戯れ言たれる侏儒
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< J-TOP試験 | メイン | ニコランジルのエビデンスと作用機序 その... >

先週、田辺三菱製薬の若いMRさんが来訪しました。
ちょうど、PPIと抗血小板剤の話題が出ていたので田辺三菱製薬さんとオメプラゾンがどうも結びつかないね、という展開になりました。
彼もきょとんとしていたので、「確か吉富さんだったね、今となっては懐かしい社名だけど」と話を振りました。

結局、その後社歴の話題になりました。

田辺三菱製薬 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/田辺三菱製薬

彼は「そのうち三菱製薬になるかも知れません」といいます。
私は「三菱ってそんなに薬品は沢山出していた記憶はないけど昔三菱油化がペリサロールっていう薬を出していたよ」
というと
彼はポカンとしていました。
その薬剤こそ今日とりあげる「ニコランジル」だったのですが・・・。

ノーベルファーマ株式会社
http://www.nobelpharma.co.jp/corporate/director.html
(ペリサロールは過去の遺物になっています。このサイトに辛うじて載っていました。)
ニコランジルは発売後25年が経過した息の長い抗狭心症薬です。
最近に至るまで多面的な心・血管保護作用が次々に報告されており,臨床医の関心を集め続けています。
これまで古典的な抗狭心症薬については,虚血症状は改善するものの長期的な予後改善効果はみられないとされてきましたが,大規模臨床試験IONA(Impact of Nicorandil in Angina)においてその常識を打破したのもニコランジルです。
しかし,ニコランジルの心・血管イベント抑制作用については,作用機序や最適な投与法など,解明すべき課題も少なくありません。

今日勉強した記事(座談会)は製薬会社の企画したもので、心して繙かなければなりませんが、一定の知識の習得にはなるはずです。

大規模臨床試験IONA自体は先生方がよくご存知のように、今となっては旧聞の類いに属するものです。

伊藤 浩 氏(司会) 
岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 生体制御学講座(循環器内科学)教授
Ian Ford 氏 
Professor, Director of the Robertson Centre for Biostatistics, University of Glasgow, UK
堀中 繁夫 氏 
獨協医科大学 循環器内科 准教授
Tsung-Ming Lee 氏 
Professor, Departments of Internal Medicine, Taipei Medical University and Chi-Mei Medical Center Republic of China
石田 英之 氏 
東海大学 医学部基礎医学系 生体構造機能学 教授
笠間 周 氏 
北関東循環器病院 循環器内科
坂本 知浩 氏 
済生会熊本病院 心臓血管センター (循環器内科)副部長 兼 血管造影室長

##心血管イベントに対する抗狭心症薬ニコランジルのエビデンスと作用機序
#I.臨床的アプローチ 抗狭心症薬の長期的有用性
#大規模臨床試験にみるニコランジルの心イベント抑制作用
■ニコランジルはATP感受性Kチャネル開口と一酸化窒素(NO)供与という2つの作用を持つハイブリッド型薬剤であり,動脈と静脈をともに拡張するほか,虚血プレコンディショニングを模倣あが予後の改善につながるかどうかです。
(伊藤)

■ニコランジルの有用性については大規模臨床試験IONA(Impact of Nicorandil in Angina)で検証されています。
IONAは高リスクの安定狭心症患者5,126例を対象に,標準的治療にニコランジル追加投与の有用性をプラセボと比較した無作為化二重盲検試験です。
一次エンドポイントは冠疾患死・非致死性心筋梗塞・胸痛による緊急入院からなる複合心・血管イベントですが,観察期間(平均1.6年)における一次エンドポイント発生率はニコランジルにより17%と有意に低下しました(図1)。
また,心血管死・非致死性心筋梗塞・不安定狭心症の複合エンドポイントもニコランジルにより21%と有意に低下しました(log-rank検定,p=0.028)。
このようにニコランジルは狭心症患者における主要な心・血管イベントを抑制しましたが,抗狭心症薬が長期予後を改善することを示した臨床試験はこれが最初です。
IONAの結果は2002年のLancetに報告されましたが,その論文には初回イベントを1例予防するために必要な治療例数(NNT)を42と記しています。
しかし,実際には1人の患者が複数のイベントを起こしたケースが多いのです。
そこで全イベント,特に入院をすべて含めて再解析したところ,NNTは19に低下し,費用対効果からみてもきわめて有益であることがわかりました(表1)。
また,全イベントでみた一次エンドポイントの相対リスク減少率は19%,p値は0.001と,効果はより明らかになりました。

IONAとほぼ同時期にACTION(A Coronary Disease Trial Investigating Outcome with Nifedipine)というトライアルが行われました。
これは安定狭心症に対するニフェジピンの有用性を検証した研究です。
主要評価項目は全死亡,急性心筋梗塞,難治性狭心症,心不全,脳卒中,末梢血管血行再建術を合わせた複合イベントですが,ニフェジピン群とプラセボ群の間に有意差は認められませんでした。
IONA,ACTIONのあとに,もう1つ大規模臨床試験が行われています。 左室機能障害をともなう安定冠動脈疾患患者約11,000例を対象に抗狭心症薬Ivabradineの有用性を検証したBEAUTIFUL(Morbidity-mortality Evaluation of the If Inhibitor Ivabradine in Patients with Coronary Disease and Left-ventricular Dysfunction)です。
Ivabradineは心筋のIf電流を選択的に遮断する薬剤で,心拍数を低下させます。
この試験の背景には,冠動脈疾患や心不全に対するβ遮断薬の有用性に心拍数低下作用が関係するという認識があります。
そこで,同じ心拍数低下作用をもつIvabradineも期待できるのではないかと考えたわけです。
しかし,Ivabradineの心・血管イベント抑制作用は認められませんでした。
以上をまとめると,抗狭心症薬として心・血管イベント抑制作用が証明されているのは,IONAによるニコランジルだけだといえます。 (Ford)

#抗狭心症薬の交感神経系,心拍数に対する作用
■高血圧の治療試験ではCa拮抗薬の心・血管イベント抑制作用が示されているのに,狭心症治療で有効性が認められなかったことに驚いています。 (伊藤)

■ACTIONのデータをみると,ニフェジピン群で血圧が有意に低下しています。
そして個別のイベントでは心不全と脳卒中が少し減っており,そこに降圧効果が影響しているかもしれません。
しかし,心筋梗塞や死亡への影響はみられませんでした。 (Ford)
<コメント> ニフェジピンによる交感神経系活性化が関係しているかも知れません。 心拍数の変化はどうだったのでしょうか。
(一般的に血管拡張薬には交感神経亢進作用がありますが,ニコランジルにはそれがなく,交感神経機能亢進を改善するといわれます )。

■BEAUTIFULではほとんどの患者がβ遮断薬を服用していました。
ですから,心拍数に対するIvabradineの上乗せ効果は小さく,そのために予後改善効果が現れにくかったのかもしれません。Ivabradineの有用性が期待できるとしたら,β遮断薬を服用しても高心拍数が持続する症例です。
そのような症例ではイベントを抑制する可能性のあることが,BEAUTIFULのサブ解析から示唆されています。
(Ford)
#日本の狭心症患者で低用量ニコランジルの有用性が明らかに 〜JCAD(Japanese Coronary Artery Disease)Study
■IONAは狭心症に対するニコランジルの有用性を示しましたが,英国で実施されたIONAの結果をそのまま日本人に適用できるかどうかは不明です。
また,IONAでは多くの患者がニコランジル40mg/日を投与されましたが,日本の常用量は15mg/日ですのでこの用量で有効性が認められるかどうかは明らかではありません。
JCADは,冠動脈疾患患者を対象に実施された多施設共同前向き観察研究です。
対象患者における冠危険因子と薬剤使用状況を調査し,予後との関係を検討しました。
冠動脈造影で75%以上の有意狭窄が認められた患者約15,000例を登録し,平均2.7年追跡しました。
解析対象となったのは13,812例です。
登録患者を疾患別に分けると,急性心筋梗塞と不安定狭心症が36%,陳旧性心筋梗塞が29%,安定狭心症が28%であり,安定期の症例が約60%を占めています。
使用されたおもな薬剤は抗血栓薬,硝酸薬,ACE阻害薬,ARB,Ca拮抗薬,β遮断薬,ニコランジルなどですが,ここではニコランジルのデータを示します。
ニコランジルを投与された2,680例(19.4%)と残りの11,132例(対照群)の背景因子を比較したところ,年齢,冠動脈病変数などいくつかの点で有意な違いがみられました。
このため,傾向スコアマッチングという統計学的手法を用いて解析しました。
これは治療法選択にかかわる因子について多重ロジスティック解析を行い,ある治療法を選択する傾向をスコア化し,それがマッチした症例で比較する方法です。
傾向スコアがマッチした患者はニコランジル群,対照群とも2,558例です。 主要評価項目は全死亡,副次的評価項目は心臓死,急性心筋梗塞,うっ血性心不全,脳血管死などの心・血管イベントです。この方法で解析したところ死亡リスクはニコランジルにより35%有意に低下しました(図2)。
副次的評価項目では心臓死が56%,致死性心筋梗塞が56%,脳血管死が71%,うっ血性心不全が33%といずれも有意に減少しました(表2)。

傾向スコアマッチングという信頼性の高い方法で解析した結果,冠動脈疾患患者に対するニコランジルの予後改善効果が示唆されました。
ニコランジルは日本人の冠動脈疾患に対する長期予後という視点からも有用であり,その効果は国内常用量でも十分に期待できると思います。
(堀中)

■スタチンには予後改善効果が認められましたが,Ca拮抗薬では逆に悪化しました。
ACE阻害薬とARBは有意な効果が検出できませんでした。
(堀中)

■ACE阻害薬やCa拮抗薬が効果を示さなかったのは,使用された解析方法が適切でなかったためかもしれません。
これらの薬剤には高血圧,心不全,狭心症など,複数の期待薬効があります。
傾向スコアマッチングというのは,ニコランジルのように狭心症に限定して使用される薬剤には最適ですが,投与の理由が複数にまたがる薬剤だと,交絡因子の影響を受ける怖れがあります。 (Ford)

#II.基本的アプローチ 心臓交感神経系リモデリング,酸化ストレスと血栓形成
#心筋梗塞後の交感神経過剰支配をニコランジルが抑制
■私たちは以前,KATPチャネル開口薬が梗塞後の心室肥大を抑制することを報告しました。
しかし,心筋リモデリングを促進する交感神経支配に対しKATPチャネル開口薬がどのように作用するかは不明でした。
そこで,この点を明らかにするための実験を行いました。
心筋細胞にはタイプの異なる2つのKATPチャネルがあります。
一つは筋細胞膜に,もう一つはミトコンドリア内膜に存在します。
KATPチャネル開口薬のピナシジルは2つのサブタイプをともに活性化しますが,ニコランジルはミトコンドリア(mito)KATPチャネルだけを選択的に刺激します。
これら特性の異なる2つのKATPチャネル開口薬の交感神経系に対する作用を比較することにより,KATPチャネルの役割を解明しようと考えたわけです。
ウィスターラットの冠動脈前下行枝を結紮して心筋梗塞を作製しました。
そのラットを1)生食水,2)ニコランジル,3)ピナシジル,4)グリベンクラミド,5)ニコランジル+グリベンクラミド,6)ピナシジル+グリベンクラミドの6群に割振りました。
4週後に測定した左室ノルアドレナリン量は梗塞ラットで著明に上昇しましたが,ニコランジル,ピナシジルはその上昇を有意に抑制し偽手術ラットと同レベルまで低下させました(図3)。
ノルアドレナリン上昇に対するKATPチャネル開口薬の抑制効果はKATPチャネル遮断薬グリベンクラミドを同時投与すると消失しました。
(Lee)

出典 MT pro 2010.2.18
版権 メディカルトリビューン

<コメント>
私事で恐縮です。
数十年前の在局中のことです。
まだ血中NEの測定が始まったばかりの時に、NEを高感度ラジオイムノアッセイ法で高血圧患者や肺高血圧圧患者や心不全患者を対象に測定し、血中cAMP測定をからませてを学位をとりました。
その後、マウスを用いて心室NE濃度を測定して発表していました。
今でも同様なことに懐かしさと同時に驚きを感じます。

■私たちは急性心筋梗塞患者にニコランジルを静注するとPCI後のno-reflowが改善し,壁運動が回復することを示すデータを持っています。
この実験はまさにそれと同じことを動物で示したものといえます。
(伊藤)

■私も心筋梗塞後のニコランジル投与は有効だと考えています。心室および神経のリモデリングを抑制しうるからです。
(Lee)

■ニコランジル(KATPチャネル開口薬)は心筋梗塞作製の24時間後に投与を開始しました。
それより遅くなると大部分は死んでしまうからです。
臨床的にも急性心筋梗塞の診断がついたらニコランジルを直ちに投与するのが望ましいと思います。
(Lee)

 

その他
ふくろう医者の診察室 
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
 井蛙内科/開業医診療録(3)
~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
があります。
 

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