディカル・トリビューン社
<きょうの「葦の髄」>
タナトリル(イミダプリル) 2010.4
http://yaplog.jp/hurst/archive/20
2009年、5年ぶりに第74回日本循環器学会・学術集会(2010.3.5~7)「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン」が改訂されました。
「ガイドラインに学ぶ」のセッションでは、本ガイドライン作成班班長を務めた大阪府立成人病センター総長の堀正二氏がその要点を解説されました。
ダイジェスト版
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_hori_d.pdf
きょうはその記事で勉強しました。
#ガイドラインに学ぶ
#抗凝固・抗血小板療法ガイドライン、2009年改訂版
#作成班班長の大阪府立成人病センター・堀正二氏が解説
#動脈系血栓に抗血小板薬、静脈系血栓に抗凝固薬
「ガイドラインは現在の標準的な治療を示しているだけで主治医が必ずしも従う必要はないが、患者に対する説明義務はある。ガイドラインの内容を患者に説明した上で、個々の患者にとってよりよい治療を選択すべきということ」堀氏は日常診療におけるガイドラインの位置づけをそのように解説した上で、「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン」(以下、本ガイドラインと略す)の2009年改訂のポイントとして以下を示した。
・わが国の新たなエビデンスの集積
・クロピドグレルなど新薬の保険収載
・薬物溶出性ステントの普及に伴う諸問題
・アスピリン投与量のわが国にあわせた実状(81-330mg)
・ヘパリン起因性血小板減少症、消化管出血など抗血栓薬による副作用
堀氏は「急性冠症候群や脳梗塞などの動脈系血栓には抗血小板薬、深部静脈血栓症や肺動脈塞栓症などの静脈系血栓には抗凝固薬(ヘパリン、ワルファリン)を用いることが抗凝固・抗血小板療法の原則」と指摘。
ただし、「病態として両者がオーバーラップするものもある」と付け加えた。
#疾患ごとのクラスIの抗凝固・抗血小板療法
続いて堀氏は本ガイドラインに記載されている各疾患におけるクラスIの抗凝固・抗血小板療法を解説。
本ガイドラインにおけるクラスIとは、「有益/有効であるという根拠があり、適応であることが一般に同意されている」治療法。
その中から主なものの概要を以下に紹介する(詳細はガイドライン参照)。
○僧帽弁狭窄症
心房細動、血栓塞栓症の既往にワルファリン投与
○僧帽弁閉鎖不全症・僧帽弁逸脱症
・一過性脳虚血発作(TIA)の既往がある僧帽弁逸脱症にアスピリン50-100mg/日投与
・心不全合併の65歳以上の僧帽弁閉鎖不全症にワルファリン投与(PT-INR2.0-2.5)
・血栓塞栓症の既往にワルファリン投与
○冠動脈バイパス術
アスピリン81-162mg/日投与(術後48時間以内の投与開始)
○不安定狭心症
・可及的速やかなアスピリン162-330mg投与+その後の長期継続投与(81-162mg/日)
・中等度以上のリスク症例に対して抗血小板薬+ヘパリン静脈内投与
○安定労作狭心症
・アスピリン81-162mg/日投与
○心筋梗塞(非急性期)
・アスピリン81-162mg/日投与
・心腔内血栓、重症心不全、左室瘤に対するワルファリンの併用
○カテーテルインターベンション
・PCIに際しヘパリン(未分画)の静脈内投与(活性化凝固時間250秒以上)
・アスピリン(81-330mg)投与
・ステント留置例に対するアスピリン+チクロピジン/クロピドグレルの併用(ベアメタルステント最低1カ月、薬物溶出性ステント最低12カ月)
・ヘパリン起因性血小板減少症に対するアルガトロバン投与
○心不全
・虚血性心疾患に対するアスピリン投与
・心房細動・血栓塞栓既往例に対するワルファリン投与
○脳梗塞・一過性脳虚血発作(急性期)
・発症早期(48時間以内)に対するアスピリン162-330mg/日投与
○脳梗塞・一過性脳虚血発作(慢性期)
・非心原性脳梗塞の再発予防のためのアスピリン81-162mg/日投与、クロピドグレル75mg/日または50mg/日投与、シロスタゾール200mg/日投与
・頸動脈内膜剥離術前後の抗血小板療法
#抜歯・手術時は抗血小板薬継続が原則
本ガイドラインには、出血性および消化管合併症や妊娠時、周術期などの特別な状況への対応についても記載がある。
その中で抜歯や体表の小手術時の対応として、堀氏は「クラスIとはしていないが、基本的にはPT-INRコントロール下でのワルファリンおよび抗血小板薬の継続が原則」と解説。
「欧米のガイドラインでは継続投与がクラスIとされており、特にワルファリンを中止することで脳塞栓症のリスクが高まる」と強調した。
また、「ワルファリン投与は迅速に調節可能なヘパリン投与で置換できるが、抗血小板薬の代わりにヘパリンを投与してもメカニズム的に補うことはできない」と述べ、抗血小板薬の中止期間はできる限り短くすることが必要と指摘した。
最後に堀氏は、ヘパリンの重大な副作用であるヘパリン起因性血小板減少症(HIT)について言及。
HITはヘパリン抗体産生によってトロンビンの過剰産生を招き、30-50%の症例で血栓塞栓症を発症する。
ヘパリン投与開始後5-10日に多く、ヘパリン中止後も1カ月間はハイリスク期間が続くとされる。堀氏は「血清学的診断を行える施設は限られており、ヘパリン投与後、血小板数の減少がないか注意すべき」と指摘。
治療の原則はヘパリン投与中止で、ヘパリンコーティングのカテーテルなども抜去する。
代替療法としてアルガトロバン、ダナパロイドがあるが、このような病態もあることを認識して、ヘパリン投与を行うことが重要と述べた。
出典 m3.com 医療ニュース 2010.3.24
<番外篇 その1>
#CRP高値の高齢者、脂質異常なくともロスバスタチンで心血管イベント低下
■70歳以上の高齢者5695名を対象にロスバスタチンの有効性を無作為化二重盲検プラセボ対照試験(JUPITER試験)の二次解析で検討。
■ロスバスタチン群では、高感度CRPが高値であるものの、脂質異常症ではない高齢者の心血管イベントの発生率がプラセボ群に比し低下(ハザード比0.61)していた。
文献:Glynn RJ et al. Rosuvastatin for Primary Prevention in Older Persons With Elevated C-Reactive Protein and Low to Average Low-Density Lipoprotein Cholesterol Levels: Exploratory Analysis of a Randomized Trial. Ann Intern Med. 2010;152(8):488-496
http://www.annals.org/content/152/8/488.abstract
出典 m3.com 医療ニュース 2010.4.22
<番外篇 その2>
高親和性ARB / 持続性Ca拮抗薬配合剤 レザルタス配合錠 LD・HD
(210.4.16発売)
http://www.rezaltas.info/product/index.html
その他
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(一般の方または患者さん向き)
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があります。
#心筋梗塞の入院患者の特徴と予後はこの20年でどのように変わったか?
1987~2006年の20年間における心筋梗塞の疫学は、判定基準におけるトロポニン重視への転換(2000年)の前後でさほど大きな変化はないことが、米国メイヨークリニック循環器内科のVeronique L. Roger氏らによる地域住民研究で示された。
現在でも非ST上昇心筋梗塞が多くを占め、30日死亡率は著明に改善されたものの長期生存率に変化はなく、主な死因が心血管疾患から非心血管疾患に転換したという。
#1987~2006年に心筋梗塞で入院した2,816例を対象に地域住民研究
2000年、欧州心臓病学会(ESC)と米国心臓病学会(ACC)は、心筋梗塞の生化学マーカーとして従来のクレアチンキナーゼ(CK)やクレアチンキナーゼMB分画(CK-MB)よりもトロポニンを重視するよう勧告を行った。
トロポニンの方が感受性が高く、より小さな心筋壊死を検出可能なため、病態の臨床的な重症化を抑制できると期待されている。この判定基準の変更が、心筋梗塞の発症状況や予後に及ぼす影響は明らかにされていない。
研究グループは米国ミネソタ州オルムステッド郡において、1987~2006年までに心筋梗塞で入院した2,816例を対象に地域住民研究を実施した。
2000年8月以降は、プロスペクティブにトロポニンおよびCK-MBの測定を行い、心筋梗塞の発症率、重症度、生存率について検討した。
おもな結果は以下のとおり。
●トロポニンに基づく判定基準のみを満たす症例を含めると、1987~2006年の間で心筋梗塞の発症率に変化は見られなかった。
●CK/CK-MBで判定された症例に限定すると、心筋梗塞発症率は20年間で20%減少した。
●非ST上昇心筋梗塞の発症率はトロポニンで判定すると著明に増加したのに対し、ST上昇心筋梗塞の発症率はトロポニンとは無関係に減少した。
●心筋梗塞による30日以内の死亡は、1987年に比べ2006年には56%低減した(年齢、性別で補正済みのハザード比:0.44、95%信頼区間:0.30~0.64)。
●トロポニン重視に転換しても、30日生存例の生存率は改善されなかったが、死因は心血管疾患から非心血管疾患に転換した(p=0.001)。
●30日生存例の長期的な生存率は、トロポニンとは関わりなく、20年間で変化しなかった。
[監修者 自治医科大学 循環器科 苅尾七臣教授のコメント]
本研究は、CPKからトロポニン重視のガイドラインが発表された2000年を含む、この20年間の心筋梗塞とその特徴の変遷を示した。
これまでのCK・CK-MBで診断した心筋梗塞の発症はこの20年間で20%減少してきている。
特に、重症MIが減少しているのが特徴である。
とくに、ST上昇型MIの減少が大きく、この変化はトロポニンを診断基準に加えても影響がない。
一方、非ST上昇型MIは、より微小な心筋障害を特異的に検出するトロポニンを診断に加えることにより急増した。
また、予後に関しては、短期予後の改善は著しく、30日死亡は約50%減少した。
一方、長期予後に改善はみられず、長期予後を規定する原疾患が心血管疾患から、それ以外の疾患へ変遷した。
ST上昇型MIの治療方針は明確で、「Time is muscle」といわれるように、発症からいかに早くカテーテルインターベンションえるかが勝負である。
一方、本研究でも示されたように、今後の心筋梗塞の主体を占めるトロポニンの増加で診断した非ST上昇型MIのリスク層別化と治療戦略をより明確にされる必要がある。
出典 Care Net.com 2010.2.26
版権 ケアネット
<番外編>
#カルシウム増感剤が効果 拡張型心筋症、マウス実験
心筋の収縮力が弱まって広がり心不全を引き起こす拡張型心筋症のモデルマウスに、収縮力を高めるカルシウムへの感度を上げる「増感剤」という薬を投与し、症状抑制や延命効果を確認したとの研究結果を東京医科歯科大や九州大などが30日、米学会誌電子版に発表した。
東京医科歯科大の木村彰方(きむら・あきのり)教授によると、従来の増感剤は心筋細胞内のカルシウム量が増えて不整脈などの副作用があり、長期的には症状が改善しなかった。
今回はカルシウムが増える成分を除いた薬を使った。
拡張型心筋症は心臓移植が必要になる場合もある。
木村教授は「カルシウムに対する感度を上げるだけで、副作用
もなく効果が得られた。拡張型心筋症の治療や発症予防に使える新薬開発につなげたい」と話している。
遺伝子操作で拡張型心筋症を発症するようにしたマウス約120匹のうち半数に、生まれて4カ月後から薬を投与。
すると投与しない雌は9.8カ月後、雄は7.9カ月後に半数が死んだが、投与した雌は1.3カ月、雄は0.8カ月生存期間が長かった。
雌を生後8カ月時点で解剖すると、薬を投与しないと心臓が肥大していたが、投与したものは正常に近い状態だった。
※学会誌はJACC
出典 共同通信社 2010.3.30
版権 共同通信社
<ヒヤリハット 2010.4.23>
症例
5○歳、男性
主訴
咳・咽頭痛
臨床経過
4/10
1週間前から咳と咽頭痛があるということで来院。
理学所見
咽頭 発赤なし
胸部 心雑音 なし
背部で呼気時にsnoring聴取
血圧 測定せず!
治療
1週間前からの咳ということでマイコプラズマ肺炎(感染症)の可能性を考えてCAM、聴診所見よりBA合併を考えてシングレア処方。
Rp
クラリス(200)2T
ロキソニン3T
ムコスタ3T
メジコン3T
4/15
夜間に息苦しくなるということで再来院。
胸部Xp CTR56%、軽度の肺うっ血?
間質肺炎の所見なし
(crepitantも聴取せず)
SPO2 96% PR105/分
血液検査施行
4/16
昨夜発熱したということで来院。
呼吸困難はなかったとのこと。
来院時 38.2℃。
マイコプラズマ肺炎を否定するためにイムノカードマイコプラズマ施行→陽性。
検査結果で白血球増多と核左方移動がみられたためCTRX1.0g点滴とジスロマック(250)2T経口を併用。
4/19
食欲不振、嘔吐および呼吸困難で前夜2時間ほどしか寝れないということで来院
来院時体温34.9℃(低体温!)
SPO2 測定不可。
血圧 100/72mmHg.
心電図 未施行
入院の適応と判断されたため、近くの大学病院呼吸器科の旧知の教授宛に紹介状を書いた。
ちなみに4/15の検査成績は
AST21, ALT43, LDH239, WBC12300, CRP4.79
数日後返書が届いて驚天動地。
AST4458, ALT3711, LDH7585, WBC上昇とのみ記載, CRP8.81
CK1785
コメントには
「CTR↑が気になったのでCTとBNPを施行。
右優位の胸水、BNP597.5。
うっ血肝を疑い循環器内科に転科となりました。」
と書かれていました。
いずれ結論は出るとは思いますが、一体この症例はどう考えればいいのでしょうか。
○マイコプラズマ肺炎に伴う心筋炎?
○薬剤性肝障害?(可能性としてはロセフィン、ジスロマック)
○両心不全というよりは右心不全優位(肝うっ血だけでは説明のつかない肝障害。むしろショックかなにかの時のcentral necrosisに近いか?)
○BNP上昇の原因は?
○心電図所見は?
○H-FABP、TnTは?
いずれにしろ、患者さんの容態が心配です。
きょうの「葦の髄」
アスピリン
http://yaplog.jp/hurst/archive/18
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(内科医向き)
があります。
最近、CKDのステージ分類に、eGFRと同等に蛋白尿を扱うべきという提案をとりあげました。
慢性腎臓病の病期分類に尿蛋白を
http://blog.m3.com/reed/20100418
こういった論文を読んでいつも思うのは、蛋白尿があたかも動脈硬化や心血管イベントの原因であるかのような取り上げ方についての疑問です。
以前から眼底所見を使った動脈硬化のステージ分類があります。
眼底動脈は脳動脈の一部ということで、脳血管の障害程度を「眼底」という「点検口」から観察しようというものです。
当然のことながら動脈硬化は全身疾患です。
蛋白尿は糸球体病変としてユニットでとらえるのか、輸入動脈、輸出動脈の動脈硬化性病変ととらえるのか。
もし後者だとすると、「蛋白尿」は眼底病変をみているのと同じことになってしまいます。
しかし、「蛋白尿」出現のメカニズムはそんなに簡単ではありません。
きっと主座は糸球体基底膜ということなのでしょう。
きょうの「蛋白尿と脳内微小出血」についてどのような考察があるのでしょうか。
そして血圧という交絡因子はどのように処理しているのでしょうか。
「Arch Neurol」誌の真価(程度、レベル)も問われそうです。
蛋白尿は脳卒中および一過性脳虚血発作の患者における脳内微小出血と関連
■蛋白尿は、最近発症した虚血性脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)後の、脳内微小出血と強く相関していることが、Archives of Neurology誌1月号に掲載された断面解析から示されている。
■「概して、尿中に蛋白質が溢流することは異常であり、しばしば腎臓病や全身の血管機能障害の兆候である」と主任著者であるUniversity of California(ロサンゼルス)のDr. Bruce Ovbiageleは、ロイターヘルスへの電子メールで述べた。
■本研究の著者らによると、脳内微小出血は臨床的に「無症候性」であるが、微小血管性虚血疾患と関連性があり、主要な頭蓋内出血リスクを増大させる可能性がある。
■本研究で、同研究者らは、虚血性脳卒中またはTIAで入院した患者236名を対象とし、蛋白尿と脳内微小出血の関連性を解析した。
微小出血(5mm未満の病変)の存在および数を、グラディエントエコー法によるT2*強調MRIで検出した。
■全体で、患者72名(31%)に脳内微小出血、89名(38%)に蛋白尿が認められた。
■蛋白尿の程度は、脳内微小出血の存在と有意かつ独立して関連していた(オッズ比2.33、p=0.03)ことをDr. Ovbiageleらは見出した。
また、脳内微小出血と有意に関連するその他の因子には、女性であること、心房細動の既往、血清ホモシステイン値の上昇および推定小血管疾患のサブタイプが含まれた。
■蛋白尿の重症度の上昇は、脳内微小出血数の増加と相関した。
微小出血数に対する蛋白尿の重症度(1~4)のSpearman相関係数は0.4であった(p<0.001)。
■Dr. Ovbiageleは、蛋白尿と脳内微小出血の関連性を「強力な独立した相関」であると説明しているが、本研究は単なる関連研究であるとも強調した。
■ある疾患の発症が、別の疾患の発症につながるか。
そのことは未だ明らかにされていない、と同研究者は述べた。
■しかし、尿中蛋白質のスクリーニングは簡便かつ廉価である、とDr. Ovbiageleは指摘した。
■「蛋白尿は、脳内微小出血の発症および悪化の重要な代替マーカーとして利用することができるかもしれない」と同研究者らは結論付けている。
原文
Arch Neurol 2010;67:45-50.
出典 ロイターヘルス 2010.1.12
版権 ロイター通信社
By David Levitan
http://www.kanematsu-rmn.jp/news/daiichisankyo/news2.php?mode=jpview&num=201001130039593
<脳内微小出血 関連サイト>
無症候性微小脳出血と抗血小板療法
http://blog.m3.com/reed/20081117/1
高齢者での脳内微小出血
http://wellfrog4.exblog.jp/13854179
きょうの「葦の髄」
蛋白尿のメカニズム
http://yaplog.jp/hurst/archive/17
その他 葦の髄 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
昨日の
ACCORD・脂質管理試験
http://blog.m3.com/reed/20100420/ACCORD_
の中で寺本民生教授は症例を限定すればスタチンとフィブラート製剤との併用は禁忌ではないという心強いコメントがありました。
その条件としては、腎機能が「eGFR≦第3期」かつ「クレアチニン≦1.0前後」であり、クレアチニン≧1.2では原則的に併用は禁忌というものでした。
今やスタチンに押されてフィブラート製剤は処方の機会が減っている印象です。
少なくとも当院ではそういった印象です。
最近重要視されているL /H 比を積極的に下げるということでいえば併用もありかなという考えの変わりつつあります。
ちなみに
ベザフィブラート徐放錠
http://www.e-pharma.jp/dirbook/contents/data/prt/2183005G1234.html
で見る限り
HMG-CoA還元酵素阻害薬
シンバスタチン
プラバスタチンナトリウム
フルバスタチンナトリウム
は慎重投与ではなく原則禁止です。
クレストール
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se21/se2189017.html
では
「腎臓の悪い人はフィブラート系の抗高脂血症薬との併用は原則的に避けます。」
という表現になっています。
フェノフィブラートとスタチンの併用療法
http://lipidil.jp/progmed/26_09_2249_2006.pdf
FIELD試験 -日本公式ウェブサイト- Congress Report
(2006.7.13)
http://www.field-trial.jp/report/arterio38.html
これまでフィブラートとスタチンの併用は横紋筋融解症の発現を助長するという懸念から一般に禁忌と捉えられていたが、本試験ではフェノフィブラート群4,895例のうち、平均8%の患者にスタチンが追加投与されていたにもかかわらず、このような患者に横紋筋融解症は1例もみられなかった。
ちなみに、アメリカFDAに報告されたスタチンとフィブラートの併用例における横紋筋融解症の発現を集計した報告では、フェノフィブラート併用例ではゲムフィブロジルに比べ横紋筋融解症の発現が非常に少ないことが示されている。このことから、同じフィブラート系でも薬剤の種類によりスタチンとの相互作用が異なる可能性が示唆される。
現在、北米においてスタチン単剤とスタチン+フィブラートの有用性を検証するACCORD試験が進行中で、両薬剤の併用療法に関する期待が高まっている。
(昨日も引用したサイトです)
フラバスタチンとベサフィブラートの併用について
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/818839.html
HMG-CoA還元酵素阻害剤 リバロ 専門医が答える脂質異常症診療Q&A
http://www.livalo.com/q/08/02.htm
LDL-Cの上昇にTGの上昇が伴う場合は、フィブラート系薬剤とスタチンの併用が有用である。
ただし、この併用療法では重大な副作用と考えられているものに横紋筋融解症がある。
横紋筋融解症を未然に防ぐためにも投与前に腎機能の検査を行い、その後も定期的な検査、自覚症状のチェックなどを行うことが重要といえる。
フィブラートの評価が低下
http://medicineblog.blog32.fc2.com/blog-entry-54.html
スタチンとフィブラートの併用療法(注:日本は原則禁忌)は注意が必要で、ベネフィットが潜在的なリスクを上回る時だけにすべきである。gemfibrozilとスタチンの同時使用は回避しなければならない。
ACCORD Lipid試験 フェノフィブラート+スタチンとスタチン単剤で有効性・安全性に有意差なし
http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/38732/Default.aspx
やはり、私のような開業医は、腎機能が正常でも併用は避けるという結論に達しました!
スタチンとフィブラート併用の有用性
http://www.kaken.co.jp/medical/phvi/pdf/credentials_3_4_33.pdf
(○魔のささやき?)
混合型高脂血症患者に対するフェノフィブラートとエゼチミブの併用は安全かつ有効な治療か?
http://www.natureasiapacific.com/japan/ncp/ncpcardio/pp/0611/1.php
(フィブラート製剤をどうしても併用したいという場合にはスタチンをやめてゼチーアに逃げるという選択も)
<フィブラート 関連サイト>
Bezafibrate for the secondary prevention of myocardial infarction in patients with metabolic syndrome.
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0008/4/0008_G0000053_S0023318.html
Secondary Prevention With Bezafibrate Therapy for the Treatment of Dyslipidemia
http://content.onlinejacc.org/cgi/content/full/51/4/459
BIP Bezafibrate Infarction Prevention Study
http://www.docstoc.com/docs/523133/BIP-Bezafibrate-Infarction-Prevention-Study/
(スライド形式で見ることが出来ます)
Secondary prevention with bezafibrate therapy for the treatment of dyslipidemia: an extended follow-up of the BIP trial.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18222357
(J Am Coll Cardiol. 2008 Jan 29;51(4):459-65.の抄録です)
二次予防: BIPトライアル:ベザフィブラートの長期効果:冠動脈疾患患者HDL増加効果
http://intmed.exblog.jp/8048402/
循環器大規模臨床試験リンク集-高脂血症編
http://www.gik.gr.jp/~skj/listlinkdb/mega_hl.php3
高脂血症
http://circ.ebm-library.jp/topics/trialreview_koushi.html
http://circ.ebm-library.jp/topics/trialreview_koushi02.html
(寺本民生先生のレビューです)
FIELD試験 -日本公式ウェブサイト- Congress Report:第38回日本動脈硬化学会総会・学術集会 モーニングセミナー「フィブラートの大規模臨床試験の流れ」
http://www.field-trial.jp/report/arterio38.html
(フィブラート全体を俯瞰することが出来ます)
Negative results from BIP study - bezafibrate effect on secondary prevention not significant
http://www.theheart.org/article/296261.do
フィブラート薬の選択的投与
http://blog.m3.com/reed/20100411/1
<自遊時間>
何のために健診受けてんの?!
先日メタボ健診を受けた70歳の男性が健診結果を聞きに来ました。
血圧208/126mmHg
クレアチニン 1.69mg/dl
いろいろ治療の必要性を説明しましたが、聞く耳を持ちません。
昨年もきちんと健診をうけています。
ちなみに昨年のデータは
血圧210/130mmHg
クレアチニン 1.43mg/dl
本人いわく「後5年は生きたいもんだね」
私「来年また会えるといいですが」
その他
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井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
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井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。