戯れ言たれる侏儒
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< ニコランジルのエビデンスと作用機序 その... | メイン | 心・腎疾患合併例に対する運動療法 >

現在の冠動脈領域の処方は、インターベンション後の抗血小板剤、スタチン、RAS抑制剤が主体となっています。
いつの間にやら、抗狭心症作用を期待してのβ遮断剤や亜硝酸酸製剤は処方頻度も以前と比べれば限定的となっています。

ましてやジピリダモールやトラピジルをファーストラインで処方する先生はきわめて少なくなっています。

ご存知のように、インターベンションは局所療法に過ぎません。
今後起こりうるアテロームや不安定プラークに対する予防手段を講じることが重要であることは当然のことです。

そこでそのツールとしての薬剤には何がいいのか。
もちろん、患者個々の背景があるわけですから一概にいえませんが、抗動脈硬化剤とか抗プラーク剤とはっきりと謳った薬剤が今後出現するのでしょうか。

少なくとも、ニコランジルには種々の効果も期待出来、冠動脈疾患患者にはもう少し処方されてもよいような気もします。

最近では、ステント植え込み後の冠スパスムも問題とされ、そもそも日本人に頻度の高いCSA(潜在的患者も含めればかなり多いと予測されます)対策にもニコランジルは有意義と思われます。


昨日の

ニコランジルのエビデンスと作用機序 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20100315

の後半です。

#ミトコンドリアKATPチャネル活性化により血栓形成が抑制される(マウス)

#出血リスクをともなわない抗血栓療法の可能性
■ニコランジルが抗酸化作用を介して血栓を抑制するというのは興味深い知見です。他の抗酸化作用を持つ薬剤にも同じ効果が期待できるでしょうか。
(Lee) 

■たとえフリーラジカル除去薬が血中に存在しても,それだけで効果が発現するわけではないと思います。
薬剤は組織内,すなわちミトコンドリアの近くへ移動しなければなりません。
活性酸素は非常に短命ですから,薬剤は活性酸素が作用する部位に存在する必要があります。
(石田) 

■薬物がミトコンドリアに到達するのにはどのくらいの時間が必要かはわかりませんが,組織にニコランジルが蓄積するためには長期投与が望ましいと思います。
(石田)

坂本 ニコランジルは血小板凝集そのものには影響を及ぼさないのですね。

■mmol/L濃度のニコランジルは血小板凝集を阻止する作用を示しますが,私たちが実験で投与したのは約1μmol/Lですから,この用量では血小板凝集抑制を示しません。
またわれわれの実験で示された濃度は臨床的な投与量に近い濃度です。
(石田) 
<コメント>
ニコランジルは血小板凝集そのものには影響を及ぼさない、ということのようです。

■抗血小板療法で臨床的に神経を使うのは出血の危険性です。
しかし,ニコランジルのように内皮機能の改善を介して血栓を抑制するのであれば,出血リスクの心配をする必要はありません。
今後は抗血小板薬とニコランジルの併用についても検討する必要があるのではないかと思います。
(伊藤) 


##III.トランスレーショナルアプローチ
##虚血性心疾患の予後に及ぼす交感神経機能,線溶系の影響
#ニコランジルが交感神経機能異常を改善,心イベントを抑制
■欧米では盛んに大規模臨床試験が行われていますが,そこでは薬のどのような機序が寄与していたのかについて回答を得ることはできません。
一方,日本では少数例であってもさまざまな手技を用い,臨床的に機序を探る研究が得意だと思います。
(伊藤)
<コメント>
かなり手厳しい言葉ですが、「目から鱗」です。
 
■心臓が機能不全に陥ると神経細胞からのノルエピネフリン(NE)放出が亢進しますが,再取込は低下します。
このため,虚血性心疾患患者では血漿NE濃度が上昇します。
<コメント>
私がNEの研究をしていた頃にはこういった概念はありませんでした。
ただ心不全患者では血漿NE濃度が上昇するという事実だけでした。

この神経細胞によるNE取込の低下は,NE類似体のMIBGによる心筋シンチグラフィーで観察することができます。
そこで冠動脈インターベンション(PCI)が成功した心筋梗塞患者を対象に,薬物治療の効果を心筋MIBGイメージングにより評価する研究を行いました。
標準的治療薬であるACE阻害薬/ARB,β遮断薬,抗血小板薬にニコランジルまたは一硝酸イソソルビド(ISMN)を追加投与しました。
症例数はニコランジル群,ISMN群とも17例です。
いずれの薬剤も6か月間経口投与し,その前後でMIBGイメージングと心エコー検査を行いました。
その結果MIBGシンチグラフィー上の総欠損スコア,心縦隔比,洗い出し率がニコランジルにより改善したのに対し,ISMNはこれらの指標に変化をもたらしませんでした(図6)。

また,ニコランジルは心エコー検査により測定される左室拡張末期容積(LVEDV)を著明に減少させ,左室駆出率(LVEF)を有意に上昇させましたが,ISMNはこれら心機能指標にも影響を及ぼしませんでした。
 
次にST上昇型心筋梗塞(STEMI)193例を対象とする観察研究で,ニコランジル長期投与の有効性を検討しました。
193例中ニコランジルを投与されたのは86例です。
STEMI発症3週後にMIBGシンチグラフィー,コントラスト左室造影または心エコー検査を実施し,その日を観察第0日と定義しました。
観察期間は945日(中央値)です。
ニコランジル投与群および非投与群の間で,年齢,性別比率,PCI施行率,CPK最大値,前壁梗塞の頻度および各種危険因子に有意差は認められませんでした。
ニコランジル投与群は非投与群に比べMIBGパラメータの総欠損スコアと洗い出し率,左室機能指標のLVEDV,左室収縮末期容積(LVESV)が有意に低く,逆に心縦隔比とLVEFは有意に高値でした。
これらの指標の差は急性期からのニコランジル投与の影響を反映していると考えられます。
観察期間中に心イベント(心臓死,非致死性心筋梗塞,非致死性心不全)が50例発生しました。
Cox多変量解析では,PCI未施行,ニコランジル非投与,洗い出し率,総欠損スコアが心イベント発生独立因子でした。
また各々についてKaplan-Meier法により解析しましたが,PCI施行,ニコランジル投与により無発症生存率は有意に改善しました(図7)。

また洗い出し率と総欠損スコアの低下もリスクの減少をともなうことが明らかになりました。
結論として,ニコランジルによる長期治療はSTEMI患者の心臓交感神経活性と左室リモデリングに好影響をもたらし,心イベントを抑制することが示されました。
(笠間) 
<コメント>
ニコランジルの投与法は、急性期には全例静注,その後経口投与に切り替えています。
#心筋梗塞急性期におけるニコランジル静注の評価
■この臨床成績は,ニコランジルが心室リモデリングと神経リモデリングを抑制するという,私たちの動物実験の結果と一致します。
これこそまさにトランスレーショナルな研究といえます。
(Lee) 

■IONAのデータと比較すると,このスタディではニコランジルのイベント抑制作用はより長く持続しているように思われます。
急性期に静注を行ったことがその後の経過にも影響を及ぼしたのではないでしょうか。
(Ford)
 
■早期治療は急性期の心イベントを減少させるうえで有効だと思いますが,重要なポイントは急性期の静注だけでなく,その後に続けて経口投与を行うことで,長期的な心イベントを抑制することです。急性心筋梗塞を対象とした日本の研究J-WIND(Japan Working Group Studies on Acute Myocardial Infarction for the Reduction of Necrotic Damage by Human Atrial Natriuretic Peptide or Nicorandil)では,急性期のニコランジル静注の効果は明確になりませんでした。
しかし,その後の長期経口投与施行例を対象としたサブ解析では慢性期LVEFの改善が認められています。
(伊藤)


#PAI-1活性の低下により内因性線溶機能が改善 
■線維素溶解系の主役はプラスミンであり,プラスミンはt-PAの作用によりプラスミノーゲンからつくられます。
このt-PAの作用を特異的に阻害する物質がPAI-1(type1 plasminogen activator inhibitor)であることもよく知られています。
PAI-1は線溶系の主要な制御因子であり,PAI-1活性が上昇すると線溶活性が低下しフィブリン溶解が遅延します。
そこで,PAI-1活性の上昇が虚血性心疾患患者における心・血管イベント発症率の上昇に関係するか否かを明らかにするため,安定狭心症患者連続249例を対象に前向き観察研究を行いました(図8)。

PAI-1活性8.4IU/mLをカットオフ値として2群に分けて比較した成績ですが,PAI-1活性高値群(8.4IU/mL以上)のイベント発症率は同低値群(8.4IU/mL未満)に比べて高く,両群の差は有意でした。
したがって,血栓性イベントを抑制するためには,PAI-1活性を低下させる治療が必要と考えられます。
そこで,私たちはIONA試験で安定狭心症患者の心イベント抑制が証明されたニコランジルに注目し,冠動脈疾患患者のPAI-1活性に対するその効果を検証しました。
冠動脈疾患患者11例を対象にニコランジル15mg/日を2週間投与し,投与前後の血漿中のt-PA抗原,PAI-1活性,PAI-1抗原を観察しました。
血漿中のt-PA抗原およびPAI-1抗原はニコランジル投与前後で有意な変化を示しませんでしたが,PAI-1活性は治療前12.9IU/mLから治療後5.6IU/mLへと有意に低下しました(図9)。

さきほど,ニコランジルは抗酸化作用を介して血管内皮機能を改善し血栓形成を抑制するというお話がありましたが,本剤にはそれに加えて,PAI-1活性を低下させて線溶機能を改善し,心・血管イベント発生を抑制する働きも期待できます。
(坂本)


#PAI-1の産生部位とニコランジルの有効性
■私もPAI-1活性の抑制が血栓形成を防止することを動物実験で確認しています。ニコランジルによりPAI-1活性が低下したことは,血栓性イベントの抑制につながると思います。
(石田)

(ニコランジルはどのような機序でPAI-1活性を抑えるのか)
■私は細胞内Caの動態がPAI-1活性に大きな影響を及ぼすと考えています。
マクロファージにおけるPAI-1産生がCaの減少によって抑制されることを示す実験データがあります。
ニコランジルはKATPチャネルを刺激して細胞内Ca量を減少させ,PAI-1産生を低下させるのではないでしょうか。
(坂本) 

(ニコランジル投与後,PAI-1活性が急速に低下する人もいれば,緩やかな変化を示す人もいるようにみえるが、この反応の違いは)
■おそらく反応の違いには,PAI-1の起源が関係していると思います。
PAI-1は,脂肪細胞,内皮細胞,肝細胞,そしてマクロファージでも生成されます。
ニコランジルの効果はPAI-1がどこでつくられたかによって異なるのではないかと考えています。
たとえば肥満,糖尿病などの疾患や危険因子によってPAI-1のソースが異なるとすれば,ニコランジルの効果にも違いが生じる可能性があります。
(坂本) 

<まとめ>
ニコランジルが単なる抗狭心症薬ではなく,心筋を虚血から保護し,交感神経活性や内皮機能の改善を通じて予後を改善することが明らかになりました。
(伊藤)


本試験に用いられたニフェジピンGITSは国内未承認薬です。
Ivabradineは国内未承認薬です。
チロフィバンは国内未承認薬です。

出典 MT pro 2010.2.18(一部改変)
版権 メディカルトリビューン


<自遊時間>
インターベンションをやってみえる先生方には先刻承知の学会かと思いますが、米国にCRT (Cardiovascular Research Technologies)という学会があるようです。
結構歴史があるようでライブデモンストレーションが行われるようです。

CRTという言葉からは別のことを連想する先生方も多いかも知れませんね。


CRT 2010
http://www.crtmeeting.org/

CRT 2010 - Cardiovascular Research Technologies
http://eventful.com/events/crt-2010-cardiovascular-research-technologies-/E0-001-025600947-2

Dr. Radialistからの便り
http://d.hatena.ne.jp/Dr_Radialist/20100224/1267002620

今年もCRTへ
http://www.dryumi.com/?p=374

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