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葦の髄から循環器の世界をのぞく
老境に入った内科開業医が、昔専門とした循環器科への熱い思い断ちがたく一人でお勉強した日記です。
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アジア系米国人の心疾患リスクの研究意義
戯れ言たれる侏儒
/ 2010.03.08 00:01 / 推薦数 : 0
民族も文化も多様な背景を持つアジア系米国人の心疾患リスクの研解析は,心疾患の原因や予防法究明につながるかもしれないという発想での研究が行われているようです。
米エモリー大学のK. M. Venkat Narayan氏ら(NHLBI)のワーキンググループが,2008年のNHLBIのワークショップで行った報告の内容がJ Am Coll Cardiol(2010; 55: 966–73)に掲載されたという記事で勉強しました。
アジア系米国人の心疾患リスクの研究意義は?
NHLBIのワーキンググループが報告
民族間で心疾患のリスク因子が大きく異なる
■1990年代,60以上の民族から成るアジア系米国人は,米国民全体の6倍の速さで増加し,2000年時点で全人口の4.2%(1,190万人)を占めるに至った。
その内訳は中国系23%,フィリピン系20%,南アジア系(インド,パキスタン,バングラデシュ,スリランカ,ネパール,ブータン,モルディブ)18%,韓国系10%,ベトナム系10%,日系10%,その他(インドネシア系,台湾系,タイ系など)9%となっている。
■各グループの年齢構成は似ているが,例外として65歳以上は日系で多く(31%),インド系で少ない(5%)。
学士の割合は他の米国人より高く,日系とフィリピン系,インド系は4分の3以上が高収入である。
彼らが米国に移住した時期はさまざまであるが,日系以外では外国生まれが大部分を占める。
■心疾患リスクは民族間で顕著に異なる。
インド系,日系,フィリピン系は,肥満率は高くないものの,2型糖尿病が多く,太平洋諸島民は肥満も糖尿病も多く,インド系は白人より心疾患死亡率が高いといった報告がある。
■自己申告をもとにした国民健康調査(NHIS)によると,心疾患の罹患率はフィリピン系で最も高く,韓国系,ベトナム系,中国系で低い。
BMI 30以上の肥満はインド系では高率ではないが,BMI 25以上30未満の過体重はインド系とフィリピン系に多く見られる。
日系やフィリピン系では,中国系や韓国系と比べて高血圧が多く,喫煙率は韓国系男性で最も高く,インド系男性で最も低い。
■日系米国人については,2型糖尿病リスクが日本在住の日本人の4倍に及ぶことから,1980年代前半に糖尿病および心疾患リスクの世代間の違いを調査したJACDS研究が行われた。
その結果,内臓脂肪が増えるほど,トリグリセライド(TG)値が上昇し,HDLコレステロール(HDL-C)値が低下。
また,内臓脂肪の増加が高血圧や糖尿病,冠動脈疾患(CHD)の発症にかかわっていると報告された。
■1965年に始まったNI-HON-SAN研究によると,カリフォルニアとハワイの日系人と,日本在住の日本人では心疾患のリスク因子の多くが異なると報告。
血清コレステロールレベル,飽和脂肪の摂取,BMIは日本在住の日本人が最も低く,喫煙率とアルコール摂取は非常に高かった。
日本在住の日本人は脳卒中の罹患率が最も高く, CHDについては最も低かった。
<コメント>
「日本在住の日本人」・・・何だかピンと来ませんが我々のことです。
「CHDについては最も低かった」・・・循環器を専攻する我々としては何だか肩身の狭い思いがします。
そして何よりも「日本在住の日本人」は高脂血症の治療(スタチン)よりも高血症の治療(ARBなどの降圧剤)が重要ということになるのでしょうか。
■フィリピン系米国人では,肥満がないまま2型糖尿病リスクが上昇することが知られている。
ある研究によると,2型糖尿病がないフィリピン系女性は,白人よりメタボリックシンドロームが多く,正常血糖においてもアディポネクチン濃度が有意に低かった。
アディポネクチン低濃度,両親の心筋梗塞歴,微量アルブミン尿は,心疾患と独立したかかわりがあった。
■また,フィリピン系女性は内臓脂肪が多く,2型糖尿病,高血圧,メタボリックシンドロームが多かったが,冠動脈のカルシウムから評価した潜在性のアテローム性動脈硬化は白人女性と違いがなかった。
心疾患のリスク因子は,白人では年齢,喫煙,TC/HDL-C比であるが,フィリピン系ではむしろ糖尿病と高血圧だった。
<コメント>
非常に興味深い結果です。
海外の文献は鵜呑みにしてはいけない(海外の文献はそのまま「日本在住の日本人」に敷衍出来ない)という教訓です。
「人種」と「民族」の概念(違い)も理解する必要がありそうです。
β細胞の機能不全の役割やアテローム性動脈硬化の研究のモデルに
■アジア系米国人の心疾患リスクに関する研究は,公衆衛生や医療費に与える影響が大きいだけでなく,心血管代謝疾患の原因や予防法の究明につながる可能性を持つ。
■南アジア系やフィリピン系ではBMIがわずかに上昇することで,内臓脂肪が蓄積し,2型糖尿病と心疾患が増加する。
なぜ糖尿病や心疾患が若い世代で起こり,体格のリスクの閾値が異なるのか。
また,日本人においては内臓脂肪分布とインスリン感受性の低下が糖尿病の独立した予測因子であり,わずかなBMIの増加がβ細胞の機能不全をもたらす。
アジア系米国人は,内臓脂肪の蓄積と脂肪組織分布,β細胞の機能不全,インスリン抵抗性とアテローム性動脈硬化との相互作用についての研究のモデルとなる。
■これらに遺伝子や妊娠中・出生早期の暴露,文化はどう影響しているのか。
アジア系女性は,白人と比べて妊娠糖尿病のリスクが2~3倍高い。
子宮内栄養障害,小児肥満,成人期の栄養過多との関係も研究の余地がある。
そのほか,糖尿病におけるB型肝炎,C型肝炎,異常ヘモグロビン症,鉄過剰などの原因論が探求できるだろう。
■食べものについては食事や買いもの,料理などの社会的背景を含めたさらなる研究が必要である。
最近の研究では,過体重のインド系女性は低炭水化物ダイエットで体重を減らすことで,インスリン抵抗性を減らし,心疾患のリスクが低下すると報告されているが,さらなる検証が求められる。
■米国では,アジア系米国人の一般人口を対象とした研究を始めようという試みがあるが,各グループの対象者が少なく,国内に散らばっているという問題がある。
アジア系が多く住む地方で集団を同定する,大規模なケアネットワークを用いる方法なども考えられるが,すべての社会経済的集団を捉えることはできない。
■ニューヨーク市では革新的なパイロット研究が行われた。
4万人のタクシー運転手を調べたところ,40%が南アジア系で,77%は医療保険に入っておらず,ランダムに行った調査では,血糖値が160mg/dLを超える人々が75%を占めた。
ニューヨーク市は地域ベースの健康調査を始めており,各グループのサンプル数は少ないものの,糖尿病罹患率は白人で10.5%,スペイン系で12.3%,黒人で14.5%,アジア人で系16.1%,南アジア系で27.5%となっている。
■これらのデータは,社会経済的集団を横断した一般人口を対象とした研究がそれぞれの民族について,共通の最小限のプロトコルと適切なサンプルサイズを用いて行われるべきであることを示唆している。
出典 MT pro 2010.3.4
版権 メディカルトリビューン社
<「人種」と「民族」 関連サイト>
人種
http://ja.wikipedia.org/wiki/人種
■現在自然人類学において、人種を識別するために採用されていた形質が実は勾配としか記述できないために、A.M.ルロワといった一部をのぞき、積極的に人種概念の科学的有効性を主張する研究者は少ないといえる。
人種
http://www2s.biglobe.ne.jp/~t_tajima/nenpyo-1/se-0-7.htm
アンリ・V・ヴァロア著「改訂新版 人種」寺田和夫訳、文庫クセジュ、1971年
■黒色人種 or 類黒色人種(5人種)
エチオピア、アフリカ黒人、ネグリロ、コイサン、インド黒人
■白色人種(10人種)
北方、東ヨーロッパ、ディナール、アルプス、地中海、アイヌ、アナトリア、トゥラン、南東、インド・アフガン
(コメント;アイヌについては異論がありそうです。有色人種という概念ではアイヌ、インド・アフガンなどはどうなんでしょうか。)
人種
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%BC%EF
人種とは何か考える
http://www.zinbun.kyoto-u.ac.jp/conference/nhk.html
■黄色人種(8人種)
シベリア、北蒙古、中央蒙古、南蒙古、インドネシア、ポリネシア、エスキモー、アメリンディアン
(コメント;日本人はどの蒙古なんでしょうか)
<コメント>
結局、「人種」そのものがよくわからない(わかっていない)。
「『黒人』は、『白人』や『黄色人種』より、はるかに多くの遺伝子種類・体質の差を含んでいる」ということもいわれています。
諸外国(特に人種の「坩堝(るつぼ)」といわれる米国)の疫学的な内容を含んだ論文は、大いに問題ありということになります。
これから論文を読むときには「人種」についての記載に注目する必要がありそうです。
ここで思い出したことがあります。
少し前のことになりますが、あるMRが英語の論文を持って来ました。
そこにはCaucasianという言葉が入っていました。
「このCaucasianってどういう意味?WhiteとかAnglo-Saxonsとかとどう違うの?」って意地悪な質問をしました。
MRさんへの宿題としたのですが、そのMRさんが後日来院して「調べましたが難しくてよくわかりません」という返事でした。
私も未だ持ってよくわかりません。
白人(Caucasian)とは・・・スラブ系・ラテン系について - 教えて!goo
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa2190794.html
Caucasian race - Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Caucasian_race
民族
http://ja.wikipedia.org/wiki/民族
この論文を読んでもう一つ思い出したことがあります。
それは在局中の犬の実験です。
きちんとした医学雑誌はBeagle犬でないとacceptされないという都市伝説(?)がありました。
mongrel(mixed-breed ) dogで実験するのは一般的なことですが、もし論文が受理されなければ実験犬のせいにする「流れ」がありました。
ビーグル
http://ja.wikipedia.org/wiki/ビーグル
大学で一番辛かった授業 ビーグル犬で外科実習
http://pet-net.sakura.ne.jp/byouin/juui13.html
エビデンス(循環器領域)シリーズ ⑤
エビデンス:VALUE とREAL VALUE
熊谷裕生、鈴木重伸、尾田高志、兵頭俊武、東桂史、櫛山武俊(防衛医科大学校腎臓内科)
VALUE
VALUE本試験は50歳以上の高血圧患者で危険因子が複数ある者に、バルサルタンとアムロジピンをランダムに投与した二重盲検試験である。
REAL VALUE試験では6カ月の時点で単剤投与であった症例について解析した。
心不全の新規の発症についてはバルサルタン群がアムロジピン群よりも有意に優れていた。
The Valsartan Antihypertensive Long-term Use Evaluation trialの略。
ARBバルサルタンとCa拮抗薬アムロジピンが心血管事故に及ぼす影響を4年間比較。
http://www.novartis.co.jp/ebm/navigator/02VALUE_REALVALUE.html
■結果
アムロジピン群のほうがバルサルタン群よりも降圧が大きく、最初の6カ月で4/2mmHgもの血圧の差がついた。
アムロジピン群のほうがバルサルタン群よりも血圧が低かったが、しかしながら複合一次エンドポイントには全く差がなかった。
致死性および非致死性の脳卒中の発症はアムロジピン群がバルサルタン群よりも低い傾向が認められたが有意差はなかった。
致死性および非致死性の心筋梗塞の発症は、アムロジピン群がバルサルタン群よりも有意に低かった。
心不全による入院および死亡は、バルサルタン群で低い傾向にあったが有意差はなかった。
4年間における糖尿病新規発症はバルサルタン群がアムロジピン群よりも有意に低かった。
VALUE本試験のサブ解析において、この4年間の降圧薬治療中に新しく糖尿病になった患者がうっ血性心不全を発症するハザード比は、糖尿病にならなかった患者と比較するとと有意に高かった。
このように糖尿病患者では心疾患を発症する可能性が高いので、糖尿病を発症させる危険性が少ないバルサルタンで降圧することは意義が深いと考えられる。
REAL VALUE試験
■目的
VALUE本試験は、早期にバルサルタン群とアムロジピン群の血圧の差が生じてしまい、また他の降圧薬を併用したことなどが心血管事故の発症に影響を及ぼした可能性があるため、解釈が難しかった。
そこでREAL VALUE試験では、このバイアスを排除し純粋に両薬剤が単独で予後に及ぼす影響を検討する目的で、6カ月の時点で単剤投与であった症例について解析した。
■結果
投与期間中の平均血圧は両群で同等であった。
試験開始前の収縮期血圧約150mmHgから3カ月後に135mmHgまで低下し、最終的に133/77mmHgとなった。単独投与の平均期間は3.2年であった。
一次エンドポイントである複合イベントおよび二次エンドポイントである心筋梗塞、脳卒中、すべての原因による死亡の発症率は、バルサルタン群とアムロジピン群との間に有意差がなかった。
一次エンドポイントは4年から5年と追跡するうちにバルサルタン群において発症率が低くなる傾向がみられた。
一方、心不全の新規の発症率はバルサルタン群がアムロジピン群よりも有意に優れていた。
しかも、追跡期間が長くなるほど、バルサルタン群の心不全の新規発症はアムロジピン群と比較して低くなった。
すなわち長期に服用するほどバルサルタンの臓器保護作用が強調されることが示された。
糖尿病の新規発症についてもバルサルタン群がアムロジピン群よりも有意に低く、VALUE本試験と同様の結果であった。
心筋梗塞の発症について、VALUE本試験ではバルサルタン群のほうが高かったが、REAL VALUE試験では両群間に差が認められず、やはり血圧管理の程度が心筋梗塞の発症頻度に影響を及ぼすと考えられた。
脳卒中については、VALUE本試験と同様に、REAL VALUEでもバルサルタンはアムロジピンと同等であり、脳卒中発症の頻度が高いわが国において、臨床的価値が非常に高いと考えられる。
<コメント>
上記サイトではこの図の「すべての原因による死亡」についての説明がありません。
5年(60月)以降のバルサルタン群の急上昇が気になります。
有意差検定は5年(60月)で打ち切っているのでしょうか。
2010.3.7撮影 昔メキシコで買った民芸品
その他
ふくろう医者の診察室
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(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)
2009.10.16~
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~2009.10.15
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