戯れ言たれる侏儒
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低用量アスピリンとARB

戯れ言たれる侏儒 / 2010.03.05 00:14 / 推薦数 : 0

きょうはちょっと目先を変えて消化器関連(もちろん循環器がらみ)の記事で勉強しました。
難しい内容が続いたので、ちょっと「箸休め」といったところです。

ARBと低用量アスピリンを同時投与(併用)している症例は少なくないと思います。
低用量アスピリンを投与する場合にはH2ブロッカーやPPIなどを併用することが多いと思いますが、ARBはPPIとほぼ同等のNSAIDs潰瘍の抑制効果が出来るという発表内容の記事で勉強しました。

第6回日本消化管学会総会学術集会(2010.219~20)でのワークショップ「NSAIDsと消化管病変」で川崎医大・塩谷昭子先生が発表されました。
##低用量アスピリンによる消化性潰瘍、ARBが抑制
(内視鏡検査施行例を対象とした調査結果)
Angiotensinogenの遺伝子多型、潰瘍出血の危険因子
■対象は内視鏡検査を施行した低用量アスピリン内服患者425人(平均年齢71歳)。
そのうち潰瘍が68人、潰瘍出血が20人で見られた。潰瘍病変は3mm以上の粘膜欠損と定義した。

■それぞれ臨床背景を比較すると、平均年齢は潰瘍出血群75.3歳と非潰瘍群70.8歳、潰瘍群72.3歳と比べ有意に高く、アスピリン内服期間は、潰瘍群で平均4.4年であり、非潰瘍群5.7年、潰瘍出血群4.5年と比べ短い傾向を認めた。
また、潰瘍既往歴・腎不全有病率はともに潰瘍群で有意に高かった。

■併用薬剤については、潰瘍出血群85%で他の抗血小板薬を使用しており、非潰瘍群57.1%、潰瘍群66.2%に比べ有意に高率だった。
さらに潰瘍群・潰瘍出血群でチエノピリジン系薬剤の併用率が有意に高く、NSAIDsの併用率は潰瘍群で有意に高率だった。

■プロトンポンプ阻害薬などの制酸薬の併用は、潰瘍群・潰瘍出血群で有意に低率であり(非潰瘍群65.5%、潰瘍群42.6%、潰瘍出血群40%)、同じ傾向がARBおよびスタチンにも見られた。
すなわち、ARBの併用率は、非潰瘍群、潰瘍群、潰瘍出血群それぞれ44.5%、26.5%、15%であり、スタチンの併用率はそれぞれ46.5%、32.4%、15%だった。

■次に全血よりDNAを抽出し、PCR法あるいはPCR-RFLP法にてangiotensinogen(AGT)およびangiotensin II type I receptor(AT1R)遺伝子の多型を測定。
ACE阻害薬あるいはARBの併用群203人・非併用群222人に分けて検討した結果では、併用群中の潰瘍出血ありでAGT-20CC genotypeを有する症例が33.3%と非潰瘍群4.1%に比べ有意に高率だった。
非併用群ではAT1R-521T carrierが潰瘍なしの36.4%で見られ、潰瘍あり20.5%と比べ有意に高率だった。

■さらに多変量ロジスティック回帰分析にて潰瘍の関連因子を見ると、制酸薬とARBがほぼ同等の抑制因子として検出された。
危険因子は潰瘍既往歴、腎不全、チエノピリジン系薬剤、NSAIDsだった。
潰瘍出血の危険因子は、80歳以上、チエノピリジン系薬剤に加え、AGT-20CCを認め、抑制因子は制酸薬、ARB、スタチンだった。

■この結果を踏まえて塩谷氏は、「低用量アスピリンによる上部消化管潰瘍発生にレニン・アンジオテンシン系の関与が示唆された」と述べ、低用量アスピリンを用いている患者に対し、ARBなどのレニン・アンジオテンシン系阻害薬を併用することで潰瘍予防につながる可能性を指摘した。

http://www.m3.com/academy/report/article/116358/&Mg=02bd3395da29724469ba672e001b59d1&Eml=31ef79e7aaf65fca34f0f116a57fd65d&F=h&portalId=mailmag
出典 m3.com 医療ニュース&ジャーナル 2010.2.24(一部改変)

<コメント>
アスピリン潰瘍の結果、胃潰瘍の大出血が起こって患者が死亡した場合、PPIやH2ブロッカーを使用していないと裁判になった場合、敗訴するのでしょうか。
本来この両薬剤はNSAIDsへの潰瘍予防を目的とした適応はありません。
まさに「前門の虎、後門の狼」です。
こんなこと一つをとっても、蓋し医療は「板子一枚下は地獄」ですね。

<NSAIDs/低用量アスピリン潰瘍 関連サイト>
胃潰瘍診療ガイドラインにおけるNSAIDs/低用量アスピリン潰瘍の取り扱い
http://www.pariet.jp/alimentary/vol54/no564/sp10-01.html
■予防のステートメント
(1)NSAIDs潰瘍の予防には、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、プロスタグランジン(PG)製剤、高用量のH2受容体拮抗薬(H2RA)を用いる。(グレードA(行うよう強く勧められる)、レベルI(システマティックレビュー/メタアナリシス))
 
(2)NSAIDs潰瘍の予防にはH. pylori除菌を行うが、PPIに比較するとその有効性は低い。(グレードA、レベルI)
 
(3)COX-2選択的阻害薬は胃潰瘍の発生頻度が従来のNSAIDsに比較すると低いので予防効果が期待されるが、長期投与では心血管系の副作用に留意する。(グレードB(行うよう勧められる)、レベルII(1つ以上のランダム化比較試験))
 
なお、採用されたエビデンスは欧米のものが多く、日本人でのエビデンスはない。

http://www.pariet.jp/alimentary/vol54/no564/sp10-02.html
■本邦では、保険診療上NSAIDs潰瘍の予防あるいはリスクの軽減に対して保険適用がない。
(この文章からは前後関係を考慮しても主語がはっきりしない。主語はパリエット?)

NSAID 潰瘍(NSAID ulcer)
http://med.astrazeneca.co.jp/disease/minute/ee01.html
■NSAID潰瘍の予防に対して保険適用がないという現状がある。
特に高リスク患者のNSAID潰瘍発生の予防のためのPPI などの抗潰瘍薬投与に関しては、NSAID継続下での 潰瘍再発防止の目的とともに、日常診療の現場でも可能となるように早急な対応が望まれるところである。

消化性潰瘍治療剤「タケプロン®カプセル15」、「タケプロン®OD錠15」の
「非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の発症抑制」
にかかる効能追加申請について
http://www.takeda.co.jp/press/article_35796.html
(その後どうなったんでしょうか)

<番外編>
スタチンとワーファリンの相互作用も悩ましい問題です。
ワーファリンの作用が減弱するならまだしも増強するため一定のリスクがあります。
ピタバスタチン(商品名 リバロ)はそのあたりの問題はない(?)ようです。

HMG-CoA還元酵素阻害剤-各製剤比較-
http://www.apha.jp/top/shiryou/hikaku/HMG.htm

ワーファリン 使用上の注意改訂のお知らせ
hhtp://www.eisai.jp/medical/products/di/NO/PDF/WF_T_NO_9904.pdf
(シンバスタチン、フルバスタチンが相互作用のあるスタチンとして記載されています)

ワーファリンを用いた抗凝固療法の現状と課題
http://www.pariet.jp/alimentary/vol54/no564/sp13-02.html
(「ワーファリンの抗凝固作用を増大するもの」としてフルバスタチンとロスバスタチンが記載されています)

ワーファリン錠 0.5mg、1mg、5mg(ワルファリンカリウム) の相互作用
http://www.eisai.jp/medical/products/di/SY/WF_T_SYN.pdf

#エビデンス(循環器領域)シリーズ ②
エビデンス:VALISH Study
Valsartan Amlodipine Randomized Trial
荻原俊男(大阪大学名誉教授/大阪府立急性期・総合医療センター)
http://www.novartis.co.jp/ebm/navigator/31VALISH%20Study.html(一部改変)
■わが国の高齢者収縮期高血圧の至適降圧目標設定に供するエビデンスとすべく、140mmHg未満群と150mmHg未満群の比較を、ARBバルサルタンを第一次薬として、おのおの1,500例、3年間の介入試験である。

■背景
一般論としては高齢者高血圧の降圧目標はthe lower、the betterであるが、多くの高齢者高血圧の介入試験における到達血圧値は150/90mmHg未満となっている。
さらにわが国で行われたJATOS試験では収縮期血圧140mmHg未満群と160mmHg未満群で心血管事故の頻度に有意差はみられず、75歳以上では140mmHg未満群のほうが心血管合併症頻度が高い傾
向がみられている。

■目的
わが国の高齢者収縮期高血圧の降圧目標について、140mmHg未満群と150mmHg未満群の比較をARBバルサルタンを第一次薬として行うことを目的とした。

■VALISH Studyは高齢者の収縮期高血圧治療におけるARBバルサルタンを第一次薬とした場合の臨床的有用性が明らかになるとともに、高齢者高血圧の至適降圧目標、とくに収縮期血圧を140mmHg未満に下げるべきか、あるいは中間目標として150mmHg未満という高血圧治療ガイドライン2004(JSH2004)は妥当であるか否かについてエビデンスを与えるものと期待される。
わが国発のユニークな介入試験としてその結果が注目される。

高血圧治療におけるバルサルタン
http://blog.m3.com/reed/20080421

<VALISH Study コメント>
以下のサイトで高血圧学会が共催・後する大規模臨床試験がでています。

高血圧学会共催・後援 大規模臨床試験
http://www.jpnsh.org/trial.html
(DIME Study、COLM-Study、COPE Trial、HOMED-BP Study、HOSP Study、J-CHEARS Study、VALISH Study)
その中で何故かVALISH Studyだけは「サーバが見つかりません」

「試験期間は2004年2月に開始され2008年3月に終了予定である。症例の登録は2005年8月に終了し、最終的にL群1,627例、M群1,633例、計3,260例がエントリーされた。」ということですがまだその結果は発表になっていないのでしょうか。


<ある日の講演会メモ>
「RAA系抑制による降圧療法」①
国際医療福祉大学三田病院 内科 佐藤敦久教授
■論文紹介
Heart and Kidney;fatal twins?
Ritz E.Am J Med 2006;119:31S-39S
(心臓と腎臓は連関している)

Cardiology and Nephrology;
Time for a more integrated approach to patients care?
Hobson A.Eur Heart J 2005;26:1576-1578

■心臓 → 腎臓    心臓 ⇦ 腎臓
(腎臓がより心臓に影響を与えている)

■Shulman NB. Hypertension 1989;13:80~93
Hypertension Detection and Follow-up Program;
血清クレアチニン値が高いほど死亡率が高い
(8年間フォローアップ成績)

■PROMISE研究で気づかれていた心予後決定因子としての腎機能障害
Packer M et al. N Engl J Med 1991;325:1468-75
(ミルリノンの使用の有無に関係なくCr1.3を境界として予後が異なる)

 

その他
ふくろう医者の診察室 
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
 井蛙内科/開業医診療録(4)
2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)
~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
があります。
 


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