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JAMA誌に掲載された「血管疾患のリスク予測」にTG値は不要という論文で勉強しました。
いつも感じるのですが、日本人の論文は物事を複雑化する内容のものが多く稍もすると衒学的なきらいがあります。
一方、アングロサクソン系の論文は、集約化や単純化を図る研究が多くより臨床的、現実的です。
今回の論文は2年前から始まった空腹時の採血に固執する「特定健診」を嘲笑うような内容です。
実際、この健診では、メタボには直接関係ない(項目として何故か入れられている)LDL−Cのみが異常値の方が数多くみえます。
もっともこの健診の患者への説明でシラケる瞬間です。
##血管疾患リスク推定にトリグリセリド値は不要
##総コレステロールとHDL-cのみでOK、空腹時の採血も不要
集団ベースで血管疾患のリスク予測を行う場合、必要なのはHDL-コレステロール(HDL-c)値と総コレステロール値の組み合わせ、またはアポリポ蛋白質Bとアポリポ蛋白質A1の組み合わせのいずれかであり、トリグリセリド値は不要—。
そんな研究結果が、英Cambridg大学のEmanuele Di Angelantonio氏らによってJAMA誌2009年11月11日号に報告された。
血中脂質値とアポリポ蛋白質のそれぞれ、またはそれらの組み合わせと心血管リスクの関係については、これまで、信頼できる定性分析が行われていなかった。
有効なスクリーニング法の開発や、治療における意思決定において、正確なリスク評価法の必要性は高い。
そこで著者らは、過去に行われた前向き研究から、血中脂質値、アポリポ蛋白質値に関する情報と、心血管イベント発生の有無に関する情報を抽出し、リスク評価において重要な指標はどれかを明らかにしようと考えた。
主に欧米で行われた前向き研究の中から、血管疾患歴のない人々を登録し、集団ベースで死因別死亡率または心血管イベント発生率を報告しており、ベースラインで脂質レベルなどを測定、心血管危険因子に関する情報を収集し、1年以上追跡を行っていた68件を選出。30万2430人に関する情報を得た。
68件のうち22件(9万1307人)がアポリポ蛋白質Bとアポリポ蛋白質A1を測定しており、8件(4万4234人)が直接測定LDL-コレステロール(LDL-c)値を記録していた。
登録時の平均年齢は59歳、43%が女性、60%が西欧在住者、32%が北米在住者だった。
個々の測定値の関係を調べたところ、トリグリセリドの自然対数値(loge)、HDL-c値、非HDL-c値の間に相関が見られた。特に強力な関係が見られたのは、非HDL-c値とアポB値、非HDL-c値と直接測定LDL-c値、HDL-c値とアポA1値という組み合わせだった。
279万人-年の追跡で、8857人に非致死的心筋梗塞、3928人に冠疾患死亡、2534人に虚血性脳卒中、513人に出血性脳卒中、2536人に分類不能脳卒中が発生していた。
ベースラインの脂質値とアポリポ蛋白質値のそれぞれについて、1SD上昇当たりのハザード比を求めた。
1SDの値は以下の通り。トリグリセリドは0.52 loge、HDL-cは15mg/dL、非HDL-cは43mg/dL、アポリポ蛋白質A1は29mg/dL、アポリポ蛋白質Bは29mg/dL、直接測定LDL-cは33mg/dL。
1000人-年当たりの冠イベント(非致死的心筋梗塞と冠疾患死亡)の発生率は、ベースラインのトリグリセリド値が最低3分位群では2.6、最高3分位群では6.2、HDL-cではそれぞれ6.4と2.4、非HDL-cでは2.3と6.7だった。
年齢、性別、収縮期血圧、喫煙歴、糖尿病、BMI、分析対象以外の脂質測定値(たとえばトリグリセリドと血管疾患リスクの関係を分析する場合には、HDL-c値と非HDL-c値を調整に加える)で調整し、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比を推定した。
ベースラインでトリグリセリド値が1SD高かった場合の冠イベント発生の調整ハザード比は、0.99(95%信頼区間0.94-1.05)。空腹時の採血だった患者のハザード比は1.02(0.95-1.09)、それ以外の採血だった患者では0.92(0.82-1.03)で、空腹時測定値かそうでないかは結果に影響しなかった。そのほか、虚血性脳卒中の調整ハザード比は1.02(0.94-1.11)、出血性脳卒中では1.04(0.82-1.32)、分類不能脳卒中では1.03(0.94-1.13)となった。
この結果は、トリグリセリド値が冠疾患の独立した危険因子ではない(HDL-c、非HDL-c、その他の標準的な危険因子で調整すると影響は小さくなる、または消失する)ことを意味する。
続いて、HDL-cの1SD上昇当たりの冠イベントの調整ハザード比を求めると、0.78(0.74-0.82)となり、有意なリスク低下が認められた。空腹時では0.79(0.74-0.84)、それ以外の時点の採血では0.75(0.68-0.83)だった。
そのほか、虚血性脳卒中の調整ハザード比は0.93(0.84-1.02)、出血性脳卒中は1.09(0.92-1.29)、分類不能脳卒中は0.87(0.80-0.94)となった。
非HDL-c 1SD上昇当たりの冠イベントの調整ハザード比は1.50(1.39-1.61)。空腹時採血では1.41(1.30-1.53)、それ以外の採血では1.72(1.51-1.95)。虚血性脳卒中の調整ハザード比は1.12(1.04-1.20)、出血性脳卒中は0.98(0.82-1.17)、分類不能脳卒中は1.01(0.93-1.09)となった。
直接測定LDL-c値が得られた人々において 冠イベントリスクとの関係を評価したところ、調整ハザード比は1.38(1.09-1.73)だった。
このグループで非HDL-c 1SD上昇当たりの調整ハザード比を求めたところ、1.42(1.06-1.91)でほぼ同様の値を示した。
複数の測定値を組み合わせた場合のハザード比を求めてみた。たとえば、承認されている脂質降下薬の使用で達成できるレベルの脂質値改善(非HDL-cが80mg/dL低下、HDL-cが15mg/dL上昇)では、ハザード比は0.35(0.30-0.42)になった。
推定時にトリグリセリド値に関する情報を加えても、ハザード比は変化しなかった。
また、非HDL-cとアポBの値の上昇と冠イベントのハザード比の上昇、HDL-cとアポA1のレベル上昇と冠イベントのハザード比低下の相関関係が非常に強かったことから、リスク評価においては非HDL-cとHDL-c、またはアポBとアポA1のいずれかの組み合わせを用いればよいと考えられた。
実際に、アポリポ蛋白質値または直接測定LDL-c値が記録されていたサブセットを対象に分析したところ、非HDL-c/HDL-c比が1SD上昇当たりの冠イベントハザード比は1.50(1.38-1.62)、アポB/アポA1比が1SD上昇当たりの冠イベントハザード比は1.49(1.39-1.60)でほぼ同様だった。
虚血性脳卒中についても、ハザード比は、非HDL-c/HDL-c比が1SD上昇当たり1.14(1.05-1.24)、アポB/アポA1比が1SD上昇当たり1.13(1.05-1.21)となった。
今回得られた知見に基づいて、著者らは、血管疾患リスク評価に必要なのは、総コレステロール値とHDL-c値、またはアポBとアポA1値であり、測定は空腹時に行う必要はない、と述べている。
原文
Major Lipids, Apolipoproteins, and Risk of Vascular Disease
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/short/302/18/1993?home
出典 NM online 2010.1.12
版権 日経BP社
<脂質 関連論文>
#Association between change in high density lipoprotein cholesterol and cardiovascular disease morbidity and mortality: systematic review and meta-regression analysis
BMJ 2009;338:b92
http://www.bmj.com/cgi/content/full/338/feb16_1/b92
■HDLコレステロール(HDL-c)は独立した心血管危険因子と認識されている。
しかし、HDL-c値の変化が冠イベントリスクにどの程度影響するのかについては議論があった。
カナダMcMaster大学のMatthias Briel氏らは、無作為化試験の系統的レビューとメタ回帰分析を行い、HDL-c値を高めても冠疾患死亡、冠イベント、全死因死亡のリスクは下がらないこと、血中脂質レベルの正常化を目指す薬物療法の目標はLDLコレステロール(LDL-c)低下に置くべきであることを示した。
#Can metabolic syndrome usefully predict cardiovascular disease and diabetes? Outcome data from two prospective studies
The Lancet, Volume 371, Issue 9628, Pages 1927 - 1935, 7 June 2008
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/jama/200912/513314.html?ref=RL2
■高齢者におけるメタボリックシンドロームの存在は、2型糖尿病リスクを有意に上昇させるが、心血管疾患リスクとはほぼ無関係であることが明らかになった。
英Glasgow大学のNaveed Sattar氏らがLancet誌2008年6月7日号に報告した。
#Metabolic Syndrome and Mortality in Older Adults
The Cardiovascular Health Study
Arch Intern Med. 2008;168(9):969-978.
http://archinte.ama-
assn.org/cgi/content/abstract/168/9/969
■メタボリックシンドローム(以下、メタボと略)自体よりも、メタボの診断基準の構成要素に含まれる空腹時高血糖と高血圧が、高齢者の死亡の予測因子として有効であることが、米国の高齢者を対象とする前向きコホート研究の結果、明らかになった。米国Brigham and Women’s HospitalのDariush Mozaffarian氏らの報告で、詳細はArch Intern Med誌2008年5月12日号に掲載された。
#The Joint Effects of Physical Activity and Body Mass Index on Coronary Heart Disease Risk in Women
Arch Intern Med. 2008;168(8):884-890.
http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/abstract/168/8/884
■過体重、肥満による冠疾患リスク上昇は、積極的に運動しても完全に消し去ることはできず、予防には運動と体重管理の両方が重要であることが、中高年女性を対象とする前向きコホート研究の結果、明らかになった。米国Beth Israel Deaconess医療センターのAmy R. Weinstein氏らの報告で、詳細はArch Intern Med誌2008年4月28日号に掲載された。
#Efficacy of statins in familial hypercholesterolaemia: a long term cohort study
BMJ 2008;337:a2423
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/bmj/200902/509389_2.html
■家族性高コレステロール血症と診断された患者には、スタチンが第1選択薬となる。
しかし、スタチンを投与しなかった場合に比べ、どの程度の効果があるのかは明らかではない。
そこで、オランダErasmus大学医学部のJorie Versmissen氏らは、スタチンが承認された直後から患者を追跡する方法で、スタチン使用の有無と冠イベントの関係を分析し、スタチン治療がこの疾患の患者の冠イベントリスクを約80%低下させることを示した。
詳細はBMJ誌2009年1月24日号に報告された。
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