戯れ言たれる侏儒
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< DIME試験 | メイン | 低用量アスピリンとARB >

昨日話題にした琉球大学大学院教授・臨床薬理学 植田真一郎教授が週刊医学界新聞 (医学書院)に11回にわたって論文解釈に関する連載を掲載してみえます。
最近数多く出されている大規模臨床試験を含めて論文を解釈するのにとても重要と思われる事柄に溢れています。
週1回のペースでなんとか読破して身につけようと思います。

まず前書きには
「ランダム化臨床試験は,本来内的妥当性の高い結果を提供できるはずですが,実に多くのバイアスや交絡因子が適切に処理されていない,あるいは確信犯的に除去されないままです。したがって解釈に際しては,“ 騙されないように” 読む必要があります。
本連載では,治療介入に関する臨床研究の論文を「読み解き,使う」上での重要なポイントを解説します。」
と書かれています。
【第1回】
臨床研究の論文を正しく読むことは大切だけど,けっこう難しい
■AとBが相関する。したがってAはBの原因と考えられる」なんていう論文は多いですが,単なる相関はその因果関係を示唆するものではありません。
■図1は米国の腎不全の発生頻度と利尿薬使用の関連を見た論文から抜粋したものです

#医学研究論文は正しいのか

図1 利尿薬使用の増加は腎不全を増加させる?
著者らは利尿薬の使用率の推移と2年後の末期腎不全発生の推移が並行していることから,利尿薬使用と末期腎不全の発生は因果関係があるとの仮説を提唱した。

Hawkins RG, Houston MC. Is population‐wide diuretic use directly associated with the incidence of end‐stage renal disease in the United States? A hypothesis. Am J Hypertens. 2005 Jun;18(6):744‐9. 。

一見すると利尿薬の使用率と末期腎不全(透析導入や腎移植)の発生率は並行しているように見えます。
統計学的にもこれが偶然起こる確率は0.8%に満たないと解析されています。
論文の著者らはこの結果から利尿薬は腎不全リスクを増やす可能性が高いと述べています。これは正しいのでしょうか?

■残念ながら,これはおそらく正しくありません。
その理由はいくつかありますが,まずこの解析が正当なのかどうか考えてみましょう。
この母集団はどこから来ているのでしょうか? 
まず同じ集団の中での利尿薬が処方されたかどうか,腎機能の推移をみたものではありません。
2年ずらすという一見もっともらしい方法をとっていますが,別の集団です。
そもそも血清クレアチニンが2mg/dlを超えるとサイアザイド系利尿薬は処方されないので,関連を見ることは困難なのです。

■利尿薬の使用率の推移も,「高血圧でサイアザイド系利尿薬を投与されている患者の頻度」を表しているわけではありません。腎機能が下がればサイアザイドは減り,ループ利尿薬の使用は増加し,最終的に末期腎不全となれば必要なくなりますから処方されません。
最大限譲歩して関連があるとしたら,利尿薬の処方が増え,血圧が下がり,脳卒中や心筋梗塞のリスクが下がったため,腎機能が悪化しても生き残る患者さんが増えたのかもしれません。
実際末期腎不全の増加は腎不全そのものの増加と並行しないという報告があります。

■結局,患者さんを利尿薬を使用する群か使用しない群のどちらかに割り付け,末期腎不全への進展リスクを評価するランダム化臨床試験が必要になります。
利尿薬と他の薬とを比較したランダム化比較試験はいくつかありますが,今のところ利尿薬が末期腎不全を増やすという報告はありません。
ただ,著者らは「仮説」と一見謙虚な態度を見せつつ,自分たちの考えが正しいと読者を思わせるために,ランダム化臨床試験から「部分的に」引用をしているのです。
<コメント>
以前勤務していた病院で、他科(呼吸器科)の先生が学会の予行演習(予演会)で「酸素吸入している慢性呼吸不全患者は予後が悪い」という内容の発表がありました。
これって???

#図の提示の仕方で結果の印象が変わる
■ALLHATは臓器障害のかなり進んだ高血圧患者を利尿薬群(クロルサリドン),ACE阻害薬群(リシノプリル),Ca拮抗薬群(アムロジピン),α遮断薬群に割り付け,予後を比較したものです(図2)。
下の図を見る限りでは,クロルサリドンという利尿薬はアムロジピンと比較すると腎機能を低下させるのではないかと思えます。


図2 ALLHAT研究における腎機能の推移(1)
ALLHAT研究での研究開始時から4年後の腎機能の%変化。-12%を最小値とした縦軸に注意。

下の図(図3)は同じALLHAT研究で腎機能を1年ごとに見たものですが,一時的に腎機能は利尿薬群とACE阻害薬群で落ちますが,その後はだいたい一定です。
最終的なアウトカムで腎不全がどんどん増えているという結果も出ていません。
しかも腎機能の悪化を遷延させることが証明されているACE阻害薬とあまり差がありません。
ところが,これを図2のように抜き出すと,クロルサリドンは腎臓に悪いようになります。
これはx軸を短くし,y軸を伸ばすという古典的な誇張の方法なのです。


図3 ALLHAT研究における腎機能の推移(2)
ALLHAT研究での研究開始時から1年ごとの腎機能の絶対値。
開始時の腎機能別に3群に分けて表示されている。
縦軸は推定GFR値で最小値は0。

#臨床研究論文の落とし穴に気づこう
■目の前の患者さんについて困ったとき,何をするでしょうか?
「エビデンスレベル」なんて言葉を知っている人は「メタ解析」や「システマティックレビュー」を読むと答えるかもしれません。
これらはすべて正しいのですが,すべてに落とし穴があるのです。

■二次資料は短くてわかりやすいですが,省かれた部分に大切なメッセージが隠れているかもしれません。またガイドラインも自分の患者さんにあてはめてよいのか,自信がないこともあるでしょう。臨床研究の論文,主として観察研究やランダム化比較試験の論文を読むときにも,落とし穴はたくさんあります。

http://www.igaku-shoin.co.jp:80/paperDetail.do?id=PA02825_09
出典 週刊医学界新聞 第2825号 2009.4.6
版権 医学書院

<関連サイト>
植田真一郎(琉球大学大学院教授・臨床薬理学)
高血圧臨床試験の読み方
http://blog.m3.com/reed/20080703


<番外編>
#メタボリックシンドローム診断に身長の考慮は必要か?
http://www.m3.com/academy/report/article/115003/?Mg=90963d41c93a34bb643e46c18f430565&Eml=31ef79e7aaf65fca34f0f116a57fd65d&F=h&portalId=mailmag
■現在、メタボリックシンドロームの診断では腹囲の絶対値が用いられ、体格(身長)は考慮されていない。
せんぽ東京高輪病院健康管理センターの後藤澄子氏は、動脈硬化関連因子とBMI、腹囲、腹囲/身長比の相関関係を検討し、1月22日の一般演題で発表。
少なくとも男性においては、身長を考慮する必要はなく、腹囲が最も優れた指標と考えられると解説した。

■腹囲/身長比を計測し、動脈硬化関連因子(血圧、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、尿酸、アポリポタンパクA-1、アポリポタンパクB、アディポネクチン、空腹時血糖、空腹時インスリン、HOMA-R、高感度CRP)との関連を検討した。

■男性で各身体計測指標と動脈硬化関連因子の相関係数の大きさを比較すると、腹囲は計5項目(収縮期血圧、拡張期血圧、尿酸、HOMA-R、アディポネクチン)と最も強い相関を示し、BMIは3項目(HDLコレステロール、アポリポタンパクA-1、アポリポタンパクB)、腹囲/身長比は1項目(LDLコレステロール)と最も強い相関関係が見られた。
また、男性では空腹時血糖、高感度CRPはいずれの身体計測指標とも有意な相関を認めなかった。

■女性では身体計測指標と有意な相関が見られない動脈硬化関連因子が多く、収縮期血圧、中性脂肪、LDLコレステロール、尿酸、アポリポタンパクBはBMI、腹囲、腹囲/身長との関連がみられなかった。
しかし、男性と異なり、空腹時血糖、高感度CRPは身体計測指標との間に有意な相関を認めた。

■女性において、BMI、腹囲、腹囲/身長は動脈硬化性疾患発症リスクの推定に適切な身体計測指標ではない可能性があり、男性においては、腹囲が動脈硬化性疾患発症リスクを推定する上で最も優れた身体計測指標である可能性が高いという結果となった。
(男性では内臓脂肪面積それ自体が身長にかかわらず動脈硬化性疾患のリスクとなりうる)

■男性と女性で身体計測指標と動脈硬化関連因子の関係に差異がみられ、動脈硬化性疾患発症リスクを推定する身体計測法について、性別等の因子を考慮してさらなる検討を行う必要がありそうである。

<コメント>
この記事を読んでいて「中心血圧」を思い出しました。

中心収縮期血圧
http://blog.m3.com/reed/20090706

ある講演会でのうろ覚えですが、高身長では反射圧の「悪玉血圧」が高く動脈硬化が起きやすいという話がありました。

そこで「身長 寿命」をググってみるとこんなサイトがありました。

身長と寿命は負の相関があり、10cm違うと4歳平均寿命が異なるらしい
http://amrit-lab.com/c/nocategory_58.html
(Samaras, T. T. (1996) How body height and weight affect our performance, longevity, and survival. J Washington Academy of Science 84, 131-156.)

大柄な人ほど短寿命?
http://okwave.jp/qa/q4209142.html
寿命についての断章
http://bloom.at.webry.info/200707/article_6.html
高身長は低寿命
http://blogs.yahoo.co.jp/tounyoubyoukousikessyou/14225261.html
(いずれもアカデミックなサイトとはいえませんが・・・)
橈骨動脈AI、メタボリスクの重積と有意な関連
http://www.m3.com/academy/report/article/115172/?Mg=90963d41c93a34bb643e46c18f430565&Eml=31ef79e7aaf65fca34f0f116a57fd65d&F=h&portalId=mailmag


昨日お話したエビデンスシリーズです。

#エビデンス(循環器領域)シリーズ ①
エビデンス:VART
Valsartan Amlodipine Randomized Trial
鳴海浩也、高野博之、小室一成(千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学)
http://www.novartis.co.jp/ebm/navigator/30VART.html
■緒言
欧米で行われている大規模臨床試験に比べ、わが国では大規模臨床試験は数少なく、日本人独自のエビデンスに基づいた高血圧治療は、まだ発展の余地がある。
わが国には約3,300万人の高血圧患者がいると推定され、その合併症である脳血管疾患、腎疾患、心疾患により著しくADL、QOLを損なう。
わが国では、欧米とは、生活習慣、心血管病の病型、頻度が異なるため、日本人独自のエビデンスに基づいた治療が望まれている。
ARBとCa拮抗薬は、ともに第一選択薬としてわが国の臨床上最も汎用されている薬剤であるが「降圧を超えた臓器保護作用」として、いずれが優れているのか関心を集めている。
現在、その2者(バルサルタンとアムロジン)を比較した、Valsartan Amlodipine Randomized Trial(VART)を進行中である。

■目的
本研究の目的は、これら2剤それぞれの使用下における各種心血管事故発生の差を検討し、日本人にとってより有用な高血圧治療法を検討することにある。

■おわりに
REAL VALUE2の結果から、バルサルタン、アムロジピン単独服薬群で比較した場合には降圧効果は同等だが心不全に関してはバルサルタンの優位性が確認され、高血圧から心不全への進展抑制にARBが有効なことが明らかにされた。
人種によって最も適した降圧薬が異なることは当然考えられるため、このVARTによって日本人にとってより有用な高血圧治療法を検討中である。

高血圧症例における心血管疾患の予防に関する調査(VART)
https://www.vart-research.com/VART/FILE/index.htm

<コメント>
2009年3月終了予定となっていますが、結果は発表されたのでしょうか。
一度メーカーに問い合わせてみます。


 

その他
ふくろう医者の診察室 
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
 井蛙内科/開業医診療録(4)
2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)
~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
があります。
 


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