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糖尿病厳格管理の意義問うACCORD試験,血圧・脂質でも予想外の結果
心血管疾患のリスク低下せず
高リスク2型糖尿病の治療戦略を模索したACCORD(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)試験は,厳格血糖管理と通常血糖管理の2群に分け,さらに血圧管理または脂質管理を二重に検討する2×2ファクトリアルデザインで実施された。
2年前に平均追跡期間3.5年で厳格血糖管理群の死亡率が上昇したため早期打ち切りとなった本試験(N Engl J Med 2008; 358: 2545-2559 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18539917)は,大きな波紋を呼んだ。
第59回米国心臓病学会と米国心血管造影インターベンション学会(SCAI)の合同学術集会(ACC.10&i2 Summit2010,2010.3.14~16)では,残る血圧試験(ACCORD BP)と脂質試験(ACCORD Lipid)の結果が発表されたが,収縮期血圧(SBP)120mmHg未満を目指す厳格な血圧管理,スタチンにフェノフィブラートを追加した脂質管理はともに心血管疾患(CVD)リスクを低下しなかった。
ACCORD BPを米退役軍人局医療センター教授のWilliam Cushman氏が,ACCORD Lipidを米コロンビア大学内科教授のHenry N. Ginsberg氏が報告し,いずれもN Engl J Med3月14日オンライン版に同時掲載された。
高リスク2型糖尿病の治療戦略を2×2のファクトリアルデザインで検証
ACCORD試験には,米国とカナダの77施設が参加。
対象は,CVDを有する40歳以上,または2つ以上のCVDリスクを有するか動脈硬化が診断された55歳以上の高リスク2型糖尿病患者で,1万251例が登録された(糖尿病歴中央値は10年程度,平均HbA1Cは8.3%)。
このうち4,733例がACCORD BPに,5,518例がACCORD Lipidの2×2ファクトリアル試験に登録された。
前記に加えた登録条件は,ACCORD BPが降圧薬3剤以下でSBP 130~180mmHg,ACCORD LipidがLDLコレステロール(LDL-C)60~180mg/dL,HDLコレステロール(HDL-C)55mg/dL未満(女性と黒人の場合;それ以外は50mg/dL未満),トリグリセライド(TG)400mg/dL未満(関連薬服用中の場合;非服薬中の場合は750mg/dL未満)。
ACCORD BPに登録された4,733例は,目標血圧がSBP 120mmHg未満の厳格管理群(2,362例)と140mmHg未満の標準管理群(2,371例)にランダム・非盲検で割り付けられた。
ベースラインの平均血圧は139/78mmHg。ACCORD Lipidの5,518例はオープンラベルで全例シンバスタチンが投与され,さらに二重盲検下でフェノフィブラート投与群(以下,追加群2,765例)とプラセボ群(2,753例)にランダムに割り付けられた。
シンバスタチンの投与量はガイドラインに応じて設定され,フェノフィブラート投与量は推算糸球体濾過量(eGFR)に応じて決められた。
両試験患者の平均年齢は62歳で平均BMIが32,CVD既往歴が全体の3分の1を占めた。
ともに平均4.7年の追跡が行われた。

ACCORD BP
脳卒中は厳格な降圧で低下も,高リスク2型糖尿病の降圧目標結論出ず
ACCORD BPで使用された降圧薬の数は厳格管理群3.4剤に対して標準管理群2.1剤。
早期から厳格管理群の血圧が標準管理群より有意に低下し,開始4か月後のSBPは標準管理群133.5mmHgに対して厳格管理群119.3mmHgだった。
試験期間の平均SBPは厳格管理群で14.2mmHg低く推移した。
非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中,CVDによる死亡からなる1次エンドポイントの年間発症率は,厳格管理群1.87%,標準管理群2.09%とハザード比が0.89 で有意な差は示されなかった(P=0.20)。
年間死亡率は順に1.28%,1.19%で同等だった。
発症数は少ないが,脳卒中リスクに関しては標準管理群0.53%に対して厳格管理群0.32%で(ハザード比0.59,P=0.01)と厳格管理群で有意に低下していた。
ただし,NNを見ると,5年にわたり89人治療して1人救えるという結果だった。
降圧治療による重篤な副作用は,標準管理群1.27%に対して厳格管理群3.3%と厳格管理群で有意に多かった(P<0.001)。
患者背景別に見たサブ解析では,HbA1C 8.0%未満の患者で厳格管理群の一次エンドポイントが有意に低下していた。
Cushman 氏は今回の結果に加え「これまでの試験と併せて考えると,脳卒中の抑制効果も一貫性のある厳格な血圧管理によるもの」と言及したが,「今回の試験から高リスク2型糖尿病患者の降圧目標について結論付けることはできなかった」と述べた。
<注>
文献によると,試験プロトコルが組まれた段階では,厳格管理群で約2割のリスク低下が見込まれていた。
にもかかわらず,厳格な血圧管理の有用性が示されなかった背景として,脂質異常症などのCVD高リスク患者が脂質試験に回ったことや,スタチンやアスピリンといった薬物治療の充実により標準管理群のイベント発生率が見込みの半数程度であったことなどを挙げている。
このため,今回の結果がサンプルサイズに起因した結果と考えることもできるが,現段階において,140mmHg未満の目標値をさらに下げることの妥当性は見出されていないことから,米国高血圧合同委員会第7次勧告(JNC7)の2型糖尿病SBP目標値(130mmHg)の検証も困難としている。
N Engl J Med3月14日オンライン版に掲載されたエディトリアルでは,スウェーデン・マルメ大学病院のPM Nilsson氏が「ACCORD BPのデザインと結果は,2型糖尿病の至適血圧の設定を未解決な問題として残した」とコメント。
サブ解析でのJNC7の推奨血圧値(130/80mmHg)の検証を促している。
ACCORD Lipid
フェノフィブラート追加効果認めず,TG高値・HDL-C低値では有効か
ACCORD Lipidでの脂質プロファイルの変化は以下のとおり。
(1)LDL-Cは約100mg/dLから両群とも 80mg/dLに低下,(2)HDL-Cは38mg/dLから追加群41.2mg/dL,プラセボ群40.5mg/dLに上昇,
(3)TGは約187mg/dLから追加群147mg/dL,プラセボ群170mg/dLへ低下。
追跡期間を通じたシンバスタチンの投与量は平均値で,両群とも22mg程度と同等だった。
しかし,初回発症の非致死性心筋梗塞や非致死性脳卒中,CVDによる死亡からなる1次エンドポイントの年間発症率は,プラセボ群2.4%に対して追加群2.2%でハザード比が0.92と両群間に有意な差はなかった(P=0.32)。
年間死亡率もプラセボ群1.6%に対して追加群1.5%と有意差はなかった。
追加群では,血清クレアチニンの平均値が0.93mg/dLから1.10mg/dLに上昇。血清クレアチニンの上昇が認められた頻度もプラセボ群より有意に多かった。
試験薬の中止は追加群2.4%に対してプラセボ群1.1%だった。
患者背景別のサブ解析では,性別で有意な交互作用が認められ,男性ではフェノフィブラートの有用性が,女性では悪影響が示唆された。
また,TG204mg/dL以上,HDL-C34mg/dL以下の患者群ではフェノフィブラートの追加による有意なCVDリスク低下が示された。
Ginsberg氏は「TGやHDL-Cが正常範囲,またはそれに近い患者群ではフェノフィブラートの併用を支持する結果は認められなかった」と結論付けた。
一方,性別や脂質プロファイル別の解析から示された併用が有効と思われる患者集団についてはさらなる検討が必要とまとめた。
一連のACCORD試験は,米国立心肺血液研究所(NHLBI)により主導された。
※1:Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes
※2:文献によると,試験プロトコルが組まれた段階では,厳格管理群で約2割のリスク低下が見込まれていた。にもかかわらず,厳格な血圧管理の有用性が示されなかった背景として,脂質異常症などのCVD高リスク患者が脂質試験に回ったことや,スタチンやアスピリンといった薬物治療の充実により標準管理群のイベント発生率が見込みの半数程度であったことなどを挙げている。このため,今回の結果がサンプルサイズに起因した結果と考えることもできるが,現段階において,140mmHg未満の目標値をさらに下げることの妥当性は見出されていないことから,米国高血圧合同委員会第7次勧告(JNC7)の2型糖尿病SBP目標値(130mmHg)の検証も困難としている。N Engl J Med3月14日オンライン版に掲載されたエディトリアルでは,スウェーデン・マルメ大学病院のPM Nilsson氏が「ACCORD BPのデザインと結果は,2型糖尿病の至適血圧の設定を未解決な問題として残した」とコメント。サブ解析でのJNC7の推奨血圧値(130/80mmHg)の検証を促している。
出典 MT pro 2010.3.15
版権 メディカルトリビューン
<関連サイト>
ACCORD BP
Effects of Intensive Blood-Pressure Control in Type 2 Diabetes Mellitus
The ACCORD Study Group
http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMoa1001286
ACCORD Lipid
Effects of Combination Lipid Therapy in Type 2 Diabetes Mellitus
The ACCORD Study Group
http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMoa1001282
<ACCORD試験 関連サイト>
厳格な血糖コントロールと冠動脈イベント
http://blog.m3.com/reed/20090704/1
厳格な血糖コントロールと心血管障害リスク
http://blog.m3.com/reed/20090711/1
2型糖尿病治療と循環器専門医
http://blog.m3.com/reed/20091110/1
日本のJ-DOIT3試験の重要性を高める英研究
http://wellfrog4.exblog.jp/13837529
厳格血糖管理と死亡率
http://wellfrog4.exblog.jp/13701774
血糖厳格管理群の死亡率上昇と重症低血糖
http://wellfrog4.exblog.jp/13694939
大血管症抑制を見据えた2型糖尿病の治療戦略 その1(1/2)
http://wellfrog4.exblog.jp/13419346
大血管症抑制を見据えた2型糖尿病の治療戦略 その2(2/2)
http://wellfrog4.exblog.jp/13743469
2型糖尿病患者のHbA1Cと死亡の関係
http://wellfrog4.exblog.jp/13419240
その他